７．

　郊外にある。かなり寂れた店。だだっ広いがいつ行っても客が少ない。スナックと言われてもおかしくない。そのまま酒でも出てきそうだ。夫は昔からこの喫茶店が好きであった。何か考え事するにはもってこいの場所。。 くたびれてはいるがゆったりとしたソファー。その汚れを隠すかのように店内は薄暗い。 夫はそこに腰掛け、煙草を燻らしていた。
「これから勇太がくる。。」
　頭を整理していた。どう説明すれば理解してもらえるだろう。先週のあの光景が甦る。。

「こんばんは！おじさん。いや〜ここ分かりずらいですね〜っ　ぐるぐる廻っちゃいましたよ。」
「すまんな勇太くん。まあ座ってゆっくりしてくれ」
「釣りの予定なら家まで行ったすよ。亮一も一緒の方が計画立てやすいかも。」
　釣りの話をくわしくしたいと勇太をここまで呼んだのである。
「いや、いいんだ亮一は・・」
　勇太はアイスコ−ヒーを注文。赤のジャージにＴシャツ姿。大きなバックが横に。
「今日は練習だったのか？」
「そうなんですが、・・ただ途中で先生に呼ばれてお説教でっっ汗。」
　無愛想な店員がテーブルにアイスコーヒーを置く。
「喉カラカラです。　いただきます！」
　さあ、どう言おう。。夫は回りくどくいくより単刀直入に伝えようと決意した。
「今日来てもらったのは、美津子の事なんだ。」
「・・おばさん？」
「そうだ。私は見てしまったんだ。君と美津子が寝室でしてる所を」
　勇太はあまりにも突然な夫の発言に少しビックリした顔をした。
「どう思ってるんだ、美津子の事ッ」声が高ぶっていた。まだ怒りが残っているのか。
「あ、それは、、・・」
　勇太はしまったぁ〜と言う苦い顔で下を向く。夫はその勇太の態度で少し安心した。
「別に俺は責める気は全然ないんだ。勇太くんも普通の男だ。性欲が盛んな時期でもあるし、色んな女性に興味があるのは当然だ」
「おじさん、俺・・」
「今日は聞こうと思って。俺や亮一の事は考えるな。男同士じゃないか。正直に答えてほしい。美津子の事、どう思いながら抱いたんだ？」
「・・正直に・・」
「そうだよ」
「・・俺、最初おばさんをみた時からすごく魅力的な人だなあと思ってた。スタイルもいいし、顔も上品だし。こんなお母さんいたらいいなって。でもそれ以上の感情はなかった。亮一のお母さんだし。でもおばさんの視線が俺の股間ばかりいってるのに気が付いてから、、、もしかしておばさんもそうなのかな？って。」
「？」
「ココ、、見ている女の人とは俺、ほとんど関係持ってたんです今まで」
「！！」
「だからおばさんもって。夜の自慰行為を見たので確信したんです。それでプールでは少し大胆に振舞って、、それで。。　俺、少しポチャっとしてる人好きなんです。それにおばさん、歳の割には引き締まってるし、おっぱいも。。」
「体形的には自分のタイプだと」
「そうです。でも勿論特別な感情はないです。」
「でも君くらいの年齢だと、同年に目がいくだろ？若い女の子には興味ないのか？」
「中学ん時はそうでしたよ。そんな歳離れてない子ばかりで。でも高校に上がってからかなあ、年上の・・女の人には。　きっかけは・・うちのおばあちゃんが歌舞伎見たいって言うから付き合った事あったんですよ」
「歌舞伎？」
「俺は全然興味ないですよ笑。すごくいい席だったんだけど。だから落ち着きなくて。まだ舞台が始まる前、俺の客席の隣りに座る女性とやたらと目が合ったんですよ。で、腰を思いっきり前へ出すように座っていたら、その人俺のココを見るんですチラチラと。ちょうどその日もこんな格好してたんです、楽なジャージっぽいやつ。でもこうゆうのって形がはっきり分っちゃうんですよね、柔らかいしテロテロなんで。」
「それから？」
「なんか面白くなっちゃって。。俺、ワザとその体勢でチンコ掻いたり、形をもっと分るように指で竿掴んだり。。　そしたらその人様子おかしくなっちゃって」
「その女の人は幾つぐらいの人だったんだ？」
「５０くらいなのかなあ。」
「そんなオバサンに見られて気持ち悪くなかったのか？」
「いや、逆に嬉しかったんですよっ　歌舞伎見に来てるはずなのに、俺のチンポ見てるなんて。」
「もしかして、勃起させたのか？」
「そうなんです。半勃起しちゃって。でもそのうち幕が上がり出して始まった。でもその人舞台見てるふりして俺の股間をじっと見ている。」
「そんな人がいるんだな」
「それで俺、席立ちあがりおばさんの前、股間見せつけながらトイレに行った。目まん丸にしてました。俺がトイレの前にいるとその人も来て。。」
「！・・まさか」
「そう。トイレの個室でやりました。もう便器がバンバン音しちゃって。。汗。」
「す・・すごいなそれは」
「公演中だから誰も入ってこなかったんですよ。それが結構燃えちゃって。で、終わった後にメモもらって。電話番号が書いてありました。何回かその人と会ってやってたんですが、、」
「？？」
「よくよく聞いたら、オバサン、その時舞台に出てた歌舞伎俳優の奥さんだったんです。」
「！！！」
「それからはその人からいろんな人紹介してもらいました。。」
　・・勇太は有名な野球選手、政治家の奥さん、それからアナウンサーや女優まで関係をもったと話してくれた。
「そんな人まで・・。。それ高校生の時だろ？」
　夫はなんだか自分が小さいヤツに思えてきた。
「それで自信がつきました。。セックスに関しては」
「そうだろ・・なあ」
「大学に入ってからはそうゆう有名な人はキッパリ止めました。お金出すからやりたいって言ってきた人もいたけど、、そうゆうのには全然興味なくて。それにもう馴れてるんですよ〜なにもかも。」
「馴れてる・・」
「自分が結婚してるとか妻だとか全く思ってない。もう完璧割りきってる。　それじゃあつまらない。」
「つまらない・・かっ。」
「しばらくは水球に打ち込みましたね。で、泳ぎの練習の為に市民プール行ったら、子供と一緒の奥さん達が、、、」
「君の股間を見てたと」
「ヤバイっすよね。そんな公共の場で。・・・でも俺が考えるにプールに来てる子供連れの４分の１のお母さんが男の裸見たさで来てますよ笑。」
「お母さん達ともやったんだな」
「やりましたよ〜。　もうバンバンやった。やっぱその奥さんが別の奥さん紹介してくれたり、またその人が別のって感じで」

