SCENE 65

「卓也君、いい？」
　翌朝、静雄を送り出した妙子がノックをしながらドアの外から卓也に声をかける。
　卓也は朝食に降りてこなかった。やはり、何らかの屈託があるに違いないと妙子は思った。卓也の部屋に行けば身体を求められるだろうとも思った。半分は期待していた。オモチャを使われた身体が本物の肉体を求めている。
「まだ寝てるの？　開けるわよ」
　返事がないのでドアを開ける。
　卓也は起きていた。ちゃんとジーンズをはいて机に座っている。
「どうしたの？　降りてこないから心配しちゃった」
　妙子の脳裏に静雄が出張から帰ってきたときのことがよぎる。あのとき卓也はジェラシーを押さえきれず混乱していた。もしかしたら、今回も同じではないかと思う。しかし、昨日の晩はそんなそぶりを見せなかった。何かが変わったと女の勘が告げていた。
「朝ご飯できてるわよ。それとも具合でも悪いの？」
　奇妙な卓也の態度に戸惑いながら努めていつもと変わりなく振る舞う妙子。
「‥‥妙子おばさん‥‥」
「なあに？」
「は、話があるんだ‥‥」
　卓也が緊張しているのが分かる。
「いいけど‥‥ここで話す？」
「うん‥‥」
「わたしが静雄さんと旅行に行ったから怒ってるの？」
「ううん、そうじゃない‥‥お、おれ‥‥」
「いいわ。聞いてあげるからゆっくり話して」
　妙子は卓也の部屋に入りドアを閉め、ベッドに座った。
「どうしたの？」
「‥‥お、おれ‥‥安藤と‥‥しちゃった‥‥」
「え？」
　一瞬、妙子は意味が分からなかった。
「お、おれ、安藤とエッチしちゃったんだ‥‥」
　予想もしていなかった告白に妙子は何て答えたらいいのか分からなかった。
「つ、つい、流れでそうなっちゃったんだけど‥‥おれ、安藤のこと好きだし‥‥でも、妙子おばさんのことも好きなんだ‥‥それに、妙子おばさんには、いろんな意味ですごく感謝してる‥‥このことで、妙子おばさんが俺のこと嫌いになっても仕方ないと思う‥‥けど‥‥妙子おばさんには、ちゃんと話さなきゃならないって思ったんだ‥‥」
　なぜか、妙子は取り乱さずに卓也の話を聞けた。もし、自分とのことがなかったら、卓也は恵美子と関係を持つことなんかできなかっただろう。自分のせいかもしれない。いや、きっとそうだ。そんな思いが妙子を冷静にしたのかもしれない。妙子は責任を感じた。
「ねえ‥‥教えてくれる‥‥」
「う、うん‥‥」
「安藤さんはどうだったの？」
「どういうこと？」
「彼女はいいって言ったの？　卓也君のことだから、無理になんてことはないわよね？」
「うん‥‥自然の成り行きっていうか‥‥気が付いたら、そうなってた‥‥」
「ちゃんと、避妊はしたの？　相手は大事なお嬢さんなのよ」
「いや‥‥最初‥‥外で出したんだ‥‥そしたら、大丈夫な日だからって言われて‥‥」
「そう‥‥」
　妙子はすべてを察した。恵美子は自分から望んで卓也に抱かれたのだ。普通の中学生の男の子だったら、そんな女の子の気持ちに気が付いて行動に移すなどということはできないだろう。しかし、卓也は違う。すでに女の扱いを心得ているのだ。
　やはり自分のせいだと妙子は思った。
「た、妙子おばさん‥‥ごめんね‥‥俺には妙子おばさんがいるのに‥‥」
「だから朝ご飯に降りてこなかったの？」
「うん‥‥なんだか、二人になるのが怖かったんだ‥‥」
「卓也君」
「えっ？」
「安藤さんのこと、どうするの？　これからもちゃんと付き合うの？　お勉強のこともあるし」
「そうだよね‥‥どうしよう‥‥そのこと考えてなかった。これからも同じように、二人で妙子おばさんに教わるなんて無理だよね‥‥おれ‥‥妙子おばさんにも、安藤にも悪いことしちゃったんだ‥‥」
