（４）

　女子高生の首から垂れた鎖を掴んで、柴田は、部屋の奥へと移動した。
　侑加は抵抗しなかった。まだ何をされたわけでもないのに、もう肩で息をしている。裸で首輪や手枷を巻かれた姿では、何もかもが痛みのない拷問だった。
　柴田は、二本足で立つ美しい小動物の裸身を横目で観察した。
　怯えと緊張にまみれた美顔の下で、控えめに、気恥ずかしそうにたたずむ乳房。見るからに硬そうな量感と形状である。腰の丸みも幼い。だが、決して未成熟なだけの肉体ではない。
　こうして彼女の裸を目にするのは、これが二度目だった。彼がまだ新婚間もないころ、親戚一同で温泉旅行に出かけたことがあったのだ。部屋つきの露天風呂がある旅館だった。
　当時の侑加は小学校の三、四年生だったはずだが、あのころの彼女は、どちらかというと肥満体形の印象が強かった。しかし、今はまるきり逆である。手足など特に細すぎるくらいだ。そのくせ太腿のあたりは妙にムッチリとしていて、十六歳としての女の片鱗をうかがわせる。
　彼女がコケティッシュな容姿の娘だということは、柴田も昔から気づいていた。子供のころからそうであったし、最近はぐんと大人っぽさも増してきている。しかし、この裸身の魅惑は想定外のものだった。
　女と子供が入り混じった、年頃の少女そのものの肉体。大人の彼にとっては禁断の果実というべき女子高生の肉体。禁忌だからこそ魅惑も強いし、神秘的でもある。抜けるような白さの肌であるから、よけいにその印象が強い。また、肌の白い女はマゾ気質が強いという流説もある。
　パンティ一枚の少女を鏡の前に立たせた。
　侑加は息を詰めたまま眺めた。彼女とよく似た娘が鏡のなかに映っている。男に背後から密着されて、裸身を震わせている。
「気分はどうだい？」
　わかりきったことを聞いてくる。
「正直な気持ちを言ってごらん」
「……恥ずかしい」
「ああ、とってもスケベで恥ずかしい姿だ。友達が見たら驚くだろうね」
「お、お兄ちゃん」
「でも、恥ずかしいだけじゃないんだろう？」
　男の両手が動いた。少女の腰の左右に指を添え、発展途上のくびれを上下にそっと撫でる。頭の後ろで固定された侑加の両腕が揺れた。
「こういう恰好が好きなんだろう？　縛られて悦ぶ女なんだろう？」
　恋人に愛を語るような口調である。けれども、言葉の中身は情愛とは程遠いものだった。大人の男が女子高生に言っていい台詞ではなかった。
　侑加は口を開いた。そんなの違うと言うつもりだった。しかし拒絶の言葉は生まれず、かわりに短い悲鳴がこぼれた。柴田が、前置きもなしに乳房を揉みはじめたのだった。
「侑加は男に苛められるのが好きなんだね」
「ンンゥ、そ、そんなの」
「好きなんだろう？」
「……は、はい。そうです」
　裸でいやらしいことをされているから、吐息のような声が自然と出た。優しい尋問だから、否定することができなかった。
「好きです、苛められるの……好き」
「裸で苛められるのが、だろ？」
　今度は無言で頷いた。
「知らなかったよ。まさか、侑加にそんな趣味があっただなんて」
「あン、違う」
「違わないだろ、こんなにいやらしい顔をしてるじゃないか」
　薄目を開けて鏡を見据える。そこにあるのは、柴田の言葉通りの女の顔だった。グロスの唇からもれる吐息、悩ましげに歪んだ丸い瞳、黒い首輪。これは、人間の少女になりたがっている飼い猫だ。
　発情した牝猫である。
　柴田は背中や下腹部にも指を這わせた。見た目の通りに硬さの目立つ肉体である。だが、男を夢中にさせる硬さである。
　肌荒れや染みのひとつもなければ、無駄なたるみも見当たらない。どこもかしこもスベスベでピチピチなのだ。膨張したゴムを高級な薄布で包んだ感じだった。
