しかし、売掛金の入金の日付をよくみると、二度とも小夜香さんのマンションに行った直後である。
　小夜香さんが社長の仕事に口出しできるとは思えないが、なにか後押しをしてくれたのだろうか。あるいは二度目の隠れた訪問も社長は知っていて、「小夜香と寝たら、まともな取引をしてやる」と言っているのだろうか。

　しばらくして、熊田社長から電話があって出かけた。小夜香さんとのことは知らぬ顔を決め込むしかない。
　思いがけなく社長は、我が社がさばきたい在庫品の注文を大量にくれた。課長もよろこぶだろうし、ボーナスの査定もよくなるにちがいない。
　仕事の話を終えると、でかい椅子にそっくり返って、禿げた頭をツルリとなでた。
「今度の三連休にな、別荘へ行く。君も来い｣
「はあ、……別荘ですか」
　休日までこんな男に付き合うのはまっぴらだが、小夜香さんは行くのだろうか。

「小夜香も行く。君も彼女を連れて来い」
「えっ、彼女？　彼女なんていませんよ」
　とぼけたが通じなかった。
「ウソつけ。麻美って可愛い子がいるじゃないか」
「あの……、それは……」

　マミはこの春に短大を卒業したばかりで、秘書課に勤務している。秘書といっても、まだ見習いのようなものだが、男性社員のあいだではアイドル的存在だ。小柄でほっそりしていて、清純そうなクリッとした目がかわいい。
　五月に、帰りの電車で一緒になったことから付き合いはじめたが、どこか少女みたいでちょっと物足りない。処女だったからしかたがないが、まだセックスが発展途上なのだ。

　ペチャンコの胸はかなり感度はいいし、けっこう耳年増でセックスのことはいろいろ聞きかじっているみたいだが、いざとなるとぎこちない。
　男をしっかり受け入れるのが恐いのか、脚を閉じ気味にして、背中で床を這うようにズルズル逃れていくので、押さえつけるのに苦労する。それにあの最中も、「あッ、あッ」という切羽つまった声はあげるが、よがり声のようなものはまだだ。
　でも、そんなウブなところが可愛いくて、はやく一人前の女にしてやろう思っているのだが、この熊オヤジはなにを考えているのだろう。　

「いやなら取引は中止だ。それに、これを会社にバラす｣
　書類をかきわけてリモコンを取り出すと、スイッチを入れた。
「あっ、これは……」
　書棚に組み込まれたテレビに、僕と小夜香さんが素っ裸で重なっているところが映し出された。社長が出張していたときのものだ。
　なぜ、こんなものがあるのだろう。もしかして小夜香さんが……。
　ゴリラみたいな目に、ギョロッとにらまれて、思考が停止した。

「……マミの、……都合を聞いてみます」
「都合もクソもあるか、来いといったら来い｣
「……」
「それとも、明日にでも会社へ怒鳴りこんでやろうか｣
　それくらいのことはやりかねない男だから困る。そんなことをされたら僕の評価はガタ落ちだ。場合によってはクビになるかもしれない。

「オレの成績に響くんだ。つきあってくれよ」
　慎重にマミに頼んだ。熊田商会についてはだいたい話していたし、社長には小夜香という娘がいて、そこでお酒を飲んだこともかいつまんで話していた。もちろん、ほんとうのことは話していない。
「いいわ、雄治さんのためになるなら｣
　マミは、ごきげんで承知した。一泊ドライブなんてめったにないし、安ホテルやモーテルでなく、別荘ということに興味があるらしい。
　それに社長の娘が一緒だということが、彼女を安心させたのだろう。

　　＊　　＊　　＊

　都心を抜けると高速道は渋滞もなく、友人から五〇万円で譲ってもらったポンコツシビックも軽快に走った。しかし、僕の心はあまり軽くなかった。
「ねぇ、社長のお嬢さんって、いくつ？　独身？」
「独身らしいよ。年は知らないけど三十ぐらいかなあ」
「もしかして、社長さんが雄治さんを気に入って、くっつけようとしてるのかも｣
「それはないな。年がちがうし、ここだけの話、ほんとうに娘かどうか……」
　トラックを追い抜きながら、用心深く答えた。ある程度の予備知識を与えておかないと、戸惑うことが起こるかもしれない。

