第4話　訪問

　この時間にしては珍しく、立て続けの客をさばかねばなりませんでした。
　奥に引っ込むと、そこには、ＳＭ雑誌の写真、そのまの光景が待っています。
　ロケットのような、豊かなバストをそそり立たせて、飾り気のないスチール製の机の前で縛られている女子大生。
　メガネの奥で閉じられた目。化粧をほとんどしていないその頬には薄紅が差して、リップだけが微かに光る唇をわずかに開け、ハアハアと喘ぐように呼吸をしています。
　祈りを捧げるかのように、天を向いたまま、身動きをしません。
　わずかに、腕をくくられた指先が、時折、ヒク、ヒクと揺らめいているだけでした。
　ほんの五分のつもりでしたが、その倍以上の時間放っておいたことになります。
　相当、手が痺れているはずです。いえ、バストの上下を挟み込むように通したヒモが胸に食い込んで、痛かったはずです。
　気配に気づいたのか、ビクッと首を回して私と目が合いました。
　さすがに、私の顔を見て、一瞬、ホッとした表情を見せます。しかし、自分の姿を思い出したのでしょう。薄紅の頬が、真っ赤になって、うつむいてしまいました。
　背もたれの後ろに立つと、甘えるように首をもたせかけてきます。
「今日はここまでだ」
「はい」
「今度は、本格的に縛ってやろう」
　相も変わらず、芝居がかったセリフでした。
　玲未ちゃんが潤んだ目で私を見上げます。
　その瞳の中に、わずかに「違う」という光が見えた気がしました。
　あわてて付け足します。
「まだ、罰が足りないからな。これで許されるとは思ってないだろう？」
　泣きそうな目をしながら、それでも、コクリとはっきりと頷いたのです。
「玲未には、罰が必要だ」
「は、い」
　小さな返事でした。
　黙って、黒いハサミを取り上げます。玲未ちゃんの目が、じっと黒いハサミを追いかけます。傷つけないようにそっと、紐の下に先端を入れると、その後は、わざと刃の裏側がやわらかな皮膚を滑るようにして、右のオッパイに沿ってこじり入れます。
「あぁ」
　不安そうな、それでいて甘やかなため息と、プツリ、プツリと上下のヒモを切る音が響くのは、同時でした。
　形を変えない豊かなバストには、くっきりと赤い痕が付いています。
　そっと、その赤い痕を指先で横にたどります。
「あふぅ」　
　快感を感じているのでしょうか。目を閉じたままの玲未ちゃんの唇から甘いため息が漏れています。乳首はプックリと膨らんだままでした。　
　ふと思いついて、どうしようかと、ホンの一瞬だけためらって、やはり行動することにしたのです。
　いわば、毒を食らわば皿まで、の心境です。
　そのまま、ジーンズのチャックに手をかけたのです。
「あ！いやっ」
　反射的にそう言いましたが、玲未ちゃんは、顔を向こうに向けただけで抵抗しようとしません。もちろん、手が縛られているから、抵抗できるわけはないのですが、本気で嫌がっているようには見えません。
　ジッパーの滑り降りる音に、微かに玲未ちゃんの、ため息のような声がハーモニーを作り出します。
「まさか、玲未はいけない子になっていないかな」
　もちろん、幼い顔をしていても女子大生です。私が「何」を言っているのくらい、分かるはずです。ジッパーを降ろしたジーンズの下にある場所。まさに、その、恥ずかしい場所が、オンナの反応を示していないか、問うているのです。
　もちろん、玲未ちゃんは、私がこれから何をしようとしているのか、ちゃんとわかっていました。
　長い睫毛が、メガネのレンズの下でフルフルと震えていました。
　ゆっくりと私の右手が前に伸びる気配を感じたのでしょう。肩をビクッと震わせます。
　絶望でしょうか、それとも、何かを期待しているのでしょうか。
「ああぅ」
　指先が、ベージュの下着に届いた瞬間、ため息が、いいえ、今度は、はっきりと、オンナがその時に出す甘い声が漏れました。
　わずかに見えるそれは、女子大生らしくシンプルなデザインのようです。手触りの優しい布地です。
