６．

　幸子の夫は、駅から自宅までの通い慣れた道を、わざと時間をかけて歩いていた。
　はやく帰宅して、最近、ろくに口もきいてくれない妻と、長い時間顔を突き合わせるのがとても嫌だった。
　かといって、こずかいを制限されているので、飲んで帰ることもできない。
　仕方なく男は、いつもの様に本屋で時間を潰してから帰る事にした。

　男が雑誌のコーナーで週刊誌を立ち読みしていると、隣に高校生の女の子がやって来て、漫画週刊誌を読み始めた。
　夏の制服の白いブラウスとグレーのミニスカート、それに同色のハイソックスを穿いたその女子高生は、ブラウスの上のボタンを幾つか外していて、胸もとが大きく開けている。
　隣の女子高生の肌の露出部分が気になった男は、本を読むフリをして、横目でチラチラとその女の子の白い肌を盗み見ていた。
　しばらくすると、女の子が本を手に取るために、中腰のまま前に屈み込む。
　すると、その拍子に大きく開いた胸の隙間から、女の子の下着と胸の谷間が男の眼に飛び込んで来た。
　男は思わず、本を読むフリも忘れて、その光景に釘付けになる。
　その後も、女の子が屈み込んで本を手に取る度に、ブラウスの中の白いスポーツブラと、深い胸の谷間が丸見えになる。
　やがてその女の子は、男が血走った目で見つめるなか、彼の横でしゃがみ込んだまま、平然と雑誌を読み始めた。
　上から覗き込むような恰好になった男は、そのまま時間の経つのも忘れて、女の子の白く豊かな胸の膨らみを、心ゆくまで視姦し続けた。
　ところが、男が安心して、じろじろと女の子の服の中を覗き込み始めた頃、いきなりその女の子が顔を上げて、男の顔を見つめ返した。
　びっくりした男が視線を外し、本を読む振りをしていると、その女の子は男の前に本を戻すフリをしながら、男に声をかけてくる。
「覗いてたでしょう？。私の身体、そんなにいい？・・見たいなら、もっと見せてあげる。ついて来て。」と、言い残して、そこから歩き始める。
　男は半信半疑で、その後を追った。
　店を出た所で、再び女の子が男に話しかけてくる。
「おじさんタイプだから、ドキドキしちゃった。・・お礼に、私の裸を見せてあげる。ねえ、一緒に来て。」と、かわいい声で男を誘う。
　男の方は、もう天にも昇る気分で、にやにやした笑いを浮かべながら、女の子の後についてゆく。
　女の子はそのまま、男を本屋の裏にあるトイレに引き入れた。
　トイレに入るとすぐに、女の子は蓋を閉めた便器の上に腰を降ろし、カモシカのように細く引き締まった脚を、真っ直ぐ前に伸ばした。
　男が制服のミニスカートから伸びる女子高生の生脚に見蕩れていると、その女の子は、「見て・・」と言いながら、ゆっくりとスカートの前の部分を捲り上げる。
　スカートの中からは、ピンクと白のストライプ柄の小さなショーツが現われた。
　丸見えになった女の子の股間部分はこんもりと盛り上がり、うっすらと陰毛の影が透けて見えている。
　男はこの信じられない展開に、心臓の鼓動をいつになく速め、ハァ、ハァと荒い息を吐きながら、久しぶりにその股間を硬くしていた。
　女の子が自分の股間に手を伸ばし、細い指でショーツの真ん中の部分を引き拡げて、その秘部を剥き出しにすると、男は堪らずにその子の下腹部にに武者振り付き、割れ目に舌を這わせ始める。
「あっ・・あっあぁ〜〜・・おじさん、凄く上手。・・アッアッ、お願い、もっと・・もっと舐めて〜〜」
　女の子は男の興奮を煽りたてるかのように、甘くかん高い嬌声をあげながら悶え悦び、さらに深い愛撫を求めるかのように、その綺麗な脚を左右に大きく開いた。
　一杯に拡げられた女の子の股間に、夢中で顔を埋め、一心不乱に舌を使う男。
　やがて、我慢が出来なくなった男は、立ち上がるとズボンとパンツを一緒に下に降ろし、勃起した自分のペニスを激しく右手で扱きながら、女の子の顔前にそれを突き出した。
　女の子は下から見上げるように男の表情を窺いながら、大きく一度、男のペニスの裏側を舐め上げる。
　それから、両手で男のペニスを包み込むようにして支えると、その先端を口に含んだ。
　男は、突然訪れたこの世の天国に、恍惚とした表情で天井を見上げる。そして、自分の股の間で激しく前後している女の子の頭と顔を、ゆっくりと確認するように両手で撫で回した。
「あぁ・・おおぉ・・んっ・・はあぁ〜」下半身から伝わってくるこの上ない快感に、男は生まれて初めて、若い女の子に奉仕される幸せを感じていた。
　だがこの時、トイレの棚に置かれた女の子のカバンの中から、カメラのレンズが二人のこの姿をとらえていた。若い女の子の柔らかい唇と絡みつく舌の感触に夢中になっている男は、この事に全く気がつかない。
　そのうちに、あまりの気持ちのよさに、そのまま射精してしまいそうになった男は、慌てて女の子を立たせ、替って自分が便器の上に座ると、黒いペニスがそそり勃つ自分の腰の上に、向かい合わせの姿勢でその女の子を跨がらせた。
「あっ！・・おじさん、凄い・・あぁ、くっうぅーーッ・・んーーーっ！」
　男のペニスでその身体を貫かれた女の子が、上半身を大きく後ろに反らしながら歓喜の悲鳴を上げると、男は女の子のブラウスの前を開け、ブラも外して、その真っ白で美しい涙滴型の乳房の間に顔を埋めた。
　それから、女の子の細いウェストに両腕を回してきつく抱き締めながら、自分の腰を浮かせる様にして激しく波打たせる。さらに、そのまま凄い速度で抜き差しを始めた。
「おっ・・おおぉ・・うぅおぉーーっ！」「あんっ！、あぁ・・あ゛っあーーっ！」狭いトイレに二人の絶叫が響き、二人の乗った便器がカタカタと大きな音をたてる。
　カバンの中に隠されたビデオカメラは、男がその腰をビクッビクッと何度も跳ね上げながら、女の子の体内にたっぷりと射精するところを、余すところなく記録していた・・