「えっ？　どういうこと？｣
　クリッとした目をまるくして僕を見ている。
「まあ、世の中にはいろいろあるからな。もしかして愛人なんてことも……｣
「ふーん、まさか……」
　マミの向こうに、黄色く稔った田んぼが大きく広がっていて、遠くに山並みがクッキリ見えた。

　単調な道に飽きて、赤いミニスカートの太ももに手をのばした。ストッキングの感触を通して、体温が伝わってくる。小夜香さんの吸いつくような肌が思い出されて、もっと奥を探りたくなった。
「危ないから、よしたほうがいいよ」
　マミは僕の手をとってチューすると、返してよこした。堅実な娘だ。

　(危ない…か。これから行くところのほうが、よほど危ない)
　腹の出っ張った社長が、小柄なマミにのしかかっている情景がチラと浮かんだ。
　しかし、マミがあんな熊オヤジに関心をもつはずはないし、まさかアイツだって小夜香さんがいるのだから、そこまではしないだろう……。
「きれいだわぁ」
　周辺に山が迫ってきて、木々が色づきを増していた。マミは日常から遠ざかっていくドライブを、単純に楽しんでいた。

　インターを出て、少し走った待ち合わせ場所には、小夜香さんが一人できていた。二人は早く着いて、社長はしばらく締め切っていた部屋に、風を入れているという。
「ああ、マミちゃんね。ようこそ｣
「はじめまして。今日はお招きいただいて……」
　二人は楽しそうに初対面の挨拶を交わしている。
　ミニスカートにコットンのパーカーをはおったマミも可愛いが、小夜香さんの、お尻がピチッとした明るいベージュのパンツ姿もかっこいい。

　小夜香さんが運転するベンツのあとを、別荘に向かった。
「感じのいい人ね。私もあんなふうにきれいになりたいわ｣
　マミの薄い胸や、少年みたいな腰つきも、いずれは小夜香さんのように、くっきりした凹凸を刻むようになるだろうか。
　田んぼや畑を過ぎて、林に入り、山道になった。人里からはかなり遠い。

　雑木林をしばらく走り、未舗装の小道に入った。優雅に揺れるベンツのお尻を、ポンコツシビックでガタガタ追った。
　ぽっかり明るい空間が現れて、僕もマミも思わず声をあげた。
「うわーッ、すごい！」
　巨大なログハウスだ。壁も柱も、大人の腕で一抱えもあるような、太い丸太でできている。なんだか建物そのものからエネルギーが伝わってくる。

　広いデッキの一角で、作務衣を着た社長が火を焚いていた。バーベキューサイトになっているらしい。
「やあやあ。よく来た、よく来た｣
　社長は両手を広げてご機嫌だ。作務衣が腹の出たずんぐり体型にぴったりで、おまけに禿げ頭だからエロ坊主といった感じだ。いや、エロ熊か。
「マミちゃんか。ホホー、かわいいね。雄治君とよくお似合いだ｣
　マミは、挨拶もそこそこに、子どもみたいにはしゃいでいた。熊オヤジの下卑た風貌も気にしていないみたいだ。
「すごーい、こんなところに泊めていただけるなんて、夢みたい｣

「暖炉に火を入れたばかりだから、中はまだ寒い。焚火で暖ったまりながら、バーベキューでもやろう｣
　小夜香さんの案内で、部屋に荷物を置きに行った。
　一階は広いリビングで、高い天井まで吹き抜けだ。暖炉の前には絨毯が敷かれていて、取り囲むようにソファや安楽椅子が配置してある。
　テーブルには骨董品らしい古風なキャンドルスタンドが二つ、五、六本の赤い蝋燭を立てておかれていた。
　リビングの右側がキッチン、収納庫、バスルームなどで、その二階に個室がいくつかある。その一つが僕たちの部屋だ。

　部屋を仕切る壁はすべて、大人の胴回りほどもある丸太で、室内にいても野生の香りがする。それにこの広さ。僕もマミもワンルーム住まいだから、こんな空間は夢みたいだ。取引先をいじめて、自分はこんな別荘をもっている社長が憎たらしい。
　あとで聞くと、バブルがはじけて困っていた知人から安く手に入れたのだそうだが、安くといっても、敷地が五〇〇〇坪だというからかなりの金額だったはずだ。
　あるいは彼一流のやり口で、ただ同然に手に入れたのかもしれないが。

