SCENE 9

　毎晩、妙子と静雄の寝室の前で聞き耳を立て、寝静まるのを待って脱衣場から下着を抜き取ってオナニーをしていた。そんなことが一週間も続くと、下着だけでは満足ができなくなった。それに期待していた夫婦生活の声も聞こえない。
　なんとかして妙子の裸が見たい、卓也がそう思うようになったのは自然な流れかもしれない。
　そんなある日の日曜日、妙子と静雄は二人で出かけていった。友人に招かれたそうで、昼食や夕食もひとりで済ませるよう言われた。
　卓也は二人を見送って寝室へ向かう。以前は母親が使っていた部屋だが、様子がまるで変わっていた。クイーンサイズのベッド、落ち着いた色のインテリアはまるで他人の家へ来たようだ。まだ整理の終わっていない段ボールもある。
　妙子に関するすべてが気になる。もしかしたらこの部屋を覗ける場所があるかもしれない。そんな思いから衝動的に寝室へ忍び込んでしまったのだ。
　卓也はワードローブを開けた。
　静雄のスーツ類と妙子の服が分けて吊り下げられている。その中に見覚えのあるワンピースがあった。新婚旅行のお土産を持ってきたときのものだ。
　卓也はそのワンピースを抱きしめるようにして匂いを嗅いだ。スカートの裾から中に手を入れてみる。サラサラとした裏地の感触が妙子の肌を思わせる。たまらずハンガーごとはずしてベッドの上へ置く。そしてスカートをめくったところで卓也は急に空しくなった。
　そこにあるのは、ただの布きれに過ぎない。抱きしめたり、見たりしたいのは生身の妙子なのだ。まだ、直に肌に触れた痕跡のある下着類の方がいい。そう思ってワードローブを漁るのはやめにした。
　ドレッサーの上にピンクの小瓶がある。イヴ・サンローランのベビードールだ。卓也には香水だということしか分からないが、手にしてみると妙子の匂いがして胸が騒がしくなる。
　あちこちの引き出しを開けて中を探っていると何冊かのアルバムが入った棚があった。一番上にある一冊を開いてみる。それは新婚旅行のアルバムだった。その中の一枚に、デッキチェアーに寝そべり水着姿で微笑む妙子の写真があった。露出度の高いビキニだ。ハワイの明るい空以上に妙子の肌が眩しい。卓也は長い時間、その写真に見惚れていた。
　ページをめくっていくと、最後にアルバムに貼られなかった写真が束になって挟んであった。その中に、気になっていたビキニ姿の妙子の写真もあった。
　卓也は、その一枚を抜き取りポケットの中に入れる。そのとき電話が鳴り、心臓が破裂するほど驚いた。
　あわてて棚を元通りに戻して玄関脇にある電話を取る。
「もしもし、三上さんのお宅ですか。わたし、安藤と申しますけど卓也さんご在宅ですか」
　電話口の向こうから聞こえてきたのは恵美子の声だった。
「なんだ。安藤か‥‥びっくりさせるなよ」
「あ、三上くん。急なんだけど、今日遊びに行ってもいい？」
「ん‥‥いいけど‥‥何の用？」
「三上くん、K大付属受けるんでしょ？　わたしも、いま迷ってるんだけど、資料とかあったら見せて欲しくて‥‥」
「いいよ」
「何時くらいだったら都合いい？」
「いつでもいいよ。今日はひとりですることないから」
「だったら今すぐ行くから」
　気がつくと電話は切れていた。
　恵美子の家は歩いて十分ほどしか離れていない。卓也は部屋に戻ると、妙子の写真を机の引き出しに仕舞おうとポケットから取り出し、しばらく見入っていた。
　それは卓也にとって性の目覚めを象徴するイコンであった。
　写真を封筒に入れて引き出しへ仕舞ったとき玄関のチャイムが鳴った。

SCENE 10

「こんにちは。急にごめんなさい」