　つつーっと指先を、お腹の部分のゴムに沿って指先を滑らせてから、一気に、その中へ、滑り込ませました。
「あん！」
　可愛い声が、漏れました。
　意外に、こんもりとした感触の先に、私の指先は、すぐに、ドロドロに濡れた処女地を探り当てたのです。
「あぁ、恥ずかしくい、あうぅ」
　クナクナと顔を振って恥ずかしがります。
「濡れてる」
「ああ！いやあ！あうぅ」
　下を向いたまま、不自由な肩を揺すって、これ以上ないほど恥ずかしさに身もだえするのです。
　男と付き合ったことが無いというのは、本当でしょうから、この処女地に指を這わせた男は、私が最初と言うことになります。そのまま、とろとろの秘唇に指を滑らせてから、窮屈な動きで指先を曲げると、まだプックリとしているだけで閉じたままの外側の秘唇の間にわずかに入ります。
　たっぷりと濡れていました。ビショビショと言っても良いでしょう。
「ヒィー」
　身体の一部を引き裂かれでもするような引き絞った声を上げながら、のけぞります。処女といえどもこれだけヌメった場所を撫でられれば、相当感じるのでしょう。
「悪い子だ」
「あぁ、ごめんなさい。ごめんなさ、あうぅ、い」
　身体ごとのけぞったまま、私の指先に、すべてを預けるような姿勢でした。
　そこから、ヌメヌメの中を泳ぐように指を上に動かすと、プチッと飛び出た感触があります。やや大きめの、処女のクリトリスでした。
「ああぁ、あん、あん、あぁ、しゃちょ、う、さん、あぁ」
　指先でプシュプシュと押しつぶすようにすると、指先からツルツルと逃げ回り、それを追いかけて、また押しつぶす。
　その度に、可愛い声が出てしまうのを止められないようです。
　本当は、ここで、女性の絶頂を教えるつもりはありませんでした。それではお仕置きになりませんから。
　しかし、玲未ちゃんの感じた顔があまりにも可愛らしくて、止まらなくなってしまったのです。
　クチュ。クチュ。
　微かな湿った音が響きます。
「ああ、あ、あ、あん、あふぅ、あう、あ、あ、あ」
　小さな唇がわずかに広がったまま、玲未ちゃんは、あえぎ声が止まらなくなってしまったのです。
　丸っこいメガネの中で、目をギュッと閉じたまま、甘い声を吹きこぼしているの顔を見たら、途中で止めるのは可哀想だと思ってしまいました。
　それに、玲未ちゃんに「初めてオーガズムを教え込むオトコ」になってみたいという欲望が首をもたげてしまったのです。
　おそらく、今を逃せば、こんなにすてきな女の子が、私なんかに二度と身体を触れさせるわけがないのです。
　決めました。
　左手で、絞り出すような動きで、玲未ちゃんの大きな左胸を揉みしだきながら、右の指は、クリトリスを弄るだけでなく、時には、下の入り口までもかき回してしまいます。
「あ、あ、あ、あう、あう、あうう、う、う、あう、あ、え？え？え？　あ！あううう！」
　ほんの数分のことでした。
　カクっと腰を突き上げる動作が急に始まったとたん、聞くだけでオトコを溶かすような淫声を放ちながら、玲未ちゃんは、私の指でオーガズムに達したのです。
　急に硬直した身体を私に預けながら、玲未ちゃんは、確かに逝ってしまったのです。
　硬直した身体からスッと力が抜けて、はあ、というため息にも似た声が漏れます。
「ホントはこんなに、いやらしかったんだね。玲未。真面目そうなのに」
「あう、ご、あんっ、うっく、ごめんな、あん、さい」
「ちゃんとお仕置きをするからね」　
　カクカクと首を振ります。
　サッと手を引き抜くと、その衝撃だけで感じたのか、あん、と可愛い声を出しながら、しっとりした目で私を見上げます。
「感じた？」
「そ、そんなこと」
　首を横に振りますが、顔が真っ赤です。
　ハアハア言う息は、まだ整っていません。
　私は、さっきのハサミを取り上げると、パチ、パチという小気味いい音を立てて、手首のヒモを切っていきます。
「さ、これで」
　ゆるく縛ったつもりでしたが、手首から先が赤紫に変わっていました。
　慌てて、両手でマッサージをします。
「ごめん、強くやりすぎた」
