SCENE 27

　情事の後の気恥ずかしさは特別なものだ。
　無理矢理に奪ってしまったのではないかと思っている卓也にしてみれば、どんな態度を妙子にとっていいのか悩んでしまう。
　反対に妙子はもう割り切っていた。「女は子宮で考える」と言った人がいるそうだが、まさしくその典型だった。母性が愛情に変化していたのを素直に受け入れていた。静雄に対する罪悪感も薄い。卓也が静雄に似ているせいかもしれない。とにかく、妙子は満ち足りていた。そうしてくれた卓也がたまらなく愛おしい。
「妙子おばさん‥‥ごめんね‥‥」
　終わった後、卓也の第一声はそれだった。
「いいのよ‥‥」
　妙子は下から抱きしめて答える。
　妙子が怒っていないと分かった卓也はバストに頬ずりをして甘い香りを胸一杯に吸った。
　余韻が残る妙子の身体が震える。
　そんな妙子の様子を見て、卓也はおずおずとバストを揉みはじめた。
　こんどは静かな気持ちでその感触を堪能できる。握りしめたら無くなってしまうのではないかと思うほど柔らかいのに、手のひらを押し返してくる弾力がある。堅い蕾のような乳首を指でかるくつまんでみる。
　妙子の身体がビクンと痙攣した。
　卓也は父親を見送った日、リビングで居眠りしていた妙子の胸元にキスをしたかったことを思い出した。いま、卓也の下には生まれたままの姿の妙子がいるのだ。どこにだってキスできる。あらゆるところにキスしたい。妙子の全身を味わいたい。そんな思いが湧き起こり、卓也は首筋に唇を押しつけた。
　唇の裏側と舌で感じる妙子の肌の感触は想像を絶する気持ちよさだった。卓也は舌と唇をイモムシのように動かしながら耳の方へ移動させる。
「ああん‥‥」
　妙子が甘いため息のような喘ぎを漏らす。
「卓也君‥‥もう、ゆるして‥‥だめ‥‥おかしくなっちゃう‥‥」
　喘ぎながら妙子が言う。
「妙子おばさんの全部にキスしたいんだ」
　耳を口の中にふくみながら卓也が小声で言う。
「いやぁ‥‥だめ‥‥感じちゃう‥‥ああっ‥‥」
　耳が性感帯だと察した卓也は耳朶に舌を這わす。
「ああっ‥‥だめぇ‥‥」
　身体を震わせながら妙子が喘ぐ。
　卓也は妙子が何回か痙攣したのを確認してから位置を下へ移していく。
　耳朶から首筋、バストからウエスト、腰から太股へと経験者のような手順を踏んで妙子の全身を唇と舌で愛撫した。それは卓也がそうしたかったからに過ぎない。しかし、妙子にしてみれば、まだ燻り続けている身体をふたたび燃え上がらせる絶妙の行為だった。
　足の先まで舐め終えた卓也は妙子の身体を裏返した。
　こんどはアキレス腱から太股の裏側へと逆ルートをたどる。そして、見事な半球が並ぶヒップの間に舌がたどり着いたとき妙子が激しく痙攣した。
「だめ‥‥もう、おかしくなっちゃう‥‥」
　妙子は喘ぎながらヒップを突き出した。
　卓也は、こちらを向くアヌスに高ぶった。その下には蜜と自分の出したもので濡れた秘肉が見える。
　この時点まで2ラウンド目など考えていなかった。好奇心の赴くままに妙子を弄び、その反応を楽しんでいただけだ。が、その蠱惑的なポーズに卓也のものが蘇った。
　なぜか、妙子の悶えぶりに反比例するかのように卓也は冷静でいられた。
（征服してやりたい）
　凶暴な衝動が芽生える。この先、妙子との関係を続けるには必要なことのように思えた。
　卓也はゆっくり妙子の脚の間に割って入り、腰を持ち上げて蜜壺へペニスをあてがう。
　そして、ゆっくりと自分の目で確認しながら挿入していく。
　濡れきった秘肉へ抵抗なく突き刺さっていくペニス。自分のものが埋没していく光景はたまらなく刺激的だ。
「ああっ！　だめぇ‥‥た‥‥たくやくん‥‥からだに‥‥わるいから‥‥」
　妙子は喘ぎながらも卓也の身体を気遣っていた。
　しかし、抽送がはじまると押し寄せる波に抗しきれない。
　ヒップの肉を打つ乾いた音が寝室に響き、妙子の喘ぎ声がシンクロした。
　押し寄せる波に翻弄され、宙を浮いている感じがする。
　奥の方の疼きが爆発しそうな感覚がある。それは、耐え難い尿意と似ていた。
「だめっ！　こ‥‥こんなの‥‥ああっ！」
　妙子の内部で熱いものがほとばしっていた。
　それは、今まで経験したことのない大きな波だった。
「ああ〜っ！」
　叫びにも似た喘ぎとともに妙子の身体が硬直する。
　それでも卓也の抽送は終わらない。三度目ということもあり恐ろしく長持ちする。卓也は妙子を屈服させたいと願い、激しく抽送を繰り返す。
　弓なりに反る背中を美しいと思った。
「だめ‥‥また‥‥いく‥‥いっちゃう‥‥ああっ‥‥」
　妙子は、もう下半身がドロドロに溶けて膨張していくような感じだった。それが限界に達し爆発した。卓也が精を放ったのだ。
　妙子は二度、三度と硬直を繰り返した後、ガックリと弛緩してしまった。