　恵美子は先日と同じようなデニムのミニスカートに太いベルトを巻き、赤いタンクトップという格好だ。まだ少女らしさが残る身体つきだが、硬そうな胸の膨らみや細いウエストは十分に女を意識させるものだ。
「なんだよ、安藤。また、そんな格好して。男の家に来るってこと分かってんのかよ」
「だって、暑いんだもん」
　恵美子は屈託がない。
「まあ、あがれよ」
「お邪魔しま〜す」
　恵美子は大きな声で言う。
「だからぁ、誰もいないんだって」
「えっ、そうなの？」
「今日は俺一人で留守番なの。ったく、何聞いてんだよ。で、どうする？　俺の部屋来る？」
「うん。資料見せて」
　恵美子は卓也の部屋に入ると勝手にベッドへ座ってしまう。
　明るく物怖じしないし、成績はトップクラス。おまけにアイドル顔負けの可愛らしさの恵美子が自分のベッドに座っている姿を見て、卓也はドキドキしながらも不思議な気分だった。恵美子がここにいる理由がイマイチ分からないのだ。
「これ。学校案内と過去問題集」
「ありがと。見せてね」
　机の上にある本棚から取り出した資料を差し出すと、恵美子は立ち上がらず腰をずらせて卓也の方へ移動してきた。スカートの裾が持ち上がり真っ白なショーツが丸見えだ。いや、それどころか真ん中の部分に一本皺が寄っているのまで見える。
「安藤。前にも言ったろ。パンツ見えてんだよ。ベッドの上だしさ。ちょっとは、そういうこと考えろよ」
「ごめん、ごめん。なんだか自分の家に居るみたいな気になっちゃって‥‥でも、三上くんはちゃんと言ってくれるから‥‥」
「どういう意味？」
「だって、黙って覗くような人じゃないもの」
「俺だって、いちおう男なんだけどな」
「気になる？」
「当たり前だろ」
「分かった。ちょっと反省」
　恵美子は、まるで恥ずかしがっている気配がない。
「安藤もK大付属受けんの？　お前だったら都立の一番良いところでも行けるんじゃない？」
　拍子抜けした卓也は話題を変える。
「う〜ん‥‥言っちゃおうかなぁ‥‥」
「なんだよ‥‥」
「わたしね、三上くんとおんなじ高校行きたいの‥‥」
「それって‥‥」
　卓也は息を飲んだ。
「迷惑‥‥？」
　恵美子の目が潤んでいる。
「そ、そんなこと‥‥ないけど‥‥」
「ほんと？」
「うん‥‥」
　その後、しばらくの間、二人とも押し黙ったままだった。
　まだ二人とも中学生。気の利いたことも言えないし、その後の行為のことなど思いもつかない。
　恵美子は両手をマットレスに置いてうつむいている。卓也からは太股の間にあるショーツがよく見える。
「安藤‥‥見えてるってば‥‥」
　なんだか妙に興奮している。このまま押し倒しても抵抗などしないのではないかと想像したからだ。
「ばか‥‥」
　恵美子がスカートの裾を引っ張る。
「ねえ‥‥」
「ん？」
「だったら見えないように隣に来てよ‥‥」
「うん‥‥」
　卓也もベッドに座る。
「わたしも‥‥K大付属行くからね‥‥」
　恵美子はそう言うと、卓也の方へもたれかかってきた。
　卓也の着ているTシャツ越しに恵美子の体温が伝わってくる。夏の暑さにもかかわらず、それは心地良いものだった。軟らかな肉の感触に陶然とする卓也。この状況なら腰に手を回したって、いや、キスしたって恵美子は受け入れてくれるに違いない。そんなことを考えながら、卓也はまんじりともしないでいる。
　そのまま時間だけが過ぎていった。
　卓也は、恵美子が来る前に自分がしていたことを思い出していた。それを恵美子が知ったらどうなるのだろう。きっと嫌われてしまうだろう。でも、どうでもいい。しかし、妙子が知ったら、そこまで考えると恐ろしくなった。自分の中には妙子がいる。そう思い知らされた。
