１

　３７歳、既婚者の僕は某生命保険会社所属の営業マンだ。
　職歴はカレコレ１５年となるが、最近になって何故か色々と楽しい出来事が舞込んできた。
　そんな他愛のない話を少しずつ聞いていただけたら幸いです・・・。

　４月。
　仕事とは全く関係ないけれど、地域の活動を支える役員を強引に受けさせられた・・・・。
　近隣の学校や地域の催しなどをサポートする、ていの良い小間使いだ。

　嫌々始めた活動だったが、子供会の母親達と何度か顔を合わせるうちに、とても素敵なお母さんと出会った。
　その女性は本年から地域会の役員を任せられた３４歳の門田和美さん。
　細い体型に高い身長。たぶん１６５ｃｍはあると思われる。顔は切れ長ヒトミの美人で性格も明るい。
　お互い初めて地域活動に参加するという共通項からか、何度か顔を合わせるうちに気さくに話が出来るまでの関係となった。

　催しで度々一緒になる程に、最初は素敵な奥さんだな・・・と漠然と捕らえていた和美さんを、いつの間にかチョット意識するようになり・・・。
　和美さんも僕に対して悪い印象を持っている風ではなく、たまに行うお疲れ様会では隣の席に座ってくれて会話も弾んだ。
　でもその時は意識しながらも一線を引く、れっきとした活動仲間だったのだが・・・。


　和美さんとはメール交換が出来るまで進展し、今年の地域会の行事が終わる年度末に二人でお疲れ会をやろうという話になった。
　その時の事は追々語るとして、まずは夏が始まる頃に起きた話をさせていただきます。

　
　お得意様の一人から、保険の話を聞きたい人が居ると紹介を受けました。
　直接連絡をとり、説明をしてやって欲しいと得意客に言われた僕は、教えられた携帯へコールしました。

「もしもし・・・」
「わたしく、△△様からご紹介を受けました○○生命保険の青木紳作（あおき　しんさく）と申します。保険の事でお話を聞いていただけるとのコトでお電話いたしました！」
「ああ・・はい・・。宜しくお願いします」
「それでは早速、神崎様のご都合の宜しいときにお伺いしたいのですが、いつ頃が良いですかね？」
「そうですね・・・。今週の木曜だったら都合いいです」
「お時間は何時頃が？」
「１日家に居ますので、何時でも・・・・・」
「分かりました！では、１１時頃でも宜しいでしょうか？場所は神崎様のご自宅で宜しいですか？」
「・・・・どうしよう・・・・。外でもいいし・・・でも・・・自宅で大丈夫です・・・」
「有難うございます。では今週木曜１１時にご自宅へお邪魔しますので、ご住所を教えていただけますでしょうか？」
「はい・・・○○市××１−１３　コーポレモン１０２です・・・」
「では当日は遅れないように伺いますので宜しくお願いします！」

　数分のやり取りで感じた印象は、若そうだけど何だかちょっと暗い感じのする女性かな？・・だった・・・・。
「まあいいさ！契約に結びつけるぞ〜！！」
　そして木曜１１時。車のナビゲーションシステムが僕を神崎宅へと導いてくれた。

２

　ピンポ〜ン。
　４世帯のアパートの一角でインターフォンの呼び出しが響いた。
「はあ〜い・・」
「こんにちわ〜！○○生命の青木と申します」
「ああ・・はいっ・・・」

　こちらへと押された扉から姿を見せたのは、電話から受けたイメージと少し違ったカワイイ感じの神崎さん。
　片脚だけを玄関ポーチにつき、残った脚を廊下へと乗せたまま扉を開けた神崎さんの姿に、僕はちょっと戸惑った・・・・。
　何故なら、極端な前屈みでドアノブを外に押しているもんだから、シャツの首元から白い谷間がハッキリと見える！
　しかも普通の服より遥かに襟ぐりが広いシャツだったので、膨らみのほぼ全てがキチンと僕の目で確認できた・・。

「どうそ、入ってください」
「はい、失礼しま〜す！！」
　でもそこは営業マンの習性！本人に悟られない様に膨らみを盗み見た僕は、神崎さんが顔を上げてコチラを見たときには満面の笑顔で彼女の顔を見返していた。

