SCENE 69

　卓也は急いで服を着ると妙子に気付かれないように家を出た。揃えたいものがあるのだ。
　駅のそばにある金物屋でロープを買った。なるべく柔らかいものを選んだ。携帯用のメモリーも買った。
　家へ戻るまでに30分ほどしかかからなかっただろう。卓也はそっと玄関を開けた。リビングを覗いてみる。妙子はいなかった。オモチャも片づけられている。床続きになっているキッチンも電気が消えている。ついさっきまで行われていた情事の痕跡は嘘のように消えていた。
　きっと、妙子は寝室にいるに違いないと卓也は思った。
「妙子おばさん、話があるんだ」
　卓也は寝室のドアをノックして言った。
「入るよ」
　返事も聞かず卓也はドアを開ける。
　妙子はベッドに座って物思いにふけっていた。
　当たり前だが、もう服は着ている。Tシャツの下は薄手のコットンのフレアスカートだった。
「妙子おばさんってば。聞いてる？」
「卓也君‥‥」
　妙子が顔を上げる。表情は暗い。
「妙子おばさんが言った通り、二人は、もう後戻りはできないんだよ」
「どういうこと‥‥」
「これ買ってきた」
　卓也は紙袋に入ったロープを取りだして見せた。
　妙子が息を飲む。
「手を出して！」
　卓也は強い口調で言う。
「な‥‥なにするの‥‥？」
「やり直すんだ！　ちゃんと。だから手を出して！」
　ビクンッと妙子の身体が震えた。卓也の言葉が落雷のように心に響いた。
「早く！　手をこっちへ！」
　妙子の眼が虚ろになった。瞬時に卓也の命令が頭の中を支配して、何も考えられなくなった。妙子は、操り人形のように両手を肩の高さまで上げてしまう。身体が自分のものでなくなったみたいだった。自分の指先を見つめたまま視線を動かせない。自分でも、どうして卓也の言いなりになってしまうのか理解できない。まるで夢の中にいるようだった。
　卓也はロープを適当な長さに切って手首に結びはじめる。左右に一本ずつだ。
「ベッドに横になって」
　まるで催眠術にかけられたように卓也の命令に従ってしまう妙子。
「手を上にやって」
　卓也は素早く動いて片方のロープをベッドの脚にくくりつけた。そして、反対側にまわると同じようにした。これで妙子は羽を拡げた鳥のような格好でベッドに拘束された。
「こんどは足だよ」
　そう言いながら、こんどは足首にロープを結びつける。
　妙子は抵抗もせず手足を開いた形でベッドの四隅に繋がれてしまった。クイーンサイズのベッドなので手足を伸ばして拘束しても余裕がある。
　形のいい脚が柔らかいフレアスカートの生地を持ち上げ、下腹部が呼吸に合わせて上下している姿を見て、卓也は生け贄という言葉を思い出した。そう、妙子は自分の生け贄なのだ。考えつく限りの手を尽くして感じさせることが妙子の心を開かせるのに必要だと思った。
「あのオモチャはどこにやったの？」
　卓也はあたりを見回しながら言う。
「クローゼットの‥‥一番下の引き出しに‥‥」
　妙子の声には抑揚がない。
　引き出しを開けるとオモチャがタオルの上にきれいに並べられていた。
　卓也はナマコみたいなやつを手に取る。そして匂いを嗅いだ。
「洗ってあるね。また使われたいから洗ったんだよね？」
「‥‥」
　オモチャを見ると条件反射的に妙子の息遣いが荒くなってきた。疼きと同時に意識が戻ってくる。
「最初はどれがいい？」
　ベッドの上にオモチャを並べながら卓也が言った。
「た、卓也君‥‥どうして‥‥」
　なんとか我に還った妙子が言う。卓也にオモチャを使われた記憶がフラッシュバックする。無意識に逃れようとして、手足を拘束され身動きができないことを思い知らされる。
「分かったんだ。妙子おばさんと、この先ずっと仲良くしていくためには、どうしてもこうしなきゃなんないって」
「ゆ、ゆるして‥‥」