「安藤‥‥」
「なに‥‥？」
「ジュースでも飲まない？」
「うん‥‥喉カラカラ‥‥でも、もう少しこうしててもいい？」
　恵美子が手を握ってくる。
　その汗ばんだ手のひらを意識したとき、恵美子の髪から漂ってくるシャンプーかリンスの匂いに初めて気がついた。恵美子の体温が上がったせいかもしれない。自分の心臓の音が聞こえるほど興奮した。
「うん」
　卓也は答えながら「女も男みたいに興奮するのかな」などと考えていた。
　恵美子がミニスカートでやってきたのも理由があるのかもしれない。クラスのアイドルが、こんな格好で隣にいる。もしかしたら俺を誘っているんじゃないかと思ったら、みるみるうちに股間が膨らんできた。
「ジュース持ってくるよ」
　勃起しているのがバレたら恥ずかしいので、卓也はそう言って立ち上がった。
「わたしも行く」
　恵美子も緊張と興奮の極にあった。卓也にもたれかかったときから下半身が熱くなりモヤモヤとしていたのだ。
「ねえ‥‥おトイレ貸して‥‥」
　二人で階段を降りたとき恵美子が小さな声で言った。ショーツの中が気持ち悪いのだ。
「廊下の奥の右側」
　卓也の説明を聞き、恵美子は内股で歩いていった。
　トイレに入りショーツを下ろすと内側が濡れていた。
（やだ‥‥なにこれ‥‥）
　秘部からヌルヌルとしたものが溢れている。恵美子はベッドに座っているとき、卓也に抱きしめられキスされるところを想像していた。いや、そうされたかった。卓也が母親を亡くして欠席したとき、恵美子は自分の気持ちに気がついた。事情を聞いて、自分が助けてあげたいと思った。幼い母性が爆発した。勇気をふるって卓也の家を尋ねた。今日だって駅前で偶然叔父夫婦が出かけるのを見かけ、卓也に会いたくなって電話をかけたのだ。
　恵美子はトイレットペーパーを丁寧に重ね秘部を拭う。
「あん‥‥」
　背筋を駆け抜ける甘い刺激に思わず声が出てしまった。
　聞こえただろうか？　そんな心配をしながら恵美子は濡れたトイレットペーパーに見入る。
（わたしって、こんなにエッチだったっけ‥‥）
　優等生を絵に描いたような恵美子だが中身は普通の女の子だ。好きな男の子に優しくされたいし、ちょっとエッチなことにも興味がある。もし卓也が望むなら、それで卓也が癒されるなら処女を捧げたっていい。そこまで思い詰めていたのだ。だからミニスカートとタンクトップという軽装で出かけた。卓也の部屋に入ってから、そんなことばかり考えていたからヘンになってしまったのかもしれない。しかし、卓也は紳士だった。恵美子は、そんな卓也がますます好きになっていた。
「安藤。こっち、こっち」
　卓也がリビングダイニングのドアから顔を覗かせる。
「あ‥‥うん‥‥」
「どしたんだよ」
　ダイニングへ入ってきた恵美子を見て、卓也が言った。うつむきがちで、いつもの恵美子らしくない。
「‥‥なんでもないの‥‥」
「喉渇いてたんだろ。テーブルの上にジュース置いといたから。俺なんか、我慢できなくて、もう飲んじゃった」
　見ると、ダイニングテーブルの上にグラスが置いてある。氷も入っていて、卓也の気持ちがうれしかった。
「ありがと」
　恵美子は椅子に座りジュースを少し飲んだ。何か話したくても言葉が出てこない。
「やっぱヘンだぞ、お前」
　恵美子は卓也と目を合わせようとしない。
　なんだか気まずい沈黙。
「わたし帰る‥‥」
　見ると、恵美子の瞳に涙がたまっていた。
「どうしたんだよ、急に？」
　そう聞いても恵美子は足早に玄関の方へ行ってしまう。
　サンダルを履いている恵美子を卓也はただ見ているしかなかった。
　そんな卓也に