「そこに座ってください・・・・ちょっと暑いですかね・・・・」
　ダイニングセットの椅子へ僕を導いた神崎さんは、ダイニングテーブルに置かれたエアコンのリモコンを取ろうとテーブルの向こう側からコチラに片手を伸ばした。
　またも前屈みになる小さなカラダ・・・。そしてまたも僕の目に晒される小柄なカラダには充分な質量の柔らかそうな谷間・・・・。
　神埼さんがリモコンを取るのに一所懸命なのをいいコトに、さっきよりジックリと眺めることが出来た場所で揺れるピンクの下着と真っ白な膨らみ・・。
　僕は心の中で（ラッキー！！！）と拳を突き上げていた（笑）

　エアコンの設定温度を下げた神崎さんが僕の対面へと座り、要約正面からお互いを確認できる。
「初めまして。青木と申します」
　僕が差し出す名刺を受け取った神埼さんは、「お願いします・・」と小さく応えると、ちょっと驚いたように拡がった襟ぐりを首へと引っ張りあげた。
（そりゃ〜気になるよなー！）
　そんな風に無防備な性格を嘲笑っていても、笑顔は絶やさずテーブルにパンフレットを並べる僕・・。
　今迄だって似た様な客は何人もいた・・・。でも殆どがアカラさまに何かを求める中年（だいたい４０代半場の餓えたオバちゃん！）女性！
　神埼さんの様に若いうえに見た目もソコソコな相手には、そうは巡り会えない！保険のセールスで魅惑の人妻とアレコレ！なんて言うのは一部を除いては官能小説の中の話！
　一部を覗いてって言うのも、本人が武勇伝らしく吹聴しているだけで、本当のところは誰も知らないレベル。僕の会社にも数人はいるのさ！飲んだ席で必ず何処ソコの奥さんと関係を持っただの、その奥さんがスゲ〜美人で淫乱だのと吹く連中。
　現に自分の長いセールス暦を振り返ってみても、本当にイイ思いをしたことなど一度も無かったからね！決してモテないタイプじゃないし、ホラ吹き同僚に比べたら自分が上だと容易に思える見た目だよ！
　そんな僕に訪れた、若くて可愛い神崎さんとの出会いは、３７歳男の胸を妙にドキドキとさせた・・・！

　一通り説明を終えて、相手の希望を聞きだす。これはセールスの基本。
　パソコンを駆使しながら見込み客のプランを作成していく。そして生年月日を聞いて考える、昭和５×年□月・・・現在２７歳か・・！僕より１０も下だな〜・・。
　余談を巡らせながら、いつも通りの段取りで神崎さんと話を進めるうちに、僕の説明を真剣に聞こうとする彼女の顔がテーブルに置かれたパソコン画面へどんどん近付いていく。
　すると必然と彼女の胸の位置が下がり、首元から再々度嬉しい姿を現すモチモチの肉玉・・・。
　３度目ともなると、僕からも遠慮が薄れているのか、説明を続けながらも喰い入るように服の中身を眺めてはアレコレと想像する哀れな生物・・・。
　きっとサイズはＣかＤだろう・・・。色の白さと木目細やかさからいって吸いつく肌質だろうな〜。膨らみと下着に隙間が見えないってコトは、全体のボリュームが本物ってことだし、手の中に収めたら堪能できる弾力だろうな〜・・・。
　妄想の鬼と化した僕は、じょじょに疎かになる説明を自覚できずに、ただただ訪れたラッキーに胸を躍らせていたみたいだ！

　数秒後、目と鼻の先にあったはずの谷間が視界から消え、その姿を追った視線の先には頬を赤く染めた神崎さんの何とも言えない真っ赤な顔・・・。
（ありゃりゃ、シマッタ〜〜！！）
　犯した失態に逃げ出したくなる僕を責める様に、襟元を右手で押さえる神埼さんは、赤らめた頬で上目遣いにコッチを見ながら、羞恥を訴えているみたいにカラダをモジモジさせた・・・・。

「ゴメンなさい・・・・。あの・・・その・・・つまり・・・・済みません！！」
　こうなってはヘタな言い訳を並べるより素直に認めてしまった方が得策だと判断した僕は、気持ちとは裏腹にドギマギしながら言葉を投げ連ねた。
「・・・・はい・・・コッチこそ・・・みっともナイですね・・・・スミマセン・・・」
　謝り合うお互いの顔を見合わせた僕らは、照れ臭そうに笑い合うと、しきりに頭を下げあった・・・・。

　ヘンな出来事がお互いの距離を縮めるってコトもあるのか、それからの彼女は打ち解けた口調で僕との会話を楽しんでいるようだった・・・。
　彼女の態度に安心した僕も、じょじょに砕けた口調になって仕事に世間話を交えていった。

