| ２８ 愛憎 （あなた、またわたしの璃緋都に手を出したのね…！） 先日の『夢』の中で、璃緋都と都志彦が交わるのを眺めていた燈子は、姿の見えない相手に憤慨していた。 （この場にあなたが見えようものなら、首を絞めてやったのに…！） 胸のうちには複雑な想いがあるものの、相手の姿がすでにこの世にないのだから意味がない。 あの事件以前に（実際には直前だが）娘の貞操が奪われていたことが、燈子には許せなかったのである。 無論、燈子は事件の犯人を、それこそ『首を絞めて殺したいほど』憎んだ。しかし、それと同じくらい、娘の処女を奪った都志彦を許せない、という面も強かったのである。 その都志彦が、『あの事件の犯人に復讐したい』と持ちかけてきた。…あの日、燈子が璃緋都を愛撫し、絶頂させた日である。 月並みな言葉で示せば、今の都志彦は『幽霊』という存在になるのだろう。おそらくは、今まで璃緋都を襲った犯人を独自に探していたのだ。あの『本』の中に宿り、その持ち主と共に移動することで、である。 何の縁かは分からないが、その本は私立探偵が持っていたらしく、たまたまその探偵が本を落としたことで、奇しくも本は璃緋都の持ち物になってしまったのである。 あの夜、本の中の都志彦に声をかけられた彼女は、憤る反面、犯人への復讐を共に遂げたいとも思った。 だからこそ、こうやって共にいるのである。今の都志彦は、燈子の中にいる、という存在なのだが。 『貴女にどう憎まれようとも、俺は璃緋都が好きです。でも、俺一人じゃヤツらには復讐できません。 だからお母さん、貴女に頼みたい。やるときは俺がやるから、体だけ貸してください』 都志彦にそう言われた燈子は、実にストレートな言い方に逆に好感を持ったものだった。 璃緋都を溺愛している彼女だが、『自分と同じくらい、この都志彦も璃緋都を愛しているんだ』と思うと、首を縦に振らざるをえなかったし、自分も復讐の念は強かったのである。 『なぜわたしだったのか』と聞くと、都志彦は『璃緋都に似ているから』と答えた。 どういう原理で自分が若返ったのかは分からないが、今の燈子は璃緋都とよく似ている。親なのだから当然なのだが、似ている度合いが親のそれではない。 今や女子高生にも見える燈子は、病院を（神楽都志彦の力を借りて）抜け出した後、都志彦の声で現職の刑事を璃緋都が行くところへ呼び寄せた。そして、自らは徳永の事務所へ…。 （それにしても、あの本は一体…？この人が中に入っていただけならまだ分かるけれど、一ページ破いて持っているだけでも、神楽都志彦の『魂』の行き来ができるなんて…） 燈子の服、内ポケットの中には、あの本から破りとった一ページが入っている。 （でも、ページを持っただけじゃ俺の魂の行き来はできない。おばさんの『犯人を憎む気持ち』や『璃緋都を想う気持ち』が俺と同調したからこそ、できる芸当なんですよ。そして、あの『熊田澄江』という人も） 頭の中に都志彦が語りかけてくる。燈子にとっては、都志彦はむしろ忌むべき人間である。可愛い、大切な娘の処女を奪った人間なのだ。 それでも、燈子は都志彦の魂に手を貸した。犯人を『裁く』ために。 （…そう、わたしには『力』がなかった。あの悪党を裁く力が…。でも、この『力』があれば、璃緋都を汚したあいつらを…この世から永遠に消してしまうことができる…！） 今ならば、娘を汚した上、それを利用して娘の将来まで奪おうとした人間を裁くことができる。 刑事裁判などという方法ではなく、自らの手で裁くことが…。 そして、璃緋都を汚され、自らの命を奪われた都志彦ももちろん、犯人二人を憎んでいる。この点で利害が一致したのである。 ただ、分からない部分もあった。それは、自分を撃ったのが誰か、である。 最初は、都志彦が誰かを使って撃ったものだと思っていたのだが、どうもそうではないらしい。 （自分の意思を繋げるきっかけとなるものがないと、魂の行き来ができない）というのである。 それは現在燈子が持っている本の一ページであり、熊田澄江が持っているであろうあの本そのものである。 （どういう経緯かは自分でもよく分からないが、俺はこの本の中に宿る『幽霊』みたいになってしまった。 そして、回りまわって璃緋都の近くにたどり着いた…。あの『美月』という璃緋都の友達が、璃緋都を好きだったからか、俺は無意識のうちに『美月さん』に乗り移ったりしたみたいだ。でも、あれをきっかけに、ある程度誰かに乗り移るのをコントロールできるようになった。そして、今なら誰かに話しかけたり、自分の声や乗り移った人間の声で話すこともできる。 この力があれば、俺は璃緋都を守れるし、ヤツらにも…引導を渡すことができる） 自分の力がどのくらい保つものなのかは分からない。ある日突然失われてしまうかもしれない。 それならば、そうならないうちに璃緋都が安全に生きていられるようにしたい。なんのわだかまりもなく生きていられるようにしたい。 それが都志彦の望みだった。 そういった都志彦の『魂』の想いは、心を通じて燈子にも伝わった。そして、今の燈子は多少わだかまりもあるものの、都志彦に対する態度を軟化させたのである。娘を…最愛の璃緋都を守りたいのは、自分も同じなのだから。 （それに、あいつらは…あの二人は璃緋都以外の女性をも手にかけていた。野放しにしておけば、もっと大勢の人間が被害にあうことになる。ヤツらは権力を持っている。やる気になれば、警察すら動かしてしまうかもしれない。俺が殺された事件のときのように…） 自分が殺害された事件のとき、徳永がどこからか圧力をかけて捜査を停止させたのを、都志彦は知っていた。 「…それで、あの男…『徳永錠』がどこにいったか、あなたには見当がついているのかしら？」 自分の胸のうちに呼びかける燈子。今のところ、自分は『高柳宗馬の殺害』に体を貸しただけである。 そのため、失踪した徳永については行方は分からないのだ。 二人にとって意外だったのは、『高柳宗馬が徳永の居場所を知らなかった』ということである。 議員と秘書ということで、一緒にいるか、でなければ居場所を把握しているものだとばかり思っていたのだ。 死に瀕して嘘を言うほど、あの男が徳永に忠実だったとも思えない。 （…まさかと思うが、僕の…いや、『彼女』の動きを事前に察知して、姿を隠したのだろうか？ いや、それはありえない。僕がこういう状態になっていることを知りえる人間は、誰一人として…） そこまで考えた都志彦は、思わず言葉を飲み込んだ。 （…しまった…知りえる人間がいる…！） 「…なんですって？」 胸のうちで言われたことに、燈子も思わず返事をしていた。 （八坂真夜…あの女は、僕があの本の中で機会をうかがっていたことを知っていたのかもしれない） 「…八坂…確か、夫が雇っていた探偵事務所の人ね。あの人がどうかしたというの？」 以前から真夜のことを知っている燈子が、不思議そうな顔をしていた。 （璃緋都は、ちゃんと寝ているかしら…。あの女社長さんなら、ちょっと癪だけど璃緋都を守ってくれるはず…） 夜の喧騒を眺めながら、燈子はそんなことを考えていた。今頃、夫・誠吾や璃緋都は自分のことを探しているかもしれない。 しかし、今はまだ彼らにも、警察にも見つかるわけにはいかないのだ。少なくても、残るただ一つの復讐を果たすまでは。 神楽都志彦の話では、どうやら八坂真夜という人物は自分たちと同じような境遇にある人間であるらしい。 それも、ただの人間の中にただの人間がいる燈子たちとは比べ物にならないほどの強力な力を有しているようだ。 「風花さんといい真夜さんといい、うちの娘の周りにはとんでもない女性が集まるわね」 燈子が呟くようにそう言ったとき、後ろから声がかかった。 「…遅くなりました」 振り返ると、背が高い少女がいた。