「三上くん。わたしのこと嫌い？」
　恵美子が涙をためて聞いてくる。
　卓也は気迫に押されたかたちで首を振った。
「安藤を嫌いな奴なんかいないよ‥‥」
「そういうんじゃなくって‥‥」
「俺は、お前が来てくれてうれしいし‥‥同じ学校へ行くのもうれしいんだけど‥‥なんか、いまは気持ちが乗らないんだ‥‥」
　卓也の頭の中には妙子がいる。しかし恵美子は母親のことを言っているのだと思った。
「そうだよね。ごめん。わたし三上くんの助けに少しでもなれればと思ってたのに‥‥それなのに‥‥」
「いいんだよ。気を遣わないで。また来いよ」
　恵美子は勘違いしている。しかし、それならそれでいい。恵美子と一緒にいるのも楽しいし、好意を寄せられていることだってまんざらじゃない。
「いいの？」
「もちろんさ。一緒にK大付属行こうぜ」
　恵美子はしばらく黙っていた。そして、意を決したように
「三上くん。大好き」
　そう言って玄関を飛び出していった。

SCENE 11

　返事を返すこともできず、卓也はそこに立ちつくしていた。
（明日、学校でどんな顔して安藤と会えばいいんだろ）
　そんなことを考えると思わずやにさがってしまう。
（しかし、安藤が俺のことをねぇ‥‥）
　クラスの友達に知られたら何て言われるだろう？　嫉妬するヤツもいるに違いない。なにしろ、恵美子にはファンクラブ的な集まりさえあるのだ。
　想いを巡らすうち、卓也は楽しくなってきた。

SCENE 12

　その日、静雄と妙子がタクシーで帰ってきたのは十時過ぎだった。
　二人とも相当酔っている。
「卓也君、夕食ちゃんと食べた？」
　妙子は上機嫌だ。見れば上体が揺れている。
「うん。カレー美味しかったよ」
　卓也の答えを聞いて、妙子はニッコリ笑い、ソファーに勢いよく腰を下ろした。座るというより倒れ込む感じだ。
「おーい、妙子。先にシャワーを浴びるぞ」
　そう言う静雄もフラフラとしている。
「どうぞ。わたしも後から入るから‥‥」
　そう言いながら、まぶたは半分閉じている。
「妙子おばさん。僕も、もう寝るから。おやすみ」
　なんだか邪魔しては悪い雰囲気なので、その場から離れることにした。しかし、妙子の返事はない。なんだか気になって、卓也は階段の途中で様子をうかがうことにした。
　十数分も経っただろうか。寝室から静雄の猛烈ないびきが聞こえてきた。しかし、妙子がバスルームに入った気配はない。
　卓也はそっとリビングを覗く。
　妙子はソファーに寝ていた。
「おばさん。妙子おばさん。こんなとこで寝ちゃだめだよ」
　卓也は妙子の肩を揺する。しかし、まるで反応はない。寝息は規則的で身体から力が抜けきっている。
「妙子おばさん‥‥ねえってば‥‥」
　もう一度、こんどは少し強めに揺すってみる。
　身体が揺れるだけで起きる気配はない。
　卓也はゴクリとツバを飲み込んだ。
「妙子おばさんってば」
　そう言いながら手を胸の方へ下げていく。そして、ついにノースリーブのシャツの上からバストの頂きに手のひらを乗せる。
　想像以上に柔らかく、たっぷりとした量感に心臓が喉から飛び出しそうだ。
「おばさん‥‥妙子おばさん‥‥」
　全神経を手のひらに集中させながら、興奮で枯れてしまった声で卓也は呼び続ける。
　大丈夫そうだ。卓也はゆっくりとバストを揉み感触を確かめる。
　妙子は起きそうもない。卓也は夢中で力を込めて弾力を楽しむ。
　そして、ひざまずき、あの夜、想像していたように両手でバストを握った。もう、頭の中は真っ白だ。
「うう〜ん‥‥」
　妙子が邪魔者から逃れるように寝返りを打った。
　卓也はびっくりして身を引く。
