SCENE 63

「ここに立ってくれる？」
　窓から日が差して明るくなっている机の前で卓也が言う。恵美子は無言だ。卓也は携帯を取りだしカメラモードにして画質を最高にセットする。つい最近メモリーを新しい大容量のものに換えたばかりだ。妙子の寝姿を収めたメモリーカードはWンと疼いてしまうのだ。
「オッケー、もうちょっと腰を浮かせて‥‥」
「こう？」
「う〜ん‥‥ちょっとだけ触らせて‥‥ちょっとだけだから‥‥そのままだよ‥‥動かないで‥‥そう‥‥」
　卓也はそう言いながら手を伸ばすと同時に録画を開始した。
　腰を持ち上げているからアヌスまでがよく見える。
　指先でやさしく秘貝をなぞりクリトリスに触れる。
「ああんっ‥‥」
　たまらず恵美子は甘い声を上げる。
　内部がヒクッと収縮して締まるのが見えた。
「そのまま‥‥もうちょっと‥‥」
　卓也は興奮でツバを飲み込みながら、秘貝を左右に拡げ、画面の中心ををアヌスからクリトリスまでゆっくりと移動させる。
「ああ‥‥だめ‥‥だめぇ‥‥」
　言葉で拒みながらも、恵美子はそのままの姿勢でいる。
「気持ちいい？」
　卓也はクリトリスを撫でながら、身体を離し、画面に恵美子の下半身から顔まで入る位置に移動する。
「だめぇ‥‥言わないでぇ‥‥ああん‥‥」
「教えてよ‥‥」
「あ‥‥き‥‥気持ち‥‥いい‥‥気持ちいいの‥‥ああっ！」
　恵美子は自らを開いたまま腰を蠢かしはじめた。
「これは？」
　卓也は秘部に携帯を向け、ゆっくりと中指を挿入する。
「あうっ！」
　恵美子の腰が跳ね、ついに手が離れた。
　これで、もうあそこを正面から撮ることはできなくなったが、すごい映像が残せた。ちょうど、そこで動画も時間切れになる。
　でも、まだメモリーは残っている。
　もっと撮るのか、それとも、このままエッチに突入するか。どうしようか卓也は迷ったが、一回放出した後の余裕からか、恵美子の悶える様を記録したいという気持ちに傾く。
　卓也は挿入した中指を細かく震わせながら親指の腹でクリトリスを撫でる。少し前に妙子から教わったやり方だった。
「ああっ！　だめ‥‥そんなにしたら‥‥ああっ！」
　恵美子はあっという間に官能の渦の中へ巻き込まれてしまった。余韻の残っている身体が、見られ撮られることで火が点いた。そしてとどめを刺すような愛撫だ。何も考えられなくなってしまう。卓也の指技に酔い、悶え、喘ぐだけになってしまった。
　次第に恵美子の声が高くなり、喘ぎの間隔が短くなってくる。
　卓也は録画を開始した。
　指先の動きから恵美子の表情までを舐めるように撮る。
「だめぇ‥‥み、三上くぅん‥‥おかしくなる‥‥おかしくなっちゃぅ‥‥」
　恵美子の身体がブルブルと震えはじめた。
　卓也は携帯を正面から構え、指の動きを早めた。
　フレームにはバストから顔までが収まっている。
「ああっ、ああっ‥‥だめぇ‥‥だめなのぅ‥‥ああ〜んっ！」
　ビンッ、ビンッという感じで、ひときわ高い声と共に、恵美子の身体が何度か硬直した。
　レンズを通して見る恵美子のオルガスムスは卓也を熱中させた。
　淫猥で、刺激的で、それでいて神々しかった。
　卓也は最後までを映像に収めようと思った。
　いったんスイッチを切り、容量に余裕があることを確認した卓也は、恵美子の膝の間に割り込むみ、新たに録画を開始した。
　屹立を蜜壺へあてがう。そして、それが飲み込まれていく様子を写す。
「ああ〜んっ！」
　恵美子が長く叫んだ。
　抽送を開始すると揺れるバストへレンズを向けた。
　恵美子には卓也が何をしているか分からないようだ。
　そのことが卓也の興奮を高めた。この小さな携帯の中に恵美子のすべてが収められるのだ。そう思うと、抽送に力が入る。
「あんっ、あんっ、あんっ‥‥」
　卓也の動きに合わせて恵美子が喘ぐ。
　やがて恵美子の身体が震えだし、夏がけを握りしめる手に力がこもる。
「やっ！　ああっ！　ああんっ！」
　喘ぎ声が一オクターブ上がった。
　そう、卓也が射精したのだ。
　放たれた熱いものが身体の中で暴れ回っているようだった。
　二回目なのに刺激が強過ぎて長続きしなかった。撮ることで、恵美子の大事な何かを盗っているような感じがした。それは恐ろしくインモラルで、エロティックで、刺激的な感覚だった。
　そして、狙ったわけではないが、早く出てしまったことでを最後までを録画することができた。
　卓也は、恵美子の上に倒れ込んで余韻を楽しみながら、携帯を握りしめる。気のせいだと分かっているが重く感じた。それは、恵美子に対する気持ちの重さだった。

SCENE 64

　結局、恵美子は妙子と静雄が帰ってくる直前まで卓也と一緒だった。
　恵美子が作ってきた弁当は朝昼兼用の食事になり、その後、二人だけでまったりとした時間を過ごした。
　あと30分くらいで帰ると妙子から電話がかかってきたとき、恵美子は涙をためて唇を求めてきた。受験生である二人にとって、これから、こんなふうに時間を過ごせることは滅多にないだろう。恵美子の気持ちが卓也にひしひしと伝わってきて、別れ際に二人はむさぼり合うように濃厚なキスを交わした。
　一人きりになった卓也は、恵美子と関係を持ってしまったことを妙子に話そうと思った。なぜだか分からないが、そうすべきだと感じていた。だから、静雄と一緒に妙子が帰ってきたとき落ち着いていられた。もし、恵美子とのことがなかったら、猜疑と嫉妬に駆り立てられたかもしれない。
　お土産だという大きなキンメの干物や新鮮な魚介類が食卓に並び、ほとんど初めてかもしれない三人での夕食がはじまったときも同じだった。
　そんな卓也を、妙子は不思議に感じた。しかし、静雄がいるので、そんなことを聞くわけにはいかなかった。
　それぞれが想いを胸に秘めながら夜は更けていった。