| 第１０話 妻のアルバム 「行って、き、ま〜す」 元気な声が店先に響きました。 「じゃあ、行ってきます。あなた」 一瞬、暗い表情を見せた気がしました。 気のせいかもしれません。 きれいにセットされた髪を揺らしながら、翔太に手を引かれるように妻が出かけます。 朝一番からの撮影会だとか。 果たして、そんなモノがあるのでしょうか。ただ、朝一番の光の中、駅に向かう通勤客をかき分けるように、子どもの手を引く後ろ姿には、微塵も、淫猥な匂いは感じられません。 最後の最後の瞬間に、思わず、引き留めようとした私でしたが、そんな、朝の日常の光景が「行くな」という声を出させなかったのです。 「行って、らっ、しゃぁい…」 妻の後ろ姿が、駅に向かう人々の影に見え隠れし、やがて、幼稚園バスの止まる大通りへと曲がっていった後も、私は、妻の残像をいつまでも見送っていました。 妻は、出かける直前まで、確かに、何かを言いたそうでした。 精一杯の愛情を込めた目でみつめる妻の瞳に、何かが兆していたのですが、それを尋ねることは怖くてできなかった私です。 何を妻が言いたかったのか。 『聞くべきだったのか』 もはや、過ぎてしまったことを、うじうじと悩んでは、妻の笑顔が浮かび、その度に、店先で逝かされてしまった、あの淫婦の表情が、それをかき消します。 「敦子…」 一人、つぶやいても、家の中は静まりかえっています。 さっきから、立ち上がっては、座り、座っては、つまらない用事を思い出して、また立ち上がる。 そのくせ、やることなすことヘマばかりでした。 少しだけ不思議なのは、今日、一人留守番の私が、どうするのか、妻は聞かなかったことです。 あえて、触れてはいけないことのように、今日という日の話題に触れるのは、奇妙な空気が、それを遮っていたせいかもしれません。 何かをしなくてはならない日なら、まだ、こらえることができたかもしれません。 出かけた妻に、気を遣った振りをして、洗濯機を回して見ましたが、洗剤を入れていなかったと気がついた瞬間、私の気持ちは、決まりました。 「見に行く」 無意識のうちに避けようとしていた結論にようやく行き当たった時には、既に１時間近くが過ぎようとしていました。 スタジオ裏の駐車スペースを、見慣れぬ３台の高級車が埋め尽くしていました。少なくとも３人はいる、ととっさに数えてしまいますが、何の意味もないということはわかっています。何も、ここにしか車が止められないというわけでもないのです。 スタジオ裏の煉瓦模様のタイルが、青い空の中に、飄々とした表情で浮かび上がっていました。 裏を覗いては、表に戻る。 さっきから、その繰り返しで、時間だけが空しく流れています。 計算違いがあったのです。 いえ、考えても見なかったという方が正解です。 たっちゃんのスタジオに鍵が掛かっていたのです。 撮影会というのですから、当然、それなりに人の出入りがあるはずだと思ったのですが「臨時休業」の札が貼られたまま、一階はシンと静まりかえっています。 何度も遊びに来た、たっちゃんの店ですから、構造はよく分かっています。 スタジオは、営業用の広い方が一階。翔太も使いましたが、七五三などに使う子供用の貸衣装もそこにはそろっています。地下には、趣味と実益を兼ねて、コンクリを打ちっ放しにした殺風景なスタジオ。 親父さんから受け継いで、全面改装したばかりの時に、地下のスタジオにも入ったことがあります。 「ここか？このスタジオは、親父が作ったんだけどさ。長い間、使わなくなっていたのを改造したんだ。全面改装さ。ヘンな道具もいっぱいあったけどね、でも、不思議といろいろと役立ってるよ」 「へぇ、ヘンな道具って？」 「ま、そのうち、わかる… かも、かな…」 たっちゃんは、それだけを説明して、スタジオのスイッチを消してしまいました。たぶん、素人の私に、それ以上説明してもわからないと思ったのでしょう。 左の頬だけでひっそりと笑った表情が、ふと思い出されてしまいます。 実習生の練習にも使うというそのスタジオは、フローリングの床に、撮影用の大道具、小道具。たくさんのライトが所狭しと並び、いろいろな道具が置かれていたはずでした。 あの顔を浮かべてしまうと、妻のいる場所は、あそこではないかと思われてなりません。 なにしろ、二階は、カーペットが敷き詰められて、撮った写真を選んだり、打ち合わせをしたりするブースがいくつかと、事務所スペースで、撮影会などすることは不可能でした。 今、一階から見えるスタジオの方が、真っ暗になっている以上、地下の方にいるとしか思えません。 しかし、入り口が閉められている以上、どちらにせよ、こっそりと忍び込むのは不可能です。 いくら、幼なじみのやっている店とはいえ、鍵を壊して侵入することは、ためらわれます。かといって、スタジオに電話を入れれば、妻が何をやっているのか、こっそり確認するのは不可能ということになります。 『どうしたら… もう１時間半も経ってるぞ。今、何をやっている、敦子、まさか』 あの日、店に現れた男が、しきりに妻に囁いていた言葉が頭の中で響きます。 『今度は入れさせるんだろ』 余裕すら感じさせる男の言葉に、妻が身体を震わせていた姿が思い浮かびます。 『入れさせる』 妻が、大勢のカメラを構えた男達の前で、裸で足を広げている姿が、頭の中にちらついてなりません。そして、そこにのしかかっていく、あの男。 『妻が私以外のオトコを』 そんなはずがない、と思いつつも、あの晩の妻の感じ方のすごさが、否定しようという意志を溶かしていくのです。 妻の隠された欲望。 そう。 秘部に受けた視線に欲情し、辱めを受けながら、快感を生み出してしまう、隠れていた妻の被虐願望。 しかし、妻は、なぜ、急に目覚めたのか。いつかの、春佳さんとの会話からすると、妻は、この間の「撮影会」で、目覚めたとも思えます。 しかし、真面目で、他の男とのセックスに興味を示すはずのない妻です。 まともなヌードを見せることさえ、芸術のためなら良くても、私にはポーズどころか、明るい所で見せることすらできなかった、あの性格なのです。