　しかし、玲未ちゃんは、両手を私に預けながら、黙って頭を振るばかりです。
　胸はめくり上げられたまま、乳房がこぼれ出ています。真ん中で断ち切ったブラは、脇の方にぶらりと垂れ下がった哀れな姿となっていました。
　手を握ったまま、覗き込むと、真剣な、それでいて、どこか頼りなげな視線とぶつかります。
「玲未…」 　
　全て分かっているかのようでした。
　呼ばれると、返事もせずに、スッと目を閉じ、そのまま私の方に、幼い表情の小さな唇を突き出します。
　やわらかな背中を抱えながら、玲未ちゃんの小さな肩を腕の中にとらえました。
　チュッとしただけでは収まりません。そのまま舌を差し込んで、健康的な歯も、舌の裏側もなめ回していくと、おずおずと舌を絡めて来るではありませんか。
　覆い被さるようなキスを続けるうちに、唾液が玲未ちゃんの口に流れ込んでいきます。
　あぁ、いけない、という思いと、かまうことない、このまま飲ませてしまえという思いが交錯します。
　もちろん、キスをやめられるはずもなく、トロトロと流れ込むに任せるしかありません。玲未ちゃんは、懸命にしがみつくような仕草で、キスに答えるのです。
　ようやく唇を離すと、まだ痺れているはずの両手を口に当て、呆然としています。頬が紅潮して、目をぱっちりと開いたままでした。
　私は、玲未ちゃんの可愛らしいアゴに片手を当てて上を向かせます。
　チュッと短いキスをすると、慌てて応えようとしてきます。一瞬のフレンチキスだったのですが、むしろ、物足りなさそうなのです。
　ここにいたっては、オトコの欲望をこの場限りにする気は、もはやありませんでした。
「水曜日。空けられるね」
　定休日です。都心のホテルまで行けば、まさか、バレることもないでしょう。
「はい」
　じゃあと言いかけたときでした。
　潤んだ目を、パッチリと見開いた、そう、何かを決意した表情で、口を開いたのです。
「水曜日、もし、良かったら、私の部屋へいらしていただけませんか」
　いつにない真剣な表情に押されるのは、今度はこちらの方でした。
　その時、客が入ってきてしまいました。
「ちょっと待ってて」
　客を待たせるわけにはいきません。
　後ろ髪を百万本も引っ張られる気分で店に出ます。
　ほんの短い時間でしたが、戻ったときには、玲未ちゃんは、見事に身支度ができてしまっていました。
　思わず視線が胸に行ってしまいました。薄いニットの胸が揺れています。
　戻ってきた私をチラッと見ると、玲未ちゃんは、あどけない顔を真っ赤に染めて顔を伏せてしまいます。
「あの、えっと、あの〜、お待ちしてますから！」
　そう言い残して、私の横を走り抜けようとするのをサッと抱きとめます。
「あ、むぐっ」
　問答無用で激しく舌を絡めながら、ふと胸をまさぐると、ニットの下は、やはりノーブラでした。となると、さっき切ってしまったブラは、ハンドバックに入れたのでしょう。
　ちらりと気にしながら、さっきより、優しくふくらみを揉みしだくと、たちまち、身体から力が抜けてしまうようです。
　ふと思いついて、絡みついてくる玲未ちゃんの薄い舌の上に、わざと唾液を落とし込みます。
「むん、む、ん」
　コクリと飲み下しながら、もっとと言いたげに舌をくねらせます。
　顔を一度離します。うっとりとした顔のまま、唇が半分開いた中に、清純な乙女にふさわしくない、軟体動物のような舌が見えます。
「おいしい？」
　返事の代わりに、もう一度、私にしがみつき、かじりつくように唇をペロペロとなめる仕草は、まるで猫のようでした。
　自分の仕草が恥ずかしかったのでしょうか。玲未ちゃんは、ハッと正気を取り戻したかのように、私の横から逃げ出して行ったのでした。
　妻が、つまりは翔太も、帰ってきたのは、それから間もなくのことでした。
　私の指には、まだ、玲未ちゃんの甘酸っぱい秘液の匂いが残っていたのです。

　貧乏暇無しというヤツでしょう。定休日は、隔週の水曜日です。
　あの後、カレンダーには「組合」とさりげなく書き込んであります。