　彼が学生時代に関係を持った女子高生とはまるきり違う。あのときの女は、ひどくざらついた肌質だった。ならば、この娘が特別なのか。昂ぶる激情をなんとか制御しながら、柴田は、絹肌の太腿を指で吟味し、腰まわりの曲線を確かめ、乳房を手のひらにくるんでそっと揉んだ。その部分は、生地の薄いパンケーキの弾力がある。
　いつの間にか侑加の声がやんでいた。
遠慮がちの吐息だけがハアハアともれ出る。時折、繋がれた両腕ごと黒髪が左右に揺れる。男に揉まれる乳房を中心にして、溶けたウイスキーボンボンのような甘さが身体にひろがっている。
「お兄ちゃん……は、はンンゥ」
　乳首をつままれると、新たな声が出た。恥辱と性感の混ざった喘ぎだった。頭の芯がぼうっとする。自分が何をしているのかさえ忘れそうになる。
「見られるだけじゃなく、触られるのも好きなんだね」
　不意に柴田が何かを言ったような気がして、侑加は、朦朧とした意識のなかで頷いた。意味もわからずに頷いた。
「どこが気持ちいいんだい？」
「ンン、そこ……胸」
　今度は確かに声が聞こえて、侑加は、甘息混じりにつぶやいた。
「オッパイがいいんだね」
「うん、いいの……オッパイがいい」
「どんなふうに？」
「……よくわかんないけど、なんか、くすぐったい感じ」
「それも性感の一部だよ、素質がある証拠さ」
　肘を持ちあげた形で束縛されているから、白い腋まで無防備のありさまだった。柴田は、身を屈め気味にしてそこに顔を寄せた。
　伸ばした舌でペロリと舐める。短い悲鳴とともに侑加の腰が跳ねた。
「だめ、そ、そんなとこォ」
　けれども、拒絶も抵抗もできない。身体の自由を奪われたこの姿では、手足を揺らして悶えるのが精いっぱいだ。
　汗ばんだ腋を上下に舐めあげ、舌が、乳房の丘へと這い進んでくる。すると、女体の震えも大きくなった。
　若い美肌を指と舌で味わっている柴田の息が乱れはじめる。相手が未成年の娘というだけで、耐える吐息も、裸身のくねつきも、何もかもが特別なものに感じられた。許されざる淫行だから、よけいに興奮する。
　舌先が乳首に触れた。
「ンンンゥ」
　侑加の首が後ろに折れた。涎を乗せた温かい舌が、苛めるように、絡みつくように、乳首を舐めあげている。彼女の知らない性感だった。
　濡れた舌が薄桃色の尖りを叩くたびに、肋骨をうっすらと浮かせた細い身体がきしんだ。口に含んで吸われると、力が抜けそうになった。自分の指で触るのとはまるで違う。白黒の風景に浮かんだ七色の虹のように、新しい悦熱がそこから発火している。
「僕が何をしているのか、言ってごらん」
「え、え」
「鏡を見て、自分のありのままの姿を説明するんだよ」
「でも、そんなのォ」
　狼狽の途中でふたたび乳首を吸われ、白い背中がまたのけぞる。
「さあ、言って」
「お兄ちゃんにオッパイ吸われてる、乳首吸われてるゥ」
「もっと詳しく説明しなさい」
「……裸で、首輪をつけられて。ペ、ペットみたいに」
　息が詰まりそうになる。言葉にすることで恥ずかしさも性感も増していた。
「ペットみたいな恰好でオッパイ吸われてるの……ッは、はあン」
「侑加は僕のペットになりたいのかい？」
「うん、ペットがいい。お兄ちゃんのペットがいい」
　はじめての淫熱に溺れるのが怖くて、男に甘えたくなって、大人びた顔立ちの娘は拗ねた口調でつぶやいた。
「お兄ちゃんのペットにしてください」
「そうか。だったら、パンティなんて必要ないな」
「え」
「ペットはそんなもの履かないだろう？」
　柴田は、尖り気味になった乳首を指ではじいた。