そんな妻が、いくら「大学の先輩」に勧められたとしても、軽々とヌードになどなるものでしょうか。 それとも、大学時代の経験が、人前で脱ぐことを妻にためらわせなかったのか、とも思います。撮影会と名がつけば、あるいは、あの妻を説き伏せられたのでしょうか。 しかし、果たして、妻が、本当にそんなことを… 何度も携帯を取り出しては、また、ポケットに。 たっちゃんの店の前を行きつ戻りつしながら、ソワソワするしかありません。 時間だけが容赦なく、刻々と経過していきます。 私の頭の中で、時が経つほどに、妻の姿は、いやらしい肢体をなまめかしく動かし、原色の鮮明な姿が浮かび上がります。 何度も鍵がかかっているのを確かめた入り口を、何十度目になるかわからない動作で、また、そっと押してみます。 その間も、妻は私の頭の中で、もう、何人もの男に犯されていました。 私以外には見せてはならないはずの部分を、何人の男に、惜しげもなく広げていたのです。 妻の放つ、淫声が、頭の中に響き渡ります。 『いっそ、このガラスを破ろうか』 そう思いつつも、そんなことはできるはずもない小心者です。 『たっちゃんに電話を』 それができるなら、とっくにしています。 怒りでも、悲しみでもない、あえて言うなら。 『嫉妬…』 そう、その単語が頭に浮かんだとき、その単語は、今の私の胸のすき間にピタリとあてはまるジグソーのピースだったのです。 そして、全ての絵が見えました。 そうなのです。私はたっちゃんに嫉妬していたのです。 私も知らない妻の隠れた欲望。もし、それが引き出されてしまったとすれば、それを引き出したのは、幼なじみのたっちゃんに決まっています。いくら同じ大学の先輩・後輩であっても、性に関する欲望が、夫以外の手で引き出されて良いはずがありません。 まして、その欲望が、被虐のものであったら、それを引き出した男は、妻の「ご主人様」になってしまうはずです。 それだけは、あってはならないのです。 妻は私一人だけのものです。なにより、翔太の母親でもあるのです。 しかし、そうは思ってみても、あの晩の、秘唇をライトに照らされた妻の姿が頭を占領してしまいます。 私の目の前で、自らの両手を使ってグニュリと淫らに陰部を広げる、あの姿。 身体を押し広げる淫らな動きの後で、オンナの欲望をむき出しにしてしまった妻の姿には、一度乱れてしまえば「人妻であること」が、欲望を押しとどめてくれるのかどうか、不安でした。 真面目そうな処女の玲未ちゃんですら、隠されていた欲望をむき出しにされると豹変したのです。恋人でもない私の望むがままに、その身体を広げ、処女孔を差し出しました。 いえ、私を受け入れるためだけに、医者からピルを受け取ることまでしていたのです。 男の欲望も果てがありませんが、終わりのないオンナの欲望こそが、一度むき出しにされると、止まることを知らない果てしなさが控えているような気がしました。 穏やかな海が、ひとたび荒れ狂うと、あらゆる船を飲み込んでしまう、制御不能な嵐となるように。 まして、妻のように、女の悦びを開発されてしまっている身体なら、私が思っているような限度など初めからないのかもしれません。 妻が、視線をオンナの快感に換え、一気に淫らな女になってしまうというのは、もはや間違いのない事実でした。 男達に囲まれて、まぶしいほどのライトをその肢体に浴びせられれば、あの時以上に、むき出しの欲望を爆発させるに決まっています。 妻の白い身体が目の前にちらついていました。このドアの向こうで、妻が、今この瞬間も、白い裸身を男達の欲望の眼にさらしているのかもしれない。 いや、妻の身体に男他達の手が伸びているのか。 しんと静まりかえったドアの向こうで、男達の欲望にその白い裸身を差しだしている妻の嗚咽が聞こえる気がしました。 もはや、我慢の限界に近い状態です。 何とか、鍵を開けられないものかと、入り口に未練がましくへばりついて、覗き込んでも無駄… 『壊すしかないのか』 私は、そばにあった小さな植木鉢を手に取り、この角をぶつければ、と思い詰めていたところに、階段に白い影が見えたのです。 春佳さんが、白い薄手のローブを身にまとい、階段を、そろそろと下りてきたところでした。ふと見上げた眼が、春佳さんの優しげな眼と、合っってしまったのです。 目が合ってしまったら、覚悟を決めるしかありませんでした。もし、これで、妻に何もなければ、ひどく薄みっともないことになるかもしれません。しかし、もはや耐えられませんでした。 必死の形相で、ドアに齧り付いていた私を、何とも言えない表情で、招き入れます。 「やっぱり」 そう春佳さんはため息をつきます。 「あの、敦子は」 それ以上言葉が出ません。春佳さんのため息と態度が、何よりも雄弁です。 「ちょっと待ってください」 私がいきなり地下に行こうとするのを、優しい言葉ではあっても、断固とした態度で制止します。 「お気持ちは分かりますけど、ちょっとお待ちになってください」 「なぜ？」 語気を強める私の胸に、そっと、そのしなやかな両手をあてます。 私はとっさに春佳さんから目をそらしました。 薄手のローブは、しなやかに春佳さんの魅力的な身体にフィットして、その曲線を隠す役割をちっとも果たしていないからです。 目をそらす瞬間、胸の膨らみの先端が、ツンと突き出しているのさえ、目にとまりました。 「ね、その前に、ちょっと、いっしょに二階へ」 「二階に敦子がいるの？」 そんなはずはないと思いました。人の気配がまるでないからです。 「お願い。一緒にいらして。ちゃんと説明しますから」 「でも、まず、妻と逢わせてくださいよ」 乱暴にではありませんが、かといって、春佳さんの力では私を押しとどめることはできません。 いつの間にか、二人の距離は近づき、妻より背の高い春佳さんの甘い吐息が首に掛かります。胸元から、ふわりと、スズランのコロンが香ります。 「ね、聞き分けてください」 私は、そのくすぐったいような感触に耐えきれず、思わず力を込めて、春佳さんを押してしまったのです。 もちろん、乱暴をするつもりなどありませんから、優しく、しかし断固として力を込めたのです。 