２

　美紀さんは、女のわたくしから見ると、抜きんでて器量よしというわけではありませんでした。そう・・・「男好きのする女性」とでも言うのでしょうか？その頃、ようやく女としての自分に目覚めはじめたわたくしには、そんな美紀さんの纏わりつくような女の匂いが息苦しくて、ふたりだけになると、なにやら居心地の悪い思いを、随分していたのです。

　でも、不思議ですね。そのときは、その苦手なはずの女の匂いが、たいそういとおしく思えました。それは、そのとき、わたくし自身も同じ匂いをさせていたからでしょうか？いまならば、わかります・・・はっきりと・・・このからだに纏わりつく淫らな匂いが・・・。

　それは、どんな香水でも消すことができないのです。そう言いながら、詩織は、慈しむように、その白い指先を、胸から腰、腰から太腿、柔らかな白い内腿、そして、濡れそぼった花びらへと這わせ、そしてくぐもった声を上げた。

　美紀さんは、椅子に坐らせたわたくしの首筋に、後ろから舌を這わせながら、オフホワイトのアイリッシュセーターを捲りました。人差し指にセーターを絡ませ、残りの指は、わたくしの肌を這わせてながら、焦らすように脱がせていったのです。ああ・・・女の人の柔らかな指が、これほど心地よいなんて、それまでのわたくしには、想像さえできませんでした。

　それでも、わたくしは、小さな声で「いやっ・・・」と抗ってみましたが、それはなんと弱々しい抵抗だったことでしょう。このからだに流れ始めた快楽の奔流は、もうすでにどうしようもないほど、わたくしを押し流していました。美紀さんは、セーターを脱がせると、当然のように、キャミソールに手をかけました。そして、次の瞬間、それを荒々しく引き裂いたのです。

　今まで、そのように乱暴に扱われたことがありませんでしたから、わたくしは、たいそう驚きました。けれども、同時に、もっと乱暴に扱われてみたい・・・そうも思ったのです。

　ひとつ・・・ふたつと思わせぶりに、ブラウスのボタンをはずしていた詩織は、そう言うと、いきなり、両手に力をこめてブラウス開いた。弾けて跳ぶボタン、布が裂ける音・・・詩織は、右手の指で秘所を弄びながら、刺繍の入った黒いレースのブラを、左手で捲りあげた。

　美紀さんの両手は、わたくしの乳房を覆う、まだ馴染めないでいるブラを、こんな風に捲りあげました。そしてその手が、わたくしの乳房を包むように愛撫したのです。美紀さんの掌は冷たく、それでいて湿ったような感触がしました。名残を惜しむように、わたくしの肌に吸いつき、開いた指の股で、乳首を鋏むように弄ぶ・・・そんな美紀さんの指が、せつなくて・・・わたくしは、美紀さんを、とてもいとおしく感じたのです。

　だから、あんなことをしてしまったのだと思います。わたくしは、誰から教わるでもなしに、美紀さんの手を取って、その柔らかな指先を唇に含み、舌を絡ませました。その瞬間・・・美紀さんの唇から、かすかに声がもれたとき、わたくしは、どんなに嬉しかったことでしょう。

　わたくしは、美紀さんにもっと愛されたいと思いました。詩織はそう言うと、花弁の蜜で濡れた右手の指を唇に含んだ。ピチャピチャと音をたてながら、上目遣いに私を見て・・・そして言った。

　けれども、美紀さんは、わたくしの手を邪険に振り払いました。そして、指先で乳首を愛撫しながら、わたくしに、こう囁いたのです。

「もっと良いことをして差し上げますよ、お嬢様。だから、ご自分でショーツをお脱ぎになるのです。」

　驚きで声もだせませんでした。美紀さんの・・・いえ、人様の前で下着を脱ぐなど、当時のわたくしには、考えることさえできないことでしたから。わたくしは、かぶりを振ることしかできず、ともすれば、蕩（とろ）けていきそうになるこのからだに、一生懸命、力を入れて耐えていました。

　美紀さんは、わたくしの顎を突きださせるようにさせて。舌を、首筋から顎に向かって這わせます。それはまるで、虫が這うようなゆっくりとした、それでいて淫らな動きでした。むずがゆいような感覚がからだじゅうに広がり、内腿のさらに奥深いところへ収束していきます。わたくしには、あそこが濡れていくのがわかりました。