「さあ、どうする？」
「お兄ちゃん……」
「言わなくちゃ何もしてあげないぞ」
　柔和な口ぶりで勝手なことを言う。だが、彼をわがままな大人だとは思わない。
　自分に与えられた役割を演じきる。そこではじめてプレイが成立するんだ……。
　柴田は、それを忠実に実践しているだけなのだ。ならば、侑加も自分の役割を演じなくてはならない。彼女の役割とは、男の好むマゾヒスト趣味の女を演じることだ。
「お兄ちゃん。わ、わたし」
　躊躇と期待の混ざった目で男を見る。
「……パンティ、脱がせてください」
「パンティを脱いで何がしたいんだ？」
「な、舐めて」
「舐めるって、何を？」
「……アソコ」
「聞こえないな」
　侑加は首を左右に振った。乳房から腋にかけてが涎で光っている。
「お兄ちゃんの意地悪」
「侑加が可愛いから意地悪したくなるのさ」
「そんなこと……」
「ペロペロしてほしいんだろう？」
「う、うん」
「じゃあ、言ってごらん」
「……わたしのアソコ舐めてください。パンティを脱がして、ペロペロ舐めて」
　学校で英語や数学を習っている娘の口から卑猥な台詞がもれ出た。
　もう一度だけ乳首を舐めたあと、柴田の身体が沈んだ。パンティの腰紐に両手をかける。
　侑加はじっと鏡を見つめた。彼に見せるために新調した下着が、ゆっくりと、恐ろしくゆっくりと引きおろされる。そして恥毛の翳りが見えた瞬間、彼女は、悲鳴とも喘ぎともつかない声とともに目を閉ざした。

　　☆

　パンティを足首までさげると、柴田は、緊張のために固まった少女の足を交互に浮かせて、レモンゴールド色の下着を抜き取った。
　これが侑加ちゃんの、女子高生の裸……。
　息を呑まずにはいられない。こうして全裸に剥いてみると、改めて幼さの色濃い肉体だった。手足も胴まわりもすんなりと細いし、恥毛も薄く短い。普通、肌が白いと陰毛の濃さが目立つものだが、彼女の場合は逆だった。
　淫裂の窪みと区別がつかないほどの毛量であるから、光の加減によっては無毛のようにも見えるし、立ち姿のままでも肉溝の一部が露見する。しかし、彼が息を呑んだのには別の理由があった。パンティの裏地に、とんでもない量の愛液が付着している。
「侑加は濡れやすい体質なんだね」
　賞賛の口調でからかわれても、侑加は言葉ひとつ発しない。首を振って恥じらうこともない。
　単なる恥ずかしさを超える恥ずかしさに、男の前で全裸をさらした極度の緊張に、すっかりと自失しているのだ。そんなだから、柴田に促されるままに身体を揺らし、丸椅子の上に片足を乗せたことにも気づかない。
　全裸で股を開陳させた処女の前で、柴田は、床に片膝を落とした。
　上体を屈め気味にして覗きこむ。体臭とは別の甘さが鼻をかすめた。たぶんパンティに香水をつけてきたのだろう。さらに顔を近寄せると、その甘さにかすかな生臭さが混交した。女性器の淫臭である。
　大人の女に比べるとすっぱさが薄く、そのぶん、軽やかな野花の匂いがあった。そして、まだ男の味を知らない膣の肉門。新鮮な蜜をたっぷりと湛えたその部分は、桃の表面に切れ口を入れたようなたたずまいだ。これも、彼の知っている女たちにはないものだった。暴くほどに、貪るほどに、新たな発見と驚きをこの裸身は男に与える。
　柴田は、舌を伸ばして縦溝をひと舐めした。
「はンンゥ……え、やだ……だ、だめえン」
　正気を取り戻した侑加が腰を引くのよりもはやく、柴田の両手が太腿へとまわった。
　男の顔面が股に埋まる。恥毛ごと音をたてて啜られる。
「あーン、は、恥ずかしいッッ！」
　ありのままの心境が叫びになる。愉悦はやや遅れてやってきた。乳首とは比べものにならない強い性感である。