春佳さんの方は、その瞬間、私の両肩を持とうとでもしたのでしょう。 結果的に、私は、春佳さんの、形の良い両胸を思いっきり掌で押さえることになってしまいました。 「あん！」 グニャリとした、感触を手のひらいっぱいに感じます。薄い布地一枚を隔てた、幼なじみの奥さんの胸の感触は、私を凍り付かせるのに十分でした。 しまったと思いつつも、妻とも、玲美ちゃんとも違う柔らかな感触を、つかの間味わってしまっていました。 凍り付いた手は、とっさに動かすことも、引っ込めることも忘れていました。 「あ、すみません、あの、その、いや、こんなつもりでは」 謝る私の手をそっと取ると、春佳さんは、にこっと微笑みます。 「さ、じゃあ、上に」 春佳さんの作戦ではないのでしょうが、こうなってしまっては私の負けです。 大人しく、手を引かれるままに、二階に上がるしか残された方法はありませんでした。 通されたのは、やはり、小さなブースです。緑のカーペットが敷かれ、柔らかい照明が付いていました。今は写真館でもデジカメ全盛で、撮った写真をモニタで比較して選ぶ時代です。ここは、そのための部屋でした。 どうぞと、私を座らせて、手早く、横のコーヒーメーカーから、コーヒーを出してくれます。まるで、私のために淹れてくれたかのように、挽き立ての豆でいれた芳香を湯気とともに立ち上らせていました。いや、ひょっとすると、私を待ち受けていた？ 「あ、どうも」 一刻も早く妻と会いたいという焦る気持ちと、丁寧に出されるコーヒーの狭間で、私はひどく居心地の悪い思いをしました。 それなのに、コーヒーを作法通り左肩越しにテーブルに置く春佳さんの胸がわずかにはだけ、柔らかそうな乳房が乳首まで見えたことにドキドキしてしまうのです。 子供を産んだことのない小さな乳首が、なぜか、先端までツンと尖っていることまで、はっきりと見えました。 「あの、やっぱり、何か、お感じになりました？」 「へ？え？あ、はい」 一瞬、春佳さんの胸に見とれていたのを咎められたのかと思った私の返事は間抜けなものでした。 「実は、あなたをぜひお呼びしろと彼が申しまして。お迎えする準備をしてから、今、電話を差し上げようかというところに、下に気配があったものですから」 「え、たっちゃんが？」 「はい。ぜひ、理解して欲しいと」 私のイスに肘掛けがぶつかるほどの距離で左側にイスを並べると、甘い香りと共に、スルリと座ります。しなやかな動きでした。 「何を？」 私は思わず春佳さんを見て、そして、あわてて目をそらしました。 ローブの左側がはだければ、簡単に胸が見えてしまうのです。ついさっき見てしまった胸に目が行こうとするのを、懸命に耐えなければなりませんでした。 「では、最後まで説明を聞いていただけますか？」 私に胸を見られたことなど、気にもしないのか、はたまた、気がつかないのか、柔らかな雰囲気のまま、こちらを見つめているのがわかります。 注意深く、私も春佳さんの顔に視線を動かすと、そこには、真剣な目がありました。 私は黙って頷くしかありません。 「これをご覧になって」 準備、とはこのことを指していたのか、数冊のアルバムをさっと私の前に置きます。 『一体何を見せたいんだ？』 不審に思いながら、一番上のアルバムを開いてみると、私は凍り付きました。一瞬のうちに、背中に冷たい汗が流れた気がしました。 「敦子？」 そこには、まぎれもなく、敦子がいました。 何一つ身にまとわない、すべてをさらけ出した写真です。 惜しげもなく裸体をさらけ出した敦子の姿態は、まぶしいほど輝いていました。 最初の半分ほどは、まだ、ぎこちない笑みが、顔に張り付いていましたが、次第、次第に、その笑みは本物の笑顔となり、ぶ厚い一冊目のアルバムの半ばでは、伸びやか裸体をさらけ出しながら、リラックスしている雰囲気に変わっています。 にこやかな笑みと伸びやかな姿は、撮影者とのコミュニケーションが完璧だと言うことを示しています。 しかし、そこに写っているのは、今の敦子ではありませんでした。 相当以前の、おそらくは二十前後の頃だと思えるその姿は、以前、敦子の実家で見た絵と重なります。 「これは…」 言葉が出てきません。実家にあった絵と同じようなポーズもありましたが、見たこともないものも多くあります。 妻の実家にあったたくさんの絵と大きく違うのは、その大半が、素人のワタシが見ても芸術性よりも妻のみずみずしいエロティシズムを感じられるものでした。 細い身体に、オンナのアブラは、まだまだ付いていません。胸すらも、今より、小さく硬い感じがします。 「おわかりになります？」 「学生の頃の… か…」 かろうじて呟きましたが、それに対する春佳さんの返事のことなど頭から消え、震える指先で、ただひたすらページをめくっていったのです。 頭の中が真っ白になった気がします。それなのに、妻の、いいえ敦子の、と言うべきでしょうが、ともかく、あるページから急に陰毛が処理されていることに気づいたのは、おかしいくらいです。 「Ｔ．ＭＡＥＪＩＭＡ」 最後のページに付いていた、サインは、そう読み取れました。 撮影者の名前ということです。 『たっちゃんが… そんな、馬鹿な、だって…』 日付が記されています。 それは、妻が大学に入った夏のことでした。 あの、妻の実家にあった写真と比べて、こんなに伸びやかなポーズを、そして、隅々まで撮影させるなら、恋人同士でもなければ不可能でしょう。 『妻が、たっちゃんとつきあっていた』 考えたこともないことでした。何より、今の今まで、妻は、そんなことを匂わせたこともなかったのです。 頭の中に玲未ちゃんが自然と浮かびます。 今の玲未ちゃんより若い「私の知らない妻」。 最初のアルバムでは、美しくはあっても、若さゆえか、どこかしら、硬さのようなものが見えていたのが、二冊目、三冊目と見事に変化しています。 サナギが羽化したかのごとく、オンナの美しさを見せ始めたのです。 結婚したときに、妻が処女じゃなかったことは、気になっていなかったと言えばウソになります。しかし、私の知らない誰かがということで納得してきました。 