姉妹花

第6章

　夜の８時。金曜のこの時間の六本木は、不況とは無縁のように週末を楽しむ人で混雑していた。ビストロ「DEUX・SOEUR」の片隅に常連の３人組の姿があった。２人の美人姉妹と、連れの男だった。

　男は姉の彼氏のようだが、妹も潤んだ妖しく目で男の視線に答えているようにも見える。

　一見すると、カップルとその妹の‘仲良し３人組’なのだが、良く見ると、２人の女とも、妖しく上気した顔で男の視線に応えているのが、何か不自然な印象を与えなくも無かった。

＊

　冴子は、洋平の言いつけ通り、ショーツを履かずに今日一日を過ごしてしまった。オフィスの皆が自分のスカートの臀部を見ているような錯覚に陥り、その度に内腿を擦り合わせたくなるような衝動に駆られた。

（見ないで・・・）

　そんな事を思う都度、トイレに駆け込むと、やはり太ももに愛蜜が垂れており、ティッシュで拭いた。夜に向けて、自分の身体が少しずつ高ぶっているのを感じた。

（今日はこの姿をあの人に見られちゃうのかな？・・・・どうしよう・・・）

　自分のデスクに座ってパソコンを前にしながら、洋平のことをボォ思い出している時、部下の男性社員が、近寄ってきた。

「冴子さん、今日締め切りの資料できました。チェックして頂けますか？」

「・・え？」

「資料できました。チェックして頂けますか？」

「あ、あぁ、ごめんなさい。わかったわ、そこに置いておいて頂戴。」

「冴子さん、具合でも悪いんですか？少し顔が赤いようだし・・・」

「な、なんでも無いわよ。それよりも昨日頼んだ資料も早めに頼むわよ。」

（やだ・・お願い・・早くむこうへ行って頂戴・・・お汁が出ちゃってるのが・・ばれちゃいそうで・・）

　入社3年目の部下の若い男の子に、ショーツを履いていない事や、秘部を湿らせている事を見透かされたような気がして、強い口調で返答をして取り繕ったものの、暫くするとすぐに、ショーツを履いていない背徳感と夜への予感で、身を震わせてしまうのだった。

　仕事は山積みで、いつもはテキパキと仕事を片付ける冴子が、今日一日は頭の中にボンヤリと霧がかかったように集中することができなかった。夜が近づくに従って身体と心にジワジワ押し寄せる淫靡な期待感から逃れるように、何度も何度も深呼吸をしてしまう。

（ふぅぅ・・・なんで、あの人の言うことを聞いちゃってるんだろ・・あ・・また、溢れてきてる、やだぁ・・・）

＊

　その夜、ドキドキとしながら２人より少し遅れて店に到着した冴子は、店内に入り洋平の姿を確認して視線が絡みあった瞬間、秘部がキュンと収縮し、花芯から身体の中央にビビっと電気が走り、事もあろうか、軽く頂きに達してしまったのだった。

（ひゃん！・・やだっ！ん、ん、ん・・）

　むき出しのクリトリスをザラザラの乾いた舌で突然ベロリと舐め上げられたような、そんな錯覚を覚え、一瞬立ちすくみ、身体を震わせてしまったのだ。

（はぁはぁ・・目が合っただけで・・こんな事・・あるの？・・でも誰にもばれてない・・大丈夫・・）

　ことも在ろうか公衆の面前で、男と目が遭っただけで、小さく登り詰めてしまうなんて、自分の身体ながら信じられなかった。

　３人が揃い、いつもの通り食事しながら、各々が他愛も無い事を話してはいるものの、冴子の目線は隣に座る洋平の股間を誰にも気づかれないように盗み見ていた。

（あれが、動画の・・・オチンチン・・・）

＊

　洋平は、言いつけ通り冴子がショーツを履いて来なかったことを、目が合った瞬間確信していた。冴子が軽く達していたことにも気づいていた。

（ふふ・・やはり脱いできたな・・上気した顔をして・・・いい女だ・・）

　このまま強引に、今日にでもセックスまで持ち込み、自分のペニスで蹂躙する事も可能なのは解ってはいたが、ゆっくりとゆっくり冴子の仮面を剥いでゆき、彼女の女としての素質を開花させるほうが、楽しみが多いことはわかっていた。