　見ていて憐れを催すほど卓也の顔が暗くなる。
「大丈夫よ。勉強はいままで通り教えてあげるから。心配しないで」
「ほんとに？」
「言ったでしょ。わたしはお母さんの代わりにはなれないけど、それ以上のことをしてあげるって」
「ごめん‥‥ほんとうに、ごめん‥‥」
　卓也の目から涙が溢れ出る。
「ばかねぇ、泣くことないじゃない」
「妙子おばさん‥‥怒ってないの‥‥でも、俺のこと軽蔑しちゃうよね」
　そう言われて、妙子は嫉妬とか、そういったドロドロしたたぐいの感情が湧き起こってこないことに気が付いた。
「そうね。卓也君だから言うけど、自分でも不思議。安藤さんのことが心配なくらいで、ちゃんと話してくれた卓也君にありがとうって言いたい気分なの。どうしてかしら？」
「俺さ‥‥妙子おばさんが、おじさんと出かけちゃって、すっごくブルー入ってたんだ。分かっていても、つい考えちゃうんだ‥‥その‥‥おじさんと仲良くしてるとこ。そんなとき安藤からメールが来て、家に来るって‥‥で‥‥」
「いいのよ。わたしにも責任があることだし」
「なんで？」
「もし、わたしとのことが無かったら、卓也君、安藤さんとそうなったと思う？」
「分かんないけど、たぶん、ならなかったと思う‥‥」
「そうでしょ」
「俺さ‥‥」
「なあに？」
「あいつと、しちゃった後、思い出しちゃったんだ」
「なんのこと？」
「妙子おばさんと初めてエッチしたときのこと‥‥あのとき、妙子おばさんが、なるようにしかならないって言ったでしょ。あの意味が分かったような気がしたんだ。安藤は初めてだったし、俺が守らなくっちゃならないって思った。けど、妙子おばさんも俺にとって同じくらい大切なんだって‥‥だから‥‥妙子おばさんのことが、すごくありがたいって分かったんだ。でも、そんなの身勝手だよね」
「そうかしら？」
「えっ？」
「だったら、わたしはどうなるの？　わたしだって卓也君のことは大事だし、静雄さんのことだって好きなのよ」
「そっか‥‥」
「卓也君には難しい話かもしれないけど聞いてくれる？」
「うん」
「世の中には常識ってあるわよね」
「うん」
「常識って、みんなが平均的に暮らしていくための知恵だと思うの」
「どういうこと？」
「世の中にはいろんな考えの人がいて、それぞれの人が違うことを望んでいるの。でも、その考えや希望や欲望を押し通したら収拾がつかなくなるでしょ？」
「うん」
「だから、みんなでお互いのことを考えて、仲良くやっていくための道具が常識だと思うの。おなじような意味で倫理っていう言葉があるけど、知ってるわよね？」
「なんとなく」
「たとえば、わたしのこと。夫がある身でいながら、他の男と関係を持つのが不倫、つまり倫理に反するってこと」
「そんな‥‥」
「そう、倫理って人が決めたことなの。社会によっては男の人が複数の女性と結婚できるところもあるし、その逆のところもあるわ。そういうところでは倫理の形が違うの。何が言いたいか分かる？」
「う〜ん、なんとなく」
「卓也君は、わたしのこと好きだって言ってくれたし、大切だとも言ったわよね？」
「うん」
「その大切な人が一人じゃなきゃ駄目だって誰が決めたの？」
「分かんないよ‥‥」
「わたしと卓也君のこと、静雄さんが知ったらどうなると思う？」
「おじさん、怒ると思う」
「でも、わたしは卓也君も静雄さんも好きだし大切なの」
「‥‥」
　話が意外な方向へ進んでいくことに戸惑いながら、卓也は妙子の話に引き込まれていく。
「安藤さんに、わたしのこと話した？」
「そんなことできないよ」
