２．罠

　稔は、朝の通勤電車の中で、自分の前の女性が、時々自分にお尻をこすりつけてきているのではないかと疑っていた。最初は、みょうにごそごそ動く女だと不快だったのだが、その動きが変だった。稔にわざとお尻をこすりつけてきているとしか思えないような動きだった。
（この女、触ってほしいのか？）
　試しに、稔は、そっと手の甲を彼女の丸くて柔らかいお尻に当ててみた。彼女は、さらにきつくお尻を稔に当ててきた。
（こりゃいいや）
　稔も若い頃は、よく電車の中で痴漢をしたものだが、近頃は、痴漢の取り締まりも強化されているようだし、女も平気で大声を出すようになってきているので、逆に気を遣って、なるべく手があたらないように鞄を胸に抱き、片手はつり革を握るようにしていたのだが、今日は違う。女のほうが望んでいるのだ。
　お尻をピッタリと押し付けられて、稔のものはすでに硬く大きくなっていた。稔は、自分の固くなったペニスと押し付けられた尻肉の間に手をさし入れた。今度は手のひら側を押し当てた。今度は大胆に女のお尻を、撫でまわし、ときより、ぎゅっとつかんだ。それでも女は普通に立っていた。
（触られたい女っていうのもいるんだねぇ）
　さらに稔は大胆に手を動かした。女の左右の尻肉の谷間に差し入れ、股間にまで指を伸ばした。それでも女が抵抗しないのを見て、稔はスカートをたくし上げ、手を差し入れた。女は、少し足を開いた。
（足を開いたぞ、この女。顔を見てみたいもんだ）
　女が足を広げたので、稔の手は容易に股間に到達した。ストッキングははいていない。生だ。稔の行為はどんどんエスカレートした。太腿を撫で上げるように這いあがり、女の秘部の上をゆっくりと上下させ、ショーツをずらし、脇から指を入れ、肉襞を掻き広げ、肉壺に指をゆっくり沈めていった。
（おお・・・お、濡れてる、濡れてる。すけべ女め）
　稔は、スカートをさらにたくしあげ、ビキニショーツ太ももまでおろした。
（ははは、どうだ、すけべ女。けつが丸見えだ。うれしいか・・・・）
　電車が駅に入り、停止する直前。
「何するの。痴漢！」
　女が急に振り返り、稔に向かって大声で言った。と、同時に横から背の高い男性が稔の腕をつかんだ。
「俺も見てたよ。さぁ、降りてもらおうか」
　長身の男は、扉が開くとすぐに、稔を電車から押し出した。

「美雪、ごくろうさん」
　一樹は、駅を出ると後ろを歩いていた美雪が横に並ぶのを待って声をかけた。
「上手だったでしょ」
「たいしたもんだ。涙出てたぞ」
「実際、けっこうきもかったからね」
「痴漢、いっちょ上がりだね」
「ちょっと、気の毒な気もするけど」
「そうだな。美雪がお尻擦りつけてきたら、俺も触る。まちがいなく触るなぁ」
「あれで、何もされなかったら、わたしだって自信なくすわ」
「まさか、痴漢！って叫ばれるとは思ってなかっただろうね、彼も。きょとんとしてたもの、あの時」
「で、どうするの？」
「彼の上司に報告する」
「クビになる？」
「ならないと思うよ。この程度じゃ・・・」
「えっ、せっかくやったのに・・・」
「これだけじゃクビにはならないけど、会社にはいづらくなるだろ」
「恥ずかしいわね、相当・・・」
「そういうこと。」
「ねぇ、一樹さん。このあいだの痴漢ビデオの話。もう決まったの？」
美雪は、一樹のところで請け負ったAVの話に話題を変えた。
「ああ、あれね、決まったよ。」
「誰がやるの？」
「仁美」
「ああ、このあいだ真垣さんが連れてきた子」
「そう、あの子。大勢にやられるからね。気の弱そうな子だと気の毒になるし、真理みたいだと楽しそうになっちゃうし、抵抗し続けるけど大声は出せないっていう微妙な感じ、彼女向いてると思って・・・」
「そうね。いいかも」
　美雪はうなずくと、一樹の腕をとって歩き出した。

３．操る

　弥生は、朝、一樹からの電話で稔が痴漢で捕まったことを知らされた。その後、身元確認の電話も警察から弥生の携帯に入ってきたが、身元を保証するつもりは無いと断り、会社の稔の上司、竹内に連絡した。
　午後になって竹内から電話が入った。稔のことで相談したいとのことで、弥生は昨日のホテルのスカイラウンジを指定した。
（おもいっきり、後悔させてあげる。なにもかも全部なくしなさい）
　弥生は、覚悟を決めて、バスルームへ向かった。

　弥生が、ホテルのスカイラウンジに着くと、竹内はすでに来ていた。弥生は、竹内のいる奥のテーブルに向かった。そこは、昨日弥生が、お尻を丸出しにしてオナニーした場所だった。