　本来「組合」というのは、小さな書店が年に何度か集まって、情報交換をする会なのですが、ありがたいことに不定期なのです。もちろん、妻が疑うわけもありません。
　朝から、懸命に落ち着こうとしながらも、私の足は、自然に速まっていました。玲未ちゃんの住む駅で降りて１０分も歩けば、見えてきます。
　あまり新しくもない、つまりは、慎ましい青い屋根のアパートの二階が玲未ちゃんの部屋です。
　玄関から部屋中が全部見渡せる、小さなワンルームが、女の子らしい、落ち着いたたたずまいであるのも想像していた通りでした。
　開けた瞬間、女の子が一人で堅実に暮らしている部屋独特の、フワッとした穏やかな生活の匂いに包まれました。
　普段、着ているのを見かけないような袖付きのグリーンのワンピースを着ています。おしゃれ着と普段着の中間くらいでしょうか。
　あれこれと考えて、選んだのでしょう。
　男を初めて部屋に迎え入れる乙女の、けなげさのようなものを感じてしまいました。そして、おそらく、玲未ちゃんは、これから起こることの覚悟決めているはずでした。しかし、このワンピースを脱がされる瞬間を、果たして想像しながら着たのでしょうか。
　もちろん、私の目は、素早く、服の上からわかる胸の盛り上がりが、いつもより大きいのをチェックしていました。
　いつもの通りコロンの香りはありません。わずかに残った玲未ちゃん自身のかぐわしい香りと、清潔なシャンプーの匂いがすべてでした。
　いえ、いつになく洗いたての匂いがするところを見ると、ついさっきシャワーでも浴びたのかもしれません。
　狭い玄関で、私とすれ違うように、玲未ちゃんが鍵をかけます。
　カシャンとドア・チェーンの落ちる音が響きました。
　もはや、引き返すことなどできません。
　なにより、部屋に入った瞬間、玲未ちゃんの「オンナの匂い」に包まれた私は、どうしようもないほど猛っていたのです。
　気がつけば、ワンピースのままの玲未ちゃんを抱きしめていました。
　むさぼるような、荒々しいキスを浴びせます。
　処女の玲未ちゃんは、懸命に耐えているのか、それとも、うっとりしているのか、わかりません。ただ、舌を絡めると、はじめはおずおずと、次第に、もっと、とせがむように、自らの舌を絡みつかせては、芳香のする、その口の中に引き込む仕草をするのです。
　わずかに、丸っこいメガネが、上にずれていました。
　トロトロと、 唾液を注ぎ込むような、粘っこいキスをしながら、私の右手は、ひとつひとつワンピースのボタンを外していきました。
　アクセントの腰の細いベルトを、指先だけで外します。
　シュッとベルトを抜いた次の動作で、一気に下からめくり上げます。
　思わず、玲未ちゃんが、あん、と声を出します。
　しかし、何も言わずとも、両手を差し上げたその動作は、紛れもなく、我が身を脱がす動作に協力する気だと言うことです。
　肩まで一気に捲り上げると、一瞬、顔が服に包まれたまま、無防備な下着姿が、目の前に広がります。もがくように顔を抜こうとしますが、一瞬早く、無防備な下着姿を抱きしめて動けなくしてしまいます。
　もちろん、薄い布地越しですから、私の動作が透けて見えるのかもしれません。しかし、抱きしめられた瞬間から、玲未ちゃんは、すべてをあきらめたように、ぐんにゃりと力を抜いたのです。
　顔を覆ったまま抱き上げると、狭い部屋の隅にあるベッドにそっと降ろします。肩をくなくなと揺すりますが、まるで、私がどのようにしたいのか、待っているかのごとくに、控えめな抵抗でした。
　改めて、じっくりと、下着姿の玲未ちゃんを見下ろします。
『 ドキッ』
　下着です。
　この間のような、胸を少しでも小さく見せようとするものではありません。
　大胆なカットと刺繍が、その包みこんでいる軟らかな中身の大きさを強調するブラジャーでした。
　それも、黒や紫でなく、ピンクなのが、玲未ちゃんらしいと言えば、そうです。
「玲未、いやらしくなったろう」
　ヒクンと身体をすくませます。