「そう、それが常識よね。でも、分かる？　わたしも卓也君も、その常識からはみ出しちゃっているんだって。でも、平均的でいることができない人だっているのよ。逆に考えれば普通ってなにかしら。みんな違うのに。わたしたちは、その違いが大きかっただけ」
「そっか‥‥」
「誰かから裁きを受ける日が来るかもしれないけど、はみ出した者同士、仲良くやっていくしかないでしょ」
「それって、あのとき言ってた運命の話だよね？」
「そうよ。分かってもらえてうれしいわ」
「っていうことは‥‥」
「なあに？」
「いままで通り、俺の大好きな妙子おばさんでいてくれるんだよね？」
「あたりまえでしょ。もう、二人とも後戻りはできないのよ」
　妙子は嫣然と笑った。
「やった」
　卓也の顔が輝く。
「だけども、前に言った通り‥‥」
「なに？」
「このことは絶対に秘密。わかるでしょ」
「うん」
「卓也君」
「なに？」
「あなたはお母さんを亡くして世間的には運の悪い不幸な子だけど、あなたには違う運命の女神がついているの。それを甘受すべきだわ」
「妙子おばさんが運命の女神だよね」
「ちょっと違うけど、そう思ってもいいわ。さあ、ご飯にしましょ」
　妙子は話すことで自分の立場や考えを整理できた。
　卓也は、塞ぎ込んでいた気持ちが一気に晴れた。
　お互いに確認し合えたこと、それは二人の関係が逆らいようもない運命だということだった。

SCENE 66

「今日の勉強会、やめにしていい？」
　朝食を食べている卓也に妙子が話しかける。
「どして？」
「洗濯物とかたまっちゃったし、買い物や片付けもしなくちゃならないから」
「う〜ん、安藤に連絡しなきゃ」
「安藤さんには、わたしから電話するわ」
「わかった」
「あっ」
「なに？」
「それだと、お土産渡せないわ‥‥生ものだし、どうしようかしら」
「いいよ、俺、持ってくから」
「それじゃ、先方に失礼だわ。卓也君、どうせ手伝ってくれるんだったら、家のことお願いしていい？」
「いいけど、なにすればいいの？」
「わたし、これから安藤さんのお宅に行ってくるわ。その間、洗い物と、旅行かばんにある洗濯物とか出しといてくれる？　ビニール袋に入ってるから」
「いいよ。洗濯くらい俺がやっておくよ」
「助かるわ」
　卓也が食べ終わった食器を洗い出すと、妙子は伊豆の土産を持って出ていった。

SCENE 67

　洗い物を終えた卓也は妙子達の寝室へ行って入り口近くに置いてあったスーツケースを開ける。
　ビニール袋がふたつあった。
「なんだよ、どっちが洗濯物なのかな？」
　卓也は独り言を言いながら白いビニールの袋を開けた。
「なにこれ？」
　袋に入っていたのは静雄が買いそろえたオモチャだった。
「こ、これって‥‥」
　最初に袋から出したのは、ゆで卵を重ねたようなバイブレーターだった。卓也だって大人のオモチャのことくらい知っている。試しにスライド式のスイッチを入れるとギュインギュインという音と共に先端が円を描くように動き出す。
「すげぇ‥‥妙子おばさん‥‥こんなの使ってたんだ‥‥」
　静雄が洗わずに仕舞ったせいか、匂いを嗅ぐとかすかに妙子の匂いがした。
　さっきの話し合いで吹っ切れた卓也に嫉妬の感情は起きなかったが、こういうものを秘密にしておくのはズルイと思った。
　卓也はビニール袋ごとキッチンに運んでオモチャをテーブルに並べた。
　ゆで卵の他に、ナマコみたいなもの、二つに分かれたスポイトつきのローターが、まだ未使用らしくパッケージに入っている。
　それぞれのスイッチを入れて動きを確かめているとき妙子が帰ってきた。
「お帰りなさい」
　卓也はオモチャを持ったままキッチンに入ってきた妙子に言った。
「た‥‥卓也くん‥‥」