燈子は彼女のことをよく覚えていなかったが、都志彦が呼んだ熊田澄江だろう。その脇にはあの本が抱えられている。 「…改めて、あたしにも協力させてください。璃緋都を酷い目にあわせた犯人に鉄槌を下す手助けを」 （嘘、この人、璃緋都そっくりじゃない） 夜の街に燈子の姿を認めた澄江の印象は、まさにそれだった。父兄参観のときに璃緋都の母親を見ているはずなのだが、澄江自身はその顔を覚えていなかったのである。向こうもおそらく同じだろう。 ろくに相手の顔も知らずに都志彦の要請を飲んだ澄江は、夜の街でどうやって燈子を探そうか考えていたのだが、実際にはその必要もなかったことになる。なにせ相手は『最愛の人』に瓜二つなのだから。 （でも、これじゃまるで姉妹だわ。とても母親に見えない…） 多少大人びた風貌に見えるのは、服装のせいだろうか。目の前の燈子は、さすがに璃緋都の双子とは言わないが、母親には絶対に見えない。少し年上の姉で十分通ってしまうだろう。 ことの発端は、昨日の夜、璃緋都が議員秘書の顔と名前を思い出した後のことである。 風花が璃緋都を寝室に連れて行った後、一同は澄江も含め各々の部屋に戻った。 自分の（正確には口縄家の）部屋で璃緋都のことを考えていた彼女は、璃緋都の苦しむ姿を思うと、犯人二人への怒りを抑えられなくなったのである。 美月には諫められたものの、『生きていればわたしが殺してやったのに』の発言は真実のものだと、自分でも思っている。 そうして悶々とした夜を過ごしていた彼女の枕元に、知らぬ間にあの本があったのである。璃緋都に異変を与えたあの本だ。 不審に思って手に取った彼女の脳裏に、突然『声』が語りかけてきた。そして、その声は、なんと『神楽都志彦』を名乗ったのである。 果たして、璃緋都や神楽都志彦本人が復讐を本心から望んでいるかどうかは、澄江にも分からない。 しかし、少なくとも自分自身は、犯人を許すことができない。その裁きは自分で行わなければ気がすまない。そう思った。 だからこそ、澄江は都志彦たちに手を貸すことに決めた。 （…もう一人…徳永議員が生きている限り、璃緋都の心から闇が晴れることはない。それならば、このわたしが…！） 皮肉にも、璃緋都を汚した犯人が殺害した都志彦によって、犯人を憎むもの二人が会したことになる。 燈子は璃緋都を母親として、また母親以上の感情を以って溺愛し、澄江は明らかな恋愛対象として璃緋都を見ている。 そういう人間だからこそ、犯人への憎しみも強いのだ。 「…警察がわたしたちを捜している以上、表立ったところには行けないわね。どこで夜を明かすべきかしら」 燈子が言った。まだ徳永の場所は掴めていないのだ。 結局、二人は偽名を使って安めのホテルを使う形になった。燈子のほうは伊達眼鏡に帽子といった姿になっている。 先日テレビに璃緋都が映ったため、それを考慮しての変装？である。実際、燈子の印象はこれだけでガラリと変化してしまったものである。 澄江のことは妹として扱うことにしたため、彼女は燈子のことを『お姉ちゃん』呼ばわりしなければならなくなってしまった。 最愛の人にそっくりな燈子を姉呼ばわりするというのは、なんとも複雑な気分だったものの、今不審に思われるわけにもいかないため、澄江は素直に従った。もっとも、燈子のほうはどこか楽しそうだったが。 「…ねぇ、都志彦さん？」 隣のベッドで燈子が寝息を立てたのを確認してから、澄江は都志彦に向かって呼びかけた。実際それが聞こえるかどうかは分からなかったが都志彦のほうはすぐに反応を返してくれた。幽霊だから寝ないのだろう。 『ん？』 「…今回のことに、あたしを誘ってくれたのは嬉しいんだけど…一つだけ分からないことがあるのよ」 『…何かな？』 澄江のほうは、とても寝付けそうになかった。自分たちに正義があるとは思っているものの、やろうとしていることは犯罪なのだ。 