３章 高層ホテルでの情事

「あまり見ないで……」
　めぐみは恥ずかしさから乳房を乙女が恥らうように隠した。普通なら何の恥じらいもなくできてしまうのだが、夏彦という相手が男前で話しが分かる男というせいだろうか、妙に男としての恋愛感情を意識してしまっている。
「見てみたい」
「いや」
　強引にめぐみの手を取ると、手を横へずらす。そこには熟れた桃のような乳房が姿を現す。確かに乳首はサーモンピンクではないし、上向きに尖ってもいない。しかし、手入れはきちんとしてあるので少し垂れた中に色気というものが健在している。
「どうして隠すのかぼくには分からないな」
「おばさんの乳房なんて見てどうするのよ」
「なぜ、そう卑下する？その自信のなさが夫に捨てられる一因になったとは思わないかい」
　言い返すことができなかった。今まで確かに卑下してきたし、自分に自信を持ったこともない。夫は一度も誉めてくれなかった。誉めることはせずに行為だけはしょっちゅう求め、多少気分が悪いときでも夫の要求に答えた。今こうやって夏彦といると自信が湧いてくる。恥ずかしいという感情も夏彦に醜い自分を見せていたからかもしれない。
　優しく舐められ、乳首を舌でチロチロ転がされる。
「あっ、ああっ、いや……」
「気持ちいいかい」
「うん」
　今までに感じたことがないほど甘美な味わいを得て、めぐみの下着は何の施しもされてないのにすでにぐっしょりと湿って染みを浮き出させている。
「めぐみ、どうしてこんなに……」
「夏彦、ああ、夏彦」
　夏彦に恥ずかしい部分を指摘され、恥ずかしさで我慢ができなくなり夏彦の頭をギュッと抱きしめた。そんなめぐみを抱えあげ、ベッドに押し倒すと横になった。
「そのままでいて、夏彦」
　めぐみはそういうと着衣を脱がせる。ブリーフ一枚になった夏彦の盛り上がった部分を手でこねこねと愛撫し、前をずらすと半立ちの男根がビクンと顔を出した。
　たまらずそれを口に頬張り、一生懸命舐める。
「気持ちいいよ、めぐみ」
「あん、嬉しいわ、そんなこと言ってもらったことないの」
「額にかかる髪がセクシーだ」
　夏彦の切れ長の眉毛、潤った目を見ているとただ一生懸命舐めていたかった。ギリシャの彫刻のように均整の取れた身体もまた魅力的で、夫と出会う前に彼と出会っていたら間違いなく彼を愛したに違いないと確信を持った。
「ねえ、うつ伏せになってお尻を突き出して」
「さすがに恥ずかしいな、お尻を舐めてくれるのかい」
「初めてよ、そういう気分になったの」
　夏彦は言うままにうつ伏せになり、お尻を突き出す。キュッと引き締まった筋肉に可憐なほど不釣合いなかわいい肛門にめぐみは舌を這わせる。
　ホテルについてすぐに２人ともシャワーを浴びていたので別段に汚くはなかった。若干苦い味がしたあと、ひくつく肛門が舌をくすぐる。夏彦もはじめて味わう感覚に酔っていた。今まで幾多の女性といろいろなプレイを続けてきたが、肛門を舐められたことは初めてだった。
「ああ、気持ちよかった。めぐみ、次は君の方を舐めさせてくれないか」
「ダメよ、あたしはいいの」
「そうはいかないね、快楽は平等に分配しないと」
　そういうとめぐみにお尻を突き出させる形にし、パンティをペロンと剥いて下に引き下げた。めぐみのお尻は染みもなくとても綺麗だったが、唯一いただけないものがあった。痔が広がっていた。子どもを産んだときから発症し、いろいろ治そうと病院へ行ったりはしたけれども中途半端になってしまった。それほどひどいものではなかったが、直腸の粘膜が不恰好に見えてしまっていた。
　嫌われる、めぐみの第一感はそれだった。せっかくいいムードで来たものを自分の痔でぶち壊しにしてしまう。それはあまりにも居たたまれなく、それゆえに夏彦には見せたくないものだった。
　しかし、夏彦は以外な行動に出た。痔の部分に優しく舌を這わせると傷付けないように舌先で愛撫した。
「ダメよ。汚いわ、痛いからどうしてもきつく拭けなくて……だから……」
「うんちがついていると言いたいんだろう。それは仕方ないさ、でもこれで少しでも気持ちよくなってくれるんなら汚いなんてちっぽけなことさ。それより、気持ちいいかい？」
　絶妙な舌先が痔の部分を包み込むように優しく撫でると、全身に快感が行き渡り、あそこからはすでに愛液が糸を引いて陰毛に絡みついている。
「うん、いいよ、すごくいい……」
　めぐみは泣いていた。快感と感動が複雑に心に絡み合い、太腿を震わせて愛液を垂れ流しながら、背中は嗚咽したときのように定期的に波打った。
「いい、いくっ、いくううっ」
　舌先が穴をチクチクノックする感覚に堪え切れず、簡単に気をやってしまった。
　気がつくと夏彦が優しく髪を撫でている。そんな夏彦の顔を正面から見ることが出来なかった。涙で濡れた顔をどうしても彼には見せたくなかった。

「欲しいよ、めぐみ」
　夏彦は耳元で囁くと、めぐみのパンティを足から抜き取り、足を両側に開こうとする。
「待って、夏彦、あたしに任せて」
　めぐみは夏彦を押し倒すと上に乗った。そして、反り返る男根を掴むと濡れている秘壷にあてがい、ゆっくり腰を沈めてゆく。
「ああ、いい、夏彦」
「ぼくもだよ」
　グチュグチュと唾を押しつぶしたような音を立てながら根元まで収まると、めぐみははあっ、と一息ついて目を上目使いにトロンとさせた。
「夏彦、気持ちいい？あたしが気持ちよくさせてあげるからね、気持ちよく」
　そう言うと腰を前後にグラインドしだす。うねるように恥骨と恥骨を叩き付け合って、カリ先がＧスポットを刺激するようにポイントを決めた。
「すごくいいよ、めぐみ、イキそうだよ」
「いいわ、夏彦、感じてくれて……、あたしもすごく気持ちいい……」
　めぐみのグラインドするスピードが増した。恥骨と恥骨がぶつかり合い、そのあとにニュルッという音をたてながら、お互いの快感スポットを刺激し合う。２人の息はあがり、手を重ねながら本能のままに身を委ねる。
「もうだめだ、イクよ」
「いい、イって、イって」
「もう、ほんとにダメだ」
「ああっ」
　めぐみは少し腰を浮かせ、結合を解くと爆発寸前の男根を口に咥える。少しの間があって熱いものが口の中にビュッという音をたて広がった。めぐみは一滴残らず飲み干し、まだ余韻でピクピク波打っている男根を舌先で優しく愛撫した。