　すると、また元通りに仰向けになった妙子は膝を立てた。
　フレアスカートが腰までまくれ上がり、張りのある太股がむき出しになった。
「‥‥」
　卓也は息を飲み込む。
　脚の付け根から艶やかな白いシルクのショーツが見えるのだ。
　卓也は足音を立てないようによく見える場所へ移動する。そこには夢にまで見た妙子の肢体があった。最初の晩、チラリとしか見ることができなかった妙子の伸びやかな脚。それを今はじっくりと見ることができるのだ。
　卓也はジーンズの尻ポケットに差している携帯を取り出す。シャッター音で起こしてしまうリスクはあるが、それでも妙子の無防備な姿を記録したかった。こんなチャンスは滅多にあるものではない。
　パシャ
　電子音が鳴る。が、気がつかないようだ。気をよくした卓也はアングルを変え何枚も撮影する。そうしてしているうち、立てた膝が伸ばされた。
「おばさん‥‥」
　もう一度呼んでみる。しかし、眠りが浅くなった様子はない。
　卓也はソファーの背の方に立ち、スカートの裾に手を伸ばした。そして、ゆっくりと腰のあたりまで捲り上げる。ついにショーツが丸見えになった。
　ウエストのくびれからボリュームのあるヒップへのラインが艶めかしい。それより卓也を興奮させたのは恥丘の膨らみだった。その部分をアップで撮る。それから卓也はじっくりと観察した。
　シルクの生地を持ち上げている恥丘の下はストンと落ち、その先の影になった部分は複雑に皺が寄っている。
　もう卓也は限界だった。
　その場でジーンズの上から屹立したものを擦る。
　あっという間に噴出してしまった。
　ソファーの後ろでしゃがみ込んだとき妙子が目を覚ました。
「あ‥‥あれ‥‥」
　まだ酔いが残っている妙子は朦朧としている。
　卓也は最後のときが来たと覚悟を決めた。しかし、妙子は捲れたスカートを気にすることもなく立ち上がり、寝室の方へ千鳥足で向かう。
「大変‥‥こんな時間‥‥」
　妙子の声が聞こえる。
　そのまま卓也がソファーの後ろに身を潜めていると、やがて水音が聞こえはじめた。
　いつもより音が大きい。
　立ち上がって電気の消えたダイニングのドアを小さく開けて覗くと、バスルームのドアが開けっ放しだった。磨りガラスの向こうには肌色のシルエットが見えている。
　そのまま待っていると、妙子がバスルームから出てタオルで身体を拭きはじめた。
　逆光気味に浮かび上がる全裸の妙子。息を飲みながら見つめる卓也。
　モデル顔負けのスタイルだ。
　ヘアーの翳りを見てペニスに硬度が蘇る。タオルの動きにシンクロして揺れるバスト、その先端の薄茶っぽい乳首が卓也を夢中にさせた。
　もうバレたっていい。見つかれば今降りてきたところだと言えばいい。ドアを開けっ放しでシャワーを浴びていた妙子が悪いのだ。そう思って卓也はダイニングのドアを大きめに開け一部始終を覗いていた。
　そかし、酔いのせいか、こんな時間に誰もいないと思っているのか、妙子はあたりに注意を払うことなくショーツとTシャツを着け寝室に消えていった。
「すげぇ‥‥」
　小さくつぶやいた卓也は大胆にも脱衣場へ入っていく。大胆という言葉は適当じゃないかも知れない。興奮しきっているのだ。
　ランドリーボックスを開けると普段より乱雑に着ていた服が積み重なっていた。バスタオルの下にあのショーツがあった。卓也はそれを取り出し、その場で匂いを嗅いだ。まだ時間が経っていないせいか、いつもより匂いが強く感じられる。
　卓也はクロッチの部分に唇を押しあてながらジーンズの上から股間を擦る。
　ドクッ、ドクッ
　激しい放出感に痺れながら、卓也はいつまでもショーツの匂いを嗅いでいた。