| １０ 秘されし欲望 口縄燈子が娘の様子を見に部屋を訪れたときには、璃緋都はすでに寝入ってしまっていた。神奈川仁の言ったとおり、どうやらやっと落ち着いたらしい。 （あの三人、一体わたしの璃緋都に何をしたというの…！？） 先ほどまで怯えきった様子を見せていたのとは裏腹に、今の璃緋都は優しい表情で眠っている。しかし、燈子の感情は収まらなかった。 昨日、この屋敷を訪れ、そして泊まっていった三人。一人は燈子もよく知っている、YTCの社長、雪村風花であるが…。 あとの二人は璃緋都の同級生であろう。父兄参観のときに見覚えがある。 （風花さんのことはよく知っているし、信用に足る人物だわ…だからこそ、わたしたちは『あのこと』を話すこともできた。だけど、後の二人は璃緋都について何も知らない…） 燈子は、眠る璃緋都を抱き起こしていた。 （…神楽都志彦…わたしの璃緋都の心を傷つけた…あの男…死んでも許すことはできない…） そのまま娘の体を抱きしめる。顔を近づけ、頬に唇を寄せてやる。娘は起きる様子もなく、深く寝入ったままだった。 「璃緋都…わたしの可愛い璃緋都…あなたは、『わたしだけのもの』よ。もう、誰にも心を奪わせたりしない…」 再び彼女をベッドに横たえると、燈子は寝室を出る。この分だと、明日の朝まで寝入ってしまうかもしれない。 ならば少しでも安らかに眠らせてやりたい…。 璃緋都の部屋に戻った燈子は、一直線に部屋を出ようとした…のだが、テーブルの上に『異物』を見つけて立ち止まった。 （あら？誰の本かしら…うちにはこんな本はなかったはずだけど…） 豪奢な表紙をもった、分厚い本。蔵書を趣味としている誠吾の妻である彼女も、こんな本があるのを見たことはなかった。 （とすると、璃緋都が買ったのかしら？でも、ずいぶん古い本みたいだし、璃緋都の趣味じゃないと思うけど…） 無意識に手に取ると、ズシリと重い。仕方なくテーブルに置いてから、本を適当に開いてみる。 「…読めないわ。どこの言葉で書かれたものなのかしら？」 財閥の主の妻として、さまざまな国の言葉を勉強した燈子ですら、この本は読めなかった。しかし、どこか通常の本とは違った 異質さが漂っているのは、彼女にもよく分かったのである。 「…母さん…？」 背後から声が聞こえ、燈子はハッとして振り返った。そこには、今寝ているのを確かめたばかりの娘、璃緋都がいた。 「あら、璃緋都。起こしてしまったかしら」 「ううん…さすがに、昼間からそんなに寝ていられないし」 （どうやら、落ち着いたみたいね。でも、半ば思い出しかけているのかもしれない…） この娘が、『あの時』以来、自分の感情を素直に出さないようになってしまったのはよく知っている。燈子にはそれがさびしくて仕方がないのだ。 「…母さん、わたし…」 璃緋都のほうから声をかけられ、燈子はまたハッ、とした。 （まさか、思い出したんじゃ…） 本人が思い出してはいけない事実。自分でも思い出したくない事実。娘はそれを思い出そうとしている。少なくとも、自分の胸の中に『何かが起こっている』ことは実感しているはずだ。 彼女に言葉をこれ以上出させてはいけない。そう思った燈子は、璃緋都に歩み寄ると、その体を抱きしめていた。 「…どうしたの、母さん、いきなり」 璃緋都もあっけにとられたような顔で、母を見ていた。 （なんだか、昨日からいろんな人に抱きしめられてるなぁ…わたし、そんなに弱弱しく見えるかな…） 母の感触を肌で受け止めながら、璃緋都はそんなことを考えていた。その裏、頭の中では『どうしてさっきはあんなに取り乱したのか』がすでに疑問に変わっていた。自分の中で何かが思い起こされようとしていたのは確かだが、今はそれを気にしていない自分がいるのだ。さっきまではそれが不思議で、怖くて仕方がなかったのに、少し眠って目が覚めた今は別になんともない。 「…っ！？」 突然、璃緋都の胸にあらぬ感触が走った。あわてて見下ろすと、母の手が胸に触れていた。それと同時に、もう片方の手が背中を引き寄せ、体に密着させてくる。 （ちょ…っ、やめてよ、風花さんや美月に続いて母さんまで…っ、それに今、わたしの体には、あ、あ、アレが…ッ！？） 「…かあさ…んっ！」 声を出そうとした瞬間に、今度は唇をふさがれた。とたんに思考が止まった。 （…な、何これ…わ、わたし、実の母さんに…キスされて…っ） 一瞬してそんなことが頭に浮かぶものの、すぐにゆっくりと舌が差し込まれ、璃緋都の思考がさらに溶けていく。 （…嘘…今まで（女ばっかりだけど）何人かにキスされたけど…） 実の母親…燈子の唇、そして舌の動き…そのどれもが快い。まるで、自分の体をすべて知っているかのように正確な動きは、璃緋都をあっという間に快感で溶かしていく。 （…母さんのが…一番気持ちいい…っ） 背筋がびくびく震える。