　そう尋ねる、私の声こそいやらしいものだったはずですが、玲未ちゃんは、イヤイヤをするように身もだえするだけで何もしゃべりません。
「この間のように調べてやる」
「あぁ、いやぁ、それだけは」
　許して、と言いながら捲り上げられたワンピースの下で、クナクナと首を振る様子だけがわずかに見え、抵抗する気配すらありません。
　パンティーに手をかけた瞬間、ヒクンとしますが、懸命に自分を押さえているようにも見えました。激しくお腹が動いているのは、呼吸が速くなっている証拠です。
　意外に豊かな尻の下側に手を入れて、ゆっくりとパンティーを脱がします。
　玲未ちゃんは、はたして無意識なのか、それとも協力してくれるつもりなのか、左右の尻が交互に上がるので、何の障害もなくあっさりと、その細い下半身に身にまとうものはなくなりました。
　なんと言っても、女の子のパンティーを脱がすなら、お尻側から脱がさないと難しいのです。その上、玲未ちゃんは、細いくせに、お尻はクルンと丸く発達していたのです。
　普段のジーンズ姿ではそこまで気がつきませんでした。
　見事な美尻と言って良いでしょう。
　恥ずかしそうにくねらす足の間には、黒々とした茂みが、こんもりしています。
　情愛の深い女の茂みは濃いと昔から言いますが、まさに、うなずけるものでした。
　純真そうな顔とは反対の、うっそうとした茂みは、玲未ちゃんの処女唇を、そのままでは見せてくれそうもありません。
「足を広げろ」
　もちろん、処女が、男の目の前で足を広げられるわけはありません。服を着ている時だってそうでしょう。
　しかし、玲未ちゃんなら、きっと、命じられたことで、さらに濡れてしまうと思ったのです。
「ほら、いやなら、そこのドアを開けるか？隣の部屋のヤツが通るかもしれない」
「そんな、ダメです。もし、見られちゃったら。やめて、お願い　…します」
　演技とも思えず、かといって、そんなことを本気で取るわけもないのですが、ひょっとして「仕方なく」という口実が欲しかったのかもしれません。
「あの、しゃちょう」
「うん？開けて欲しいのか、それとも自分で足を広げるのか？」
「ああ、やめて、見られちゃったら。あぁ、社長さんの言うことを聞かないと」
　一瞬、身体に力が入ります。
　そして、怖いものが入っている箱を恐る恐る開けるような声が、ブラウスの中から聞こえます。
「言うことを聞かないと、ドアを開けられてしまうのですよね」
　言わずもがなのセリフを口にして、いやぁと身体を身もだえさせます。
　しかし、まくり上げられた服を何とかして、腕を自由にしようとはしませんでした。
　ただ、胸の辺りまで、一気に真っ赤になったのは、玲未ちゃんが何を想像したかを物語っていました。
「あぁ、お、お願い、見ないで」
　小さな悲鳴のような声を上げながら、固く閉じていた玲未ちゃんの両膝が、震えながら、ほんのわずか、広がります。　
「もっと」
　ヒッと息を詰めたように身体を硬直させ、一瞬遅れて、さらに開きます。
　ようやく膝を二十センチも広げた時でした。
　許して、と蚊の泣くような小さな声が聞こえ、フルフルと震えたまま、それ以上は広がらなくなったのです。
「ほら、スケベな娘は、こうするんだよ」
　膝の裏側に両手を入れて、一気に両足を持ち上げます。
「え？あ、あ、あ、いやあ！」
　さすがに、反射的に抵抗しようとしましたが、グッと腰から折り曲げるように持ち上げて、広げてしまうと、力を入れることは不可能です。
　二十歳にもならない処女が、下着も着けない下半身を、おむつを替える格好で、男の目にさらけ出しているのです。
「あう、くぅ〜」
　身体を曲げられて、苦しいのもあるかもしれません。握りつぶされそうになった小鳥のような苦しそうな声を漏らしました。
　しかし、身体をひねって逃げようともせず、私に持ち上げられた膝が、フルフルと震えているだけでした。
「濡れてる」
「あ、だめ、ですぅ、恥ずかしくて」
　消え入りたげな声が、幾分くぐもって聞こえます。
　もちろん、声だけの抵抗を無視して、両手を太ももの内側にあて、引っ張るようにして、中を覗き込みます、
