車窓から眺める冬の海は現実感が無く、車外は雪と砂混じりの風が吹いている筈だった。
　自宅から２時間ほど車を走らせると漸くその建物は見えてくる。黒い森の中からその赤い屋根は、訪れる人を待ちわびるように侘しげな佇まいで近づいてくる。
　まだ、２時だというのに低い雪雲が奈津子の時間の感覚を狂わせていた。
　スモールランプを点けないと夕暮れ時のような海岸線の道路は走りづらかった。左手に山の中腹へ続く脇道が見え、奈津子はウインカーを出さずにゆっくりとその道へハンドルを切った。ヘッドライトが自動的に点燈し今更ながら冬の憂鬱な暗さと薄くグリーンに光る時刻を確認するのだった。
　両脇に並ぶ別荘へと続く私道を何本か過ぎ、車は暗い林の中を１分ほど走ると今度はキチンとウインカーを点滅させ一本の私道へ車を乗り入れた。さっきの赤い屋根の家がすぐにあらわれてきた。家の前は広場になっており、車だったら７・８台は充分駐車できるスペースがある。
　奈津子は行儀悪く、モスグリーンのロードスターを斜めに停めライトが消えているのを確認し父親の別荘の中へ入っていった。鍵を開けセキュリティを解除すると入ってきたドアを再び施錠し無造作に２日分の食料と２日分の本をテーブルの上に置いた。鎧戸を開け窓を開けると先程の現実感の無かった風と雪が部屋の中へ侵入し、ハウスクリーニングを依頼したばかりの部屋の中に秋の名残の枯葉を運んできた。窓を閉め、暖房のスイッチを入れ、コーヒーの香りが部屋中に広がってくる頃漸く部屋も暖まって来る。
　カップを両手に包み華奢な体を竦めるように窓際にたった。灰色の海には真っ白な波が幾重にも重なり、その白い波が風に煽られ不規則に見え隠れして、まるでそれぞれが別の生き物のように見えてくる。熱いコーヒーが体を暖め、奈津子を幸せな気分にした。でも
　不思議に子供の頃から、こんな陰鬱な日を嫌いじゃなかった。むしろ、風が吹きすさび不潔な空気を一掃してくれるようでいつまでも飽きずに外の風景を眺めていた。
　独身２５歳で地元の放送局に勤める彼女にとっては久しぶりの休暇であった。一人旅も考えたのだが、安全という日本国内であるとしても。やはり、若い女一人は目立つし、かえって煩わしい思いをすることも少なくなかったので、彼女はよく父の別荘で休暇を過ごすことを好んだ。クリスマスが過ぎ年末の慌しさもここでは別世界の事の様に思われる。
　地方局とはいえそれなりに地元では顔も知られているし、少なからず男性ファンも多い為いつしかゆっくりくつろぎたい時は一人になる事を好むようになったのだった。
　学生時代には交際した男も幾人か居たのだが、こちらに帰って来てからは仕事に追われ、そんな余裕も無いまま今日まで過ごしてきた。同居してる父母にとってみれば品行方正な娘であるだろうが、夜に仕事で出かける事も多く素行の事よりも健康面での事を心配しているようだった。
　
　インターホンが鳴った、受話器を取りモニターを見ると制服を来た警官の姿が見える。
　警備会社じゃなく、警察が来たことに不審を感じながらもドアを開けると３０代後半ぐらいの目つきの鋭い警察官が立っていた。

「ご休暇中ですか？」と予想に反して柔らかい口調で話し掛けられた。
「実を言いますと。近くのＪＲの駅で不法入国者らしき一団が見つかりまして。まだ、１０人程一緒に上陸した者がいるみたいですので、海岸近くを集中的にパトロールをしています。戸締りをしっかりして、怪しい人を見たらすぐに１１０番して下さい」
　田舎の駐在さんらしからぬ、明るくはきはきした口調で注意を促してくれた。
　お連れの方は？と聞かれたので後から両親が来るようになってますと答えると、あっさりと警察官はうなずき、さっと敬礼をして小さなパトカーに乗り込み去っていった。