不安、そして緊張が彼女を締め付けていた。 「…あの…璃緋都とか美月に『生えちゃった』のって、都志彦さんの仕業なの？」 本の中にいたのが都志彦である以上、その可能性は否定できない。 『そんなわけがないよ。僕はただの幽霊だ。生きている人間が通常行使できない力を持ってはいるけど、人間の体のつくりを根幹から変えてしまうような強い力は持っていない』 都志彦の答えはそれだった。そのため、澄江はなぜかほっとした。が、同時に少し残念でもあった。 今、となりのベッドに寝ているのは、璃緋都にそっくりな燈子である。不安や緊張以上に『璃緋都が近くに寝ている』ことが彼女を寝付けなくさせているのだ。 「…じゃあ、アレは一体誰の仕業なの？あなたの声を聞いて以来、わたしはずっとあなたがやったことだと思ってたんだけど…」 『僕にそれをやる理由がないよ』 澄江の言葉に、都志彦は苦笑しているようだった。 『確かに夢を見せたり、本を持った人間あるいは僕そのものが乗り移った人間に特殊能力を与えたりはできるけど』 「そうね…あなたは璃緋都が好きなんだものね。わざわざ璃緋都を男性化させたりするわけがないわよね…」 （ひょっとしたら、都志彦さんにもわからないのかもしれない。でも…） あの力は『本自体のもの』なのかもしれない、と澄江は考え始めていた。そう思った彼女は、枕元に置いた本を胸の前で抱いてみた。 （…この本がもし、持った者の『欲望』に応じて体に変化を起こすとしたら…？） 「…う…ん…？」 自分の体に何かが触れたのを感じて、燈子は薄く目を開いた。先日議員秘書を手にかけたこともあって酷く疲れており、体はまだ眠気を訴えている。そのため、彼女はすぐに目を閉じようとした。 「…うぁ…ん…っ？」 すると、今度は下腹部に何かが触れた。いや、下腹部だけではない。全身を撫で回されているような感触。 そして、その一つ一つがとても心地よい。 「…いやです、あなた、こんなときに…」 このとき、まだ少し燈子は寝ぼけていた。そのため、夫の夜這いかと思ったのである。そんなことを呟いている間にも、燈子の体への愛撫は続き、優しい快感を与えてくれる。 下着の中に指を差し込まれ、いつの間にか秘所は愛蜜を滴らせていた。燈子の体はもう準備が出来ている。 それなのに、手は愛撫をやめてくれない。 「はぁん…あっ、あぁ…激しい…っ、まだ挿れられてもいないのに…イッてしまいますわ…」 目を閉じたまま、燈子は頭を激しく横に振った。 『えっ…！？』 そこまできて、燈子はようやく今の状況を思い出した。が、そのときにはすでに絶頂寸前であり、膣内に侵入した指も奥の奥へとたどり着くところだった。 「ひああぁ…んぐっ！？」 快感に全身を痙攣させた燈子が声を上げそうになったその口を、手がふさいだ。場所が場所だからだろう。 「はーっ…はぁーっ…」 深呼吸していると、下着を下ろされていくのが分かった。激しい倦怠感のなか、燈子はやっと目を開いた。 「…す、澄江さん…！？あなた、一体なにを…ッ！？」 目の前には、澄江がいた。気がつけば自身の服はほとんどが脱がされており、澄江に向かって半裸を晒している。 澄江のほうは燈子の言葉には返事をせず、黙ってその手をとっていた。そして、澄江はベッドの横に歩くと、その手を自分の下腹部へと持っていく。 「…えっ！？こ、これは…！？」 自身の手に、堅く漲ったモノが触れ、燈子は声を上げていた。そこには、ありえないモノが握られていた。 澄江の下腹部には、男性のモノがあったのである。 （どういうこと…！？どう見ても澄江さんは女なのに、こんなモノがついているなんて…こんなに大きくて堅いモノが…） 手に包まれたモノは、すでにいきり立っており、血管が浮き立っているのが感触で分かる。 頭の中で嫌でも夫のものと比べてしまい、燈子は頭を大きく振った。そんな事実があるわけがない。 これは夢に決まっている。 