　妙子の顔が真っ青になった。静雄があれをスーツケースに入れていたとは知らなかったのだ。
「かばんのビニール袋の中にこんなの入ってたよ」
「‥‥た、卓也君‥‥これには訳があるの‥‥」
「ずるいよ。妙子おばさん」
「そうじゃないの‥‥聞いて‥‥卓也君‥‥」
　妙子は静雄のことを話しはじめた。ストレスで不能になっていること、それでも自分をよろこばせたいとオモチャを買ってきたこと、静雄のためにオモチャによる愛撫を受けたことを説明した。
「もう、卓也君なら、わかってくれるわよね？」
　妙子は話の最後をそう結んだ。
「そっか‥‥それって、テレビなんかで言ってるEDってやつだよね」
「そうなの。いままで、静雄さんのプライドを傷つけたくないから言えなかったんだけど‥‥」
「おじさん、かわいそう‥‥こんなに素敵なお嫁さんがいるのに‥‥」
「ありがとう。わかってくれたのね」
「うん。でも、ずるいや」
「えっ？」
「だって、妙子おばさん、これ使って気持ちよかったんでしょ？」
「‥‥」
「俺だって、これで妙子おばさんが悦んでるとこ見たいよ」
「卓也‥‥くん‥‥」
「それとも俺に使われるのは嫌？」
「そ、そんな意地悪言わないで‥‥」
　旅館でのことを思い出すと秘肉が疼いた。
「卓也君には早いわ‥‥それに、卓也君は元気だから‥‥必要ないでしょ」
「もう、俺たちって常識をはみ出してるんだから、そう言ったのは妙子おばさんじゃないか」
「そんな‥‥」
　もう言い逃れはできそうもない。それに、もう一度、あの感覚が味わえると思うと、それだけで溢れてくるのが分かった。
「そんなに使ってみたいの‥‥？」
「うん！　いいの？」
「見つかっちゃったからには仕方ないでしょ。いますぐなの？」
　卓也は、いますぐなんていう言葉が妙子の口からでるなんて思わなかった。が、何度も濃密に身体を交えた相手だけに、すでに妙子が欲情しだしていることを悟った。
「うん。いますぐだよ。使い方も教えて」
「使い方なんて、そんなのないわ‥‥」
「じゃあ、おじさんがどうやったのか教えて」
「あっ‥‥」
　妙子は最後に失禁してしまったことを思い出した。
「どうしたの？」
「な、なんでもないの‥‥」
「怪しいな。なんか思い出したでしょ」
　卓也は妙子に後から近寄り、そっと抱き寄せながら耳元で囁いた。
　それだけでガクッと全身の力が抜ける。卓也は情事の天才だと思った。逃げ場が無くなるまで追いつめられ思い通りにされてしまう。
「教えてくれなきゃ不公平だよ」
　じわじわと卓也の手がTシャツの中へ入り、指先でブラジャーの上から乳首をくすぐられる。そうされながら、また耳元で囁かれると秘肉と電気が通じ合うように感じてしまう。
「ああっ‥‥」
　妙子は甘いため息を漏らして、その場に崩れ落ちてしまった。
　そんな妙子を支えるようにして、卓也は素早くTシャツを脱がし、ブラジャーのホックを外す。
　恵美子に比べて、妙子の肌はたおやかで量感に満ちていた。しっとりと吸い付くような感触は卓也にとって懐かしいものだった。
「妙子おばさん‥‥」
　卓也は妙子の甘い香りを胸一杯に吸い込む。
　そして、乳首を口にふくむと舌先で転がした。
「あ‥‥ああ‥‥た、たくや‥‥くん‥‥」
　どんどん硬くなっていく乳首を舌で感じながら、卓也は、もう片方のバストを包み込むように揉みしだく。
　妙子が漏らす声が甘みを増していく。
　卓也は乳首への愛撫を続けながら手を伸ばし、七分丈のパンツのボタンを外して脱がそうとするが、ぴったりと肌に密着したパンツは思い通りにならない。
　妙子は自分から腰を浮かしてパンツをショーツと一緒に脱いだ。
　すかさず卓也は茂みの奥に手を伸ばす。
