SCENE 33

　恵美子が一人で慰めている頃、卓也は夕食の準備をしている妙子と話をしていた。
「妙子おばさん。誤解されないうちに言っておくけど」
「なあに？」
「安藤と水族館行くことになっちゃった」
「いいじゃない。デートは楽しむものよ」
「あいつ、妙に鋭くってさ。俺のことヘンだって言うもんだから、ごまかしてるうちに、そういう流れになっちゃってさ」
「で、卓也君は何が言いたいのかな？」
「ちぇ‥‥」
　からかわれて卓也がふくれる。
（あのときは、あんなに乱れるくせに‥‥）
　そう思いながらも、年の差は超えられない。普段の会話ではまったく敵わないのだ。
「だって、俺は秘密を守ろうとして‥‥」
「安藤さん、可愛くていい娘じゃない。卓也君のガールフレンドにはぴったりだと思うけどなあ」
「俺は妙子おばさんの方がいい‥‥」
　卓也が本格的にふくれた。
　妙子が困ったような顔になる。
「ごめんね‥‥」
　しばらくしてから妙子が謝った。
「でも‥‥」
「えっ？」
「妙子おばさんの気持ちも分かる気がする‥‥」
「どういうこと？」
「早く乳離れしなきゃならないってこと‥‥」
「卓也君‥‥」
　妙子はちょっと感動していた。
「だけど、当分は無理かも」
　見ればニヤニヤ笑っている。
「もう‥‥ばか‥‥」
　卓也は思っていたよりずっと大人なのだ。しかし、ときおり甘えてくる。やはり難しい年頃なのだと妙子は思った。

SCENE 34

「ねえ、妙子おばさん。あの薬飲まなきゃダメ？」
　夕食をすますと卓也が言った。
「どうして？」
「あれ飲むと頭がグラグラしちゃって、あまりいい気分じゃないんだ」
「よく眠れるようにってお医者さんが処方してくれたのよ。まだ本調子じゃないんだから、ちゃんと睡眠は取らなきゃ。寝る前に飲めばいいのよ」
「やだなぁ」
「言うこと聞いて。卓也君のためなんだから」
「じゃ、交換条件」
「なに？」
「あのさ。妙子おばさんと一緒に寝たいんだ。だって、叔父さんが帰ってきたら、そんなことできないし‥‥」
「う〜ん‥‥どうしようかなぁ‥‥」
「頼むよ」
　卓也はおどけた様子で手を合わせた。
「約束守れる？」
「どんな？」
「今晩はエッチはなし。身体に悪いから」
「だって、あの薬飲んだらそんなことできないよ」
「それもそうね」
「じゃあ、いいね」
　卓也の顔が輝いた。
　その顔を見たら、もう断ることができなかった。

SCENE 35

　十時過ぎ、卓也に薬を飲ませると、眠るまで隣にいてくれと頼まれた。
　卓也の中には大人と子供が共存しているのだと思った。
　妙子は知っている。ときおり、卓也が寂しげな表情になり黙り込んでしまうのを。母親を亡くした傷が癒えてないのだ。
「いいわよ」
　そんな傷を少しでも癒してあげたいと思った。
「ありがとう‥‥」
　添い寝してあげると、卓也はそう言って眠りに落ちた。
　その寝顔を見ながら、妙子は卓也の髪を撫でた。
　母でもあり、女でもある自分の不思議な立場に思いを馳せた。今は卓也が愛おしい。それ以上は考えない方がいいのだと思った。