　妙子は怖かった。卓也が怖かったのではない。縛られて淫らな姿を晒してしまうであろう自分が怖かった。すでに秘肉が熱く潤ってきている。このままでは、さっきより乱れてしまうに違いないのだ。
「だめだよ。だったら、なんで俺に黙って縛られたの？」
「そ‥‥それは‥‥」
　妙子は答えに窮した。自分でも分からないのだ。心の奥の狭くて暗いところに潜んでいた本当の自分が目を覚まし、身体を動かしてしまったとしか言いようがない。
「俺のことは心配しないでいいよ。自分に素直になればいいんだ。俺たちは特別なんだし、この先、ずっと一緒なんだから。分かるでしょ？」
　その一言で妙子は観念した。卓也は、自分が何を悩んでいたか、そして、何を望んでいるのか、そのすべてを理解している。もう、この子とは離れられない。そう、卓也はオスとして目覚めてしまった。そして、そうさせたのは自分なのだ。だから最後まで責任を取らなければ、いや、全ての欲望をさらけ出して自分を解放しなければならないと思った。
「繋がれている妙子おばさんはすごくきれいだよ」
　実際、ロープで繋がれている姿は蠱惑的で美しかった。否が応でも欲情をそそる。卓也はベッドの足下に立つと携帯を取りだし妙子へ向けた。
「た、卓也君‥‥」
「記念写真だよ。妙子おばさんが俺のものになるっていう。もう、妙子おばさんは抵抗しなくっていいんだ。俺にも、自分自身にもね」
「ああ‥‥」
　その通りだと妙子は思った。やはり卓也は何もかも分かっている。これから卓也がやろうとしているのは生け贄の儀式なのだ。もう、どうなってもいい、卓也の好きにされたかった。
　シャッターの電子音が響く。それは儀式の始まりを告げる音なのだと感じた。
「妙子おばさん‥‥」
　写真を撮り終えた卓也は妙子の頬を撫でながら言う。
「俺、妙子おばさんが大好きだからね‥‥だから、こうするんだ‥‥」
　卓也の指先が頬から首筋へ、そしてバストの頂きへと移っていった。
「ああっ‥‥」
　それだけで疼きが増し、妙子は仰け反りながら喘いだ。
　卓也は、そんな喘ぎを無視するように、腹部から下腹部へ、そして太股を指でなぞっていく。
「俺、やってみたかったことがあるんだ」
　卓也は妙子の足下へ移動するとスカートの裾をつかんだ。そして、フワリとフレアスカートを捲ると、頭をその中へ潜り込ませた。
　スカートの中はメスの匂いが充満していた。
　薄手の生地なので透過した柔らかい光で太股からショーツまでが浮かび上がったように見える。
　スカートを捲って直に見るより刺激的な眺めだと卓也は思った。
　純白で光沢のあるショーツの生地、そのクロッチの部分が貼りついて秘肉の形にシワが寄っている。
　きめの細かい内腿の肌は大理石のように輝いて見えた。
　たまらず卓也は唇を押しあて舌を這わせる。
「ああっ」
　妙子の身体がビクンッと痙攣して、スカート越しに甘い声が聞こえた。
「だめぇっ‥‥」
　クロッチの部分に鼻をあて匂いを嗅いだだけで妙子はブルブルと震えだした。
　15才の男の子にとってスカートの中というのは憧れの場所に違いない。裸を見るより、ある意味刺激的だ。卓也はその世界を堪能する。スカートの中だと分かるように、頭を使って裏地をテントのように持ち上げて写メも撮った。
　妙子にしてみれば、卓也が何をしているかが見えない。見られたり、触られたり、舐められたりしているのは分かるのだが、それを確認できない分、敏感になってしまうし、拘束され身動きができないので刺激が強く感じる。秘肉の部分を軽く触られただけで全身に電流が走ったように感じてしまうのだ。
「抵抗しないでいい」という卓也の言葉が妙子の頭の片隅をよぎる。もう、どんなに恥ずかしいことをされても抵抗できない、いや、抵抗しないでいいのだ。自分は、卓也がもたらす快感を甘受するだけの存在になったのだと思う。それは甘美な悦びだった。