　すでに、そこは熱い洪水になっていた。
「妙子おばさん‥‥こんなに濡れてる‥‥」
「卓也君が上手だから‥‥ああんっ！」
　卓也は蜜口からクリトリスまでを撫で上げた。
「やっぱり妙子おばさんは最高だ‥‥」
　卓也は耳元で囁きながら、秘肉独特の柔らかな感触を楽しんだ。慣れた手つきで、やさしく念入りに秘貝をなぞりクリトリスを愛撫する。妙子に教わったやり方だった。
「ああっ‥‥すごい‥‥感じちゃう‥‥ああんっ‥‥た、卓也君‥‥来て‥‥欲しいの‥‥」
　できれば、このまま卓也の逞しいものに貫かれたかった。恥も外聞も忘れて妙子は卓也を欲した。
「だめだよ。まだ。あれを使わなくっちゃ。教えて。おじさんはどれを使ったの？」
「あ‥‥あの変なかたちの‥‥」
「これ？」
「そう‥‥」
　卓也は上半身を起こして、空いた手でナマコのようなオモチャを手にしていた。
　コードの先にあるスライド式のスイッチを入れると全体が細かく振動する。
　羽音のような音を聞いただけで妙子は身震いした。
「挿れるよ」
　卓也がオモチャをあてがい軽く押す。先端が半ばまで埋まったとき、先太りの形状のせいでスルッと吸い込まれるように根元まで埋没した。
「いやぁっ！」
　妙子は絶叫した。
　期待が大きかったせいか、それとも溢れるほど欲情していたためか、静雄にされたときより何十倍も感じてしまう。
　秘肉を覆う微妙なヒダが膣前庭からクリトリスまでに密着して振動を伝える。
「だ、だめっ！　感じる‥‥感じ過ぎちゃうぅ‥‥」
　身をよじって悶える妙子に驚いたような目を向ける卓也。
「ああっ！　あうっ！」
　絶頂があっという間にやってきた。
「おじさんのときも、そんなに感じたの？」
「い、いや‥‥そんな意地悪言わないで‥‥ああっ‥‥だめ‥‥」
「教えてくれなきゃ、こうだよ」
　オモチャの機能を見て察した卓也は根元を持って、もっと振動が伝わるように秘肉へ押しつけた。
「いやぁっ！　ゆ、ゆるしてぇ‥‥」
　刺激が強まり、妙子は痙攣した。
　続けざまに襲ってくる波に耐えきれず、あのときと同じように妙子は俯せになると、這って逃れようとした。
「だめだよ。逃げちゃ」
　卓也はスライドスイッチを最強にした。
　モーターの音が高くなる。
「ああ〜んっ‥‥い、言うから‥‥ゆるして‥‥」
　妙子は仰け反り身体を震わせながら言った。
「なにを？」
「し、静雄さんに‥‥それを挿れられて‥‥逃げたら‥‥縛られたの‥‥」
「ええっ、どんなふうに？」
「浴衣の帯で‥‥こうやって‥‥ああっ！」
　卓也に教えるため手を後へやると、あの感覚が蘇ってきて、また絶頂が訪れてしまう。
「それから‥‥あの‥‥大きなのを挿れられて‥‥ああっ‥‥お漏らししちゃったの‥‥感じ過ぎちゃって‥‥あうっ‥‥」
　言わなくてもいいことまで妙子は告白した。
　秘密を口にすることでさらに興奮した。
「妙子おばさん‥‥縛って‥‥欲しい‥‥の‥‥？」
　妙子の告白がイコール願望だということを卓也は瞬時に察した。なぜだか妙子の考えていることが分かるのだ。
「ああっ‥‥いいわ‥‥し、縛って‥‥逃げられないようにして‥‥苛めて欲しいの‥‥」
　妙子は堕ちるならそれもいいと思った。卓也とともに堕ちていきたかった。
　卓也の方も妙子の望みを叶えてあげたいと思っていた。妙子の悦びは自分の悦びでもあった。これも運命なのだと感じた。
　クラスの悪友達とまわし読みしたエロ本の世界、淫靡な快楽にすべてを忘れて縛めを受けて悶える女なんて現実のものとは思えなかった。なのに、卓也にとって女神でもある妙子がそれを求めている。