　黒々と密生した翳りの中に、まだピンク色の薄い大陰唇がぱっくりと口を開け、蜜を湛えた中身は、おそらく充血しているせいでしょう、真っ赤に見えます。
　世間で言う赤貝の例えも、頷けるたたずまいです。
「お願い、見ないで」
　そのくせ、秘唇が、ヒクンと動き、ぬかるみが増した気がします。
　そっと、匂いを嗅ぎます。
　石けんの匂いと、玲未ちゃんの、ちょっと鉄さびにも似た匂いがします。オンナを感じさせるというより、未開の地を感じさせる匂いと言うべきでしょうか。
　ヒクヒクとした大陰唇の周りにも多めの陰毛が生え、それは尻の方へと続いていました。
　ぱっくりと口を開けた大陰唇の上の方に、プックリと膨らみきったクリトリスが、その存在を誇示しています。
　そこから続く下の方は、やわらかな秘口へと続くぬかるみが、中のうごめきに合わせて、クニュクニュと動いていました。
　さすがに、入り口の蕾は、濡れそぼちながらも、閉じたように見えています。
「いやらしく動いてる。わかるかい」
　まくり上げられた服の中で、イヤイヤをする動きが見えます。
　その瞬間、ひくんと秘唇が動き、みるみる秘蜜が潤んできました。
　今、玲未ちゃんは、肩から上を服にからめとられたまま、自分の処女地をオトコに観察されているのです。
　明るい部屋の中でこれだけ足を広げれば、羞恥の隅々まで男のいやらしい目にさらされることなど分かっているはずなのです。
　それなのに、本気で抵抗しませんでした。
　いやらしいうごめきに誘われるように、顔を近づけているうちに、気がついたら、プックリとしたクリトリスを舌先で転がしていました。
「あぁ、だめぇ」
　うろたえたような声を出したのは、快感と言うより、ビックリしたせいでしょう。
　最初、玲未ちゃんは自分の身に何が起こっているのか分からなかったようです。
　押さえられている足を反射的に閉じようとして、かなわず、そのまま、受け入れるしかなかったのです。
「あん、あん、なに、あう、あぁ、あ、なに、これ、ああん、だめぇ」
　すこし、鼻に掛かった声を上げながら、腰がヒクヒクと動き始めます。　
　ぬかるみを舌で探るようにすると、たまらなくなったのか、ヒクン！　ヒクン！と腰が飛び跳ねるような動きを見せます。　
　いつしか、私も夢中になって舌を使っていました。
　処女孔は、入り口こそ、柔らかくなっていましたが、舌先を尖らせるようにねじ入れると、ほんの数センチ先に、薄い、けれども、強靱な膜状のものが、中を狭めています。　
　膜の内側に沿って舌をわずかに動かすと、その動きが、周囲の壁に伝わるのでしょうか、足を思わずすぼめる仕草を繰り返します。
「あ、あ、だめ、あ、はう、あ、あう、ヘンに、ヘンになっちゃいます、あう、もう、やめて」
　もはや、完全に淫声と言っても良い甘い声です。もちろん、やめるわけはありません。
　クリトリスを鼻先で押しつぶすようにしながら、さらに勢いをつけて舌を使っていると、突然、せっぱ詰まった声がします。
「あ、あ、あ、だめ、だめ、い、あ、い、いく、いっちゃう！」
　ヒクン、ヒクンと内ももが痙攣して、私の顔をはさみつける動きを見せます。
　私がなおも舌を動かし続けると、キュウッと一度強くはさんだ後、すうーっと力が抜けてしまいました。
　弛緩した玲未ちゃんの美肉の奥からひとしずくのオンナの匂いのする液体が、トロリと流れ出ました。
　私の愛撫を受けて、逝ってしまったのです。
　おそらく、男の舌による、生まれて初めてのオーガズムのはずです。
　この間に続いて、玲未ちゃんは私に女の羞恥の瞬間を迎えさせられたのです。
　ゆっくりと、持ち上げていた両足を降ろしました。
　私を足の間に入れているのですから、大股開きのあられもない格好です。しかし。足を閉じる動きさえできないようです。
　その上、オトナっぽいブラジャーをつけただけの裸に、足先には白いソックス。
　肩から上は、着ていた服が、中途半端にまくり上げられたまま、身動きを奪っています。