　いつのまにか、わたくしの前に廻り込んだ美紀さんは、その唇を、わたくしの唇に押しつけました。そして、驚く暇もないうちに、わたくしの唇を割って、柔らかなヌメヌメとしたものが入ってきました。それが、美紀さんの舌だとわかるのには、さほど時間はかかりませんでした。実際の経験はなかったわたくしですが、そういったことは、お友だちとの会話の中や、雑誌で、すでに知っていたのです。

　詩織は、唇を軽く開いて、舌を突きだした。その赤くヌメヌメとした、それでいて繊細に動く舌の感触は、私自身、すでによく知っているものだったから、股間で固くなり始めたものが、少しだけ疼いた。

　男の方も含め、キスは、初めての経験でした。舌が、こんなに柔らかなものだとは思いませんでした。わたくしの舌に絡みつく美紀さんの舌、唇の端にこぼれ落ちる、混ざり合った唾液、そのかすかな匂いが、わたくしを少しずつ狂わせていくようでした。

　そんなわたくしに、意地悪く微笑みかけながら・・・美紀さんは、わたくしの乳首を軽く摘んで、転がすように愛撫しました。たったそれだけのことで、わたくしのからだは、蕩けてしまったのです。

　唇を離し耳朶を甘く噛んで、美紀さんが、再び囁きました。

「さあ、お脱ぎになるのです、お嬢様。」

　美紀さんの手が、わたくしの手をスカートへと導きました。

「まず、スカートを捲りましょうね、お嬢様。そうです・・・しっかりとスカートを摘んで・・・ゆっくりと、お尻を少し持ち上げて・・・そう、腰の上まで捲るのです。」

　わたくしは、操り人形のように、美紀さんの声に従いました。

「よくできましたね、お嬢様。さすがに、あのお母様のお子だけあって・・・淫らなお姿が、よくお似合いですこと。」

　美紀さんの声が、わたくしに、鏡の向こう側でおこなわれている行為を思い出させました。なぜ、忘れていられたのでしょう。これほどの衝撃を、簡単に消し去ってしまう・・・美紀さんの指と舌でつくりだされる、この恐ろしくて、しかも甘美な感覚・・・わたくしは、わたくしのからだのに眠る淫らな女が、恐ろしくてなりませんでした。

　義父は、仰向けに寝ておりました。その下腹部に、馬に乗るようにまたがった母が、ゆっくりと、腰を上下に動かしています。それは、何か、からだに導きいれたものを、母のからだを使ってなぞっているようでした。母は、目をつぶり、苦しいのでしょうか眉間にしわをつくって、まるで求道者のように、ひたすら腰を動かし続けます。時折、震え、崩れそうになる母を、下から義父の逞しいが支えていました。

　ほどなく、わたくしは、義父のごつごつした手が、母の乳房をつかみ、強く揉んでいるのに気づきました。ああ、なんということでしょう。それは、美紀さんが、わたくしにしてくれた愛撫と同じではありませんか。わたくしは、そのときはじめて、母を憎いと思いました。

「わたくしも、お義父さまに、あのように弄んで欲しい。」

　美紀さんの指の動きが、義父のそれと重なって・・・。そのときのわたくしは母になりたくて、なれない自分が悔しくて・・・突き上げられるように、からだの奥深くから湧きだしてくる、未知の衝動だけを募らせていきました。

　いまなら、わかります・・・あれは嫉妬でした。わたくしが、ようやく、足を踏み入れたばかりの世界で感じた快楽の、何十倍・・・いえ、何百倍も、母が感じているかと思うと、わたくしは悔しくて、それが欲しくて、どうしようもなくて・・・いま、わたくしが狂っているとすれば、きっと、あの瞬間に、はじまったことなのだと思います。

　我を忘れ、弄ばれながら、鏡の向こう側を食い入るように見つめるわたくしに・・・

「ほら、見て御覧なさい・・・お嬢様の淫らなお姿を。」

　美紀さんは、そう言うと、わたくしに顔に、まぶしい光を向けました。サーチライトでした。驚くわたくしから、少し遠ざけるように光を動かすと、それは、鏡の中に淡い輪郭で、ちょうどわたくしの乱れた姿を映しだしました。肌蹴た胸、こぼれた乳房・・・捲れたスカート、妖しく悶える両の太腿。わたくしは、はしたない自分の姿を見ていられず、思わず顔を伏せていました。