しかし、アルバムの中の一人のオンナの変化を見ていればわかります。 身体の隅々までを、自分のもののように写し取ることができるのは、肉体を許し合った者だけの特権です。 「これは、あの時の」 最後のアルバムを開いて、いつか、実家で見た絵の謎が解けました。 一枚だけ、雰囲気の違った絵。その絵だけに漂っていた色気の謎。 あの絵とそっくりそのままのポーズをとった、写真があったのです。 違っているのは、正面からだけではなく、真後ろからも、そして、下からのぞき込むような角度で撮ったものもあったということです。 あの絵を見たときに、こんなポーズを後ろから見たら、と「心配」したとおりでした。案の定、後ろからの写真には、二十代に入ったばかりの妻の秘部がくっきりと写し撮られています。 『こ、これは』 あろうことか、その秘部には、あきらかに秘蜜が潤んでいるのです。 続いて、前屈の姿勢で両膝に、それぞれの腕を巻き付けたまま、足の間から顔を覗かせたポーズ。当然、後ろから映しているわけですから、広げた両足の間にぬかるんだ秘部が、ぱっくりと口を開いた状態で映っています。 もはや、これは、芸術性とは関係のあるはずもない、あからさまなポルノ写真でした。 ただ、唖然として、まだ私が知るはずもない頃の妻のあられもない写真をめくっていくだけでした。 「は〜」 潜めていた息を、初めて吐き出した気持ちがします。最後のアルバムをパタンと閉じると、あまりの衝撃に思いっきり背もたれに体重を預けて、天を仰ぎました。 その瞬間です。 「うっ」 不意に、何かが私の怒張に触れてきたのです。突然の思わぬ快美感に、うめいてしまいました。 「春佳、さん」 慌てた顔を降ろした目の下に、春佳さんの白い手が見え、腕をたどるように、とっさに春佳さんの顔を見ようとしましたが、恥ずかしそうに、うつむいたまま、クスリと笑って肩を揺らします。 私の傍らに跪きながら、右手が私の股間に伸びていました。 この位置から見下ろすと、サラサラとしたローブが、はだけ、子供を産んだことのない、ピンと張った白い乳房が余すことなく見えてしまいます。 「やっぱり、こうなってしまいましたね」 「え？」 春佳さんの声は、愁いを含んだようにも、はしゃいだようにも取れる、不思議な色をしていました。 張りつめた怒張をやわやわと刺激されながら、私は恥ずかしさと、とまどいが先に立ちました。そのくせ、手をどけてとは言い出せませんでした。 「きっと、こうなるはずだって」 「たっちゃんが？」 コクリと一度頷いてから、その両手が動きます。 唖然とする私を尻目に、私のモノは、あっさりとむき出しになっていました。 幼なじみの妻の目の前で、下半身を丸出しにしているのが信じられません。 その上、屹立したモノに、その潤んだ目を近づけながら、やわらかい手を絡みつかせているのです。 「こんなことを」 なんと言っていいのかわかりません。しかし、男の悲しさというヤツでしょう。 片手で私を刺激しながら、片手でそのまま、降ろしたズボンを脱がそうという動きに、私自身もいつのまにか手伝っていたのです。 「敦子さん、大学の時の彼の後輩だったそうですね。いつもモデルをしてもらってたって。私が初めて、彼のモデルをした時も、この写真を見せられたの」 足の間に座り込むようにして、春佳さんが、ゆっくりと私の怒張に顔を近づけてきます。 ぬぷっ。 柔らかなモノに包まれます。 妻とも違う、そして、玲美ちゃんの、切ないまでの一生懸命な受けたフェラチオとは、また違う、慣れと技巧を感じさせる、適度な心地よさで、やわやわと怒張を包み込む、まごう事なき人妻のフェラでした。 カリの部分に舌先を巻き付かせ、なめらかな唇がねっとりと包み込む動きで、顔を素早く振り立てる動きを数度した後で、春佳さんが顔を上げました。 照れたように、くすりと笑顔を見せてから、「おいしい」と言って、怒張の先端をペロリとなめました。 赤い舌がちろちろと覗くその姿。普段の清楚な春佳さんの印象とは打って変わって、ひどく淫猥なものに見えました。 やわやわと、右手が、怒張を握りながら、左手で陰嚢をサラサラと撫でる。時に、その淫靡な赤い舌が亀頭をなめ回し、ねっとりと唇がカリをシゲキしてきます。 まるでプロの風俗嬢顔負けのテクニックを駆使しながら、語ってくれたのは、妻とたっちゃんの過去でした。 単なる、他学科の先輩後輩の関係が、写真を専門とするたっちゃんと、絵のために自分のヌードを撮りたかった妻との利害関係に変わったのは、妻が、前島写真館でバイトをするようになって、すぐのことだったようです。 もちろん「先輩」に、ヌードを見られるというのは、最初は抵抗があったらしいのですが、たっちゃんが、何度も口説いたそうです。「芸術のため」に普段から、モデルをしていた妻にとっては、自分を描くための手段と割り切って、受け入れることにさして時間はかからなかったそうです。そして、ひとたび、撮る撮られるの関係を作れば、次々と、つかの間のプライベート撮影会に慣れていくのも時間の問題だったようです。 肌を許す、と言う言葉があります。オンナは、そうやって受け入れてしまった相手に、心まで預けるようになってしまうものです。まだ、肉体関係を持たなくても、レンズを通して、隅々まで、知り尽くされるのは、肌を許したことと同じなのでしょう。 裸を写される側と、写す側の連帯感が、二人を恋人にするのに、あまり時間はかからなかったようです。 その二人の変化こそが、さっき見せてもらったアルバムなのでしょう。 アルバムの中で、妻の硬い処女の表情が、なまめかしいオンナの姿態に変わっていました。 「ひとりだけよ」 確かに、付き合ったことのある男性は一人だけだと妻は言っていました。恐らく、真実なのでしょう。 『その一人って言うのが、たっちゃんだったのか』 あのアルバムのどこかの時点で、妻は処女をたっちゃんに捧げたと言うことになります。 それがいつなのか、私には見当も付きません。しかし、いくら恋人になったとしても、妻の性格から言って、ポルノ顔負けの写真を、嬉々とした表情で撮らせている妻が信じられません。 