「野蛮な料理で、ごめんなさいね｣
　小夜香さんはそういうが、バーベキューは豪快で美味しかった。
　肉は牛ではなく、鹿だった。大きなブロックを、焚き火の上でグルグル炙り焼きにするのだ。小夜香さんの白い指が、赤い肉の塊をつかんで、太い串をズブリと刺し通す。マミが火にかけられた大串をグルグルまわした。
　エプロンをつけた楽しそうな二人は、仲のいい姉妹のようだ。僕はチラチラと、熊オヤジは無遠慮にニタニタ笑いながら見ていた。

「わ〜ッ、美味しい〜！」
　マミが肉を咥えて無邪気に叫ぶ。表面の焼けた部分をナイフで削ぎとって食べるのだが、熊オヤジは生焼けのところを好んで食っていた。
　小夜香さん手作りソースが食欲をそそる。それに野菜もすべて土地で採れたものとかでうまい。
　鹿肉は、少し獣の匂いがしたが、マミも小夜香さんもムシャムシャむさぼっては、ワインをあけていた。

「これはうまそうだな、食べなさい｣
　エロ熊が、見事に男根の形をしたマツタケを、グイとマミの目の前に突きつけた。
「キャ〜ッ、社長さん、エッチ〜」
　ふだんはおとなしいマミだが、雰囲気のせいだろうか、声がはしゃいでいる。
「おっきい！」
　二つに割って、苦笑している小夜香さんに半分を差し出した。

「そろそろ中へ入るか｣
　山は陽が落ちるのが早い。雑木林のこずえに太陽が隠れて、肌寒くなってきた。火も食べ散らかしもそのままに、中へ移動した。
　暖炉が赤々と燃え、床暖房もしてあるらしく、全体がぬくぬくとあたたまっていた。
「お風呂が沸いてますよ｣
　小夜香さんがエプロンで手を拭きながら言う。焚火の煙と獣の脂にいぶされていたので、風呂はありがたい。

「君たち、入りなさい。風呂は大きいから一緒に入れるよ｣
「いや、社長からどうぞ……、僕たちは……｣
「客人が先だ。それに風呂は若い人から入るものだ。とくに若い女性から」
「あら、どうしてですかぁ」
「若い人のホルモンが風呂に溶け出す。それが年寄りの健康にいい｣
「わ〜、なんだかいやらしいわ、社長」
「アハハ、いいからいいから、さ、一緒に｣

　二人で入るのは気がひけたが、マミはそうでもないようで、結局一緒に入った。板張りの大きい風呂は、ヒノキの香がたちこめて気持ちがいい。
　ボディソープを塗りあって、マミのぬるぬるの体を抱きしめた。下腹に手を伸ばして洗ってあげる。僕のものも可愛いらしい手にぬるぬるしごかれて、硬くいきり立った。
　湯船に長々と足を伸ばし、マミを後ろ向きに抱き寄せる。小さい乳房をもみながら、あわあわと湯にゆれる恥毛に手をのばす。奥はヌルッとぬめっていた。
　湯船にホルモンが溶け出したかもしれない。

　マミが、太ももをモジモジこすり合わせはじめた。いつも感じてくると、自分のうずきをどうしたらいいかわからないみたいに、腰から下をモジモジさせる。　
「部屋に帰ったら、いっぱい可愛がってやるからな」
　マミは、コクンとうなずいて、僕たちは手早く体を拭いた。
　ガウンが用意されていて、マミは襟にフリルのついたピンクを、僕は濃いブルーのを着た。ガウンなんて着たことがないから、似合わないと思ったが、ちょっと大きいガウンに包まれたマミはとてもかわいらしい。
　抱き合ってキスして、居間に戻った。

「わ〜ッ」
　リビングの様子が一変していた。ほとんど真っ暗で、蝋燭が十本ぐらい灯っている。骨董品のキャンドルスタンドが近くに運ばれているのだ。
　ゆらめく炎のなかに、ぼんやりソファや絨毯のあたりが浮き上がっていた。