　舌が肉溝の上端をかすめたときが、もっとも刺激が鋭かった。そこがクリトリスという女の弱点であることを彼女は知っている。下着越しに触れるだけでも震えが走るほどだ。男の舌で舐められては、じっとしていられるわけがない。
　両手で太腿を抱き支えられているから、尻を逃がすことなど不可能だ。腕を伸ばして押しのけることもできない。しかし、黙って耐えるのはもっとつらい。
　侑加は、かろうじて自由のきく腰を丸く揺さぶった。だが、その程度で状況が好転するわけもない。むしろ、柴田を喜ばせるだけだった。
「そんなに身体をクネクネさせて、よっぽどこれが好きなんだね」
　そんな声を浴びてもくねつきは止まらない。どころか、性熱の肥大化とともに揺れも大きくなる。
　恥ずかしさではなく気持ちよさのために腰が動く。
　首輪に手枷だけの全裸のまま、処女の女子高生が椅子に片足を乗せたセクシーポーズで、男に淫裂を啜られている。すぐに、白い肉体に激震が走った。
「だめえ……ッう、ううーン」
　唸り声とともに上体が前に傾いた。腰が太腿がプルプルとひきつる。それが絶頂の痙攣であることは柴田にもわかった。
　黄色い声で漫画やファッション雑誌の話題を語る少女の口から、アダルトＤＶＤの女と同じ喘ぎが何度もこぼれる。柴田は、バランスを失い崩れそうになる女体を手を伸ばして支えた。両膝が床に落ち、男の太腿に身を預ける形となる。
「イッたんだね？」
　侑加は何も答えない。火の吐息をハアハアともらすばかりだ。その息づかいをズボン越しの股間に感じて、柴田の勃起も熱くなる。
「ちゃんと言わないとお仕置きだよ」
　そう言われると、首を左右に動かした。男の股間に顔を押しつけたままだから、どんな否定も逆の意味にしか見て取れない。
　柴田はＴシャツを首から抜き取り、次いでズボンにも指をかけた。ベルトの留め具だけを外し、首輪の鎖を握りなおす。
「脱がせてごらん」
「え」
「僕を裸にするんだよ、侑加が脱がせるんだ」
「でも、手が……」
　そこで不意に言葉が切れた。彼が何をさせたがっているのかを理解して、狭い肩が震える。
「口だけでやるんだ、わかるよね？」
「は、はい」
　侑加は恐るおそると首を伸ばした。
　まずはズボンのファスナーを、次にチノパンの端を上下の歯に挟み、そっと引きおろした。忠実な犬でもこんな真似はしない。だが、頭で何かを考えられる状態でもない。
　苦労してズボンを膝までおろすと、次は下着だった。しかし、ファスナーなどついていない着衣を口だけで脱がせるのは難しい。
　柴田は冷静を装った目で見おろした。全裸の若い娘が、尻を揺らしながら男の股間に顔を埋めている。だが、男根を口に含んでいるわけではない。亀頭も茎も舐めてなどいない。彼女がやっているのは、口淫よりも卑猥で屈辱的な行為である。
　首輪の鎖を揺らして侑加は顔を起こした。
　なかなか下着を引きおろせないもどかしさのためか、それとも恥ずかしさのためか、丸い目が怯えの色に染まっている。柴田は、静かな口調で告げた。
「目を閉じて」
　頷いて従った娘の前で、彼はズボンとトランクスを脱ぎ捨て、裸となった。腰を進めて、右手に掲げ持った勃起を少女の顔に押しつける。
　侑加は抗いはしなかった。一度だけ裸体を揺らしただけだった。幹の横腹が、彼女の乳房と同じ弾力の頬を擦る。
「なんか、岩みたい」
　目を閉ざしたまま、侑加は声を震わせた。
「熱くて、ビクンビクンしてる」
「これが侑加のアソコに入るんだよ」
「……そんなの無理」
「無理じゃないさ、侑加の友達だってみんなやってることだ」
「う、うん」
「舐めてみて」