３

　彼女の後ろに置かれた低いチェスト上に子供の写真が飾ってあった。
　部屋からは子供が発する生活臭が感じ取れなかった僕は、何の思慮もなしに写真の主を聞いてみた。

「ああ、これ、私の子供です・・・・。別れた旦那と暮らしてるけど・・・・」
「ええ〜！神崎さん、お子さん居るんですか？全然見えませんね〜」
「そんな・・・・・。もう若くないですから」
「若くないって、まだ２７歳ですよね〜。僕からしたら充分若いですよ〜！」
「青木さんは何歳なんですか？」
「３７歳のオジサンです！」
「見せませんよ〜！もっと若い人かと思ったけど・・・・」
「ははは、日の光の下で見れば其れなりに・・・・」
「フフフフ、可笑しい・・・！」

　写真から交わされた会話によって、神崎奈々子はバツイチで５歳の女の子がいる・・。４年前に旦那と離婚し、経済的な理由から娘は相手が引き取ったらしい・・・。
「そうなんだ〜・・・・。お子さんとはチョクチョク会えるの？」
「あんまり会えないかな・・・・。旦那が再婚してから、会えなくなった感じ・・・・」
「旦那さんの再婚相手は、娘さんを可愛がってるのかな・・・・？」
「結構大事にしてくれてるみたい。詳しくは知らないけど、共通の友達がそう教えてくれたから・・・・」
「そうか〜・・・・。でも離婚して４年も経つんだったら、神崎さんも再婚とか考えてないの？」
「・・・・う〜ん・・・。考えてナイかな」
「どうして？」
「わたし、男の人が苦手っていうか・・・。上手に接するコトが出来ないっていうか・・・」
「そうなの？僕とこうしているのを見ると、そうは思えないけど・・・・」
「スゴク緊張してますよ、今でも・・・。青木さんが話し易い感じだからちょっと平気だけど、この前も友達に紹介された人とドライブ行ったけど、最初から最後まで嫌で嫌で仕方なかったし・・・・」
「男の人が怖いの？」
「そういう訳じゃないけど、結婚もしたくらいだし・・・。だけど得意じゃないかもね・・・。だってこの家に男の人が入るのって、多分青木さんが初めてだもん・・・」
「ええ〜っ！それって光栄だけど、真面目な話？」
「あっ！前にテレビ修理にきたオジサンが居た・・・ゴメンなさい・・」
「そんな、謝らなくてイイよ〜。じゃあまあまあ若い男ってのは僕が最初なんだ〜」
「そうです・・・変でしょ？」
「う〜ん・・・」

　意外な告白に戸惑ってしまった僕は、最もらしく腕組みすると、低く唸って考え込むスタイルを取った。
「そんなに考えないでください・・・。変な話してゴメンなさい・・・」
「いやいや、じゃあ離婚してから彼氏っていなかったの？」
「うん、もう４年も彼氏なんていないな・・・・。これからもダメかもしれないし・・」
「だったらさ、合コンでもしようか？段取りつけるからさ！」
　飛んだセールスマンである！いきなり合コンのお誘いとは！！でも、俺の脳裏に合コン大好き仲間の喜ぶ顔が浮かんだ。

「う〜ん、それって何だか重い気がしちゃうな・・・・。期待されても困るし・・・」
「だったら飲み会ってのは？相手を見付けるとかじゃなくて、単に楽しく飲むってだけの集まり！」
「それなら平気かも・・。そんなの好きな友達もいるし・・・」
「じゃあ決定！コッチも仲間に声かけるから、何人用意すればイイかな？」
「私が誘えるのは２人くらいしか居ないけど・・・」
「なら３−３でイイね！楽しみだな〜！！」
「フフフ、青木さんて真面目なのか遊び人なのか分からないね」
「僕？僕は其れなりに人生謳歌する男です、ハイ！」
「いいな〜。私もそんな風になってみたい・・・。外出しないし、活動的でもないし・・・。」
「大丈夫！こうして僕と出会ったのも縁だから、楽しいことならいつでも聞いてよ！」
「うん！ちょっと前向きになってきた」
「ヨシヨシ！」

４

　それから小一時間ほど仕事の話を詰めて、そろそろ次の仕事が・・・と考え始めたとき、彼女が新しいコーヒーを薦めてくれた。
　並々と注がれたカップを揺らさないように僕の前へ置く彼女は、忘れてしまっているのか胸元の広い服でまたも状態を屈める。
　４度目の白い膨らみ。僕は半分笑いながら堂々とその部分を眺めてみた。
　流石に視線に気付いた神崎さんも、溢れそうなコーヒーを置くまでは何も出来ずに、照れ臭そうに笑いながら胸元を押さえた。