「たまには、蝋燭もいいだろう｣
　闇に溶け込むような安楽椅子から、社長の声がした。
「すてき〜ッ、社長さんって、ロマンチストなんだぁ」
　大きい蝋燭が何本も灯っているから、目がなれれば周辺はけっこう明るい。しかし、高い天井や部屋の隅はおぼろな闇だ。広いリビングの空気が濃密に感じられた。

　社長が風呂に行き、小夜香さんが飲み物や果物を用意してくれた。マミはソファにもたれてうっとりしている。湯上りにほてった顔が愛くるしい。
「マミちゃん、ここが気に入った？｣
「ええ、とっても。小夜香さんがうらやましい、すてきなお父さまで｣
　小夜香さんが翳のある笑みを浮かべて、チラと僕を見た。

　キッチンに立った小夜香さんを、僕は｢水がほしい｣とつぶやいて追った。マミからは見えないところで、腰を引き寄せる。短いが激しいキスをした。
「ダメよ、いまはダメよ……」
　いったい僕は、マミをここまで連れてきて、何をしているのだろう。激しい動悸を感じながら、どうにでもなれ、と思った。　　
　
　社長が風呂から上がって、小夜香さんが入れ替わりにバスルームに消えた。暖炉の前の三人は、ブランデーをちびちびなめてくつろいだ。
　マミはグラスをすかして蝋燭の灯を見ている。僕は暖炉の炎をぼーっと眺めていた。
　静寂の中のほの暗い闇とゆらめく炎……。酔いも加わって異界に迷い込んだような気持ちになる。

「静かですね｣
「うん、山奥はいいな。世間のことを忘れさせてくれる｣
　柄にもなく、熊オヤジがしんみりした口調で言う。外はシンとして音がない。大きな窓ガラスの向こうも、ただ真っ暗な闇だけだ。都会では味わえない世界である。
　ときおり、暖炉でパチパチと薪がはぜた。

　　＊　　＊　　＊

　社長が暖炉に薪を投げこみ、パッと火の粉が舞った。
「おもしろいビデオがある。マミちゃん見るかね｣
「ビデオですかぁ、このままの雰囲気もいいですけど……｣
「まあ、ちょっとだけでも見なさい｣
　やはり、社長はついに切り出した。きっとあのビデオだろう。僕は観念して身構えた。
　ほの暗い闇に、男女が絡んだ画像が浮きあがった。音はない。
　
「あら、エッチビデオですかぁ」
　マミにはときおり、教育するつもりでアダルトものを見せることがある。そんなときは熱心に見ているが、いまは恥ずかしいのか、部屋の雰囲気に酔っているのか、あまり関心がなさそうにチラチラ見るだけだ。

　しばらくたって、息をのんだ。
「えっ、なにこれ……｣
　だんだん身を乗り出して、食い入るように見ている。
「もしかして……あ、これ……」
　僕の怒張を小夜香さんが咥えている……。そこに社長の声がかぶさった。
「小夜香が、雄治君を誘惑したらしいな｣
　マミは固まってビデオを凝視していた。

　小夜香さんが風呂から出てきて、チラと画面を見た。あわててガウンの前をぎゅっと合わせると、そそくさとキッチンに入りかけた。
「小夜香、ちょっと来なさい｣
　じっと立ち尽くして、唇を噛んでいる。
「これはなんだ！　説明しなさい」
「……」
　僕はドキドキしながら、小夜香さんとマミを見守った。

　バシッ。
　暗い部屋にものすごい音が響いた。マミがヒッと驚きの声をあげ、小夜香さんはブルッと体を震わせる。いつの間に取り出したか、熊オヤジが手にした鞭で激しく床を打ったのだ。　
「……ごめんなさい、マミちゃん……」
「淫らな娘だ。お仕置きをしなくてはな｣

　ガウンを剥ぎとられた小夜香さんは素っ裸だ。下には何もつけていなかったらしい。
　手で股間と胸を覆ったが、すぐ両手は前で縛られ、絨毯の真ん中に引き出された。
　湯あがりの裸身を、蝋燭の灯と暖炉の炎がぼんやり照らし出す。たいした明るさではないが、それがかえって妖しい雰囲気だ。