SCENE 28

「も、もう降参‥‥」
　俯せに倒れ、ヒクッと、ときおり身体を痙攣させながら妙子が言った。
「ひどいんだから‥‥こんなにして‥‥」
　卓也は妙子にピッタリと寄り添っている。
「怒ってる？」
　卓也は心配そうに妙子の顔を覗き込む。
　そのまま余韻に浸っていたい妙子だったが無理をして身体を起こす。
「このまま出て行っちゃうの？」
　卓也も起きあがった。
「大丈夫だから‥‥卓也君を見捨てたりしないわ‥‥」
「だって‥‥」
「心配しないで‥‥それより後始末しなきゃ‥‥恥ずかしいから、お部屋に戻ってて」
　卓也はまだ不安げだ。
　その表情に、また母性がくすぐられる。
　妙子は首をかしげるようにして卓也の唇にキスをした。
「これで分かったでしょ。ね、お願いだからお部屋に戻って」
「うん」
　卓也がパジャマを着て寝室を出て行くまで、妙子はそのままの姿勢でいた。
　あそこから卓也の出したものが流れ出ていく感覚がある。
　立ち上がると太股を伝わっていく。シーツには大きなシミが拡がっていた。これではベッドパッドごと洗わなきゃならないと、妙子は股間のものをティッシュで拭き取りながら思った。
　なぜか不貞をはたらいてしまったという気持ちはない。母親の代わりとしての絆が深まった、これが卓也には必要だったのだと言い聞かせていた。しかし、本音は女としての悦びを与えてくれた卓也が愛しいのだ。
（なるようにしかならない）
　妙子はシャワーを浴び念入りにあそこを洗った。

SCENE 29

「お昼ご飯にしましょ」
　部屋に戻ったきり出てこない卓也に妙子は声をかける。
　ドアを開けると卓也はベッドの上で膝を抱えてうずくまっていた。
　あんなに凶暴な気分になった反動か、妙子と離れたせいか、卓也は不安でいっぱいだったのだ。
「どうしたの？」
　見上げると妙子が微笑んでいた。それは菩薩の笑みだった。
「妙子おばさん‥‥」
　卓也は立ち上がり妙子を抱きしめる。
「大丈夫‥‥何も心配しないで」
　妙子は卓也の背中を撫でながら言った。
「ほんとに？」
　妙子は少し身体を離してうなずいた。
「だったら‥‥」
「なに？」
「もう一度‥‥キスしてくれる‥‥」
「キスだけよ」
　こんどは卓也がうなずく。
　妙子は卓也の頭を抱え唇を合わせた。
　卓也が位置を合わせようと、ちょっと屈むと、ヌメヌメとした舌が入ってきて歯茎をなぞるように動いた後、卓也の舌に絡む。
　あまりの甘美さに卓也は恍惚となる。
　しかし、それは一瞬のことで、すぐに妙子の唇は離れた。
「さ、行きましょ」
「うん」
　卓也にほんの少しだけ笑顔が戻った。