「すいませんね。昨日の今日なのに、また、呼び出して」
　竹内の弥生を見る目は、あきらかに昨日とは違っていた。昨日、竹内に渡した数枚のDVDの中に、弥生は稔に縛られてレイプされた自分の映像も入れてあった。
（見たんだ、あれを・・・）
　声をかけながら、視線はすぐに弥生の胸元に注がれた。薄いブルーのキャミソールは、乳房の形を際立たせ、生地越しにはっきりと乳首を見て取れた。竹内の目がそこで止まった。

「いいえ。かまいません。こちらこそ、ご迷惑をおかけして・・・」
　そう言って、弥生が座ろうとすると、竹内の視線は、薄いベージュのミニのタイトスカートに移った。弥生は深く座って、少しだけお尻を前にずらした。太ももの付け根まで晒されている。もちろん、ノーパンだった。竹内が少し前に乗り出すのがわかった。
　昨日と打って変わった竹内の露骨な視線に弥生は少し失望したが、事はその方が進めやすい。気を取り直してあらためて竹内に言った。
「今日は、ご迷惑をおかけしました。」
「いや、正直な話、驚いたよ。まさか、痴漢とは・・・・」
「そういう人なんですよ。それで、何か処分とかあるんでしょうか？」
「うん。それなんだけどねぇ」
　竹内は、少し、間を置いて、弥生の分のコーヒーをオーダーした。

「痴漢だけならねぇ・・・・大した処分にはならないと思うんだが・・・・」
「他に何か？」
「いや、昨日預かったDVD、見させてもらったんだが・・・・」
「私のもご覧になりました？」
「えっ・・・まぁ、自分のがあるなら、そう言っておいてくれればよかったのに・・・。」
「驚かれました？」
「ええ。びっくりしましたよ。それから、他のものの中にうちのもう辞めた女子社員も入ってました。この子は結婚して子供もいます。」
「それも、処分の対象ですか？」
「いや、まだ、私しか見ていないので・・・・ただ、痴漢の件を報告する時に、彼のことも聞かれますから、直属の上司として、このことを報告するべきかどうか迷ってるんです。」
「処分は、竹内さんが決めるんじゃないんですね」
「私が決めるわけじゃないですが、実際は、私の彼に対する評価で決まるでしょうね。私が、彼は有能で必要な人材だといえば処分は軽いですが、逆の評価をすれば、くびってことはないでしょうが・・・それに近い処分になることもあると思います。」
「そうですか・・・迷ってるっておっしゃてましたけど・・・」
「ええ。それで、弥生さんに来てもらったんですけど・・・・。昨日、離婚されるって言ってましたよね。」
「はい、そのつもりですが・・・」
「憎んでますか、彼を？」
「はい。」
「くびになってもいいって思ってますか？」
　竹内は、少し、身を乗り出した。
　そこに注文したコーヒーが運ばれてきた。
「ありがとう」
　弥生は、ウエイトレスの知美ににこっと笑って礼を言った。
「ごゆっくりどうぞ」
　知美も笑顔を返した。

　知美が戻っていくのを待って竹内は再び、弥生にきいた
「くびのほうがいいですか？」
「そうしてくださいますか。そうなれば、少しは気が晴れます」
　弥生は、そう言うと、さらに前にお尻をずらし、足を開いて見せた。竹内から弥生の股間の黒い茂みが丸見えになった。竹内の視線は、弥生の股間に釘付けになった。
「見たいですか？」
　弥生の言葉に、はっとした竹内は、思わず、顔を伏せた。
「弥生さん、こんなところで・・・・よしなさい」
　うわずった声で竹内は弥生の行為を咎めた。
「こんなところで、見られるのが好きなんです。見てくださいますか？」
　弥生はそう言うと、お尻を少し浮かし、右足を椅子の上に上げ、方膝立ちの状態になった。先ほどよりもさらにくっきりと股間が晒された。弥生は、そこに左手を添え、指で肉襞を左右に広げて見せた。ヘアーの中から驚くほどくっきりと襞の内側のピンク色が浮かび上がった。
「弥生さん」
　竹内は、周囲を見回し、他の客が気づいていないことを確認して、小声で弥生に呼びかけたが、弥生は聞こえないのかふりなのか、竹内の呼びかけを無視して、とうとうそこを指で擦り始めた。弥生の大胆な行動に竹内は戸惑った。他の人に気づかれたらと思うと気が気ではなかった。
「弥生さん・・・弥生さん」
　とうとう、竹内は立ち、弥生の腕を取った。
「出よう」
　そう言うと、竹内は弥生の腕をひっぱって立たせ、そのまま弥生をレジまで引っ張っていって、急いで支払いを済ませた。
「ありがとうございました。」
　心配そうに見守る知美に、腕を引かれながら弥生はにっこり微笑んだ。

　エレベーターを待ちながら、
「すいません。痛かったですか？」
　弥生の腕を離して竹内は謝った。
「いいえ・・・・・軽蔑してます？」
「いいえ。ただ、あなたは良くてもわたしは・・・気が動転してしまって・・・」
「驚きました？」
「ええ。正直・・・・」
「わたし、今度、夜の仕事するんです。また、連絡させてもらっていいですか？」
「夜の仕事・・・・？いいですよ。いつでも、連絡してください」
　竹内の手が、弥生のお尻に伸びた。