　鎖骨から腋への微妙な影、ふっくらした乳、くびれた腰から尻への急激なカーブ……。脚をよじり合わせて恥部を隠そうとするが、つるつるのＹ字が少し形を変えるだけだ。
　目を見開いて、呆然としているマミに、熊が鞭を突きつけて言った。
「お前の恋人を盗ったんだ。これでぶて」
　鞭は皮ひもが五、六本束になったものだ。マミは、いやいやと首をふって後ずさりした。
「そうか、ワシがかわりにぶってやる｣

　バシッー。滑らかな尻を鞭が襲って、裸身がそりかえった。
「あーっ」
　わき腹を打たれて、よじれる。パシッ、髪を乱してのけぞる。バシッ、逃れようと背を向けるが、そこにも鞭が襲って、床に突っ伏した。
「やめてッ、やめてッ、自分の娘さんでしょっ」
　マミが口走って、社長の腕にしがみついた。

「うるさいッ、静かにしてろ｣
　突き飛ばされたマミからも、ガウンが剥ぎとられた。短いスリップとピンクのパンティ姿があらわになる。
「パパ、よして……、マミちゃんは、よして」
　小夜香さんが止めるが、熊は聞く耳をもたない。
　暴れさせないためだろうか、小夜香さんより厳重に縛られた。後ろ手にされた上、スリップの上から胸を縛られる。あまった縄が股間にまわされて、ギュッと絞られた。
　股縄なんて経験したことのないマミだ。このままではなにをされるかわからない。

「社長！　僕が悪いんです　僕が……」
「なに？　お前が小夜香を誘惑したのか｣
「は、はい、……僕が……｣
「よし！　お前もお仕置きしてやる｣
　つかみかかってきた熊ともみあったが、僕の抵抗は形だけだった。たとえ殴り合って勝ったとしても、熊田商会との取引がぶち壊しになるだけだ。
　もみあうふりをしながら、組み敷かれた。

「やめてッ、二人ともやめてッ……｣
　小夜香さんが叫んでいたが、僕は素っ裸にされて、丸太の壁に大の字に縛りつけられた。ハンガー代わりの木釘に、両手を左右にひろげて縛られ、両足も左右の柱にひろげて縛りつけられたのだ。
　床に転がっているマミと小夜香さんの、すぐ頭上である。意気地のなさも、無防備な股間も屈辱的だ。ふたりは僕を軽蔑しているにちがいない。

「雄治と小夜香はな、こんなことをしてるんだ｣
　僕を縛り終えた熊が、マミの髪をつかんで、顔を画面にねじ向けた。
　小夜香さんが上になって僕のものをしゃぶり、僕は小夜香さんの股間を夢中で舐めているところだ。
「よして…　いやッ…」
　マミが顔をそむけてしくしく泣き出した。その震える体を、ニタニタ顔の熊が無骨な手で撫でまわしている。

「いや…いや……　みんな、いや……」
　マミは小さく叫びながら、身をもんで泣きじゃくっている。もてあましたのだろうか、熊が小夜香さんをマミのそばに引き寄せた。
「小夜香、みんなお前の責任だぞ。あやまれ」
「……ごめんね、マミちゃん……わたしが……」
　素肌をマミにすり寄せて、なにかささやいている。縛られて不自由な手が、マミの髪をなぐさめるように撫で、食い込んだロープをなぞっていく。

　とらわれた姉妹のようだ。下着姿で縛られておびえる妹を、すでに裸にされた姉がかばい、なぐさめている。すこしずつマミにかぶさった小夜香さんが、耳元でなにかささやいていた。そのふたつの女体を暖炉の火が舐めまわす。
　マミはまだしゃくりあげているが、だんだんにその間隔は遠くなっていき、力が抜けたようにぐったり体をゆだねている。あの愛くるしい目が、曇りはじめていた。

「アッ　いやッ…　やめてッ……」
　冷たい感触と恐怖に、またマミが悲鳴をあげた。熊がスリップをハサミでジョキジョキ切りはじめたのだ。
「だいじょうぶよ……、怖くないのよ……」
　ハサミのあとを追うように小夜香さんがかぶさっていく。

　乳があらわになった。小さな胸なのに、いまはロープにくびりだされて、一人前の女のようにぷっくりと飛び出している。桜色の乳頭が膨らんで、ぽっちりした乳首がピンと尖っていた。
　そこを小夜香の口に含まれて、マミが震えた。小さく腰をひねっている。感じてきたのだろうか、内ももをこすり合わせて身を揉みはじめた。縄に秘めたところをこすりつけてるようにもみえる。