よほど、深い関係になっていたと想像させられます。 そのままいけば、私が妻と結婚することなどなかったかもしれません。しかし、たっちゃんは、昔から、一人の女に縛られるのは苦手でした。 事実、私ですら、たっちゃんが「大学時代に付き合っていた女の子」が、どれほどいたのか、想像もできません。 そして、それだけたくさんいたからこそ、一人ずつの女の子に注意を払うことなどなかったといえるのです。 『なんで、そんなことを考えなかったのだろう』 妻は、前島写真館でバイトしていたのです。結果的に「バイトをしてたから付き合った」というわけではないにしろ、オンナに手の早いたっちゃんのすぐ側にいたのです。関係があったとしても不思議はありませんでした。 しかし、今日まで、なぜか、その可能性をほんの少しでも考えたことなどありませんでした。 親友と言えども、たっちゃんの「彼女」の、どれが本命なのか知るよしもなかったのです。あるいは、ひょっとして、たっちゃん自身ですら、分からなかったかもしれません。 妻は、私とたっちゃんよりも、三つ年下になります。 たっちゃんが、卒業と同時にアメリカに放浪の旅に出かけてしまったのは、妻が二年生を終わろうとしていた時期になります。おそらく、その頃、二人の関係が終わったはずでした。写真館のバイトをやめたのも、おそらくはその頃です。 しかし、妻が、再び写真館でバイトする頃には、既に、日本に戻ったたっちゃんは、春佳さんと付き合っていたのです。 自分が付き合った男、それも、おそらくは処女を捧げた相手が、目の前で他のオンナと付き合っているのを妻は、どう思っていたのでしょうか。 それにしても、私の結婚式にたっちゃんも出席していたのです。たっちゃんは、いえ、妻は、これっぽっちも、そんなことを匂わせませんでしたが、いったい、どんな思いでたっちゃんを見ていたのか。 二次会で仲間と撮った写真の中で、妻の笑顔は、一点の曇りもありません。 晴れやかで、幸せそうな顔。 その晴れやかな写真のシャッターを切ったのは、他ならぬたっちゃんでした。 「そうだったんだ…」 何とも、言えませんでした。ネットリと怒張に舌を絡みつかせては、合間に話してくれる妻の過去に、私は、一個の「バカ」のように、驚くだけでした。 自分の妻の過去の男の話を、その男の奥さんに、怒張を舐められ、扱かれながら聞かされるというのは、ひどく、不思議な光景だったのは確かです。 しかし、おかげで、本当は、怒りか、あるいは嫉妬を感じて張り裂けてしまうはずの胸の痛みが、ムズムズとした不思議な感触に変わっているのも真実でした。 「この写真を見て、怒らないんですね」 うう、唇の端からうなり声を漏らしても、いったい、なんと答えて良いかわかりません。そのくせ、春佳さんの巧みなテクニックに、怒張は、これ以上ないほど硬く、たくましい姿になっていました。 「これなら、大丈夫」 「何が？」 「彼が、そして、あなたの奥様が望んだこと」 「？」 「怒らないであげて。奥様、ずっと悩んでらしたの」 「悩んで？何を？」 私の問いに答えずに、潤んだ瞳で私の目を見つめてから、春佳さんは、囁きました。 「見て」 いつの間に取りだしたのか、リモコンを向けると、モニタがつきました。 自分がつけたモニタの方を振り向きもせずに、親友の妻は、私の怒張を再びパクリと、いともたやすく飲み込んだのです。 モニタには、一人の女が裸のまま映し出されました。 張りつめた私のモノに、やわらかな唇がネットリと絡みつくのを感じながら、私の視覚は初めて、モニタの中の裸身が、妻の肉体であることを認識したのです。 「敦子」 突然の驚き、というより、とうとう来るべきものが来たという鋭い痛みのような感覚でした。 モニタの中では、妻が惜しげもなく足をこちらに広げています。 三台のモニタは、それぞれ別角度からの映像を映し、妻の痴態をくっきりと、余すところ無く見せてくれます。 「これを」 一瞬だけ私のモノから唇を離し、私にリモコンを渡します。 思わず、受け取ってしまうと、再び、ブシュっという音を立てて、私のモノをくわえ込みます。 私のモノが春佳さんの唇にきつくくわえられています。人妻の物慣れたテクニックでした。物慣れたと簡単に表現していいのかと思うほど、ごく自然な、それでいて、絶妙の感触でまとわりつく舌と唇の、技巧を凝らしたフェラでした。 その柔らかな唇と、よく動くヌメヌメとした舌からの生み出される快感は格別です。 しかも、清楚なたたずまいを持ち、それでいて、誰もが目を向けてしまうような妖しげな色気を立ち上らせているこの人妻は、あろうことか、友人の妻なのです。 私のモノが痛いほど硬くなっています。 親友の妻にフェラチオされながら、目の前のモニタの中では、自分の妻が、モニタに裸身をさらしているのです。 カメラだけではありません。おそらく、大勢の人間が、妻のすぐ目の前にいるはずでした。 春佳さんのローブがはだけ、白い膨らみの半ばがこぼれています。思わず、そこに手を伸ばしてしまったのは、いらだちに似たものをごまかそうとしたからでしょうか。 「ふぐぅ」 私のモノをくわえたままの春佳さんの唇から、声が漏れます。思わず手に力が入ってしまいました。 私のモノを一杯に頬張りながら、一瞬、そのほっそりした眉をしかめて、くぐもった声を上げたのです。 ハッとして、力を抜きます。 しかし、手を離しませんでした。春佳さんも、私の手を払おうとはしません。かえって、左手でローブのヒモを解き放ってくれます。 白い乳房と、その下のなまめかしい裸体が目の前に広がります。広がったローブの下には、妻と同じように、小さく処理された、わずかばかりの茂みが見えました。 自らの手で、はだけた前を隠すどころか、片足を立て膝にして、見せつけるように広げます。飾り下を失っている谷間を隠すものとて無く、ピンク色の肉ヒダが、わずかに見えてしまいました。 しかし、その光景に心を動かされたのは、ホンの一瞬でした。目の前に広がる、親友の妻の裸体よりも、見慣れているはずの妻の裸体が映るモニタに心が占領されていたのです。 