「お嬢様、胸元ではなく、鏡を御覧なさい。」

　美紀さんにそう言って、指先をわたくしのあごにあてると、少し強引に、顔を上向かせました。恐る恐る、目を開いて鏡を見ると、丸い光の中に、ぽっと浮き上がるように、わたくしのあさましい姿がありました。キャミソールを裂かれ、ブラを捲りあげられたわたくし・・・スカートを腰まで捲り、内股に揃えたふくらはぎの隙間から覗く薄いピンクのショーツは、鏡に映してさえも濡れているのがわかります。

　その、わたくしの姿に重なるように、光の輪郭の周囲には、相変わらず、義父と母の愛欲の営みが映しだされます。母は、両脚を大きく広げておりました。その中央に、義父の顔が覆い被さって、なにやら蠢いております。本能的に、義父が舌を使っているのだとわかりました。どこに・・・そんな自問が浮かんで、すぐに消えました。

　あなたがお好きな、ほらここですわ。そんなふうに私に話しながら、詩織はからだをそらして、黒い翳りと、その下に妖しく咲いた肉色に濡れた花びらを、私に示すように突きだしてみせる。詩織の指が動くたびに、花びらの奥の蜜壷が、グチュグチュと誘うような音を奏でた。

　母が受け止めている快楽を想像すると、ショーツの奥のぐっしょりと濡れた部分が、かすかに疼きました。

「わたくしも、あんなふうに愛されたい。」

　それは、もう、飢えにもひとしい欲望でした。満たしてくれるのならば、誰でも良かったのです。美紀さん・・・美紀さんが、さっき、ショーツを脱ぐように言った・・・美紀さんならきっと、ああしてくれる・・・あんなふうに舌で、わたくしを・・・。そんな祈りにも似た感情が、わたくしを突き動かしました。

　わたくしは、鏡に映るわたくしの腰の部分を、密かな願いを込めて、鏡に映る義父の顔のほうに動かしました。義父の舌で弄ばれる、その姿は想像するだけで、ぶるぶるとからだが震えるほど、わたくしを虜にしました。わたくしは、荒くなる呼吸を押さえようと、切ない溜息を数度繰り返し、振るえる指先でショーツを摘みました。

「美紀さん、お願い・・・わたくしの乳首を弄って。お願い・・・わたくしの唇を奪って」

　そんな言葉を繰言のように繰り返しながら、その言葉通りに、わたくしを弄ぶ美紀さんを、鏡を通して見ているわたくしがいました。美紀さんに、からだを弄らせながら、ショーツを脱いでいくわたくし・・・その姿を映す鏡。いつのまにか、わたくしは鏡を通して、美紀さんを支配していました。

　わたくしは、ショーツを脱ぐと、両脚を大きく広げました。美紀さんは、わたくしの、幼く、けっして肉づきが豊かともいえない太腿を、いとしむように撫でさすりました。鏡の中に、わたくしの濡れそぼったあそこが見えました。まだ、淡い陰毛が芽生えたばかりで、花びらも、小さく、淡い肉色です。その花園は、わたくし自身も、まだ指で慰めたことしかありませんでした。

　わたくしは、もう、美紀さんに見られて恥ずかしいなどとは考えていませんでした。わたくしの指で、わたくしの花びらに、そっと触れてみます。それは、今にしておもえば、ずいぶん未熟な指使いでした。けれども、美紀さんを刺激するのには十分だったようで、わたしの乳首を弄ぶ指の動きが止まりました。わたくしは、少しわざとらしく、甘えたように鼻を鳴らしてみせました。

「お嬢様、オナニーの仕方をご存知だったのですね？」
「ええ・・・美紀さんは知らないでしょうけど、お風呂場で、美紀さんが指を使って、ひとりで慰めているのを覗いたことがあるの。それを真似てみたら、どうしようもなく気持ちよくて・・・。」

「あのとき美紀さんたら・・・ほら、こんなふうに、手を両脚で挟み込んで腰を動かしながら悶えて・・・目を空ろにして・・・押し殺したような、けれど獣のような声をだして・・・ねえ、覚えがあるでしょう？」