　妙子の身体にロープが食い込んでいるところを想像したら、どうしてもやってみたくなった。けど、家にロープなんて置いていない。何か代わりになるものはないか必死で考える。そして、キッチンの棚に荷造りに使うテープ状の紐があることを思い出した。
「そのまま、オモチャを挿れてるんだよ」
　そう命令すると、急いで、ハサミと一緒に取り出し適当な長さに切る。そして、後に手をやったまま悶えている妙子を縛った。
　これで妙子を自由にできる、妙子は自分のものだという気になり興奮してしまう。
「どう？　もう抵抗できないよ」
　そう言いながら卓也はナマコに似たオモチャを秘肉へ押しつける。
「あううっ‥‥だめ‥‥もう、だめ‥‥死ぬ‥‥死んじゃうぅ‥‥」
　語尾が長く伸び、妙子は何度も痙攣を繰り返す。
「あの太い方も挿れて欲しいんだよね？」
「ああっ‥‥いいの‥‥もう‥‥卓也君の‥‥好きなようにして‥‥いいのよ‥‥ああっ！」
「じゃあ、こんどはこれ。まだ使ってないみたいだねオッパイ用だってさ。でも、このまんまじゃ付けられないね。そうだ、妙子おばさん、立って」
　卓也はオモチャを抜いて妙子を抱き起こす。
「こっちだよ」
　そう言ってリビングのソファーへ連れて行く。
　妙子をソファーの上で犯す夢の実現に卓也は夢中になった。
「そのままだよ」
　妙子を座らせると、オモチャ一式とテープ状の紐、そしてハサミを持って来た。そして、紐を切って前の方で縛り直す。
　妙子は眼も虚ろで、卓也のなすがままだ。
「こうやって‥‥」
　妙子をソファーに寝かせ、手を高く上げさせて両手首の間から長く伸びた紐をソファーの脚に結びつけアームレストの位置に固定した。
「こんどはこっち‥‥」
　片方の脚を背もたれにかけさせ、足首を縛って手と同じ方法で反対側のソファーの脚と繋げてしまった。
「こ‥‥こんな格好‥‥」
　拘束されたことに気付き、妙子は脚を閉じようとした。
「だめだめ」
　卓也が脚の間に入ってすべてを晒すことになった。
「なんか、すごくエッチでヤバイ感じ‥‥」
「ああ‥‥」
　完全に自由を奪われ妙子は諦念のため息を漏らす。
　卓也は、妙子に覆い被さり、首筋からよく手入れされた脇の下へと舌を這わせる。
「や‥‥やあんっ！」
　ソフトな責めなのに激しく身体が反応してしまう。
「エッチな妙子おばさんって、すごくきれいだ」
　卓也はバストを揉みながら、わざと耳に唇をあてながら言う。
　荒い息、妙子の身体がビクビクと震える。
「ここで、こうしたかったんだ‥‥」
　卓也は両手で両方のバストを揉み、その乳首を交互に舐める。
「ああ‥‥卓也君‥‥来て‥‥おねがい‥‥欲しいの‥‥」
「だめだよ。まだ、これ試してないもん」
　吸盤とスポイト、小さなローターが組み合わさったオモチャ、乳首にあたる部分には小さな突起が並んでいる。
「あん‥‥」
　卓也がスポイトをつまんでローターを取り付けると妙子は小さく喘いだ。
　もう片方にも付けられる。
　軽く吸われているような中途半端な感じだと思っていると、次の瞬間、切なくなるような刺激に襲われた。卓也がスイッチを入れたのだ。
「ああっ！　な、なにこれ‥‥いや‥‥いやぁっ！」
　身をよじって悶えるが身体が自由にならない。縛られている手首が痺れる。
「どう、感じる？」
「ああ、いや‥‥こんなの‥‥たまらなくなっちゃう‥‥」
　秘肉が疼いて仕方がない。
　抵抗できず玩ばれていると思うと余計に感じた。
「こんどは、これね」
　卓也が太くて大きいバイブレーターを手にしていた。もうスイッチが入れられていてギュインギュインという禍々しい音が響いている。卓也は秘肉に先端をあてがい、バイブレーターの動きで蜜を塗り拡げる。