　・・・芋吊る式か。。それにしてもこの男は亮一と同じ歳だぞ。。なんて男だ。。少し身震いをする夫。。

「でもそれじゃあ満足いかなくなってしまい。今度は黙々と泳ぐ３０代、４０代の奥さんにモーションかけていったんです。」
「君に見向きもしないお母さん達って事？」
「そうです。俺が泳いだ後、水着から先っぽだけ出して見せつけたり。。」
「そんな事して大丈夫なのか？」
「水泳じゃあ、たまにあるんですよ、、先っぽだけ出てしまう事。でもこれはデカイ奴じゃないと出来ない技。お母さん達もそれがちゃんと分ってる。」

　・・・そんなに飢えてるのか・・今の女達は・・

「そんな格好で今まで知らん顔してた奥さんの前を歩くんですよ。。もう一発ですね、それ見せたら。」
「どうなるんだ」
「俺と同じコース泳ぎ出すんです。また確かめたくなるみたいですね。」
「どう確かめさせるんだ。ずっと出してる訳にはいかないだろ、他の人もいるし。」
「簡単なんです。その人が平泳ぎで向こうから泳いでくる時、俺は休憩してるふりして待ってるんです、。それもその人がちょうど泳ぎ終わる付近にプールの壁に背を付けて。んで、タイミングみながらまた出すんですよ、、ベロっと先っぽだけ。段々と近付く度に俺の顔出したのが確認出来るって訳です。泳ぎ切ってもなかなか顔上げない。。やっと顔上げたと思ったら、もうトロ〜ンとしちゃって。もう100％ですね、その後は」
「プールの後はどう誘うんだ？」
「いや、向こうから言ってきますよ。お茶でもって」
「そ、そうかっ」
「水泳教えてほしいだの言ってるけど、そんなの思っちゃいないです。」
「そうか。・・でも今回の美津子もそう言ってきたんだろ？」
「そうですね。そうゆう意味では同じですね。プールで出会うお母さん達と。。でも一つ違うのはそれが俺の友達の母親だって事。今までなかったんで、それは。」
「・・でもそれが君を燃えさせたんだろ？」
「・・こんな事おじさんに言っちゃいけないかもしれないけど、、燃えましたね、、かなり燃えた。それに、、いつおじさん達が帰って来るか分らない状況も。おばさんとのセックスはホントすげぇ良かった。色んなものが重なって。。」
「これからも美津子とどうだ？」
「！　・・勿論いいですけど、、。おじさん、いいんですか？俺とおばさんがそんな事しちゃっても。」
「いいんだ。俺は今日その事伝えようと思っていたんだ。美津子は君とまたしたいと思ってる。。やはり相当感じたらしい。」
「でも何故おじさんはそんな関係を許してしまうんですか？」
　夫はこの前寝室で私に話した事を勇太にも説明した。
「そうですか。。じゃあ、俺、これからおばさんとバンバンやりますよ！　いいですよね？」
「あ、ああ。いいよ。。」
「やべぇ〜　なんか興奮して来た！　」体を仰け反らせながら脚を前にせり出す勇太
「！！」・・勇太の赤いジャージが棍棒でも入ってるかのごとく盛りあがっている。