　美紀さんは、少しうろたえたように、目をそらしました。わたくしは、そんな美紀さんの横顔に、畳み掛けるように言葉を浴びせました。

「美紀さん・・・美紀さんは、お義父様には、いくど抱かれたの？」
「お嬢様、な・・・なにを仰るんです。わたしは、そんなこと・・・。」

　言いよどむ美紀さんに、わたくしは囁きました。

「いいのよ、美紀さん。お母様には黙っていてあげるわ。だから、ねえ・・・お願い。詩織のあそこを美紀さんの舌で・・・いま、お義父さまが、お母様を愛しているように・・・詩織を愛して欲しいの。」

　それは、美紀さんの優位が崩れた瞬間でした。美紀さんは、支配者から奉仕者へと姿を変えつつある自分自身に戸惑いながらも、わたくしの両脚の間に顔をうずめました。わたくしは、椅子の肘掛に、それぞれの脚を開いて乗せて、少しお尻を持ち上げて、美紀さんの舌を迎え入れました。

　美紀さんの舌使いは、たいそう上手で、わたくしの、まだ目覚め始めたばかりのクリトリスの膨らみを、ときに強く、ときに優しく、転がすように、絡め取るように、弄んでいきます。わたくしは、突き上げる痛みにも似た快楽に、脚を開いていることが苦しくて、いつともなく、美紀さんの頚に両脚を絡めていました。

　ほら、こんなふうに・・・と言うと、詩織は、傍らの床に置かれた、少し大ぶりの白磁の花瓶を手に取った。そして、滑らかな凹凸がその表面を覆った花瓶を、開いた両脚に押し付け、その感触を、濡れそぼった花びらと、妖しく頭をもたげた花芯で愉しみはじめた。

　美紀さんの舌が、わたくしの濡れた蜜壷に、そっと入ってきました。その瞬間、わたくしはからだを仰け反らせ、声を上げました。そこから広がる未知の感覚は、息苦しくて、切なくて・・・逃れたいと思うほど、もっと強く感じてもみたくて・・・瞬くうちに、わたくしの全身へと広がっていきました。

　その苦痛にも似た快楽に身を任せながら、わたくしは鏡の中を見ていました。わたくしの乳首を、左手の指先で弄び続ける美紀さんは、窮屈にからだを屈めて、それでも舌を使うことをやめません。いつのまにか、美紀さんは、スカートを脱ぎ、片膝を立てて、お尻を後ろに突き出すようにしゃがんでいます。その太腿には、擦り下げられた赤いショーツが、伸びきった状態で絡み付いています。

　美紀さんは、残された右手の指で自分を慰めていました。開いた花びらは、わたくしのものよりもずっと大きく、肉色も濃くて、指の動きに誘われるように、その部分がヒクヒクと、まるで別の生き物のように動きました。

「美紀さんの、あそこ、とてもいやらしいのね。」

　わたくしが、そう囁くと、美紀さんの腰の動きはさらに強まります。舌の動きも激しくなり、鏡を見ているはずのわたくしにも、もう、それが現実なのかどうなのか判断できなくなってまいりました。熱い奔流がからだを覆い尽くしていきます。快楽に身を任せてしまえと囁きます。いえ・・・わたくしを押さえつけて、蹂躙します。

　鏡の奥に目をやると、あぐらに坐った義父の腰の上で、母のからだが反り返り、硬直していました。それは、一瞬のことなのに、ずいぶん長く感じられました。母のからだが震え始め、指先が義父の肩に食い込みます。震えが極限まで大きくなると、母は、壊れたマリオネットのように、あっけなく・・・義父の肩口に額を預け、そのまま崩れ落ちててしまいました。

　そのからだを抱きとめた義父の腕が、壊れた母を、責め続けます。義父の腰が母を突き上げるたびに、母の壊れたからだが、ビクンと跳ね上がりました。幾度繰り返したことでしょう。やがて、義父の腰が、ひときは強く押し上げられると、そこで小刻みに震えました。その瞬間、壊れた母のからだが、また激しく反り返って、そのままふたりは崩れてしまいました。

　そのとき、わたくしは、初めて、男性のあそこを間近にみました。痙攣するように収縮を繰り返す、母の蜜壷の中から、にゅるりと吐きだされた赤黒い肉の塊は、今考えると、母のあそこの中に全てをだしていたはずなのに、初心なわたくしを驚かせるのに十分なほどの大きさでした。