SCENE 30

「ねえ」
「なあに？」
　気のせいか妙子の声に甘さが宿っている。
　遅めの昼食を済ませ、妙子は食器を洗っていた。
「俺‥‥妙子おばさんに謝っていいのか、それともお礼を言えばいいのか‥‥分からないんだけど、正直な気持ちで言えば‥‥うれしくって、感謝してる‥‥でも、これからのことを考えると‥‥不安だったんだ‥‥俺、妙子おばさんから離れられないと思うんだ」
「運命よ」
「えっ？」
「こうなってしまったのは運命だと思うことにしたの。卓也君の気持ちもうれしいし、わたしだって卓也君のことは大好き。それに、卓也君にはちゃんと勉強して欲しいの。だから、最初に約束したことは守るわ。わたしたちは、ずっと一緒よ。ただ世間的にはいけないことだっていうのは分かるでしょ？」
「うん‥‥」
「だから二人だけの秘密。でね、これが不自然な関係だってことだけを分かった上で言うんだけど、卓也君のために、できることがあれば何でもしてあげる。勉強だって、他のことも‥‥男の子が我慢できないのも分かってるつもり‥‥この際だから、はっきり言うわ。わたしは卓也君のお母さんじゃないから同じことはできない。でも、それ以上のことをしてあげたいの」
「‥‥ありがとう‥‥」
　卓也の瞳が涙で潤んでいた。
「めそめそしない。男の子でしょ！」
　そう言って、また食器を洗いはじめた妙子に卓也が後ろから抱きついてきた。
「今日は、もうおしまい。身体に悪いわ。お薬飲んで休まなきゃ」
「ちょっとだけ、こうしていたいんだ」
　見れば卓也の眼から涙がこぼれていた。
（今は子供なのね）
　そう思った妙子は卓也を優しく抱き返した。

SCENE 31

「よかった。なんだか、ずいぶん元気になったみたい」
　4時頃にやってきた恵美子は卓也の顔を見るなりそう言った。
「うん。もう平気なんだけど、妙子おばさんはまだ寝てろって言うんだ」
　昨日とうって変わって、卓也の表情が晴れやかに見える。
「そうよ。お医者さんの言いつけは守らなくっちゃ」
　ジュースを運んできた妙子が言う。
「安藤さん。昨日は追い出すみたいにしてごめんなさいね。まだ、卓也君の身体が心配だったから。でも、もう大丈夫だから」
　妙子の表情まで明るい。
　なんだか恵美子は、一人取り残されたような気分だった。
「ねえ、なにかあったの？」
　妙子が出ていくと恵美子が聞いた。
「なにかって？」
「分かんないけど、なんかヘン‥‥」
　卓也は女の勘の鋭さに舌を巻いていた。
「そうかなあ‥‥気のせいだと思うけど‥‥そんなことより、俺も明日、学校行きたいって思ってるんだ。終業式だし」
　ごまかすしかないと思った。
「うん。みんな心配してるよ」
「安藤に成績表持ってきてもらうのも恥ずかしいし。中身見られちゃったら」
「わたし、そんなことしないもん」
「でもさ、なんか得しちゃった気分」
「なんで？」
「病気したおかげで、こうやって安藤と二人で話できるし」
「だって、一緒に勉強する約束したじゃない」
「勉強と、こうしてるのじゃぜんぜん違うよ。安藤と話するの楽しいし」
「ねえ」
「ん？」
「わたし、本気にしちゃうよ」
「なにが？」
「だって、今日の三上くん、なんだか優しいんだもん」
　なんだか雲行きが妖しい方向へ行きそうなので卓也は焦った。
「俺さ」
「えっ？」
「分かったんだよ」
「何が？」
「安藤にしても、妙子おばさんにしても、俺のこと心配してくれてるじゃん」
　恵美子がうなずく。
「熱出して倒れて、みんなに迷惑かけて、母さんが死んじゃったから良くしてくれてるけど、それじゃいけないんだ。俺がちゃんとしないと、みんなにもっと迷惑かけちゃうからね。だから、安藤にも心配してもらうんじゃなくって対等に付き合いたいんだ」
「‥‥」
「安藤だって、母さんが死んだから、ここに来てくれてるんだって思われるのいやだろ？」
　恵美子がうなずく。
「すごい‥‥なんだか、三上くん大人になっちゃったみたい‥‥」
「男がめそめそしてても仕方ないからね」
　卓也は妙子の言葉を思い出していた。
「ま、そんなわけで、今日から気分一新ってこと。でさ」
「なに？」
「休み中、二人でどこか遊びに行かないか？　勉強ばかりじゃつまんないだろ」
「うん。行く！」
　恵美子は力強くうなずいた。
「どこ行こうか」
「わたしね、行ってみたいところがあるの」
「どこ？」
「江ノ島水族館。新しくなって、とってもステキなんだって」
「じゃあ、決定」
「楽しみぃ」
　恵美子がVサインを出した。
　その屈託のない笑顔に、やっぱりガキだなあと思いながら卓也自身もウキウキしたものを感じていた。
　望みが叶い、ポジティブになった目で見ると、やはり恵美子は棄て難いほど可愛い。ゴージャスな感じがする妙子とはまったく違うタイプだけど、明るくて可憐で、水族館が似合う気がした。
　それからは会話もはずみ、あっという間に時が過ぎていく。
「あっ‥‥いけない。こんな時間だ。そろそろ帰らなくっちゃ。また明日ね」
　制服のスカートの裾を翻して玄関を出て行く恵美子の後ろ姿を見ながら、卓也は水族館のことを妙子にどう説明しようか考えていた。