　卓也はスカートの中の光景を眼と舌と手のひらで楽しみ続ける。その間、妙子は喘ぎ震えるだけだった。
　やがて満足した卓也はスカートを捲って顔を外に出した。
　太股が露わになる。
　妙子の頬が桜色に染まっている。
「暑いの？」
　興奮して額にうっすらと汗を浮かべた妙子を見て卓也は楽しそうに言う。
「すぐに涼しくしてあげるから、ちょっと待ってて」
　そう言いながら、妙子の全身や露わになった部分を写メで撮りまくる。
「も、もう‥‥やめて‥‥そんな写真どうするの‥‥？」
「決まってるじゃないか。宝物さ。最後まで記録するんだ」
「そ‥‥そんな‥‥」
「さて、暑そうな妙子おばさんのためにはこれ」
　卓也はロープを切るのに使っていたキッチン用のハサミを取りだした。
「な、なに‥‥」
　何が起こるのか分からず、妙子は不安で泣きそうな顔になる。
「大丈夫。俺が新しいの買ってやるから、小遣いはたっぷり残ってるし」
　そう言いながら卓也は妙子のお臍のあたりにハサミをあてる。
「ひぃっ‥‥」
　刃物をあてられた恐怖で妙子は息を飲む。
　ジョキッ！
　Tシャツの裾が切られた。ハサミが生地を切り裂きながら胸元へ迫る。
「や‥‥やめて‥‥自分で脱ぐから‥‥おねがい‥‥」
　着ているものを切られるのは、女にとってたまらない恥辱だった。こんな事をされるなら自分から脱いだ方がましだと思った。
「だめだよ。縛られてるんだよ。どうやって脱ぐの？」
「お‥‥おねがい‥‥おねがいだから‥‥ああっ‥‥」
　もうハサミは胸のあたりまで来ている。
　喉元に金属の冷たさを感じたときTシャツの衿が断ち切られた。
「ああっ‥‥ひどい‥‥こんな‥‥」
「まだ序の口だよ」
　卓也はニヤリと笑いながら断ち切ったTシャツの前を開ける。白いシンプルなブラジャーが露わになる。それは、ただ単に脱がすより数倍扇情的な眺めだった。興奮した卓也は、妙子に跨り、携帯を構えた。
「ううっ‥‥うっ‥‥うっ‥‥」
　妙子が嗚咽する。目には涙がたまっている。
　普段の卓也だったら、ここで怯んでしまうかもしれない。しかし、最後までやり遂げないと妙子との関係が続けられないと思い込んでいる卓也は、写真を撮りおわった後、ブラジャーのストラップにハサミを入れた。
「ああ‥‥もう‥‥やめてぇ‥‥」
　妙子の懇願にかまわず、卓也はストラップの次にカップの間の部分を切った。
　ゴムの弾力のせいでブラジャーは弾かれたように左右に分かれ、バストが露わになる。
「ああっ‥‥」
　絶望の声を上げる妙子の姿まで撮影する卓也は何かに取り憑かれているようだった。
「妙子おばさんは俺のものだ」
　卓也はそう叫びながら乳首用のローターを手に取る。そして、両方の乳首に付け、スイッチを入れた。
「あううっ！」
　妙子が身をよじらせ悶えると、それに合わせてローターが揺れる。
　卓也はまた写メを撮っている。
「ああっ‥‥も、もう‥‥ゆるして‥‥おねがいよ‥‥ああっ‥‥」
「そんなこと言ったって、さっきより濡れてるみたいだよ。ほら」
「ああんっ！」
　卓也の指がショーツの上から秘肉をなぞった。
　もう、クロッチの部分がシミになるほど溢れていた。
「これも邪魔だな」
　卓也はスカートをハサミで切りはじめる。
「や‥‥やめて‥‥もう、やめて‥‥ああっ‥‥」
　そう言いながら妙子は感じていた。まるでレイプされているみたいだと思った。でも卓也にだったらレイプされたいとMの血に目覚めた妙子は思った。思い通りにされることは最高の悦びだった。恥辱の果てにあるものは快感だった。蹂躙されればされるほど秘肉が熱く疼く。
（そうよ。もう、わたしは卓也君のもの。だから好きにして。もっと苛めて）
　妙子は心の中でそう叫んでいた。
「だめぇ‥‥おねがい‥‥た、卓也君‥‥」