それを知っているかのように、確かに、頬を少しだけ笑みの形にした後で、再び春佳さんの頭は、私の股間に寄せられます。 跪いて口唇奉仕する友人の妻の乳房を揉みながら、自分の妻が、裸身を大勢にさらけ出すのを見ている。 これ以上ないほど、歪んだ情景でした。 乳房の、ひんやりと、柔らかな感触は、男を落ち着かせる魔法を持っているようです。 その感触が、私を落ち着かせてくれました。 『さっきのリモコン』 さっき渡された黒いリモコンが、左手にあるのを思い出しました。 スティックが二つあり、セレクターはＡ，Ｂ，Ｃの三カ所を選べる。 目の前のモニタにはＡＢＣと張ってあります。指先だけで試してみると、このリモコンは、妻を撮っているカメラを操作できるものであることはすぐに飲み込めました。 真ん中のＢのモニタに映るカメラは中央から、ＡとＣは、それぞれの斜め上の方向から映しているようです。 セレクターで選んで操作すると、ズームと、ある程度の上下左右の位置調整ができるようでした。 真ん中のモニタをアップにしてみると、妻の秘唇は、濡れそぼって、尻の方にわずかにこぼれそうになっているのがよく見えます。 こうやってみてみると、この間よりも、さらに妻の秘毛は丹念に処理され、面積を小さくしていました。 もはや、申し訳程度に、秘唇の前側に、細い楕円形に残っているだけでした。 秘毛は、一切を隠してはいませんでした。 スピーカーは、その場の声を拾っています。 「奥さん、よく見えないよ、ちゃんと広げて」 「奥さあん、こないだみたいに、広げなきゃ。みんな待ってるよ」 そんな無責任な、卑猥な声が聞こえます。 『冗談じゃない、今だって、こんなに足を広げてるじゃないか』 もはや、普通の撮影会ですらないことは、雰囲気からも明らかでした。 妻は両手で顔を押さえています。その両手が、そろそろと外され、下の方へと伸びていきます。 一瞬見えた、妻の火照った顔は、左にねじ曲げられています。 Ａのモニタには、そのきつく目を閉じた顔が、何かをこらえているような、それでいて、何かを決意しているようにも見えました。 妻の両手の行き先が、濡れそぼっている秘所だということは、はっきりしています。 『広げる？やめろ！そんなことをするな！』 妻の胸が激しく上下し、呼吸が荒くなっているのが分かります。 指先が、秘唇に到達した瞬間、確かに、太ももの内側がケイレンしたように動いたのが目に入ります。軽く達してしまったのに違いありません。 『そんな』 妻は、大勢の目に見つめられながら、己の秘所を指で広げようとした瞬間、逝ってしまったのです。 妻の指は、それだけでは止まりませんでした。 しっかりと指先に力を入れ、夫以外に見せてはならないはずの場所を、自らくつろげて見せたのです。 「ほら、奥さん、ちゃんと、どうして欲しいのか言ってよ」 「奥さん、この間みたいに言ってごらんよ」 男達の声が聞こえると、妻は、さらに恥ずかしさと、そして、快感を募らせたようにのけ反って見せます。 「見て」 妻の声で、そう聞こえたような気がしました。 空耳だったかもしれません、 しかし、プルプルと足を震わせるようにしながら、妻のそこは、これ以上ないほどさらけ出されていたのです。 カリに春佳さんの舌が絡みつきます。 心地よさを感じながらも、妻の痴態に心がいらついたのは確かです。 右手で乳房をまさぐりながら、私は、乱暴にローブを引き剥がし、丁寧に揃えて曲げられた膝の間に右の足先を割り込ませます。 春佳さんの陰毛も、きちんと処理されています。今は、上から見下ろしているので見えませんが、下から覗けば、妻と同じように、秘めやかな場所は、あからさまに見えるはずです。 親指にグッと力を入れると、生暖かい、ヌルヌルした場所にめり込みます。 春佳さんの背中に、グッと力が入ります。この濡れ方といい、反応といい、春佳さん自身も、興奮しているに違いありません。 そう思えて初めて、妻の方に視線が戻せました。 「クリトリスってどこにあるの」 「奥さん、入り口、確かめてみてよ」 「そのまま、指を入れて」 いろいろな声が、聞こえます。口々に、ヤジとも付かない指示が出され、その度に、妻の指先は律儀に答え、クリトリスを触り、入り口をヌルヌルと触っては、指先をわずかに入れてみせるのです。 それは、動作を指示されたオナニーに他なりませんでした。 それなのに、妻の指先は、言われるがままに動くのです。むしろ、嬉々として動いているようにすら見えました。 「あぁ」 懼れていた、妻の淫声が響きました。 ねっとりとした、甘い、それでいて、どこかもの足りなそうな声です。 「奥さん、感じてるんだ」 「さっきからビショビショだもんな」 「みんなが見てるのに、こんなに濡らすなんて、淫乱な奥さんだよ」 「ぐしょ濡れのマ○コを、もっと広げてや、奥さん」 「こんな、いやらしいところを見たら、ダンナが驚くよ」 その度に、妻の腰がヒクリと動き、足がヒクヒクと震えるのです。 特に「ダンナが」と言われた瞬間には「ヒィー」と言う、悲鳴のようなか細い声を出しながら、叫びます。 「言わないでぇ」 「じゃあ、奥さん、かわりに、みんなの前でオナニーしなくちゃ」 わけのわからない交換条件ですが、オナニーをしろという指示は、妻の官能をよけいに刺激したのでしょう。 「ご覧にならないで、あぁ」 頼りなげな声を出しながら、そのくせ、指先は、ためらいも見せずに、スルスルと動き始めました。 「いやらしいなあ」 「オナニーを見せるモデルなんて、奥さんくらいだよ。いやらしいモデルだねぇ」 卑猥なヤジが飛ぶ中で、妻の指先だけが、素早く、一定のリズムで動き続けます。 「あ、あ、あぁ」 断続的に妻の声が響きます。 「奥さん、もうアクメか？」 「奥さんのオ○コが、ぐっしょりだ」 「おいおい、糸を引いてるぞ」 いくつもの声がかかります。わざと煽るような言葉が、妻の羞恥をシゲキしているのでしょう。 嬲るような言葉を聞く度に、妻の腰がヒクンと反応しますが、次第に、ヤジにすら、反応がなくなっていきました。周囲の一切を忘れて、妻は自らの指で、自身を羞恥の極致に追い込むのに懸命でした。 