SCENE 36

　空が白みはじめる頃、卓也は目を覚ました。
　隣を見ると、約束通り妙子が寝ている。
　さすがにTシャツの下にスエットパンツをはいている。ちょっと残念だったが、もう覗き見なんかしなくても妙子の身体を見ることができる。そう思うと卓也はうれしかった。昨日にも増して妙子のことが大切な宝物のように感じられるのだ。
　卓也は妙子を起こさないように、そっとトイレへ行く。用を足しても屹立したものはそのままだった。
　卓也はベッドへ戻り、横を向いて寝ている妙子の後ろに寄り添う。髪からいい香りが漂ってくる。そっと手を伸ばし妙子を優しく抱きしめると屹立をヒップにあてがう。
　でも、その先に進めなかった。
　着ているものを脱がせて強引に思いを遂げることもできるだろう。でも、そうして妙子を怒らせてしまったら、もう一緒に寝ることができなくなるかもしれない。せめて、静雄が帰るまではこうして妙子に甘えていたかった。
　でも何もせずにはいられない。卓也は柔らかい肌の感触を楽しみながら、少し力を込めて妙子を抱き寄せ、屹立を強く押しつけた。つい腰が動いてしまう。
　その動きで妙子も目を覚ました。
　また、硬くて熱いものが押しつけられている。あの夜と同じ感覚。条件反射的に妖しい気分になってしまう。
「卓也君‥‥起きて‥‥起きてちょうだい‥‥」
　そう言うのがやっとだった。
（あっ、まだ俺が寝てると思ってるんだ。ちょうどいいや）
　卓也は悪戯心を起こして、抱き寄せている手でバストをつかみ、うなじへ唇を押しつけた。わざと耳へ息がかかるようにする。
　妙子の身体がピクンと震える。
「‥‥だめ‥‥卓也君‥‥起きてってば‥‥」
　声の具合から感じているのが分かる。
「う‥‥う〜ん‥‥な、なに‥‥」
　卓也は起きる振りをする。
「‥‥卓也君、お願い‥‥離して‥‥」
「あっ、妙子おばさん。夢じゃなかったんだ。ちゃんと隣にいてくれたんだ」
　卓也はそう言って妙子を思いきり抱きしめる。
「ああっ‥‥こんな朝からだめよ‥‥」
　妙子の声は喘ぎに近い。
「だって、うれしいんだもん」
　卓也が耳元でささやくと妙子がガクガクと震えた。
「ありがとう。一緒に寝てくれて」
　唇を耳朶に触れさせながら言う。
「ああっ‥‥だめぇ‥‥」
　その悶え方から完全にスイッチが入ったと判断した卓也は身体の位置を変え、妙子を仰向けにさせた。そして、ゆっくりと唇を重ねた。
　昨日のキスが忘れられなかったのだ。粘膜が絡み合うネットリとした感触に心躍らせながら卓也は舌を差し入れる。昨日、されたように歯茎をなぞると妙子が応えてきた。
　卓也は息が苦しくなるまで妙子をむさぼる。
「キスって、こんなに気持ちよかったんだね」
　事実、頭の後ろが痺れるような快感があった。
　妙子の方はそれどころじゃなかった。
「‥‥もう‥‥こんなにしちゃって‥‥ひどい‥‥」
　一刻も早く卓也のものが欲しい状態になってしまったのだ。
「妙子おばさん‥‥いい？」
　また耳元でささやかれた。ジュンと溢れてしまうのを感じる。
　かろうじて妙子はうなずく。
　本当は「抱いて！」と懇願したいほどなのだ。
　卓也は立ち上がりパジャマを脱ぎだした。
（早く来て）
　そう言いたかった。
　全裸になった卓也は妙子のスエットパンツとショーツを一緒に脱がせはじめる。
　妙子は腰を浮かして脱げやすいようにした。こんどはTシャツに手がかかる。どうやら卓也は全裸にこだわっているようだ。本当は自分から脱いであげたいくらいだが、さすがにためらわれた。
「すごい‥‥きれいだ‥‥」
　一糸まとわぬ姿の妙子を見て卓也がつぶやく。
「昨日は夢中だったけど、ほんとはこうやってじっくり見たかったんだ。いいよね？」
　バストから腰にかけてのラインを指でなぞりながら卓也が言う。
「いいわよ。見せてあげる。卓也君のしたいようにして‥‥」
　恥ずかしいが卓也に見せてあげたかった。
「ほんと‥‥」
　卓也は立ち上がると部屋の電気をつけた。