「ああんっ‥‥感じる‥‥は、はやく‥‥はやくぅ‥‥」
「どうして欲しいの？」
「お、おねがい‥‥いじわるしないで‥‥ああっ‥‥」
「ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないよ」
「い、挿れて欲しいの‥‥」
「何を？」
「それ‥‥オモチャ‥‥」
「どこに？」
「わ、わたしの中に‥‥おねがい‥‥」
「中って、どこの？」
「ああっ‥‥いじわるしないで‥‥ああっ‥‥あそこに‥‥」
「あそこって？」
「‥‥お、お○んこに‥‥挿れてぇ‥‥あうっ！」
　妙子がはしたない言葉を口にした瞬間、狙いをすましたような角度でバイブレーターが挿入された。
「妙子おばさんって、ほんとは、すごいエッチだったんだね」
「た、卓也君のためなら‥‥どんなことだって‥‥ああっ‥‥させてあげる‥‥ああっ‥‥違うわ‥‥して欲しいの‥‥ああっ‥‥」
「じゃあ、こうしてあげるよ」
　卓也は乱暴にバイブレーターを抽送した。
　秘肉がまとわりつくようにバイブレーターをくわえ込み、淫猥な音を奏でる。
「ああっ！　すごい‥‥こんなのって‥‥いく‥‥いっちゃう‥‥」
　妙子の声は絶叫に近い。
「いやぁ〜っ！」
　細かく振動する子機がクリトリスに押しあてられたとき、妙子は高く叫んだ。
　何度も跳ねるような痙攣を繰り返す。
　それでも卓也の責めは止まない。
　妙子は、もう何も考えられず、ただ押し寄せる波に翻弄されていた。
　喘いでいる声さえ自分のものではないようだ。
　意識が遠くなりかけたとき感触が変わった。
　蜜壺の中がものすごく熱く感じる。
「ああっ！　だめっ‥‥溶けちゃう‥‥ああ〜んっ！」
　オモチャを引き抜き、卓也がいきなり挿入してきた。アブノーマルな妙子の反応に我慢ができなくなったのだ。
　力強い抽送がはじまる。
「た‥‥卓也君なのね‥‥いいっ‥‥感じるの‥‥もっとよ‥‥ああんっ！」
　濡れた肉がグチュグチュと卑猥な音を立てる。
「や‥‥やっぱり‥‥卓也君のがいい‥‥すごいわ‥‥ああっ‥‥も、もう‥‥滅茶苦茶にして‥‥か、感じる‥‥ああっ‥‥ああっ‥‥」
　できれば背中を抱きたい。それができないので、妙子は腰を押しつけて結合を深めた。卓也はそれに応えて腰を打ち付けるようなストロークの長い抽送を続ける。
「おねがい‥‥中で‥‥出して‥‥思い切り‥‥卓也君のが‥‥欲しいの‥‥あううっ！」
　卓也と関係を持つようになってから妙子はピルを使っていた。妊娠を避けるためというより、内部で感じたいからだった。それまでも中で感じてはいた。が、内部だけで達することができるのを知ったのは卓也が初めてだった。15才の逞しいものに25才の熟れた身体が開発されてしまったことになる。特に放出の瞬間は例えようのない快感だった。蜜壺の奥で感じるオルガスムスは、クリトリスのものと違って深くて長続きする感じがする。それだけに、妙子は卓也のものが愛おしくて仕方がない。
　卓也の律動に身を委ねていると、どこまでも落ちていくような墜落感があった。そして、行き着く先は今まで経験したことのない続けざまに襲ってくるオルガスムスだった。
　またひとつ、卓也から愉悦を教えられてしまった。拘束され、自由を奪われながら責めを受ける悦びを覚えてしまったからだ。
　妙子は何度も痙攣を繰り返す。
「すごいわ‥‥またよ‥‥いく‥‥いっちゃう‥‥ああっ‥‥ああ〜っ！」
「た‥‥妙子‥‥おばさん‥‥すごい‥‥」
　その叫びとともに、ものすごい勢いで締め付けられるのを感じ、卓也が呻く。まるで、降りてきた子宮口が亀頭を押さえ込み、飲み込もうとしているような感じだった。