普段は、あれほど、真面目で、恥ずかしがり屋の妻が、今や、人前でオーガズムに達するのも気にならない、いえ、人前でオーガズムに達したいという思いでいっぱいなのに違いないのです。 妻の「オンナ」が崩壊するまでに、それほど時間はかかりませんでした。 「あ、あ、だめ、う、う、うぅぅぅ、ん！ダメぇ！！」 腰がヒクヒクと突き上げるように動かしながら、恥ずかしがり屋のはずの妻は、人前で激しく逝ってしまったのです。 真ん中のカメラを目一杯ズームすると、ヒクヒクと入り口のヒダが震えている様子すら見えました。 妻が人前で恥をさらして、逝く瞬間を見ていた私は、たまらずに、足の親指に力が入ります。ニュプッと湿った柔らかい感触がして、ぬかるみにはまこりこみました。 足指で、春佳さんを犯したのです。 その瞬間、春佳さんも軽く達したのでしょうか。「ん」と小さくうめいて、背中をのけぞらせます。秘肉をあからさまにしたポーズのまま、夫の友人をフェラすることで、春佳さんもまた、官能を高めていたのかもしれません。 私自身も、限界でした。春佳さんは、さっきから、私の限界点を正確に見極めて、巧みなインターバルを作るのです。臨界点間際に高めて、暴発させないという、その巧みに男をじらす、このテクニックを使われなかったら、とっくに暴発していたはずでした。 しかし、もはや精神的にも、肉体的にも限界でした。妻が恥辱のオーガズムを感じる姿を見てしまった私も、射精しなければたまらなくなっていたのです。 思わず、再び、私の股間に下りた春佳さんの頭を押さえるように掴んでいました。 「ぐぼ、うっぐ、まっ、ぐ、あぐ」 恐らく、私の欲望をわかっているのでしょう。苦しげな声をあげながらも、懸命に舌と唇を駆使して、オトコを喜ばせてくれています。 喉の一番奥の柔らかい場所に、突き立てるように、春佳さんの頭を押しつけたまま、私は、一度、クッと膨らみます。 「春佳さん、出すよ」 ＯＫとでも言いたげに、今度は自分から喉の奥に私を誘い、唇と舌で強くしごきながら、頭を動かすスピードがアップします。 「出すよ。奥さん」 妻がそう呼びかけられていたように、私も「奥さん」と呼びかけながら、私は、大きく爆ぜてしまいました。 「う、ぐっ、ぐ、んぐ、く」 春佳さんの喉がコクコクと規則的に動きます。私のモノを飲み下す動きです。 己の吐き出したものをオンナに飲み込ませる。 オトコの本能ゆえに、うれしい瞬間です。 しかし、たっぷりと放出したものを春佳さんに飲み込ませながら、妻が、後でこれをたっちゃんにしなくてはいけないのかという心配が、先に立ってしまったのです。 たっちゃんのものを妻は果たして飲み下すのでしょうか。 いえ、妻は、何度、たっちゃんのモノを飲み下したことがあるのか。もはや、たっちゃんと付き合っていた頃の妻が、私とはしなかったような、濃いセックスをしていたのを疑う余地など無いのです。 『オンナ遊びで知られた、たっちゃんだぞ。その手で、たっぷりとオンナを開花させられたとしたら、いったい、どんなセックスをしていたんだ』 今、射精したばかりだというのに、腹の底の方にたまる澱のようなものが、腰の奥にムズムズするような感覚を生み出しています。 射精したつかの間、目を離していた間に、妻の指は、また、うごめいていました。 ただ、今度は、左手にショッキングピンクのローターを持たされています。 「奥さん、ほら、早くくっつけて！」 「エッチな奥さん、ほら、くっつけて。気持ちいいよ」 それでも、決心がつかないのか、行きつ戻りつでなかなか、ローターをくっつけようとはしません。 ペロペロと私のモノを犬のように舐めながら、時々チラリと画面と私の顔を春佳さんの視線が移動します。 ただ、ひたすら、一生懸命、舐めるだけで、何も喋ろうとはしませんでした。 「あん！」 妻の声が、スピーカーから響きます。 既に、秘蜜が溢れ、肛門の方にまで垂れそうな妻の秘所にローターがあてられたのです。 いつの間にか、私は、三つとも、カメラを一杯にまでアップにしていました。 ドロドロと言っても良いほど、濡れきった妻の秘唇が、目の前にあるように映っています。 しかし、よく見ると、押し当てているのは、妻の指ではありませんでした。 いつのまにか、妻よりはいくらか太い男の指が、濡れそぼった秘口にピンクの固まりを押し当てているのです。 ちゃんと、観客側から見えるように、でしょう、妻の横から、手を伸ばしていました。めいっぱいズームした画面には、男の手しか映りません。 そのかわり、逝ったばかりの身体に押し当てたローターが、しぶきを上げんばかりに振動し、代わりにオンナの快感を引き出している姿がよく見えます。 ヌルヌルになった入り口に、ぬらりと軽く入れては、秘口の周りをそっと動かす。そっと動かしているかと思えば、ヌルリと入り口にあてる。指は慎重、かつ、大胆に動き続けます。 その度ごとに、妻の嬌声が聞こえてきます。 巧みに動かされるローターは、クリトリスの周辺までは行きますが、おそらくは、わざと、直にあてないようにしているのでしょう。慎重に動かされるローターの動きに、時には焦れたように、腰がしゃくり上げられたりします。 アップにされた大画面モニタは、直に見るよりも大きく、そのものを映し出して、濡れそぼったローターが糸を引いているのがよくわかります。 「あぁ、もう、あ、あ、あぁ」 妻のせっぱ詰まった声が響き始めました。またもや登りつめようとしているのでしょう。 「あ、あ、もう、あ、う、え？え？あ、いや、どうしてぇ」 今にもオーガズムに達しようとした瞬間、ローターが離されてしまったのです。 悲鳴のような妻の、声が響きます。もはや、恥ずかしさよりも、快感の極致を求めているオンナの声でした。 腰が物欲しげに、ウネウネとうねります。 「まだだよ、奥さん」 この声は… 聞き間違えるはずもありません。 「いやあ、いじめないで」 妻の悲しげな声が響きます。 びしょびしょに濡れた、淫猥な肉体を奥まで広げているのに、それは、少女のような、はかなげな声でした。 「あん、あぁ、あん」 ローターは離されたままです。 