　それから何日かして、幸子の家のポストに大きめの封筒が届けられた。
　幸子がその内容を確認すると、中からは何枚かの写真と一枚の手紙が出てくる。
　写真の方は、中年の男と高校生の女が交わっている所を撮影したもので、よく見ると、その男は幸子の夫だった。
　幸子が怒りと驚きで顔を青白くしながら、手紙の方を読むと、そこには、
（「これは、ご主人が女子高生に淫らな行為をしているところです。私は、あなたも高校生を脅して、その身体を弄んでいる事を知っています。もし、今後もこのような犯罪行為を続けるなら、この写真をご主人の会社に送り付けます。改心の意思があるなら、証拠として相手の高校生宛に、事件の詳細を記した謝罪のメールを送りなさい。」）と書いてあり、署名は無かった。

　幸子のところと相前後して、其々、同じ内容の封筒を受け取った恵と良枝からは、すぐに貴史の携帯に、（電車での事は、つい出来心でやった事で、脅すつもりはなかった。今後は決して貴史には近づかないので、どうか許して欲しい。）という内容のメールが入った。
　だが幸子だけは、冴子の予想とは全く別の行動をとる。

７．

　幸子は貴史が一人だけの時を狙って、彼を近くの公園に呼び出すと、いきなり問題の核心部分について追求してきた。
「あなたとお姉さん、肉体関係があるんでしょう？」
「！・・・」
「むきになってあんな写真まで撮るからには、よほど触れられたくない秘密がある筈だもの。・・あの、お姉さんのパンティの件ね？」
「・・・・」
「黙っているのは、図星の証拠よ。汚らわしい姉弟ね。・・近親相姦なんて。」
「どうか父や母には言わないで下さい！、お願いします。」
「そうはいかないわ。夫の浮気写真まで撮って脅してきたのは、あなた達の方なのよ。あれを考えたのはお姉さんね。」
「すいません。僕は知らなかったんです。姉が僕を守ろうとして・・すぐに止めさせますから、許して下さい。」
「どうしようかな・・これが知れたら、あなた達、あの家には居られなくなるわよ。」幸子は貴史が困るのを楽しんでいるかの様に、薄ら笑いを浮かべた。
「・・なんでもしますから、それだけは・・言わないで・・お願い・・」
　身体は大きくても、やはり１６才の少年の貴史は、幸子に脅され動揺して、泣きべそをかき始めた。
「ほんとになんでもやる？」幸子が楽しそうに貴史に問いかける。
「えっ？・・ええ、やります。」
「じゃあ、その場でオナニーをしてみせて。」冷笑を浮かべた幸子が、無理難題を貴史に押しつける。
「えっ！？・・ここで？・・」貴史は思わず、周りを見回した。貴史が立っている場所は、公園の中の通路の真ん中だった。
「そうよ、さっさとやって。なんなら、これからすぐにあなたの家に行って、お母さんに本当のことを話してもいいのよ。」
「わ、わかりました・・」貴史は震える手でズボンとパンツを下にずらすと、完全に縮こまっている自分のペニスに手を伸ばした。
　幸子はその場所がよく見える、近くの薮の中に移動しながら、「ふふふっ、はやく射精しないと、恥ずかしい姿を沢山の人に見られるわよ。」と、貴史を揶揄うように笑った。
　その後貴史は、大勢の人が行き交う通路の真ん中で、下腹部を丸出しにして自分のペニスを扱き続けたが、恥ずかしさと緊張でなかなか果てることができなかった。
　その間に、何度か、彼を見たお年寄りが顔を顰めて、もと来た道を引き返したり、若い女の子の集団が、悲鳴を上げながら逃げ去ったり、という事があった。
　やがて、中年のサラリーマンや、好奇心に満ちた若いペアが、貴史がペニスを扱く様子を遠くからじっと見つめる中、やっとのことで射精に辿り着いた貴史は、地面に精液をぶちまけるとすぐに、そこから逃げ出し、幸子の元に向かった。
「へえーー、やるじゃないの。見直したわ。・・わかった。親に話すのは止めてあげる。その代りに条件があるの。」