「…璃緋都…」 「…えっ？」 澄江が呼んだのは、自分ではなく、娘『璃緋都』の名前だった。そして、その言葉を聞いて、都志彦がなぜ澄江を選んだのかが分かった気がした。 （もしかして、澄江さんは璃緋都を…そして、今のわたしの姿を璃緋都と重ねて…！） 「…あっ！？」 そんなことを考えていると、澄江がやや強引に燈子の足を広げた。白熱灯の元に燈子の下腹部が赤く照らされた。 そこはもう先ほどまでの愛撫で潤っており、明かりを受けて汗とともに艶かしく光っている。 （璃緋都もツルツルだったけど、この人の遺伝なのかしら？） 澄江は以前に、璃緋都の秘所を見たことがあった。そしてこの燈子もやはり璃緋都と同じように入り口を覆うものは何もなく、歳にそぐわないほど綺麗なものがむき出しになっていた。 （…うぅ、外見が璃緋都にそっくりだから、興奮してくる…っ！） とりあえず、あの『本』が原因でこうなる、というのは分かったものの、自分にモノが生えてしまい、それを璃緋都そっくりの燈子に握られ、そして今半裸の燈子を見下ろしている澄江は、自身に湧き上がる欲望を抑えきれなくなっていた。 「…あぁっ、ま、まだ大きくなるなんて…っ！？」 そんな中、燈子までもが声を上げた。 （や、やだ…最近誠吾さんとご無沙汰だったから…わたしまで…っ！？） 握らされた堅いものが血走るのを手と指で感じ、燈子も半ば倒錯状態に入っていた。 これを、濡れた裂け目に挿れられたらどれほど気持ちがいいだろう…、中に出されたら…。そんな気持ちが胸のうちに溢れていく。 いけないことだと頭の中では分かっているのに、振り払おうとしているのに、それとは裏腹に、燈子は手の中のモノを一層強く握り締める。 「きゃあっ！？」 不意に強くモノを握られ、澄江は声を上げ、直後に両手で口を覆った。こんな声を出しているのを聞かれたら、きっとホテルの人間に怒られるに違いない。ここはラブホテルではないのだ。 「…澄江さん、何をしていらっしゃるのですか？」 「え？」 向こうから声をかけられた澄江は、首をかしげていた。 「…こうやって、全てを晒しているのです。早くしないと、夜が明けてしまいますよ？それとも、こうやって…手でしてほしいのですか？」 言いながら、燈子がモノを手で扱く。璃緋都にそっくりでも燈子は人妻だ。モノの扱い方は分かっているらしく、澄江のモノを絶妙に刺激していく。 「…あ…ふぁっ…わ、分かりましたから、やめ…っ、で、出ちゃう…っ！？」 （嘘…ッ！こんなに気持ちいいの？男の人のモノって、こんなに感じるのッ！？） とはいえ、澄江のほうは璃緋都に挿入されたことはあるが、挿入したことはない（当たり前だが）ので、入れる際にどうしたらいいか戸惑った。 「…ほら、ここに」 考えあぐねていると、燈子が自ら足を広げ、秘所を指で左右に開いた。もうそこは溢れている。濡れた中の肉が艶かしく光る。 澄江は言われるがまま彼女の足の間に割って入ると、無言のまま膨張した先端を当てた。 「っ！！」 燈子が声を上げそうになり、自分の両手で口を強く塞いでいた。とたん、がくん、と大きく彼女の体が脈打った。 澄江のほうは歯をくいしばって声が出るのをこらえつつ、ぬるぬるとした膣の奥を目指していく。 声はかろうじて我慢したものの、澄江の口の端からは涎が垂れ、顔もどこかとろんとしている。 （ど、どうしよう…い、イきそう…っ！こ、このわたしが、人妻のわたしが、夫以外の人に…、それも挿入されたばかりでイきそうになるだなんて…っ） いきりたったモノを受け入れた燈子のほうは、もはや完全に理性を失いかけていた。挿入されたばかりだというのに体が絶頂を求めてしまっているのだ。それは、誠吾とこのところご無沙汰だったせいもあるだろうし、先ほどまでの澄江の愛撫のせいもあるのだろう。が、それだけでもない気がする。 （し、子宮まで来ちゃう…女の子なのに、どうしてこんなに大きいの…ッ！？） （じ、自分で触ったことはあるけど…膣のなかって、こんなに熱いんだ…） 気を抜くとすぐに射精してしまいそうな感覚に、澄江のほうも動くに動けずにいた。 おそらくは一番奥近くまで入っているように思える。動けばすぐにイきそうだし、動かなくても締め付けが尋常ではない。 「…澄江さん、動かないのですか？」 ただただ快感に耐えるのが精一杯で動けずにいると、燈子のほうから声をかけてきた。 やはり彼女は人妻、自分よりは上手である。 「は、はい…っ」 かえって、主導権を握っているはずの澄江のほうがしどろもどろという状態だ。それでも澄江は、燈子の腰をしっかり支えて腰を動かし始めた。ゆっくり、ゆっくりと…。 「う、あっ…あんっ…」 硬直したモノが奥を突き上げるたびに、燈子は小さい声を上げ続けた。このくらいの声ならば漏れないだろうか。 燈子はときおり体を起こすものの、支えられないらしくすぐにまた倒れ掛かってしまう。 澄江のほうはもはや歯止めがきかないらしく、先ほどまで動けなかったのが嘘のように、その動きに激しさを増していく。 （だ、ダメ、止まらない、イく、イッちゃう…射精しちゃう…ッ！？射精したらどのくらい気持ちいいんだろう、璃緋都がわたしの膣内に出したときみたいに、びくんびくんしちゃうのかな…） 少しでも長く絶頂を遅らせるために、澄江は違うことを必死に考えるのだが、浮かんでくるのが璃緋都のことばかりである。 そのためか、より一層興奮してしまい、気がつけば腰を動かしているというよりは、もはや『叩きつけている』ように思えるくらい激しくなっていた。 「す、澄江さん、激しい…ッ！は、激し…すぎるッ！！」 燈子が大きく体をのけぞらせると、澄江は腰から手を離して、燈子の豊かな乳房に手を伸ばしていた。腰は一番奥まで強く突き入れる。 『ぐしゅ』という水音とともに、燈子の膣から愛蜜があふれ出た。同時に、燈子が口元を両手で強く覆った。 「んうううっ」 両手で口を塞いでいても、燈子の声はそこから少し漏れていた。澄江の手は燈子の両方の乳房を包み、すでに堅くなった小さな乳首を指で強く摘んでいる。 「ううっ…！で、出ます…イく、イく…っ！！」 歯を食いしばって声を抑えていても、澄江の声は少し大きめに響いた。 澄江の先端が爆発した瞬間、燈子は弓なりに体をのけぞらせた。 突き上げてくる快感、体の中に熱いものが流れ込む快感。二人の液体が混ざり合う快感…。 それらに乱れ狂う燈子の姿は、以前澄江がみた璃緋都のそれとまったく同じに映っていた。 澄江は目の前にいるのが璃緋都ではないことを忘れ、体をつなげたまま燈子の上に倒れこんでいく。 ふわっ、とした乳房が澄江の体を包んでいた。燈子は何も抵抗せず、澄江の体を両手で抱き締めた。 そのまま眠ってしまった澄江と自分の体の後始末をした後、燈子はカーテンを少し開けて外を見ていた。 見えるのは夜景だけだが、あと何時間か過ぎれば夜が明ける。 （それにしても、あの子…神楽都志彦が宿る本には、女の子を男の子にしちゃうような機能があるみたいね…。 うふふ…これはある意味楽しみだわ…。だって、本当の意味で璃緋都を『わたしのものに』することができるかもしれないもの。 この件が終わったら、わたしもあの本を試してみようかしら） この世に『女』として生を受けた以上、自分には璃緋都を完全にものにすることはできない。 しかし、今のように自分にモノさえあれば、璃緋都の全てを自分のものにすることができる。燈子はそう思っているのだ。 （でも、その前に…あの議員はどこに行ったのかしら…？） |
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| 2009.12.19掲載 |
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