　シーリングライトはベッドの真上にある。妙子の裸身が浮かび上がる。横になっていても高度を失わないバスト、なめらかなウエストは呼吸で上下している。その下のヘアーは薄く渦を巻くように生えている。完成された芸術作品の美しさを備えている。卓也はあらためてその美しさに感嘆する。
　卓也は時間を忘れて見入る。
　最初、妙子は卓也に何でも教えてあげたいという気持ちが強かった。ところが卓也の視線が肌を熱くするのだ。裸身を晒すこと、見られることが、これほど感じるとは思ってもみなかった。
　やがて卓也が近づいてきて手を伸ばす。
「ここも良く見せて」
　卓也が膝を持って脚を開く。
「ああ‥‥恥ずかしい‥‥」
「すごい‥‥こんなに濡れてる」
　秘所には蜜が溢れていた。
　卓也が顔を近づけてくる。
　その刺激だけでヒクリと秘肉が痙攣した。
「あんっ！　だめぇ」
　次の瞬間、大陰唇に指がかかり秘貝が開くのを感じて妙子が喘ぐ。
　なぜか今日の卓也は余裕たっぷりで妙子の身体を楽しんでいる。
「すごい。中まで見える。ピンクですごくきれいだ」
「お願い‥‥恥ずかしいから‥‥言わないで‥‥」
　見られていると意識しただけで秘肉の疼きが増してしまう。
　卓也が指で秘肉をなぞりはじめた。
「や‥‥あんっ‥‥」
　全裸で喘ぎ悶える妙子の姿は美しかった。
　もっと感じさせたい。そう思って卓也は慎重に愛撫を続ける。
「ああんっ！　ゆるして‥‥もう、ゆるしてぇ‥‥」
　妙子はシーツを握りしめ、身体をよじらせながら襲ってくる波に耐えている。
　最初は秘肉全体をなぞっていた指が硬くなった一点を擦りはじめた。
「ここがクリトリスだよね？」
「あうっ！」
　妙子の身体が跳ねる。
「違うの？」
「お、おねがい‥‥そんないじわるしないで‥‥ああっ‥‥」
「やっぱ、そうなんだ」
　指の動きが速くなる。
「だめ！　だめぇ！」
　悲鳴のような声を上げて妙子は硬直した。
　妙子が絶頂を迎える様を卓也は感動しながら眺めていた。
　自分が妙子を愉悦の縁へ落としたという感動もある。
　そして、もっとやったらどうなるのかという好奇心も湧いてきた。
　卓也は妙子の腰の下に枕を入れ、うつ伏せになって秘肉に顔を埋める。妙子の様子が見えるのを確認してから、おもむろにクリトリスを舐めはじめた。
「あんっ‥‥あんっ‥‥」
　舌の動きに合わせて喘ぎ声が漏れる。
　卓也の長く器用な舌が的確に感じる部分を捉える。艶めかしく動く腹部。もっと妙子を悶えさせたいと思った卓也は蜜壺に中指を入れた。
「ああんっ！」
　挿入感に妙子の声が高くなる。
　仰け反る妙子の姿を見つめる卓也は、中指を加え、かき回すように蜜壺を責め、舌先を激しく動かした。
「もう‥‥もう、だめ‥‥いく‥‥いくぅ‥‥」
　妙子の身体が痙攣しても、卓也はペースを落とさない。
「だめ‥‥ゆるして‥‥こわれちゃう‥‥」
　声までが震えている。
「た‥‥たくやくん‥‥ほしい‥‥欲しいの‥‥ああっ‥‥」
　もう、忘我の体で妙子は卓也を求め、何度も絶頂を迎えていた。
　官能に咽び上気した肌が桜色に染まり、荒い息で腹部から胸が大きく上下している。
　蜜壺の中にある卓也の指先に硬い肉があたり、くわえ込もうとするように蠢いているのが分かる。
　卓也はこの感覚を自分のもので感じたいと思った。
　素早く上半身を起こして屹立をあてがい一気に挿入する。
「ああ〜んっ！」
　妙子が絶叫した。
　卓也は自分の先端で、あの硬い肉を捉えようと試みた。その腰の動きが妙子を愉悦の縁へ堕とす結果となった。
　妙子は腰の骨が溶けてしまったように感じていた。目の前で火花が明滅し意識が遠くなっていく。
「ああっ‥‥こんなのって‥‥すごいわ‥‥も、もう‥‥」
　最期のときが近いと身悶えながら告げる妙子を見て卓也の心にも火が点いた。
　卓也の腰が激しく動く。その動きにシンクロして豊かなバストも揺れる。
「死ぬ‥‥死んじゃう‥‥」
　妙子が痙攣しながら叫んだ。
　内部でコリコリとした肉が屹立の先端に当たるのを感じ、卓也も我慢ができなくなる。
　射精の瞬間、二人とも意識が飛んでしまって震えが止まらなかった。
　卓也と妙子は、お互いにひとつの肉に融け合ったような感覚で果てた。