　多分こんな日に灯りが点いてるのを見て不審に思って見に来たのだろう。どこかで寒さに震えているであろう、その１０人の異邦人に同情する一方。急に周りの風景が脱獄囚でも潜んでいそうに思われ、あたりを見回したのだった。

　シャワーを浴び、簡単に野菜やお肉・しらたき等をお皿に盛り付け、一人すき焼きの用意をしたところで、携帯電話を車中に忘れてきたことに気づいた。独身女性にとって生活の必需品であるはずの便利な物である携帯を奈津子は好きではなかった。特に今日のような休日にはもっての外であるが、やはり世間との繋がりを１００％断つことは躊躇われた。
　電話はあるのだが、家族以外は今日ここに来てる事は誰も知らず、緊急の要件は携帯に架かって来る筈であった。
　夕方の５時を過ぎ本当の夜の闇が迫っている戸外へ出て車から携帯電話を取り出すとやはり着信のメッセージが入っている。座席に着いたままそのメッセージを確認すると、予想通り何のことは無い友人からの電話であった。伝言を聞いて緊急性が無いことを確認して屋内へ戻ろうとした時、物置の扉が少し開いているのを見つけた。
　風に煽られガタガタと鳴るのを見るとしっかり閉めてなかったのかなと思い。シャワーで温まった肌が冷えるのを感じながら、何気なくその戸を開いた。４畳半ほどの広さのそこには、使い古された自転車やスコップ・手押し車が置かれているだけのはずだった。しかし、その奥にひかる目が在った。一瞬なにか大きな動物のような気がして、後ずさりした。
「誰！！？」
　開いたままの戸の向こうでゆっくりと誰かが歩く音がする。暗闇から抜け出してきた、その姿は粗末な服装で、幼い印象を与える男の子だった。ホームレスの子供版の様なその男の子はさかんに「ごめんなさい」を繰り返す。そして、その言葉は明らかに日本人の発するそれではなかった・・・・。
　警官の言葉がすぐによみがえって来た。通報しなければという思いも、今にも倒れそうなその様子を見ると不思議に冷静な気持ちになり、開け放たれた物置の中へ再び入って行くことができた。異臭がするのに構わず奥へ進むと２人男の子が居て、１人は古い毛布に包まり横たわっていた。その、額は熱く明らかに普通の状態ではないことが見て取れた。救急車を呼ぼうかと思ったが、私が通報した場合必要以上に大げさな報道となり、面白おかしく視聴者へ伝えなくてはならない事となり。ただでさえ退屈なローカルニュースの格好の話題となる事は目に見えていた。とにかく暖かいところへ、立つ事ができる２人の男の子に手伝ってもらい別荘の中へ招き入れた。
　シャワーを２人が浴びてる間、キッチンからお湯を汲み上半身と手足をお湯で拭いた。
　その顔を拭うとようやく笑顔が浮かび誰でも知ってる、ありがとうを意味する言葉を掛けられた。シャワーを浴びてきた２人には弟と父の下着・衣服を与え、キッチンへ立つ間に寝ている子の着替えをするように頼んだ。
　ここで介抱して警察を呼ぶのであれば罪にもならないし、また介抱したことで彼らへの同情も充分示したことになる・・・・。強制送還されたら彼らには借金だけが残ることになる。
　いつか聞いた話であったが、本国で借金をして日本で働き、渡航費用を稼ぐという事をうろ覚えであったが思い出した。１８になる弟よりはるかに幼い３人を見て心が揺れた。真面目に働き本国へ送金するのであれば決して悪いことでは無い、ただ全員その積もりで来日してもその中のかなりの割合で犯罪を犯すことにより手っ取り早くお金を稼ごうとする人間が居ることも間違いないことであった。