（少しずつ育てれば良い・・・）そんな事を想いながら、ビールを飲み食事を口に運んだ。

＊

　一通り食事を終え、ワインを２本ほどあけたところで、姉妹の好きなカラオケ店に行く事になった。

「やったー、この前はカラオケ行けなかったもんねー・・・洋平さん、今日はまだまだ付き合ってもらうんだから、ね、冴ちゃん？」

　ワインを飲んだことで少し酔っ払った理恵子は、洋平に少し甘えるような素振りを見せた。

　姉のその様子を見た冴子は、チクンっと小さな嫉妬心を感じた。（今日も、お姉ちゃん・・・洋平さんに命令されて・・ショーツを穿いていないのかしら・・でも・・・私だって、私だって・・）

「冴チャン？いつもより静かだけど大丈夫？」

「へ、平気よ。じゃぁ六本木交差点のところのカラオケ屋にいこうよ！」

　3人で行くとはいえ、カラオケボックスという密室に行くことで、何かが起こるかもというしっとりとした期待を冴子は感じていた。

＊

　部屋に入り、皆が数曲ずつ歌ったところで、冴子がそっとトイレに席を立った。溢れてきてしまった愛液を拭くためだった。黒のスカートだから目立たないが、既にじんわりとシミもできていた。

（あぁ・・また、溢れてきちゃった・・・）

　冴子が席を立ち、部屋の中が理恵子と洋平だけになると、

「理恵子、オマ○コ気持ち良くなりたいか？」

　その言葉を聴き、理恵子は急にトロンとした淫靡な目つきになる。

「え、でも冴子が戻ってきちゃう・・・」

「ここでじゃない。新しいバイブを買ったんだ、ほら。それを持って今からトイレでオナニーして気をやってこい。」

「え。そんな・・・はい・・・・でも人が来たら・・・」

「嬉しいくせに何言ってんだ。早く行け。俺がメールで帰ってこいと言うまで、何度でも気をやっていいぞ。」

「・・・はい・・・ありがとうございます・・」

　顔を赤らめ、理恵子は洋平に渡されたバイブをそっとかばんに忍ばせて、トイレに立った。

　数十秒すると冴子が戻ってきた。

「あれ？理恵子は？」

「トイレかな・・・」

「そう・・・」

　冴子は急に落ち着かない気持ちになった。二人きりになった事で何かが起こるかもという期待感と不安感で胸の鼓動が早鐘を打ち始めた。暫く沈黙の後、突然洋平が口を開いた。

「冴子、見せてみろ・・・」

「え？」

　鼓動が更に高まる。

「分っているだろ・・・。」

　洋平にそう命令されるかもしれないと、今日一日中想像はしていたが、実際に現実になると、喉がカラカラになり声が出ない。よく通る美声でカラオケを歌っていたさっきまでの冴子はもうどこにもいない。

「あ、あの・・・」かすれている声が消え入りそうだ。

「自分で、見せるんだ・・・ここで・・・」低い声が響く。

「・・・え・・こんなところで・無理・・人も通るし、理恵子もすぐに帰ってきちゃぅ・・・・」

「見せたく無いのか？」

「・・・そ、そんなぁ・・・だって・・・こんなところで・・・無理・・です・・・」

「見せたく無いんだな・・？」

　洋平の低い声が冴子の脳に響いた。決して脅すような口調では無い。抑揚は無いが、何か言う事を聞かなくてはならないような声なのだ。

「もう一度聞くぞ、冴子。これが最後だぞ・・・見せたく無いんだな？」

　冴子を射すくめるように、洋平は見つめる。

「・・・・・・・・・・・・たいです・・・」

「ん？」

「・・・・み、見せたいです・・・でも・・・」冴子は小さな声をやっと絞りだす。

「俺は決して無理強いはしない、冴子。自分の心によーく聞いてみろ、もう一度・・」

「・・・・・・・・・・・・見せたい・・です・・・」

　恥じらいながらも、冴子は、ついにはっきりと口にした。

「よし・・良い子だ。・・・・じゃあ、そこで立ってみろ。そうだ。少しずつスカートをあげるんだ。」

　操られるように言われるままに、恥ずかしさから斜め下に視線を落としながらも、冴子は黒いタイトスカートをソロソロと上げていった。ガーター式ストッキングを見える。太腿の付け根手前までのストッキングだ。