　音を立てないように木製のテーブルにカップを置いた彼女は、顔を伏せながら自分の椅子に腰を落とすと、襟首を前方に引っ張り自らの目で中を覗き込む・・。
「やっぱりハシタないですよね・・・。こんな服着て・・・ああっ・・恥かしい・・・・！」
「勿体無いね・・・・素敵なのに・・・・」
「えっ！？」
　谷間を覗き込んだ顔が上がり、僕の顔を不思議そうに見る・・・。

「今更だからカッコつけないけど、綺麗なラインしてるのに男が苦手なんて勿体無いな〜と思ってさ！」
「そんなコト・・・」
「仕事が絡んでなかったら、真っ先に口説いてるよ、俺・・」
「・・・有難う・・・です・・・・」
　二人の間をコーヒーの湯気がさえぎり、僕の視線から彼女の姿を遮断する・・・。
　それが堪らなく嫌で、僕はまだ熱いコーヒーを口に運んだ・・。

「あの・・・・・」
　カップのコーヒーが少なくなった頃、俯いていた神埼さんが僕を見詰めた。
「なに？」
「いえ・・・なんでも・・ナイです・・・」
「何でも言ってよ〜！僕に出来ることなら聞くよ」
「はぁ・・・・。でも・・・やっぱりイイです・・・そんなコト・・・・」
　躊躇いと困惑で一杯な顔をして俯く彼女・・。

「当ててあげようか？神崎さんが何を思っているか」
　自分なりの経験から導き出した思いを言ってみたくなる僕・・・。
「えっ！？そんなの・・・イイです・・よ・・・」
「ダメぇ〜！絶対当ててあげる。チョット興味が沸いたんでしょ？オトコに・・・？」
　胸中を巡る思いを突かれたのか、彼女は暫し無言のあと、コクンと頷いた・・・・。
　途端に僕の胸はカァ〜と熱くなり、思いがけず巡ってきたチャンスをモノにしろと悪魔が囁く。

「俺でもイイならアレだけど・・？結婚してるけど」
　ココまで来たらダメ元ってな感じで僕は聞いた。
「あの・・・・付き合うとか・・じゃ、無くて・・・・。その・・・・・なんか、ドキドキするって・・・・言うか・・・どうしよう・・・」
　両手を胸元にあてて、悩ましげな表情を見せる彼女・・。

「試してみる？リハビリみたいな感じで、少しだけでも」
　その仕草が意外とエロっぽくて、股間もカァ〜と熱くなる！だから思わず口走る僕・・。
「えっ！結構ですっ！！・・・・・・・・・・・」
「遠慮しないで〜！俺なんて至って平凡な男だけど、一応節度は持ってるつもりだからアンパイだよ〜」
　今ではもう、必死でオンナを口説く節操なしのオトコ・・。

「う〜ん・・・・・・・・・・。でも・・イイんですか・・・そんなコト言って・・・奥さんもいるのに・・・」
「俺は構わないよ！神崎さんが望むなら協力するし」
「はい・・・・。でも・・・その・・・・」
　彼女は心底から悩んでいる様だった・・・。思わず言ってしまった胸の内を恥かしくも後悔するようにテーブルを見詰める神埼奈々子・・・。

「それじゃあ、深くはヤラずに軽くってのはどう？」
「軽く・・ですか？」
「うん、神崎さんがコレだけ出来ればイイってのが有れば、それで終わりにするって方法」
「そんな我ママ・・ダメだと思うけど・・・」
「平気だよ、僕は・・・。無理に関係を結ぼうなんてコレっぽっちも思ってナイから」
「・・・ハア・・・・どうしよう・・・・！」
「遠慮なく言ってよ〜。キスだけってのもアリだからさ！」
「それは・・・はい・・・そうですけど・・・・」
「じゃあ決まり！それだけ済んだら　僕は消えるよっ！」
「・・・うん・・・・」

　僕はテーブルを周ると、俯く彼女の左側へ立ち、小さな肩に手を乗せた・・・。
　ビクンと揺れた彼女の上半身を抑えるように、反対の肩にも手を乗せた僕は、震える上半身をゆっくりとコチラに向ける・・・。
「嫌に感じたら拒否してね・・スグにヤメるから」
　囁いた僕は、コクンと首を垂れる彼女の顔と高さを合わせるため、自分のヒザを折っていく・・。
　僕の顔が黒い前髪を通過するとき、女性物の芳しいトリートメントの臭いが鼻腔をクスぐった・・・。