SCENE 32

「わたしって女の魅力ないのかなぁ？」
　家へ帰った恵美子はため息混じりに独り言を言った。
　ベッドに寝転がって卓也のことを考える。
　卓也が元気になりデートの約束までしたのに、なんだかちょっぴりもの足りなかった。
　恵美子には、少し前に先輩に告白されちょっとだけ付き合った経験があった。その先輩はデートのとき、やたら恵美子に触れたがった。嫌気が差した恵美子は逃げるように別れてしまった。その先輩が好きじゃないと分かったからだ。なのに、恵美子が好きな卓也は指一本触れようとはしない。ショーツが見えると言って注意されるほどだ。自分と会って楽しいと言ってくれるし、今日などは対等に付き合おうとまで言われた。
　でも、それだけじゃなく、恵美子は少しだけでいいからスキンシップが欲しかったのだ。
　日曜日に寄り添っていたことを思い出す。自分から手を握ったときは心臓が割れてしまうのではないかと思うくらいドキドキした。エッチなことを考えて、すごく濡れてしまった自分が恥ずかしかった。
　あんなヌルヌルしたものがどこから出てくるのか不思議だった。
　恵美子は少女らしい好奇心でショーツを脱ぎ手鏡であそこを見てみる。
（やだぁ‥‥グロテスクかも‥‥）
　なんだか鶏冠に似ていると思った。
　その貝のように閉じた小陰唇をそっと指で開いてみる。サンゴにも似たピンクの肉が顔を出す。
（こんなになってるんだぁ）
　自分の秘部をこれほど観察するのは初めてだった。
　好奇心の強い恵美子はさらに指で拡げてみる。
　いやいやながらという感じで膣口が開く。
　保健の授業で見せられたものとはちょっと違うように感じる。
（こんなところに男の人のものが入るなんて‥‥やだ、なにこれ？）
　念入りに洗っているつもりだったのに内部に白い恥垢があった。
（もう‥‥）
　恵美子は指ですくおうとした。
「あん‥‥」
　電気が走ったみたいだった。あの妖しいモヤモヤが蘇る。
　オナニーの経験はあったが、自分のものを見ながらしたことなどない。いつも、ショーツの中に手を入れてクリトリスを擦っていただけだ。
（クリトリスって、どうなってるんだろう？）
　恵美子は小陰唇の上の方を拡げてみる。合わせ目が複雑な形をしていた。
（ここよねぇ‥‥）
　触ってみると、あの甘い感覚がある。
「ん‥‥んっ‥‥」
　恵美子はたまらなくなって硬くなった肉芽を擦る。
　ジンジンと秘肉が熱くなってきた。鏡を見ると膣口から蜜が溢れている。
（やっぱり、ここから出るんだ‥‥）
　恐る恐る指を入れてみる。
「やん‥‥」
　第二関節あたりまでが吸い込まれるように入ってしまった。
（やだ‥‥気持ちいい‥‥）
　恵美子は指を動かしていた。
「や‥‥やん‥‥」
　呼吸が荒くなり小さなアクメが訪れた。
（もう‥‥三上くんのばかぁ‥‥）
　なぜか卓也が恨めしかった。