　けれども、侑加に動く気配はない。緊張の面持ちで身を固くするばかりだ。もう一度命じようとした矢先、やっとグロスの唇が開いた。
　突きだした舌先が男茎に当たり、驚いて舌を引っこめる。それからふたたび首を伸ばし、今度は亀頭を遠慮がちに舐めた。
「どうだい、怖くもなんともないだろう」
「うん。でも」
「でも、なんだい？」
「……ちょっと変な味」
　そう言って、ふたたび亀頭を舐める。感情次第で大人にも子供にも変貌する顔立ちが、今は、緊張と好奇心といやらしさの色に染まっている。
「それが男の味だよ。この味が好きだから、大人の女はすぐに舐めたがるんだ」
「お兄ちゃんも好きなの？　これ、気持ちいいの？」
「侑加がもっと舐めてくれたら、そうなるさ」
「うん」
「僕を気持ちよくさせてくれるかい？」
　侑加は小さく頷いた。そして、いくぶん積極的に舌を動かしめはじめた。
　まだ十代半ばの処女であるから、性的な技巧は求めようもない。ひどく単調で事務的な舐めかたである。が、そのぶん大人の女にはない素直さがあった。
　亀頭の裏側を舐めろと命じれば、すぐに尖らせた舌先で掘り起こしてくる。音をたてるよう指示すると、躊躇もせずに涎を舌に乗せる。恥じらいの顔で睾丸を口に含んだりもする。
　子供だから、大人の命令に逆らう術を知らないのだ。勃起が睾丸が、陰毛までもが、見るみるうちに女子高生の体液でテカテカになった。
「今度は口に入れてごらん。咥えながら、顔を前後に動かすんだ」
　それにも侑加は従った。亀頭をそっと口に包み、恐るおそると、けれども献身的に美顔を揺さぶる。おそらくはキスすら未経験であろう唇で男根をしごく。
　柴田は口で息をした。性感ではなく、強い感動のために身体が震えた。
　美しい女に勃起をしゃぶらせるのは、男にとって最上級のご馳走である。相手が処女の娘ならなおさらだ。しかし、この少女はそれだけじゃない。子供ならではの従順さがある、恥じらいとひたむきさがある。そして、処女とは思えぬ色情性がある。
　勃起を口に含んだとたん、淫裂の濡れがおびただしくなってきたのだ。淫液が太腿まで伝い落ちているのが、柴田の角度からも見えた。サディスト趣味の男が好むすべてのものを、この十六歳の娘は隠し持っている。
「侑加ちゃんね。あの子、素質があるわよ。マゾの素質がね」
　元妻の佐智子の言葉である。戸籍上はすでに他人の彼女であったが、プレイ上の関係は今もつづいている。佐智子は、自他ともに認めるマゾヒストだった。
　私生活では彼女に相応しい伴侶とはなれなかったが、プレイ面での彼女が優秀なパートナーであることに変わりはなかった。その女が、姪の娘を自分と同じ性癖の女だと言明したのだ。どうしてそんなことがわかるのか、と柴田が尋ねると、
「なんとなく、ね。女の勘よ」
　と、謎めいた笑みを浮かべて佐智子は告げたのだった。
　あのときは冗談半分で聞き流していたが、彼女の予想は間違ってはいなかった。侑加には素質がある。男に苛められて悦ぶマゾの素質がある。そして、その娘の処女をこれから自分が奪おうとしている……。
「ご主人様……」
　不意に少女の声がして、意識が、目の前の裸身へと戻った。
　男に驚きの目で見据えられ、侑加は、視線を横へと逃がした。色白だから、黒い首輪や枷が恐ろしく似合う。縄をかけるにはやや肉感に欠けるが、ボンテージ衣装を着せて、口にボールギャグでも噛ませたら、惚れぼれするほど色っぽいＭ女の容貌になるに違いない。細身で眼力のあるモデル体形の女の場合、縄よりもそういった拘束が似合うものだからだ。
　その場面を想像しながら、柴田は、彼女の頬に亀頭を擦りつけた。
「そんな言葉、どこで覚えたんだい？」