　玲未ちゃんは、その姿のまま、白いお腹だけを、荒く上下させていました。
「いっちゃったね」
「違います。そんなんじゃ」
　頭を振っているのが分かります。
　よく動く、白いお腹の中心に可愛くくぼんだおへそ。そこをサッと掃くように撫でつけると、きゃうっと可愛い声を出して、ビクンとなります。
「顔だけだして」
　私のいやらしい視線に身体をさらしたまま、玲未ちゃんは耐え続けたのです。処女地を男の前にさらけ出して、身体を自由に弄られながら、果たして、どんなことを考えていたのでしょうか。
　ようやく、ゴソゴソと動いて、やっと出した顔は、目を潤ませ、何かまぶしそうな表情でした。
　そっと、ずれたメガネを直してあげると、小さな声で「ありがとうございます」という礼儀正しい礼を言うのも、いかにも玲未ちゃんらしい振る舞いでした。
　私は有無を言わせず、クルクルクルッと、服を丸めてしまいます。袖のボタンを留めたままですから、そうなると、もう、腕に絡んで、抜こうとしても、抜けなくなるのです。
　覆い被さるようにして、腕の間の丸めた服を、枕のように頭の下に押し込むと、上気した玲未ちゃんの唇は、ほんのすぐ近くです。
「エッチだったね」
　瞬間、動けなくなった両手で目一杯隠そうとしますが、両腕が、全く利かないことを改めて思い知らされ困惑の表情を浮かべます。
「ほら」
　私が唇を顔の上に差し出すと、勢いよく吸い付いてきます。
　じゅるじゅると音が出るようなキスでした。
　私の舌を吸い込むように舌を絡めるので、私の唾液は、トロトロと玲未ちゃんに注ぎ込むようになります。
　ときおり、たまった唾液を飲み込む動きをするとき以外、熱烈に舌を絡めてきます。
　右手を背中に滑り込ませます。
　私の意図を悟ったのか、左の肩を上げるようにして、私の動きを助けてくれます。
　横のストラップから指を滑らせるようにすれば、ホックはすぐに見つかります。フワリとブラをずらした瞬間、オッパイ独特のむせるような甘い匂いが広がりました。
「あぁ」
　白い乳房が目の前に広がっています。
　生まれたままの姿をオトコにさらした瞬間、玲未ちゃんは、ため息のような声を漏らしました。
　今や、両腕を拘束されたまま、玲未ちゃんは生まれたままの姿でした。
　もちろん生まれた瞬間には、こんな大きなオッパイもなく、黒々とした茂みもないはずですが。
　ずらしたブラはそのまま、丸めたワンピースと一緒に腕に絡みます。
「きれいだぁ」
　思わず、そう呟くとヒクンと両足を閉じたそうに私を締め付けました。
　この姿のまま、あらがいもせず、逃げようともしない。
　紛れもなく、処女地をオトコに捧げるという意思表示に他なりません。
「いいの？」
　それでも、この期に及んでも、まだ、確かめずにはいられませんでした。
　真面目な玲未ちゃんが、私のような男に処女を捧げようとする気持ちが分からなかったのです。
　しかし、玲未ちゃんは、目を閉じて横を向いたままでした。唇をきゅんっと一文字の結んだまま、何かを決意したかのような表情でした。
　思い出しました。私は「おしおき」をしに来たのです。ですから、玲未ちゃんの意志を聞いてはならないのです。
　羞恥をこらえて、いやらしい視線に覗き込まれるままでいるのも、玲未ちゃんにとっては、お仕置きのひとつだからです。
「玲未、おまえは、本当はエッチなんだな」
　あぁ、とわずかに唇が広がり、ため息のような声が微かに漏れます。
「エッチな本を、いつもあんな風に見ていたのか」
「ごめんなさい」
　その時、メガネ越しに、チラッっと玲未ちゃんの視線が、机の上に動きました。学生らしい、質素なデスクですが、今どきの学生なのに、なにやら専門書が積んでありました。
　可愛らしいぬいぐるみが、厳めしい専門書の間に置かれているのは、やはり女子の机らしさを出していました。
　その上には、意味ありげに、きちんと、紙袋が載っていました。
「あれは？」
「あぁ、ごめんなさい。うっく、そんなつもりじゃなかったのに」
　かすかに、涙ぐんだような気がしました。