「おじさん、俺とおばさんのセックス見たんですよね」
「あ、ああ。」
「どうでした？」
「そんなよくは見なかったけど。凄いと思ったよ、あれじゃ美津子もたまらんだろうなって」
「もっとよく見たいって思いますか？」
「ぇ！？　・・・・・」
「あったんですよ、前にも。結婚してる奥さんの家でしてた時に旦那さんが帰ってきちゃった事が」
「それでどうしたんだ」
「今日は遅いから大丈夫だって言ってたのに笑。やってる最中部屋の向こうでカサカサしてる音がしたんで、奥さん抱えこんだまま、ガっとドア開けてみたんです。そしたら旦那がアソコだしてオナニーしてた。旦那さん、ギャーッと奇声発しながら家の外飛び出していった。」
「それから？」
「やりましたよ、途中だったんで。後で何か旦那さんから言われるかなあって思ったけど、考えてみたら何も言えないですよね、自分の奥さんと他の男がやってる所みてオナニーしてた訳だから」
「・・・・」
「もし、おじさんがそうゆう願望あるのなら、OKですよ俺。、、、かなり燃える、、それ。」
　勇太の目がギラギラついてる。。そしてさらに股間を盛り上げ、中でビクンっと動いたのが分った。。
「・・いや、俺は見たいとは思わない。」
「そうですか。　でも不思議っすねー。おじさんとこんな話ししてるなんて信じられないですよ。」
「そうだな。でも」
「亮一には内緒ですよね。分ってますよ。。」
「もう今日はいいよ。有難う来てくれて。」
「こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいですよ。さーて、今日はこれから抜いてきます。」「ん？！」
「さっき話した先生とです。ここ来るまで先生のマンションでやってたんですけど、時間来ちゃったから。。まだイッてないんで俺」
「でもさっき説教されてたって、、」
「俺が説教してたんですよ。何度もイかせながら。」
　屈託のない勇太の笑顔が夫をさらに不気味にさせた。。

　勇太を先に帰し、一人喫茶店に残った。
「ほんとにこれでよかったのか・・」夫は少し後悔してた。
　今後二人は家ではなく隣街のホテルで会い、あの行為をする事になる。それに勇太は相当なヤツだ。
　もう"遊び人"とかそんな域じゃない。自分の持ってるモノ全てを武器に女達を虜にしてしまう。。夫はふと思った、、でも勇太がやってる事はそれまで女の方がしていた事ではないか？　乳を強調しセクシーなお尻を見せびらかして男を引き寄せる。。今の時代はその逆なのか？。。　勇太からは、「いい女だから」等の女に対する性的欲求が殆ど聞かれなかった。そんなのより「してはいけない危険な火遊び」を完璧楽しんでいるのである。そんな奴にこの話を持ちかけてしまった。。
　ただ勇太が言っていた二人のセックスを見たいって気持ちはかなりあった。あの時は足元だけで詳しく見ていない。二人の結合部分、体位、あえぐ表情・・出来ればもっとよく。。
　ホントはそれが一番したかった事なのではないか・・。夫は何度も自分に問い掛けてみた。
「よし。」
　夫は汚れたテーブルの上にある伝票を手に持ち、会計へと向かった。

　夫が戻ってきた。勇太と話したはずでである。
「おかえりなさい」
「子供たちは？」
「いるわ。」
「おかえりなさい、パパ！」真理子が玄関に来た。
　夫はかなり疲れた様子だ。勇太との話で何かあったのか。。食事を出しお風呂の準備をして・・普段と何も変わらない家での仕事をこなしていく。でも私は気になってしょうがない。
「あなた、今日は・・どうだった？」
「それは子供達が寝てから話す。」小声で言う夫。。
　深夜１時、亮一たちが寝たのを確認し、私と夫はリビングへ降りた。
「勇太はあっさりOKしたよ、お前とやる事。」
「・・・・そう。」
「あの守り事も話した。それも承諾済みだ。」
「・・・・」
「今度の土曜だ。もう日にちも決めてしまった」
「えっ・・」
「駅近くのシティホテルで。場所は勇太に教えた。夜８時に行くって。ホテル代は渡してある。お前は８時半頃着くように行くんだ。」
「何もそんなすぐでなくても・・」
「まあそうだが。ただ向こうの都合もあるしな。」
「こんな事して・・いいのかしら・・私・・今なら・・」
「いいんだ。ただ一番最初は俺がホテルまで連れて行くよ。向こうがほんとに一人でくるか確認したら帰る。」
「他に男がくるかもしれないの？！勇太はそんな事する人だったの？」
「いや、それは思わなかったが。分からんだろ、普通じゃない事持ちかけたんだ。何してもおかしくない。」
「そうだけど。。」
「さあ、もう寝よう。子供たちに聞かれたら。。」
「わかったわ」私は不安と罪悪感で足を震わせながら階段をあがった。

　でも、、一番奥に潜ませている思い、、「また、アレを・・味わえる、、、」

　台風が近付く。夏の終わりを告げる大型の台風。私の海は大きくうねりながら迫り来る。そして荒れた波が膣壁で激しく砕け散っていった。。