体中がとても熱くなってくる。胸の鼓動が高まる…。 さらに強く抱きしめられ、互いの体が密着していく。感触はとても気持ちいいのに、璃緋都は唇を吸われながらもどうしても下腹部に感覚がいってしまう。 『勃ってしまうのではないか』でははく、『見つかったら、バレたらどうしよう』という思いである。 「…ん…んは…っ…ぁ」 やっと唇を離されたとたん、璃緋都は色っぽい声を吐いていた。体中の感覚が敏感になっている。 一体実の母は自分にどんな魔法を使ったのだろうか？ 「…璃緋都、気持ちよかった？」 「…っ」 ただ気恥ずかしかった。だから、うなずけなかった。そんな璃緋都を見ていた燈子が、優しく微笑む。 「…ふふ…可愛いわ、璃緋都…わたしの璃緋都」 母の手が胸に回る。璃緋都は一瞬『うっ』と小さな声を上げたものの、逆らいはしなかった。 「…いつの間にか、こんなに大きくなっていたのね。璃緋都のことをもう『子供』なんて呼べないのかしら」 優しく乳房を揉み解しながら、燈子が言った。 「でも…いつになっても、どれだけあなたが大きくなっても、何があっても…世界中があなたの敵になったとしても、わたしだけはいつでも璃緋都の味方だからね」 燈子の囁きは、愛娘の心の深くに沈んでいく…。 「そして、あなたはいつでも…わたしのもの…わたしだけのものだから…」 （えっ…？） 体が抱きしめられたまま、自分の体が寝室のほうへ向かっていく。燈子が押しているのだ。璃緋都は『信じられない』といった表情のままなすすべもなく、押し返す力も入らず、寝室へと押し出されていく。自分の母親のどこにこんな力があるのだろうか、と一瞬思ってしまったくらいだった。 「か、かあさ…」 「母さん、じゃないでしょう？」 璃緋都が母を呼ぼうとしたとき、その母が璃緋都の鼻先に指を突きつける。 「昔みたいに、『ママ』と呼びなさい。…昔みたいに」 「…マ…マ…？」 成長した今となっては使えなくなってしまった懐かしい響き。母に言われた璃緋都は、ほとんど抵抗なくその言葉を口にしていた。 そして、ついに寝室へと到達してしまった璃緋都の体は、ベッドの上へと寝かされてしまうのだった。 「…『まま』、ダメ…。ダメだよ」 仰向けに寝かされた体に、母の手が迫る。 （何で…？美月といい風花さんといい澄江といい…なんで、この前からこんな目に…っ！） 胸に手が掛けられる感触に耐えながら、璃緋都は懸命に考える。そして、ついにあることを思いついた。 （…あの本…！さっき、『まま』は、あの本を…読んでいた…まさか…あっ！？） 璃緋都の考えが『本』に思いついたころには、すでに燈子の手が服を脱がし始めていた。 （だ、ダメ…今脱がされたら、脱がされたら…っ） 抵抗したいのに、体がしびれたように動いてくれない。手も足も、首を振ることすらできない。 上着が脱がされ、ブラジャーが取り去られ、そしてパジャマのズボンも脱がされる。 「…ふふっ、我が娘ながら本当に可愛いわ」 そして、ついに最後の一枚も剥ぎ取られ、璃緋都の裸は母親の目の前に晒されていた。 （…あ、あれ…ッ！？ない…ッ！？） 璃緋都は目を疑った。今朝まであった『モノ』がいつの間にかなくなっているのだ。あった場所には、元通り膣への入り口があった。 「うふふ…可愛い…まるで幼子みたいにツルツルで…」 （き、気にしてるんだから言わないでよ…っ！どうしてみんな生えてるのに、わたしだけ無毛なわけ…！？これのせいで中学の修学旅行のときどれだけ恥ずかしかったことか…ッ！） 内心怒ったものの、そんなことは口に出せない。そうしている間に、燈子の右手が下腹部に伸びる。 「璃緋都…あなたは、ずっと、ずっとわたしのものよ…わたしの…」 「…『まま』…」 やってきた快感に、璃緋都は体を震わせていた。 「ほら、乳首、勃ってきた。いつからこんなにエッチになったのかしら、いけない璃緋都」 「…っ」 母親に乳房をいいようにされていたせいか、璃緋都の体は敏感に快楽を受け止めるようになっていた。 その鮮やかなピンク色をした乳首は元気に勃ちあがり、燈子の更なる愛撫を待っているかのようだ。 璃緋都は恥ずかしくて、でも気持ちよくて、ベッドの上で軽く仰け反る。息がとても荒い。 とりあえず落ち着きを取り戻すために、深呼吸を何とか繰り返す。カーテンが閉まっているため薄暗い寝室の中、璃緋都の呼吸音が響いていく。 （…？） 不意に、母からの愛撫が止まった。今まで乳房を愛でていた手を止め、母は璃緋都が落ち着くのを待つかのように彼女を見下ろしている。 （…ふぅ…『まま』、一体何がしたかったのかな…でも、わたしの体に今『アレ』がない、ってことは、他の誰かにいっちゃった、っていうことかもしれない。誰に…？