　ローターのせいで秘肉が疼いてしかたがなかった。
「なにがダメなの？」
　卓也は余裕たっぷりだ。
「ああっ‥‥おねがいだから‥‥ああっ‥‥」
「だから？」
「ほ‥‥欲しいの‥‥」
「何が？」
「た、卓也君が欲しいの‥‥おねがいよ‥‥」
「これが終わったらオモチャを挿れてあげるよ」
　卓也はスカートを切りながら答える。
「そうじゃなくて‥‥た‥‥卓也君のが欲しいの‥‥」
「だめだめ。順番があるんだ」
　そう答えたとき、ついにスカートは一枚の布と化してしまっていた。拡げると白いショーツのシミが大きくなっているのが分かった。
「すごい濡れてるよ。妙子おばさんって、こんなにエッチだったんだね」
　卓也はシミになっている部分を指でなぞる。
「い、いやぁっ！　あうっ！」
　蜜のせいでヌルリと布地が滑る。ショーツの上から触られただけで妙子は高い声を上げながら痙攣した。
　身動きできない身体が恨めしかった。自分から秘肉を卓也の指に押しつけたいほどなのだ。
「すごく濡れてるよ。エッチな感じ」
　卓也はクロッチの部分を脇にずらして秘肉を露わにした。蜜が溢れて濡れたヘアーが大陰唇にへばり付いている。大の字に拘束されているので奥の方まで見えないのが残念だが、まだ楽しみには先があると思うと気分が昂ぶる。
「ああっ‥‥こんなのって‥‥」
　自分の興奮ぶりを指摘され、妙子は恥ずかしさで身悶えした。
「妙子おばさん。抵抗しなくていいんだよ。これから、もっといい気持ちにしてあげるから‥‥」
「ああんっ‥‥」
　予想していなかった挿入感に甘い声が漏れる。
　卓也がナマコのような形をしたオモチャを挿れたのだ。しかし、まだスイッチが入っていないので満たされない中途半端な感じがする。
「こうやってと‥‥」
　卓也は楽しげな顔をして、ショーツのクロッチの部分を伸ばし、モーターが埋め込まれたオモチャの後端を固定した。これでオモチャの秘肉を覆うヒダの部分がクリトリスの回りに密着した形になった。
「いくよ。妙子おばさん‥‥」
　卓也がスライド式のスイッチを入れる。
「いやぁ〜っ！」
　悲鳴に近い声だった。
　拘束された身体が何度もバウンドする。
「いやっ！　だめっ！　だめぇ〜っ！」
　妙子は鋭すぎる快感に頭の中が真っ白になり痙攣を繰り返す。
「つ、強すぎる‥‥ああっ！　こ、壊れちゃう‥‥いやぁっ！」
　ビンッ、ビンッ、と尿意にも似た鋭い刺激が脊髄を通って脳にまで達し、それがまた返ってくる感じだった。オルガスムスなんて生易しいものではなく、頂点に高められたままの状態を無理矢理そのままにされているような感覚だった。背中が弓なりに仰け反ったまま震えが止まらない。
　そんな妙子の様子を、卓也は動画に収める。
「妙子おばさん。俺が何してるか分かる？」
「お‥‥おねがい‥‥もう‥‥ゆるしてぇ‥‥あうっ！」
　言葉を発しようとしても最後は喘ぎに変わってしまう。
「俺、さっきからずっとエッチなところを写メ撮ってるんだ。この携帯、ビデオも撮れるんだよ。分かる？　この中にたくさんエッチな妙子おばさん入ってるんだ。後で一緒に見ようね」
「そんな‥‥ああっ‥‥やめて‥‥そんなこと‥‥ああんっ‥‥」
　遠くなる意識の中で妙子が哀願する。しかし、それはほとんど条件反射的な言葉に過ぎなかった。もはや羞恥など感じない。妙子は溶ろけた下腹部だけの存在になってしまったように感じていた。
「いやっ！　いやっ！　いやぁ〜っ！」
　恐ろしいほどの絶頂が訪れた。
「あああ〜っ！」
　長く叫ぶと同時に足につま先まで鍵型に曲がるほど身体が硬直した。その勢いで乳首に吸い付いていたローターが弾け飛んだ。
「あっ」
　卓也が声を上げる。
　ショーツが濡れたと思ったらなにやら液体が下のスカートにしたたりはじめたのだ。卓也は妙子が失禁してしまったことを悟った。あわててフレアスカートを手繰ってヒップを持ち上げるようにしてあてがい、流れ出るものを受けた。