　卓也は尻に力を入れて硬度を保ち、ラストスパートに入ったランナーのように抽送を続ける。
「で、出るっ！」
　卓也も叫んだ。
「来てっ！　来てぇ〜っ！」
　射精直前の硬さを感じ妙子が応える。
「ううっ！　うっ！」
　呻きながら、卓也の腰が二度三度と突き入れるように動く。
「ああ〜っ！」
　熱く放たれたものを感じ、長く叫んだ妙子は激しく身体を震わせ、最後にがっくりと弛緩してしまった。

SCENE 68

「妙子おばさん‥‥大丈夫？」
「あ‥‥た‥‥たくや‥‥くん‥‥」
　身体を揺する卓也の声で意識が戻った。
「わ、わたし‥‥」
「よかった‥‥心配しちゃったよ」
　卓也の言葉に答えず、妙子は自分の手首を見ていた。
　紐の跡が赤く痛々しく残っている。
　夢を見ているみたいだった。
「わたし‥‥気を失ってたのね‥‥卓也君が紐を外してくれたの？」
「うん‥‥」
「わたしって悪い女ね‥‥卓也君にあんなことさせるなんて‥‥」
「そんなことないよ」
「どうして？」
「だって、さっき妙子おばさんが言ったじゃないか。常識なんか気にすることないって‥‥」
「そうね‥‥だけど‥‥」
「縛るのは悪いこと？」
「嫌がる人を無理矢理だったらいけないって思うけど‥‥」
「妙子おばさんは嫌だったの？」
「‥‥」
「縛られて感じてる妙子おばさんは最高にきれいだった‥‥それに、俺のこと信用してるから縛らせてくれたんだろう？　それが、俺、うれしかった‥‥」
　妙子は何て答えたらいいのか分からなかった。
「俺‥‥分かったんだ‥‥」
「なにが？」
「妙子おばさんが縛って欲しいって思ってること。まるでテレパシーみたいに感じたんだ。妙子おばさんがしたいことは、俺がしたいことなんだ。それとも、俺が間違ってる？　勝手にそう思い込んだだけ？」
「卓也‥‥くん‥‥」
「ねえ‥‥教えてよ‥‥」
「た、卓也君は間違ってないわ‥‥」
　卓也の真剣さに圧倒される妙子だった。
「だったら、いいじゃないか」
「それより‥‥卓也君‥‥」
「なに？」
「わたしのこと嫌にならない？」
「なんで？」
「だって‥‥縛られて悦ぶ女なんて‥‥」
「そんなことない。妙子おばさんは最高だよ。俺の女神じゃないか」
「卓也君」
「なに？」
「少しだけ‥‥少しだけでいいから一人にして‥‥そうじゃないと‥‥」
「わかった‥‥でも、もう一回だけ言わせて。妙子おばさんは俺の女神なんだ。それを忘れないでね」
　これ以上言っても、かえって逆効果だと感じた卓也は部屋に引き返すことにした。しかし放ってはおけない。卓也はあれこれ想いを巡らせた。
　妙子は緩慢な動作で後始末をしていた。その表情は暗い。だが、後悔しているのではない。あのまま卓也と一緒にいたら、ひざまずいて、もう一度求めてしまいそうだったのだ。10才の年の差を超えて、妙子は卓也に強いオスを感じていた。いや、卓也の存在を身体に刻み込まれてしまった。拘束され、蹂躙されたかった。でも、まだ、そんなことを言い出せない自分がいる。
　オモチャを使わないで欲しい、縛らないで欲しいと言えば、卓也はしないだろう。そういう子だ。だけど、使って欲しい、縛られたい自分がいる。たしかに、二人の関係は常識を激しく逸脱している。だったら奈落の底まで一緒に堕ちるのもいいだろう。自分はそうしたい。ただ、卓也を道連れにしていいのか、それが悩みだった。
　卓也には確信があった。妙子は自分のことを気にしているのだと。そして、このまま自分が何もしないでいれば、二人の間がギクシャクしたものになってしまうのではないかという不安があった。壁を越えなければならないと本能が告げていた。どうすればいいのか？　妙子を完膚無きまでに感じさせてしまえばいいと思った。