しかし、妻の満たされない、それでいて感じた声は、連続して響いています。 強張った私の指は、その意志とは無関係に、とうとう、Ｃのカメラを引いていました。 やっぱり… やはり、裸のたっちゃんが、妻の横にしゃがみ込み込んでいました。 左手が、妻のやわらかな乳房を揉みしだき、指先が乳首を弄んでいます。 「あん、あぁ、おや、あう、あ、あ、あ、あ、あう」 右手は、ローターを太ももの内側に、ツッと這わせています。 その度に、妻は、鼻にかかる甘い声を上げ、しかし、逝くほどには感じさせてもらえないもどかしさに、むずかるように首を振るのです。 ときどき、入り口にもローターがあてられます。 今度こそとばかりに、腰をしゃくり上げるように使いながら、今にも、オーガズムへの急坂をころげ落ちようとする度に、スッと引かれてしまいます。 「あう、いやあ、どうして、あう、もう、ああぁ」 いらだちと、落胆が混ざった悲鳴のように、どうしてと、何度叫んだでしょうか。 「奥さん、今日は、何でもするって約束するかい」 「そんなあ、ああ、だめ、できない、あん」 「だけど、逝きたいだろ？」 「そんなことぉ、あう、あうぅ」 「ほら、これなら」 「あう！」 入り口に軽くあてただけで、逝ってしまいそうになるのを、巧みにコントロールしながら、何度も、妻へ約束を迫ります。 「あぁ、いやあ、だめ、できない」 何でもする、などとこの状況で言えば、どうなるのか、きっと妻は分かっているに違いないのです。しかし、肉体は、オーガズムへ達したくても、どうやってもたどり着かせてもらえない苦しさが、澱のように着々とたまり続けています。 たっちゃんが、いろいろなオンナ遊びをしてきたことは、幼なじみの私が一番よく知っていました。高校生の頃から、ＯＬの「若いツバメ」になっていたほどです。 そのたっちゃんが、妻を追い込んでいるのです。 もちろん、そのためにしていることですから、妻は、この永遠にも似た攻めに勝てるわけはありません。 もう、何度、逝きかけた身体を空振りさせられたか分からなくなった頃、私にも、妻が可哀想になってしまいました。 「あぁ、くう、もう、いや〜」 妻の苦しげに頭を振り立てる姿はせっぱ詰まってきました。いつの間にか、私まで、早く何とかしてやりたい、そんな風に思えてしまったのが、妙でした。 たっちゃんは、妻の限界を見ていたのです。 「ほら、じゃあ、これ。オモチャを入れるくらいなら良いだろ」 多分、そばに置いてあったのでしょう。妻の顔の上に、黒光りしたディルドをかざしたのです。 大きい。 私のモノより二まわりも太く、長さは二十センチ以上は楽にあるでしょう。 ごく普通の大きさの私にとってはコンプレックスになってしまいそうなものです。 妻は、ローターもそうですが、この種のオモチャは大嫌いで、私にも全く使わせません。まして、こんな大勢の見ている前で、オモチャで逝ってしまうことなど、想像すらしたことがないに違いありません。 一瞬、妻の顔が、横に動いた気がしました。 「ほら、逝きたいだろ？奥さん」 「あぁ、だめぇ」 それでも、妻の我慢は限界だったのです。 何でもすると約束するより、このディルドを受け入れれば良いだけという安心感でしょうか、それとも、すでに、妻の中に澱のようにたまった快感の残滓のせいでしょうか。 妻コクリと頷くまでに、それほどのためらっている余裕はなかったようです。 「いんだね、逝かしちゃうよぉ」 それでも、そうやって、わざと確認されてしまうと、羞恥が募るのでしょう。いやあと言いながら顔を隠してしまいます。そのくせ、顔をその手で覆いながらも、コクコクと頷いてしまうのです。 『妻が逝かされてしまう。それも、あんなに大きなディルドで』 その瞬間、春佳さんの口の中で再び硬くなりかけた私のオトコは、なぜか、急にしおしおと、惨めにうなだれてしまったのです。 もちろん、私の状態など、カメラの向こうでは知るよしもありません。いえ、今の妻が私を思い出せるのか、それすらわかりません。 妻は、たっちゃんに攻められ、改めておねだりをさせられていました。 「お願いします。大きなオ○ン○ンで、いやらしい敦子を逝かせてください」 何度も言いよどんでは、やり直しさせられ、囁かれるセリフ通りに、最後には、そう叫んでしまったのです。 そして、その瞬間、妻の淫らに開かれた美肉には、深々と、大きなディルドが突き刺さっていました。 「あぁ！ああん！」 大きく、腰を動かします。 「ほら、奥さん、逝きたいだろ」 もはや、妻はあらがうことなど思いも寄らないのでしょう。首をカクカクと人形のように動かしながら、逝かせてぇと叫びました。 「ほら、奥さん、みんなが見えるように、もっと足をおっぴろげて、逝っちまいな」 ディルドが抜き差しされる度に、妻の口からは、おう、とか、あうと言った意味のない言葉が噴きこぼれます。 黒いディルドの表面には、既に白い粘液がびっしりと絡みついています。 「ほら、奥さん、何でもするって言えるな、ほら、ほら」 「あう、ああぁん、何でもする、何でもするから、ああ、このまま、お願い、あう、あう、あぁ、あ、あ、あ、い、逝く、逝きます！」 叫び声。 深々とディルドを飲み込んで、妻はぐぐっと腰を持ち上げながら、妻は、達してはならぬはずの快感の頂点に、まっしぐらに駆け上っていったのです。 それは、同時に、落ちてはならない深みに転げ墜ちていったのと同じことでした。 崩れ落ちる妻の身体を見つめながら、アルバムの中の妻のヌードが重なります。 たっちゃんと付き合っている頃の妻は、こんなセックスをしていたのかもしれません。調教とも呼べるような、こんな激しいセックス。 妻の中に、私の知らない激しいセックスが刻み込まれていた。 重力が数十倍にでもなったかのように身体が重く感じます。私の身体は、イスに沈み込んだまま、動けなくなっていました。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2008.2.25掲載 |
古川さとしさんの作品集→ |
| 小説提供サイト |
 |