SCENE 17

「過労ですね。ひどく衰弱して風邪にやられたのでしょう。幸い肺炎などは起こしていないようです。いま解熱剤と栄養剤を点滴していますので直に落ち着くでしょう」
　救急病院の担当医が言った。
　妙子は今までの事情を医師に話す。
「そうですか‥‥過度のストレスがあるのかもしれませんね。悪い例えで恐縮ですが、長年連れ添った夫婦が続けて亡くなられるのも、こういった原因があるんです。でも、若いから心配はないでしょう。とにかく今日は入院してもらいます。熱が下がって退院しても三日くらいは安静にしていて下さい」
　もし万が一のことがあったら、そう思うと妙子は気が遠くなりそうだった。それでも気を取り直し、静雄へ電話する。妙子は一晩付き添うことにした。
　病室に移され昏々と眠る卓也を見て、妙子は抱きしめて守ってあげたいという想いに駆られた。
　空が白みはじめ、卓也の呼吸も安定しているので、妙子もウトウトする。気がつけば、あたりが騒がしい。病院が活動を開始したのだ。看護師がやってきて入院の手続きについて説明があった。薬のせいで当分は起きないという話を聞いて妙子はいったん家へ帰ることにした。

SCENE 18

「やつれて見えたのは風邪だったんだなぁ」
　まだ家には静雄がいた。
「過労って言われたときは責任感じちゃったけど、やっぱりお義姉さんのことが原因よね。力になってあげたいわ」
　妙子が言う。
「難しい年頃だしな。お前に頼って悪いが、もう行かなくっちゃ。よろしくな」
「いってらっしゃい」
　静雄を見送ると力が抜けた。しかし、入院の準備、学校への連絡など、やることが山積みだ。つくづく母親というものは大変だと思い知らされる。反面、卓也がうわごとで自分のことを呼んでいたことを思い出し胸が熱くなった。

SCENE 19

　昼過ぎに病院へ行くと、熱も下がったから安心だと医師から知らされ胸をなで下ろした。見れば、顔色も良くなっている。
　妙子は卓也の髪を撫でながら寝顔を見守っていた。
「あれ‥‥ここ、どこ？」
　妙子が来てから一時間ほど経ったとき、卓也が目を覚ました。
　不思議そうに辺りを見回している。
「気分はどう？」
　妙子の問いをまだ理解できない様子だ。
「ひょっとして、ここ病院？」
「そうよ。心配したんだから」
　妙子の目が涙で潤んでいる。
「ごめんね。迷惑かけちゃったみたい‥‥」
　卓也の言葉に、この子はこんなだから心労で倒れてしまったのだと思う妙子だった。自分のお腹を痛めた子供じゃないのに、この場で抱きしめたいほど愛おしかった。
　しばらくすると医師が診察にやってきた。
「もう心配はないでしょう。すぐにでも退院できますが、大事を取ってもう一晩様子を見ますか？」
　医師の言葉に
「俺、帰りたい‥‥」
　卓也はそう答えた。
　妙子は医師に呼ばれて別室へ行った。
「ストレスが原因だとも考えられるので睡眠導入剤を処方しておきます。就寝前に服用して下さい。今日明日は夕食後の方がいいかもしれません。よく眠れますから。強い薬なので用法は必ず守って下さい。一番大事なのは睡眠と栄養補給です。もし、これからも具合が悪くなるようだったら心療内科を紹介しますので、くれぐれも気をつけてあげて下さい」
　そう医師に告げられ、「わたしがなんとかしてあげたい」とますます母性が募る妙子だった。
　卓也は夕方退院した。

SCENE 20

　消化のいい夕食を作って薬を飲ませると卓也は眠気を訴えた。まだ回復しきっていない身体に睡眠導入剤が効いたらしい。
「妙子おばさん‥‥なんかヘンだよ」
「どうしたの？」
「なんだか目が回る」
「立てる？」
「うん‥‥」
　テーブルに手をついて立ち上がった卓也は泥酔したみたいにフラフラしている。
「卓也君、今日は私の部屋で寝なさい」
　まだ様子を見ていたいし、この状態で階段を登らせるのは危険だと思った。
「う‥‥うん」
　卓也は判断力がなくなっていた。妙子に言われるまま、身体を支えられて寝室へ向かう。
　卓也の体臭が強く匂った。高熱で汗を大量にかいたせいだろう。そうでなくても、新陳代謝が激しい年頃なのだ。
「卓也君、身体を拭いて着替えた方がいいわ。汗をかいたままだと身体に悪いから」
　妙子はそう言ったが、ベッドに横たわった卓也は返事もしない。一目で深い眠りに入っていることが分かった。
「しょうがない子ねぇ」
　妙子は自分に言い聞かせるように言って蒸しタオルの準備をした。せめて上半身だけでもきれいにしてあげたかったのだ。
　パジャマを脱がすと、意外に引き締まった卓也の身体に驚く。それに少年の肌は艶がいい。ちょっぴりエロティックな気分になりながら、まるで新しい着せ替え人形を手に入れた女の子のように、妙子は卓也の身体を熱心に拭いた。苦労して静雄のパジャマを着せる。卓也の身体は力が抜けきっていて起きる気配もない。
　家事を済ませると、妙子は卓也の隣に寝た。さすがにTシャツとショーツというわけにいかず、スポーツブラとスエットパンツを着るが、一緒のベッドで寝ることにまったく抵抗はなかった。
　夜中に妙子は淫夢を見た。あまりのリアルさに目を覚ます。卓也に後ろから抱きしめられていた。
「ちょ‥‥ちょっと、卓也君‥‥ダメよ‥‥」
　妙子は小声でたしなめながら逃れようとする。
　しかし、卓也は夢の中にいるらしく、腕を振りほどこうとする妙子をグイグイと抱きしめてくる。いくら少年といっても力は大人と変わりない。
　淫夢のせいもあって下半身に疼きがある。そんな状態で強く抱きしめられると甘い感覚が全身を駆けめぐる。
　本能のなせる技か、卓也は妙子のヒップに股間を押しつけてきた。
　卓也は勃起していた。
（な‥‥なにこれ‥‥）
　熱く猛った卓也のものの大きさに妙子の理性が千々に砕ける。
　熟しきった身体が望んでも半年間手に入らなかったものがそこにある。
　卓也の屹立から脈が伝わってくるようだ。
　太ももをすり合わせると秘肉が濡れているのが分かった。
（だめ‥‥だめよ‥‥）
　そう思っても卓也に対する抵抗感はない。むしろ卓也の逞しさをうれしく思っている自分がいた。
　ほとんど無意識に、妙子はヒップを突き出し、双丘の間を卓也のものに押しあてる。そして、スエットパンツの中へ手を滑らせて一番感じる部分を中指で押さえていた。
　キューンと切なくなるような感覚が秘肉から背筋を走る。
　ヒップにあてがわれているものを自分の中に収めたいと狂おしいほど思った。
　しかし、そんなことはできるはずがない。いや、してはいけないことなのだ。
　妙子は必死で卓也から逃れるとトイレに駆け込んだ。ショーツの中へ手を差し入れて確かめてみると洪水のように濡れているのが分かった。そのまま指で秘肉をまさぐり、立ったまま痙攣した。妙子は、寝ている卓也のズボンを脱がせ、自ら跨って腰を下ろし屹立に挿し入れているところを想像していた。
（なんてことかしら‥‥）
　もう卓也の隣には寝られない。もう一度抱きしめられれば‥‥その先を想像するのが恐ろしかった。
　妙子はショーツをはき替えソファーで眠った。