「ボーイズラブの漫画で読んだの」
　勃起の感触に目を細めながら答える。仔猫の様相である。
「そうか。でも、裸の女子高生が口にしていい台詞じゃないぞ」
　先走りの液で美顔じゅうをヌルヌルに汚してから、柴田は、右手を勃起に巻きつけた。侑加の鼻先で上下に擦る。
「何をされてもかまわないんだね？　だからそんな言葉が出てきたんだね？」
「……うん」
「このまま射精してもいいかい？」
「え、でも」
「侑加の顔にかけたいんだ」
　かすれた声でいやらしいことを言ってくるから、侑加の表情までせつなげな色に染まる。
「いいよね？」
「う、うん」
「違うだろ、侑加の顔にかけてください、だろ？」
「ああ……ン」
「言うんだ」
　勃起の奥にある少女の唇が開いた。
「顔に、かけてください」
「何をかけてほしいんだ？」
「お兄ちゃんの……ご主人様の精液」
「だめだよ、僕の目を見ながら言って」
「……ご主人様の精液、顔にかけてください」
　少女の息がかかった亀頭が震える。侑加の長い睫毛も揺れる。
「ゆ、侑加の顔にセーエキかけてッ……」
　ふたたび彼女が口走ったのとほとんど同時に、白濁が噴出した。ピュルピュルッと出た。これまでにない汁量と勢いだった。
　柴田は彼女の髪を掴むと、勃起を口元へと寄せた。
　命じなくとも侑加は口に含んでいった。先日は射精を見ただけで泣きだしていた娘が、今は、自分から男幹に舌を巻きつけている。いったいいつの間に覚えたのか、熟練した女の舌づかいと吸いかたである。これも才能としか言いようがなかった。
　前髪のヘアピンと白い額が特徴的な顔立ちが、男の毒液ですっかりと汚れている。柴田は勃起を引き抜くと、少女の顔じゅうに張りついた恥液を指で拭い、彼女の口に含ませた。
「侑加の処女をもらうぞ」
　インクの匂いと性臭の満ちた室内に静かな声が響いた。
　柴田は、首の後ろで固定した手枷のフックを外し、今度は短い鎖で左右の手枷を繋いだ。それから首輪の掴み手を握りなおし、後ろを向いて尻を突きだすよう侑加に命じた。
「そんな恰好……」
　そう言いながらも、侑加は手足を動かした。犬の姿勢で床を這い進み、鎖で繋がれた両手を丸椅子の上に乗せる。
　白い背中をへこませると、幼いだけだった腰まわりに女性的なくびれが生まれた。尻の丸みも強調される。黒蜜をかけて食べたくなるような雪白の美臀である。その谷間にある肉溝に柴田は視線を落とした。
「怖いかい？」
　侑加に、そして自分自身の心に対して問いかけた。彼女と性交に及ぶことにまだひと粒ほどのためらいがあった。
　少しばかりの沈黙のあと、侑加は首を横に振った。
「たぶん平気。だって、こんなにエッチな気分なんだもの」
「感じているんだね」
「わかんないけど……なんかね、身体がムズムズッてするの。すっごく変な感じなの。今ならなんでもできちゃう気分」
「それを感じてるって言うんだよ」
「わたし、エッチな女の子なのかなあ」
「女は誰だってエッチなものさ」
「でも……あ、あン」
　少女の声が途切れた。柴田の指が尻の谷間に触れてきたのだった。
　淫裂を十数秒ほど上下に撫でる。すると、新たな女の煮汁が滲みだしてきた。彼はさらに肉芽にも刺激をくわえ、侑加が喘ぎの声をもらしはじめたところで、彼女の尻を引き寄せた。右手で支えた勃起の先を淫裂にあてがう。
「それじゃあ、入れるよ」
「うん。……お兄ちゃん、わたしを女にして」
　枷具だけの全裸に四つん這いという姿でいじらしいことを言う。アブノーマル趣味の少女愛好家が恥液を漏出しそうな眺めであり、台詞である。
　彼女と同じ期待と緊張をいだいたまま、柴田は腰を進めた。