　幸子は脅迫された鬱憤を晴らした事で、上機嫌になり、調子にのって新たな課題を出してきた。
「なんですか？」貴史が不安そうな顔で、幸子の顔を見つめる。
「今度会う時までに、あなたとお姉さんがやっているところを撮影して、それを持ってきて頂戴。」
「えっ！、そんな・・それは無理です・・」
「嫌ならいいのよ。全部バラすから。さあ、あなたの家に行きましょう。」
　そう言って、さっさと歩き出そうとする幸子を、必死で押し止めながら貴史は、「ちょ、ちょっと待って下さい。・・わかりました、わかりましたから。・・」「セックスの様子を撮影すればいいんですね。・・わかりました。・・やります。」と、真っ青な顔で、幸子の要求を渋々、呑んだ。
「そう、最初からそう言えばいいのよ。いい子ねぇ。」幸子は笑顔でそう言いながら、貴史に歩み寄り、彼の頬をそっと撫でた。
　それから、「じゃ、愉しみましょうか。」と、いつの間にか貴史の股間に差し入れた右手で、いきなり彼の陰嚢を揉み上げた。
「！？・・・」貴史がびっくりして、思わず幸子の顔を凝視すると、
「何をびっくりしてるの？、さあ、この前みたいに気絶するまで抱いて頂戴。ほら、はやく・・」と、幸子は貴史の首に両腕を巻き付けながら、彼にねっとりとした口づけをした。
　目を白黒させて狼狽える貴史に対して幸子は、右手で貴史のペニスを引っ張り出して扱きながら、
「さあ、勃てるのよ。協力しないとどうなるか、わかってるわよね。」と、再びドスの利いた声で貴史の事を脅す。
　貴史は観念したように、自分から幸子の首筋に舌を這わせ、両手で彼女の胸を荒々しく揉みしだいた。
　すると、その股間は、本人の意志を反映して徐々にその硬さを増し、やがて幸子の手の中で熱く脈打ち始める。
　すぐに貴史は芝生の上に押し倒されて、貴史の腰の上に跨がった幸子の身体が、人目につかない深い植え込みの中で、大きく揺れ始める。
　その後、二人が入り込んだ木立の中からは、低く噛み殺したような女の喘ぎ声が、いつまでも聞こえていた。

　家に戻り部屋に閉じ籠ってしまった貴史を、帰宅した冴子が訪ねる。
「貴史？、いるんでしょう？、入るわよ。」
　冴子が部屋に入ると貴史はベッドの上に仰向けに横たわり、顔を両腕で被っていた。
「どうしたの？、私が留守の間に何かあった？」心配になった冴子が、優しく声を掛けながらベッドの端に腰を降ろすと、いきなり貴史は姉に飛びかかり、その身体をベッドに押し倒した。
「きゃあ、ちょ、ちょっと・・貴史？・・・どうしたの？」
　びっくりした冴子が、伸し掛かってきた弟の顔を覗き込もうとしていると、貴史は冴子のスカートを捲り上げ、その中に手を差し込んでくる。
「やだ、止めて貴史。止めて。」いつになく、あまりにも強引なその手つきに違和感を覚えた冴子は、貴史の手首を掴んでその動きを止めようとする。
　だが貴史の方は、ただ我武者羅に、今度は冴子の胸元のボタンを外し、そこに顔を押しつけてくる。
　この時、貴史に組み伏せられた状態の冴子が、何気なく部屋の中を見回すと、机の上に、いつもはそこに無いビデオカメラが置いてあり、こちらの方を睨んでいる事に気がついた。
　嫌な予感がした冴子が、貴史を撥ね除け、机に歩み寄ってそのカメラを確認すると、案の定、そのカメラは録画状態で動作していた。
「これはなんのつもり、貴史。・・答えなさい！」弟の信じられない行動に混乱した冴子が、語気を荒げて貴史を問い詰める。
　ベッドの上で泣き崩れた貴史は、昼間の出来事を包み隠さず全て、冴子に話し始めた。
　弟の話を聞いて、姉の顔色が変わる。黙って話を聞きながら、段々と怒りに身体が震えだす。
　貴史の話を聞き終わる頃には、体全体が激しくブルブルと震えていた。
「許さない・・絶対に・・」
　その顔は、現在の冴子の、優しく穏やかな表情ではなく、以前、やんちゃをしていた頃の、きつく刺々しいものに変化していた。