　スカートがずっしり重くなる。
　妙子は、ほとんど意識を失っている。
　卓也はグッタリした妙子の姿を写メに収めると、ハサミでショーツの両脇を切って取り去り、小水を吸ったスカートと一緒に床へ投げ捨てた。そして、全裸で繋がれた妙子をもう一度撮る。まだ下の方のオモチャは挿さったままだ。卓也が気付くのが早かったためベッドは濡らさずにすんだ。
「‥‥も、もう‥‥おねがい‥‥ゆるして‥‥」
　やっと意識を取り戻した妙子が絶え絶えに哀願する。
　もう、下半身の感覚がない。漏らしているとき例えようのない快感があった。射精の快感もあんなものなのだろうかと、ふと思った。でも、卓也に見られてしまい、後始末までさせてしまったことが情けなくて、恥ずかしかった。
「きれいにしてあげるよ」
　卓也は妙子の言葉を無視してタオルで下半身を拭きはじめる。
「ああ‥‥」
　妙子は絶望したため息を漏らす。
　失禁した恥ずかしさ、それを始末してもらっていることはなお恥ずかしい。にもかかわらず、妙子は卓也にやさしさのようなものを感じていた。卓也がすることならなんでも受け入れられる。卓也のしたいことをして欲しいと思った。
「おねがい‥‥卓也君‥‥もう‥‥堪忍して‥‥オモチャを取ってくれたら‥‥卓也君の言うこと‥‥なんでも聞いてあげるから‥‥」
「ほんとに？」
「ほ、ほんとよ‥‥だから‥‥これ、もう‥‥取って‥‥おねがい‥‥」
「ほんとに何でも聞いてくれる？」
「い、いいわ‥‥だから‥‥早く‥‥」
「だったら、妙子おばさんのオナニーしてるとこ見せて」
「ええっ‥‥！？」
「ひとりでしてるとこ見たいんだ。それにビデオも撮りたい」
「そ‥‥そんな‥‥」
　卓也の想像を超えた欲求に戸惑う妙子。
「だめなら、こんどはこっちだよ」
　卓也は大きいバイブレーターのスイッチを入れて妙子に見せる。モーターの音とともに本体がくねりはじめる。
「や‥‥やめて‥‥おねがい‥‥」
　これ以上オモチャで責められたらどうにかなってしまうと妙子は思った。
「だったら、見せてくれる？　初めてエッチしたときひとりでしてたじゃない。こんどは、ちゃんと最後まで見せてよ」
　卓也は添い寝するかたちになって、わざと耳へ息を吹きかけるようにして言う。
「は‥‥恥ずかしいわ‥‥」
「誰にも見せたことないの？」
「あたりまえよ‥‥」
「なら、俺を初めての男にしてよ。俺、妙子おばさんの初めての男になりたいんだ」
「そ、そんな‥‥ああ‥‥」
　卓也に見られながら自分で慰めるところを想像したら下半身の感覚が蘇ってきた。それに、耳元でささやかれるとゾクゾクしてくる。
「何でもしてくれるって言ったじゃん」
　妙子が聞き入れてくれそうな雰囲気がしてきたので、卓也は甘えるように言う。
「オ‥‥オモチャ‥‥取って‥‥」
「見せてくれるんだね」
「ちょ、ちょっとだけなら‥‥あんっ‥‥」
　返事と同時に卓也はオモチャを引き抜いた。そしてロープを解きはじめる。
　白い肌に、くっきりと赤く残ったロープの跡。その痛々しさが、もう後戻りできない運命を象徴しているように思えた。
「こっちを向いて」
　卓也はベッドの上に立って妙子に携帯を向ける。
「ほ、ほんとうに、しなきゃだめ？」
「そうさ。あのときみたいにしてよ。約束だろ」
　そう言われても、妙子は羞恥で動けない。
「そうだ。あのときって、何考えてたの？」
「あのとき‥‥？」
「俺が妙子おばさんの下着でオナニーしてたの見つかっちゃった後、手でしてくれて‥‥その後、妙子おばさんもひとりでしてたじゃない」
「た、卓也君に‥‥してあげたら‥‥わたしまで感じちゃったの‥‥」
「それで？」
「卓也君の‥‥逞しいものを想像して‥‥」
「俺の、なに？」
「だ、だから‥‥」