普通に考えれば美月だけど、ちょっと前にあったモノが気がつくとないなんて） ベッドの外から自分を見下ろす母の視線を感じながら、璃緋都は状況を整理する。息を整えるために深呼吸をすると、璃緋都の胸がゆっくりと上下していく。 （…『まま』、もう何もしないのかな…してこないのかな） 何でだろう、ちょっと物足りない気がする。深呼吸して息が落ち着いてきたというのに、心拍が上がったままなかなか落ち着いてこない。 体が震える。寒いからではない。 そんな中、璃緋都は、母燈子の指が乳房の手前まで伸びて停止していることに気づいた。人差し指だけ突き出し、璃緋都の乳首の手前でゆっくりと乳輪をなぞるかのような手つきで指を回す。 嫌でも、その指に意識が集中していく。触られていないのに、意識がその指に向かってしまう。 （…あの指がわたしのおっぱいに触れたら…どうなるんだろう。どのくらい気持ちいいんだろう） 「璃緋都…もっと触ってほしい？」 「『まま』…」 そう聞かれ、璃緋都は戸惑った。今まで強制的に愛撫を加えていたくせに、今度は璃緋都にそう質問してきたのである。 璃緋都は、とろんとした目で母の言葉を聞いていた。母の人差し指と親指が、乳首の直前で摘む動作を見せている。 （…乳首つままれたら、気持ちいいかな…） 「…ほら、甘えん坊の璃緋都。触られたい？乳首つままれて気持ちよくなりたい？返事しないと触ってあげない」 （…意地悪…っ） 触ってほしい、でも恥ずかしい。実の母親にそんなことを言いたくない。璃緋都の頭の中で想いが揺れる。 「…『まま』、…して」 しかし、璃緋都は自分に与えられた快感の誘惑に勝つことはできなかった。自慰すらしらない彼女は、自分の指を使って自分自身を愛撫することまで思いつかなかったのである。 「…あら？よく聞こえなかったわ。璃緋都、今なんていったの？」 それでも、母は意地悪く娘に尋ねた。本当は何を言ったか分かっているのだ。 「…わたしを…璃緋都の乳首…触って…」 （ああ、わたしは今一体何を言ってるんだろう…） 頭の中で必死に否定しているのに、先ほどよりも大きな声で言葉が出てしまう。母の刺激を求めてしまう。 「…よくできました」 璃緋都の言葉を聞いた母は、嬉しそうに微笑した。 「ご褒美に、もっと気持ちよくしてあげる」 そう言った燈子は、璃緋都の乳房に顔を近づけると、その頭頂部に舌を這わせた。 「…ッ！」 声にならなかった。背筋がぞくっ、と震え、璃緋都の体が大きくのけぞる。散々じらされた乳首はさらに敏感になっており、舌の一舐めだけで絶頂に達してしまいそうになっていたのである。 「ま、『まま』…ダ、ダメ、舐めちゃ、ダメぇ…」 ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めてやりつつ、時折唇で優しく乳首を食んでやる。乳首に刺激がくわえられるたびに、璃緋都はいちいちのけぞって反応を示した。燈子もそれが面白くて仕方がないらしく、さらに乳首に攻撃を重ねていく。 もう片方の乳房は燈子の手に包まれ、揉みほぐされている。 「はっ、はぁん…ひぁ…」 （あぁ、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいよぉ…、頭、おかしくなる…） 「…璃緋都、あなたはわたしのもの。ずっと、ずっとわたしのもの…」 母の言葉が頭の中で、鐘のように鳴り響いていく。 「…さあ、もうイッてしまいなさい。ここもそろそろ敏感になってるでしょう？」 母の手が乳房から離れ、下腹部へと滑り降りる。その手は璃緋都の一番敏感な部分で停止した。 「…ッ！」 体中に電撃が走ったような快感が、璃緋都の全身を駆け抜けた。背筋をこれ以上ないほどに反らせ、璃緋都は絶頂に達していた。 「ひああっ！はあッ…！」 両目からは涙が溢れ、口元から涎が飛ぶ。今までに味わったことも考えたこともない快感に、璃緋都は抗うことができずに身もだえ、やがてガクリと力を失ってしまうのだった。 燈子は、失神してしまった璃緋都をソファに移したあと、ベッドの後始末に取り掛かった。 「あらあら、こんなに濡らしてしまって…璃緋都ったら、いけない子、うふふ…」 それが自分のせいなのを棚に上げつつ、彼女はシーツの交換にかかる。いつもは使用人がやることだが、さすがに璃緋都の愛液で濡れたシーツを使用人に交換させるわけにはいかない。 「…そう、璃緋都はわたしのもの。それを、それをあの男は…ッ！」 シーツを取り替えながら呟く燈子の目が、怒りに染まる。しかし、数秒後には元の目に戻っていた。 |
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| 2008.11.29掲載 |
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