　それがあそこに入る瞬間の、からだの中から押し広げられるだろう感触が、恐ろしくて、けれども、どうしようもなく欲しくて・・・昂ぶるわたくしは、美紀さんの背中に、深く爪を立ててしまいました。

　仰向けに崩れ落ち、荒い息遣いを続ける母の手が・・・その手だけが別の生き物のように動いて、ぬらぬらと光る塊をつかみ、優しく扱きはじめました。すると、義父のあそこは、いっそう勢いづいていくようです。義父は、やおら母の肩に手をやると、上半身を抱え起こしました。何とか、腕で支えてはいたものの、母の表情は、すでに呆けたようになっています。

　驚いたことに、そんな母の薄く開いた唇に、義父は、自分のあれを押し入れたのです。そして、これも驚いたことに、母は、まるで、こどもをなめる獣のように、懸命にそれを含み、舐め続けました。今にして思えば、それは、母の服従を確認するための、義父にとっての儀式だったのでしょう。

　わたくしは、鏡の中で母になっていました。美紀さんに弄られながら、気持では、母になっていました。そして、義父を懸命に受け入れる母の気持が、なんとなくですがわかったように思えました。わたくしと母は、小さな羊でした。美紀さんにではなく、義父にでもなく、快楽という名の魔物に捧げられるために生まれた、「女」という名前の生贄だったのです。

　それがわかった瞬間、わたくしは、全てを忘れて叫んでいました。美紀さんの舌が、美紀さんの指が、紡ぎだしていたものは、実は、わたくし自身のからだに・・・母から受け継いだ、この淫らなからだに、はじめから棲んでいました。それを・・・その獣を、全身を使って開放することが、気をやることなのだと、わたくしの本能は知っていたのです。

　そう話しながら、目の前の詩織も果てようとしていた。白磁の花瓶を床に転がし、その上に馬乗りになって、片手で、椅子の背をつかみ、滴るほど濡らした花びらを擦りつけるように、前後に動かしながら、いくども、いくども、からだを反り返らせた。くぐもった声が、やがて大きな喘ぎに変わり、それが言葉として溢れ始めた。

　か・・・からだの奥から・・・生まれてくる幾つもの悦びが、打ち寄せる波のように、わ・・・わたくしを・・・快楽の岸辺へと打ち上げ、飛沫となって消えて・・・消えていきます。わたくしは・・・わたくしは、み・・・淫らに叫びました。

「美紀さん・・・駄目え・・・詩織は・・・詩織は・・・壊れてしまう。お母様のように・・・お母様のように・・・。壊れてしまうの。お・・・お願い・・・美紀さん・・・壊して・・・ああっ・・・・ああっ・・・・こわれるううううっ・・・あああっあああああ。」

　詩織は、床の上に崩れて果てた。膝を立て、腰を床から浮かせたままで、幾度も腰を震わせた。私は、詩織の果てる姿に、その頃の少女の姿を見たような気がした。詩織は、変わらない。どこまでも、真っ直ぐに、快楽だけを追求していく。それは、紛れもない、少女のような無邪気さの賜物なのだ。

　詩織は、気だるそうにからだを起こし、その途中で、諦めたように力なく崩れ、仰向けに寝そべった。肌蹴た巻きスカートは、詩織の力なく開いた両脚を隠すこともできず、かろうじて腰の辺りに絡みついていた。時折、太腿が震え、その度、からだが反り返り、声がもれる。曝けだされた秘所・・・詩織の陰毛は、白濁した愛液に塗れ、淫らに開いた花びらは、幾度となく痙攣した。

　荒い息が、詩織の豊かな乳房を上下させる。息を吸うたび肩が上がり、指先が床を掴もうとするように力をこめた。そして・・・詩織は、呼吸も整えないまま、独り言のように呟きはじめた。

　わたくしは、その日・・・生まれて初めて壊れてしまいました。わたくしのからだは・・・快楽にだけ忠実なマリオネットでした。わたくしは、美紀さんの舌と指で弄ばれ・・・鏡の中で母になり、義父に犯されて果てたのです。そして・・・弄ばれ・・・理性の糸を切られ、堕ちていく悦びは・・・悦びは、このからだに刻みつけ・・・られました。それは今も・・・わたくしの、このからだを縛っているのです。