　夕食の人数が急に増えた為、非常用で保管していた缶詰やレトルト食品を大急ぎで温めご飯も多めに炊いて４人で食べ始めた。お互い片言の英語や日本語等を混ぜようやく年齢がわかり、３人のうち２人が兄弟で弟の病気のため隠れていたらしいことも判った。３人はびっくりするほど食べご飯を炊き直さなくてはならなかったが、３人はお腹一杯になりようやく落ち着いた様で物珍しげに辺りを見回し、特にテレビには関心を持ったようで初めてそれを見る子供のように見入っていた。年齢は13歳が2人と11歳の子が１人、故郷でも友人同士だった様で東京という単語を何回も口にしていた。最終目的地は東京らしいがここからだとまだまだ大分ある。パソコンで日本地図のページを開き大体の現在位置と東京の場所を示した、彼らは自分達の今居る位置と東京との距離にあまり失望感を表さなかった。やはり、広い国にすんでいる人は違うのかなと考え、改めて外国人なのだと熱心にパソコンの画面を見る２人の痩せた肩を見つめていた。
　視線を感じ、右の方を見やるとソファーに寝かされた弟がこちらを見つめていた。食事の後ずっと眠りつづけて居たのだが、薬も効いたようで子供らしい目をこちらに向け微笑していた。一瞬弟とここにいるのではないかという錯覚に陥りそうになった奈津子だが、明日からのことを考えるとまだ迷っていた。
　何時の間にか兄と友人も２人でこちらを見ている。急に少年とはいえ男３人の視線の中にブラジャーも着けずにトレーナーとスカートだけの姿で居ることに違和感と羞恥心を覚え、せめてブラジャーだけでもと考え始めていた。ただ、このような視線には慣れていた。
　スタジオの中から中継で屋外に出た場合など無遠慮に胸や脚を舐めるように見る視線に、よく遭遇する。ひどい場合は周りを取り囲まれてお尻を撫でられたりなんて事もある。
　それでも只ひたすら笑顔であった。でも、今日の状況は違う、ここは全くの密室であり、この子達とはもう２度と会うことも無いだろう。それが、奈津子を少しだけ大胆にした。
　寝ている子の側により、その頭を膝に乗せる。あまり薬を飲んだこと無いのであろうか。
　普通の風邪薬がこれほどの効くとは・・・。
　テレビではモー娘が歌っている、私から視線を逸らし彼女達に見入るお兄さんたち。
　膝枕をしていた子がうつ伏せになり私の下腹部に顔を埋め大きく息を吸い込む。無意識にした事なのかもしれないが異性の顔がそこにあることは久しぶりのこと、熱くなって行く秘所に戸惑いながらもこの子達に犯される自分を想像するのだった。
　中学生ぐらいと思しき少年から卑猥なメールや手紙を受け取ることは良くある。酷いのになるとアイコラというのか顔が自分で黒人の男性にバックで犯されてる画像や学生服を着た男の子達の相手をしている精密なデッサンが送りつけられる事もある。
　毎日何人の男達が自分を想像しながら精液を放出しているのか、怖くなるときもあるのだが、その送られた絵や画像をみながら自分を慰める日もあることは事実であった。
　弟の手がトレーナーの下を潜り腰にまわされる。素肌を触られ緊張するが拒みはしなかった。腰を抱かれたままもう一本の腕は私の膨らみを捕らえた。母親が恋しいのだろうと自分に言い聞かせその手の動きに身を任せる。決して大きくは無いが形が良いと誉められる乳房を異国の少年に自由にさせ、楽しませている。声こそ上げなかったが、痛いくらいに揉み立てられ乳首が尖っていくのが、判る。ふいに後ろから抱き締められ、手の動きが封じられる。トレーナーを剥ぎ取られるのに５秒もかからなかったように思う。左右の乳首が生暖かい口に含まれたのは、そのすぐ後の事だった。私の乳首はすさまじい勢いで吸引され、舌がまきつけられる。左右の手の動きを封じられ。２つの口から同時に両方の乳首を責められるのは初めての経験だった。

つつ゜く