「ちゃんと言って」
「ああ‥‥卓也君の‥‥オ‥‥オチンチンが‥‥ああっ‥‥」
　淫らなことを口にしてしまった恥ずかしさで言葉がつかえる。
「だめだよ。はっきり言ってくれなくっちゃ。これから俺の前で、ひとりでしてもらうんだから」
「ああっ‥‥」
　オナニーを見せなければならないと思うと、妙子は羞恥で意識が遠くなりそうだった。反面、見せてあげたい、見られたいという気持ちがあることも事実だ。
「も‥‥もう、ゆるして‥‥」
「話してくれないなら、自分でこれを挿れてもらおうかな」
　卓也がバイブレーターを手にする。
「おねがい‥‥ゆるして‥‥」
「じゃあ、聞かせてよ」
「わ、わかったわ‥‥言うから‥‥あのね‥‥卓也君の熱が収まって、一緒に、このベッドに寝てたとき、卓也君が後から抱きついてきたの‥‥そのとき、卓也君のが大きくなってて‥‥そのときから卓也君のが欲しいって思ったの‥‥トイレに行ってひとりでしたわ‥‥」
　意外な話に卓也は驚いた。
「妙子おばさん‥‥俺とエッチしたかったんだ‥‥」
「そうよ‥‥卓也君が倒れたとき‥‥とっても心配で、何でもしてあげたいって思ったの‥‥」
「見たい‥‥」
「えっ‥‥？」
「やっぱり、妙子おばさんが自分でしてるとこ見たい。俺のこと考えながらしてるとこ」
　卓也の真剣な口調に妙子の心が動いた。愛しい卓也のためなら何でもしてあげたいと思った。
「そんなに見たいの」
「うん‥‥妙子おばさんの全部が見たいんだ‥‥」
「わかったわ‥‥見せて‥‥あげる‥‥卓也君に‥‥だけよ‥‥」
　妙子はそう言うと、脚を開き、右手で秘肉をまさぐりはじめた。
　人差し指と中指でクリトリスの包皮を挟み、少し押さえ込むような感じで、ゆっくりと円を描くように指先が動く。
「うっ‥‥うんっ‥‥」
　妙子の身体がビクンと震え、押し殺した声が漏れる。
「もっと‥‥よく見せて‥‥」
　卓也が携帯を構えながら言うと、妙子は大きく脚を開いた。
　もう普通の精神状態ではなかった。頭の中に甘い霧がかかっているみたいで、蜜壺の奥の熱い疼きだけが妙子を支配していた。
（卓也君‥‥見て‥‥）
　妙子は心の中でつぶやきながら秘肉をまさぐる。
　だんだんと指の動きが速くなり、ピチャピチャと濡れた秘肉が奏でる卑猥な音が大きくなるのと反比例して抵抗感が消えていく。
「ああっ！」
　腹部がキュッと凹み、耐えられなくなった妙子は声を上げる。
　卓也の視線を熱く感じる。それが刺激となって、もう恥ずかしさも忘れて行為に没頭してしまう妙子だった。
「ああ‥‥た、卓也君‥‥なんでも、わたしが‥‥教えてあげる‥‥ああっ‥‥なんでも‥‥見せてあげるから‥‥ああっ！」
　妙子はそう言いながら腰を蠢かし、卓也へ潤んだ瞳を向け、自らを慰めた。
　卓也はビデオモードにした携帯を向けている。
「た‥‥卓也君‥‥ああっ‥‥見て‥‥」
「俺のこと考えてくれてる？」
「考えてるわ‥‥で、でも‥‥見られてるだけで感じるの‥‥こ、こんなの、はじめて‥‥ああんっ‥‥」
「おっぱいも揉んで見せて」
「い、いいわ‥‥こう‥‥？」
　妙子は空いた手ですくい上げるようにバストをつかみ、指先で乳首を挟んだ。たわわに実る果実みたいなバストが弾力を誇示するように歪む。
「こっち見て」
　卓也は上半身が写る距離まで近づいて言う。
「ああ‥‥こんな恥ずかしいところ‥‥どうするの‥‥あんっ‥‥」
　妙子は撮られていることを意識しながらオナニーを続けた。
「俺の宝物にするんだ。だから、もっとエッチな妙子おばさんを見せて」
「ああっ‥‥見られてると‥‥感じるの‥‥ああんっ」
「俺のものが欲しい？　欲しかったら携帯に向かって言って」
「ほ、欲しいの‥‥卓也君の‥‥オチンチンが‥‥ああ‥‥も、もう‥‥いく‥‥いっちゃう‥‥ああ〜んっ！」