「イヤッ　やめて　イヤッ…」
　ハサミがパンティを切り裂きはじめた。素肌と縄に挟まった無残な布切れが取り除かれる。あわあわした茂みに麻縄が食い込み、奥に消えていた。
　熊が奥まった食い込みを覗きこみ、ピンクの布切れを引きずり出す。それはぬるぬる濡れてシミをつくっていた。

　どうすればいいのか、思考がまとまらない。毛むくじゃらの野獣にいじりまわされるマミ……。熊を助けるような小夜香の動き……。小夜香が裏切って僕らを罠にはめたのだろうか……。
　こんな状況なのに、僕は激しく勃起していた。しかし、大の字に縛りつけられているのでどうにもならない。三人を前に、ぶざまな股間をさらしていなければならないのだ。

「おい、雄治の様子がおかしいぞ｣
　熊が僕をさして笑った。
「お前の恋人だ。さあマミ、しゃぶってやれ｣
「イヤッ、いやです」
「そうか。じゃ小夜香が慰めてやれ｣

　小夜香さんが僕の前にひざまずいた。乱れた髪が悲しげだが、お尻のふくらみが悩ましい。そこにはうすく鞭跡が残っていた。
　さわさわの髪や硬くしこった乳首が太ももにふれた。その感触を手で確かめ、胸に抱き寄せたいと思うが、自由になるのは腰だけだ。
　熱い口腔に含まれて、すぐにも腰を使いたくなった。

　目の前では、熊のあぐらに抱かれたマミがこちらを向いている。僕は懇願した。
「やめてください……、小夜香さん、やめて……」
　無駄だった。喉の奥まで含まれ、吸われ、舌が絡められると、腰が自然に動いてしまう。磔の男と両手を縛られた女、ふたりの接点はそこだけだから、過剰に意識が集中してしまう。
「だめ、イクッ、イッちゃう……」
　情けないことに、磔になったまま小夜香の喉にドクッドクッと射精してしまった。

　顔をそむけるマミを覗き込んで、熊オヤジが聞く。
「雄治に裏切られて悔しいか、ん？｣
　マミは、僕らのほうをチラと見たが、すぐ目を伏せた。
「小夜香は雄治にくれてやる。マミがわしの娘になれ｣
「……」
　肩越しに熊をみるマミの目は、これまでにはないねっとりした光をおびていた。
　　
　　＊　　＊　　＊

　手足のロープを解かれて、僕は床にへたり込んだ。
　かわりに小夜香が、両手を高く吊られて立たされた。
　熊がマミの縄をほどきはじめた。食い込んだ股縄がはずされるとき、マミが「ヒッ」と悲鳴をあげた。痛かったのだろうか。
　両手だけが縛りなおされて、立たされる。

「小夜香もきれいだが、マミはもっときれいだ。並んでみろ｣
　意外なことに、マミは逆らわなかった。縄を解かれても騒がず、従順に手を引かれて小夜香の横に立つ。両手を吊られるときも抵抗しなかった。
　小夜香に負けまいとしているのだろうか。開き直ったように唇をかんで耐えている。

「雄治、こっちへ来て、見てみろ｣
　僕はのろのろと絨毯へ戻り、両手を吊られてすべてをさらしている二人を見た。小夜香はうなだれ、マミはあごを上げて横を向いているが、ふたりとも脚をくの字に折って恥部を隠そうとしていた。
　しかし、小夜香のつるんとしたそこも、幼いマミのあわあわ茂ったそこも、十分には隠せない。

「雄治、手伝え｣
　命じられて、いやがる二人の足を、二人三脚みたいに結びつけた。それぞれの一方の足も、ロープを張ってひらかせた。人人の形にふたりが並んでいる。
「おー、ずいぶん濡らしているな」
　あいだに立った熊が、ふたりの股間を左右の手でもてあそんだ。毛むくじゃらのずんぐり男の様子は、略奪してきた女をいたぶる山賊みたいだ。
　女たちは、唇をかんで必死に声をこらえていた。