「あぁ・・は、恥ずかしい・・」

　太腿までスカートが上がったとき、突然、洋平が冴子に声を掛ける。

「待て。そこで止めろ。よし、そうだ・・・・いいか？冴子。それ以上挙げれば、お前の厭らしい部分が本当に見えてしまうぞ。いいんだな？」

「・・・はい・・・」

「俺に見て欲しいんだな？」

「はい・・・」

「じゃぁお願いしてみろ。俺に見て欲しいと」

「！！！」

（自分で見せろと命令しておいて、私にお願いさせるなんて・・非道い・・なんて人・・・）

　暫しの沈黙の後、冴子は勇気を振り絞った

「・・・・・・見て・・頂けますか？・・・」

　洋平は、それでは駄目だと言わんばかりに首を横に振る

「・・冴子の・・恥ずかしいところを・・見てくださいますか？」

「駄目だ・・」

「そんなぁ・・・なんて言えばいいんですか・・？」もう泣き出しそうだ。

「自分で考えろ、自分の心の中で思うありのままを言えばいいんだ。」

　冴子の脳裏に、ご主人様という言葉が湧き上がって来た。

「・・冴子の・・恥ずかしいあそこを見てください・・ご主人様・・」

　口にした途端、冴子は秘部がきゅっと締まり、危うく腰が砕けそうになった。

（‘ご主人様’なんて言ってしまうなんて・・・）

　洋平は頷き

「良い子だ・・・見せてみろ」

「・・・はい」

　ついに冴子は腰までスカートをたくし上げた。洋平の視線が突き刺さっているのが痛いほどわかる。

　冴子の鮮やかな漆黒の長い髪とは対照的に、恥毛は、薄く申し訳なさそうに、恥丘を覆っている。花芯からは、大量の愛液が垂れてキラキラと太腿と太腿の間で糸を引いているのが、離れた洋平の目にも確認できた。

（やはりな・・・この女は本物だ・・・）

「冴子、太腿に垂れているのはなんだ？・・」

「いやぁ・・知りません・・・」

　ついさっきトイレに拭いてきたのに、もう溢れていた。

「ふ、まぁいい・・・こっちに来てみろ。」

　女は期待と不安でモジモジしながら、男に近づく。

「すごいじゃないか・・・一日中、垂れ流してたんだな。冴子」

　そう言うと、触れることなくまじまじと冴子の恥部を凝視した。

（あぁ・・もういいでしょ・・恥かしい・・そんな見ないで・・・もう許して・・）

　そんな気持ちを知ってか知らずか、洋平は触ることも無く、凝視し続けた。

　冴子は、秘部に注がれる視線を感じ、愛蜜が秘芯から溢れてくるのを止める事もできず、無意識に内腿がモゾモゾと動いてしまう。

「もういいぞ、冴子。スカートを下ろして座れ・・・。今日も、服従できたな・・いい子だ・・」

　やっと、洋平からの許しが出た。冴子は今にも理恵子が帰って来たり、通りすがりの誰かが部屋を覗くのではとハラハラしていたため、安堵してホっと溜息を吐いた。一方で、洋平に女の敏感な部分を触れられるかもしれないという期待感も持っていたため拍子抜けしたような、ガッカリとした気持ちになっている自分に驚いていた。

（・・・・・わたし・・今日も・・・服従しちゃった・・）

　ガチャとドアが開く音がして、冴子が席に着いてまもなく理恵子が帰ってきた。洋平は、「用事」が済んだので、メールで呼び戻したのだった。理恵子の顔は上気して、足元がふらついているようだった。洋平に渡されたバイブで何度も昇りつめたのだろう。理恵子が部屋に入った途端、女の陰部から発散する独特の淫靡な匂いが部屋に充満した。

　その匂いに気づいた洋平は、一人、笑いを浮かべた。

（姉妹の匂いか・・・・二人とも・・本物だ・・・）

　その後、数曲ずつそれぞれの歌を歌い、何事もなくカラオケを楽しんだ。１時間後にはカラオケボックスを出た３人の姿が六本木通りにあった。洋平は明日の早朝から出社する仕事があるから今日はこれで解散だと、姉妹をタクシーにそれぞれ押し込め、自分もタクシーを拾い帰路に着いた。

　理恵子も冴子も帰りのタクシーの中で、今日、自分自身に起った事を思い返して愉悦感に浸る一方で、全く同じ事を考えていた。

『もっと・・もっと・・欲しかったな・・・』

あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。

2009.10.10掲載

［7］／［5］