　妙子の身体がビクン、ビクンと二度震えた。
　卓也は卑猥な言葉とともにオルガスムスを迎えた妙子の表情をアップで写した。
「すごい‥‥俺だけの妙子おばさんって感じだ‥‥」
　モニターに映し出された妙子の姿を見て卓也は思わずつぶやいた。
「そうよ‥‥卓也君だけ‥‥こんなことするの‥‥」
　まだ震えの収まらない身体で妙子が言う。
「最高だ‥‥俺の妙子おばさん‥‥大好きだよ」
　卓也は妙子を抱きしめ、バストに頬ずりをする。汗に混じったメスの匂いが卓也を欲情させる。
「こんどは俺のもので感じさせてあげるよ」
　卓也は着ているものを脱いだ。
「妙子おばさん。俺のオチンチン欲しい？」
　卓也は屹立を見せつけるようにベッドに立ちはだかった。
「‥‥たくや‥‥くん‥‥」
　上半身を起こした妙子は吸い寄せられるように屹立を口にふくんだ。無意識の行動だった。
「うう‥‥」
　卓也が呻く。ねっとりと絡んでくる舌の感触が艶めかしい。
　卓也は自分のものをほおばる妙子の姿も携帯に収めた。
「そうだね。今日は、まだ、口でしてもらってなかったね」
　卓也の声はまだ余裕を残している。
「俺も口でしてあげるよ」
　卓也はゆっくりと腰を下ろすとシックスナインの体勢になるよう妙子を誘導する。
「いい眺め‥‥」
　目の前いっぱいに拡がる濡れた秘肉。両手で拡げるとポッカリとサーモンピンクの蜜口が開いた。
　卓也は舌を伸ばす。
「ううっ‥‥んっ‥‥んっ‥‥」
　軽くクリトリスへ舌先を這わせると、妙子は声にならない喘ぎを上げ、腰を蠢かせた。蜜で濡れきったアヌスがヒクリと縮む。
「ううんっ‥‥ん‥‥」
　その反応が面白く、卓也は舌先でクリトリスを断続的に舐め、そのたびに妙子が喘ぐ。
「こっちも可愛がってあげるよ」
　しばらく、続けた後、卓也は舌先でアヌスをくすぐるように愛撫した。
「うんっ‥‥ううんっ‥‥」
　妙子が激しく反応する。しかし、嫌がっている様子はない。
「感じてるみたいだね」
　舌先を硬くして挿し込むようにすると妙子は腰を振って応えた。
　試しに中指を押し込むように力を入れると抵抗もなく第二関節のあたりまで飲み込まれた。
　卓也は、妙子が生理のときアヌスへ挿入したことを思い出していた。また、あの感触を味わいたい。しかし、それだけでは妙子を徹底的に感じさせて征服するための決め手に欠けるように思った。そして、ひらめいた。空いた手でナマコのようなバイブレーターを探り当て、スイッチを入れ蜜壺へ挿入しながらアヌスに入った指を抽送した。
「ああ〜んっ！」
　唇を屹立から離して、妙子は堪らず大きな声で叫んだ。
　妙子は心のタガが外れてしまった感じで、何をされても抵抗感がないし、卓也のすること全てが官能を揺さぶって感じてしまう。熟しきった秘肉への鋭い刺激に頭の中が真っ白になった。そして、アヌスへの甘い圧迫感の中で、またオルガスムスを迎えていた。
　その間に、卓也は体勢を逆転させ、妙子を仰向けにした。まだバイブレーターは挿さったままだ。そして、手を添えて屹立をアヌスへあてがう。
「俺だけのものにしてやる」
　卓也はそう言うと腰に力を入れた。
「いやぁ〜っ！」
　妙子の悲鳴にも似た声。
　多少の抵抗はあったが、妙子の唾液としたたり落ちた蜜が潤滑剤となって、亀頭がアヌスへ飲み込まれた。
「ああっ！　ああんっ！」
　二穴同時挿入に妙子は目を見開き、空気を食む金魚のように口をパクパクさせる。
　卓也は、さらに腰に力を入れ深く挿入した。
「ゆ‥‥許して‥‥あっ‥‥ああっ‥‥」
　強烈な圧迫感に、妙子はシーツを握りしめて耐える。苦痛はないが、屹立が灼熱した鉄棒のように感じる。そして、下半身がその熱で溶かされていくようだった。
「妙子おばさんは俺のものだ‥‥」
　卓也がアヌスの締め込みに抗うよう尻に力を入れ呻くように言う。