「お前も、いじってやれ」
　交代した。できないと断って、ふたりに謝ろうかとも思ったが、もう目の前にニンジンをぶら下げられた馬みたいなものだ。山賊の子分みたいに手をのばした。
　ふたりのびちょびちょの泥沼に、充血した花びらがひそんでいた。
　マミのぷりぷりと硬い花びらを分け、蜜壷の奥に指を入れる。眉をしかめて横を向くマミは、下腹に取りついた魔物を振り落とそうとするみたいに、激しく腰をゆすった。
　柔らかくぽってりした小夜香の花芯は、誘い込むように指を飲み込んで、ねっとりした腰の動きが加わった。

「マミ、雄治がしたことをよく見ろ｣
　うす闇の中に、小夜香さんの股間を剃っている場面が浮かび上がった。
「お前も、雄治に剃ってもらえ｣
「そんなこと……　イヤッ　いやですッ」
　さすがにマミは体をゆすって抵抗したが、縛られていてはどうすることもできない。
　命令された僕はバカな小坊主みたいに、洗面所にいってお湯と道具を用意した。

「動くな、危ない｣
　熊が、キャンドルスタンドを引き寄せて、ハサミで毛を刈っていた。まさにエロ熊だ。
「長いと、カミソリでは剃りにくい｣
　チョキッというハサミの音、恥毛がサクッと切られる感触、それに冷たい刃が柔らかいところに当たる恐怖に、マミは体を硬直させている。
　小夜香は、顔をそむけてうなだれていた。

　刈りとった残りの根を、エロ熊が石鹸をつけてジョリジョリ剃った。もうすっかりつるつるになっているのに、なおも刃を逆に滑らせて深く剃っている。
「雄治、ひろげろ｣
「…ッ　やめてッ」
　狭い割れめを指で左右に広げた。可愛いマミのあそこを広げて他人に剃らせるなんて、僕にもエロ熊の狂気が伝染したのだろう。
　豆粒のような尖りも、まだ一本の筋のような花びらも、みんな幼いが、びっくりするほど蜜をあふれさせている。
　そこを仰ぎ見る形の熊が、べろっと唇を舐めまわしては剃っていった。

「……クリームが……洗面所に……」
　小夜香が顔をそむけたまま、消え入るように言う。僕はそれをもってきて、マミのむき卵みたいになったそこに塗りこんだ。
　脚のつけ根が、小夜香のそことどこかちがう。ふっくらしたＹの字とちがって、脂肪のない下腹にクッキリと縦の割れ目が切れ上がっている。
　暗い部屋だが、まぶしいような光景だ。

「娘だ、娘だ。お〜、ワシの娘だ｣
　エロ熊がマミの腰に抱きついて、その幼い縦の亀裂に、きちがいみたいにしゃぶりついた。正気なのか狂気なのか……。べろべろ舐めまわす舌が、奥へ奥へと進んでいく。
「ぁあーッ」
　マミの膝から力が抜けて、ガクッと両の腕でぶら下がった。

　縄を解かれたふたりは、崩れるように寄り添って、互いの腕をものうげにさすりあっている。
　熊が、仰向けのマミの脚を広げて、割り込んだ。
「あ…　社長さん……だめ……｣
「社長じゃない、パパだ。今日からお前はワシの娘だ｣
　黒々とした怒張を、ふたふたとぬめった幼い花芯にこすりつけている。

「小夜香、来い｣
　マミの上に、小夜香を６９の形に四つんばいにさせると、ふたりの手首と足首を結びつけた。小夜香の右手とマミの右足が、左手と左足が連結されたのだ。
「雄治、そっちも縛れ｣
　マミは抵抗するが、小夜香が上に乗っているので腕をバタバタさせるだけだ。僕はマミの細い手首を、小夜香の足に結びつけた。

　両手両足を繋がれたふたり女は、一方が手をのばせば繋がれた脚がのびる。腕を縮めれば脚がＭ字にひらく。動きはギクシャクしているが、密着した互いの動きがすべて伝わりあって、絡みあったタコみたいだ。
　小夜香の目前には、剃られたマミの割れめとエロ熊の怒張があり、マミのすぐ目の上には、濡れそぼった小夜香の秘部がうごめいている。