「そ、そうよ‥‥わ、わたしは‥‥た‥‥卓也君の‥‥卓也君のもの‥‥」
「ここまできたら、もう離れられないんだ。だから‥‥」
「わ‥‥わかったの‥‥ああっ‥‥もう、卓也君が一人前の男だって‥‥だから、いいの‥‥好きにして‥‥感じる‥‥感じちゃう、ああんっ！」
　最後の言葉は悲鳴のようだった。
　完膚無きまでに感じさせてしまえば迷いは吹っ切れるという思い込みからの責めを受け入れ、そして高らかに悦びの声を上げている妙子の姿を見下ろして、卓也は一層の愛情を感じた。すべてを晒し、肌を上気させながら喘ぐ妙子がこの上なく美しく見える。
　卓也はもっと感じさせたいと思った。しかし、アヌスの中はきつくて抽送するのは難しい。そこでバイブレーターのスイッチを最強にした。
「いやぁ〜っ！」
　妙子が硬直する。
　同時にアヌスと蜜壺の薄い肉を伝わってバイブレーターの振動が亀頭へ伝わってきて、卓也にも痺れるような快感が襲ってきた。
「ううっ‥‥」
　その刺激の強さに卓也は思わず呻いた。妙子はもっと感じているはずだと思うと我慢ができなくなった。
「た‥‥妙子おばさんっ！」
　妙子の名前を呼びながら卓也は思いきり放出した。
「ああ〜んっ！」
　熱い奔流を受けた妙子は高らかに啼いた。それは自らの運命を悟り、献身を誓う叫びだった。


エピローグ

　そして数ヶ月が過ぎた春の日。
　ブレザーの下にニットのベスト、そしてチェックのプリーツスカートという典型的な女子高生スタイルの恵美子が卓也の家のチャイムを鳴らす。
　卓也と恵美子は揃ってK大付属に合格して、毎日一緒に通学するようになったのだ。
「おはよう‥‥」
　まだ眠たげな卓也がドアを開ける。
「おはよう。タク」
　恵美子は卓也のことをタクと呼ぶようになった。
　あれから二人きりになる機会がなかなかできなかったので数えるほどしか身体を合わせていない。なのに、卓也に処女を捧げたときに比べると、ずいぶん艶っぽくなった感じがする。
　卓也にとってセックスはゆっくりと時間をかけて楽しむものだったから、ガツガツと恵美子を求めるようなことはしなかった。だから、恵美子の方がいつも卓也に抱かれることを熱望する結果となり、想いを遂げたときには身体が溶けるようになってしまう。そして、終わった後は卓也への愛情を一層感じるようになった。卓也の念入りな愛撫は、恵美子を女として確実に開花させ、可愛らしさに妖艶さを加えた美少女に変身させた。入学当時、恵美子の美貌は新入生のみならず評判になったほどだ。
「いってらっしゃい」
　ドアの奥には卓也を笑顔で送り出す妙子がいた。
　妙子との関係もますます親密になった。
　あの夏の日、卓也と妙子の関係は決定的なものになった。妙子は卓也の母親であり、恋人であり、愛人であり、あるときは教師、奴隷になることもあるし、好奇心を満たすための実験台になることもある。
　たまに卓也は考えることがある。二人の女性を同時に愛していることについてだ。特に妙子との関係は秘密にしなければならないし、この先どうなるのか予測もつかない。もし他人に知れたら大変なことになるだろう。しかし考えても無駄なのだとも思う。大切なのは自分の気持ちで、他人の眼ではない。卓也が等しく二人を愛しているのは事実だ。いつか妙子がしていた常識についての話を思い出し、このまま、なるようにしかならないのだから、精一杯二人を愛せばいいのだという答えにたどり着く。
　妙子は母親以上という自分の立場に満足している。母性を超越する母性を発揮する対象に出会ってしまったからだ。卓也は、愛し育て上げる大切な存在なのだ。
　恵美子にとって卓也は理想の恋人だ。卓也以外のことなど考えられないし、このまま関係が続いて一緒になることを望んでいる。
　三者三様、それぞれの想いとともに時は流れる。
　卓也の甘い生活はこれからも続きそうだ。