「小夜香、舐めろ」
　十分に怒張しているそれを、小夜香にしゃぶらせた。
「なにをしているのか、マミに教えてやれ｣
「……マミちゃんにこれから入れるの、……小夜香がしゃぶって、……大きくして……｣
　モゴモゴとつぶやく小夜香……。その口から抜かれたものが、目の前の割れめに押し込まれていく。

「んッーー」
　挿入されたマミがうめいた。僕とのときのように、脚をすぼめて逃げようとするが、小夜香の手に縛られた足は閉じることはできないし、手も小夜香に足にくくられている。
　ずり上がろうとしても、小夜香と熊にのしかかられていてはどうにもならない。ただ手足をギクシャクさせて、しかめた顔を小夜香の尻の下で左右に振っていた。
　
　重ねられた姉妹が、毛むくじゃらの太い腹に押しひしがれている……。強欲な熊が、これから食らう肉を抱きかかえているみたいだ。
　熊が腰を使いはじめて、二人に挟まれた小夜香がもみくちゃにされる。、
「アッ　アッ　アッ　……」
　二人の下敷きになったマミから、切れ切れの声があがりはじめた。

　僕もたまらず、熊とマミに挟まれている小夜香を、背後からつらぬいた。マミの目の一〇センチ上だ。
「あーっ　んんん……」
　小夜香の尻が、マミに見せつけるみたいに、激しくくねる。
「ぁあ〜　いい〜　もっと〜」
　よがる声も激しい悶えも、すべてがマミに伝わっていくようだ。僕は小夜香と一緒にマミをも犯している気分になって、さらに激しく突いた。

　熊もマミを激しく責めている。そのつながった部分に小夜香は顔をうめ、つらぬかれた陰部をマミの顔に押しつけた。
「あぁ〜　いい〜　激しく　ぁあ〜ン……」
「あ、あ、あ、あぁ、あぁ……」
　押しつぶされたマミから、よがる声が漏れはじめた。小夜香の長く音をひくよがりと、マミの断続的なよがりが、リズミカルなハーモニーを奏でる。

　次第にマミの声が、「ぁあ〜〜、ぃい〜〜」と音を引きはじめた。女の悦びを知りはじめたのだろうか。
「マミも、いい声で鳴くじゃないか｣
「まだですね、小夜香さんにくらべたら」
「交代しよう｣
　向かい合っている熊と僕は、共犯者みたいに会話を交わし、女たちを裏返した。

　上になったマミを、僕が背後から犯した。手をこじ入れて乳をつかむ。小さい乳が、とてもいとおしく思えた。
　熊が下になった小夜香を犯している。
「ひぃ〜ッ、んぁぁぁ〜｣
　僕とマミがつながったところに、下から小夜香がむしゃぶりついてきた。

　熊がアナルに入れたらしい。マミの顔が上を向いた小夜香のあそこに押つけられていた。
「あッ　ああ　ぁあ〜ん……」
　今度はマミが悲鳴をあげた。僕が肛門に指を入れたからだ。
　これまでマミは、決してそこに指を入れるのを許さなかったが、いまはゆっくり腰を使いはじめている。
　それが次第に激しくなって、四人の谷間のせめぎあいが……
　
　決闘が、いや、谷間の宴が終わったのはいつだろう。
　目を醒ますと窓が白んでいた。絨毯にマミと小夜香が抱きあって眠っており、社長はソファでいびきをかいている。
　蝋燭はすべて燃え尽きていて、暖炉の火も消えかかっていた。

　　＊　　　＊　　　＊

「君たちはどうする。ワシらはもう一泊する｣
「いえ、僕たちは帰ります。来週の準備もありますから｣

　僕たちは枯葉の舞うなかを帰路についた。
　小夜香の手が、僕の太ももにのびてきた。
「危ないから、よしたほうがいいよ」
　僕はその手にキスして返したが、こんどは顔が股間にかぶさってきて、ジッパーが引き下げられた。
　帰りの高速は、渋滞があったが退屈しなかった。

　いま、小夜香は僕のワンルームで暮らしている。もう少し広い部屋を探しているが、そのためには会社をクビになるわけにはいかないし、成績も上げなければならない。
　したがって熊田社長のわがままも聞かねばならず、ときには、いまはマミが住んでいる元小夜香の部屋を、一人、もしくは二人で訪れることもある。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり