| 第９話 ほんとうの姿 妻が、見知らぬ男に逝かされた晩、うやむやのうちに、夫婦生活を始めてしまいました。 いつになく妻が素直です。 キスしただけでぐんにゃりと力が抜け、目が潤みます。 ほとんど前戯もなく、妻はいつでも受け入れＯＫになっていました。 「後ろ向きになって」 今まで嫌がっていたはずの、ポーズも難なく受け入れます。 上体を腕で支え、膝をついて尻を高く掲げる、その姿勢を、言われるがままに取るのには、逆に、私の方が驚いてしまいました。 もちろん、この姿勢は後ろから挿入するためのものですが、もともと、妻はバックはめったにさせてくれませんでした。 それなのに、わずかに促すだけで、いともあっさりと受け入れ体勢を取ります。 ぐしょぐしょに濡れた妻の秘唇は、ぬらぬらと濡れそぼち、ナイトランプの灯りを反射しています。 「あぁ、あなた、もう、早く…」 珍しく、と言うより、おそらく、結婚以来初めて、自分からおねだりをする声も甘くとろけそうです。 もじもじとうごめく尻は、言葉通り、怒張を期待しているように見えます。 私は、ふと、昼間の光景を思い出しました。 ひょっとして、妻は、見られていたのではなく、見せていたのではないか。 そんな疑問が宿ってしまったのです。 「あなた、あん、恥ずかしいから、見ないで」 そう言いながらも、妻は、尻を高々と掲げた姿勢を崩しません。 ほんのりとともった灯りの中で、白い尻がもじもじと揺れています。 私自身も、硬く屹立したものを、何とかしたくてたまりませんでした。 ひんやりしている妻の尻に手を当てるだけで、あぁ、と微かな声が漏れます。 そのまま、静かに身体を近づけていきます。 その気配が分かるのでしょう。妻の躯がヒクリと震えます。 「あ、あなた、あう、いい！」 ズブリと埋め込んだとたん、妻は、すぐにも達してしまいそうな、そんな声を上げます。 身体が、自然とそれを要求するのでしょう、くなくなと自然に腰が揺れ動きます。 柔らかく、ヌルヌルとする美肉が私に絡みついてきます。 二回、三回と打ち付けるように抜き差しするうちに、その巻き付いてくるような感触が、私を逆に落ち着かせてくれました。 子供を産んだことのある、やや脂の乗った腰を両手で抱え、ゆっくりと前後に動きます。 私の怒張は、どうやら、人様より、やや、傘の部分が張り出しているそうです。 もちろん、そっちの方の趣味はありませんので、硬くなった他人のものなど、実際には見ていません。 ただ、大学時代の数少ない女性経験では、必ず、この傘の部分が引っかかって、とても良いとほめてくれました。 妻とは見合いで結婚しました。初めてのエッチでは、しきりに、申し訳ながりましたが、妻は、処女ではなかったのです。 ただ、男性経験自体は少ないようで、大学時代も付き合ったのは一人だけと告白されたことがあります。 どこまで本当なのか、分かりませんでしたが、妻の性格から、そう男性経験が多くないというのは本当だと思います。 だから、オトコとはこう言うものだと思っているのでしょう。 特別ほめてもくれませんが、それでも、特に私が元気よく、目一杯膨らんでいるときには、この傘の部分に引っかかるのが大変感じるようです。 今も、妻の嫌いなはずのバックから、ゆっくりと奥まで入れて、ヌルヌルと引っかかりながら引き出していくと、思いがけぬほど感じているようです。だから、懸命に抑えようとしても、部屋に響くような声が出てしまうのです。 「ほら、翔太が起きちゃうよ」 「だって、こんな風にすると、ヘンなところが引っかかってぇ…」 「いいのか？」 「あぁ」 いやらしいうめきを漏らしたまま、返事の代わりにコクリと頷きます。 奥まで突き入れると、プルンとした感触が先端に当たります。おそらく子宮口でしょう。 玲未ちゃんの、あの時の感触を思い出しました。やはり、子供を産んだことのある妻の美肉は、弾くような弾力という点ではかないません。しかし、私をしっとりと包み込むような、優しい感触には、また、別のすばらしさがありました。 おそらく、人妻特有の、オトコの肉棒の味をヒダのひとつひとつが覚えきって、絡みついてくるような感覚のおかげでしょう。 先端に当たる子宮口の感触は、弾力性も変わりませんし、クニュクニュと湿った感覚が、先端を包むように感じる、違った快感をもたらしてくれます。 もちろん、快感は私だけが得ているのではありません。 いえ、慣れ親しんだ怒張をくわえ込んでいる妻の方こそ、遙かに強い快感の並の中にいるのです。 美肉とは違った感触を、クチュクチュと、つつくように動かすと、それだけで耐え難いようにうめくのです。いえ、うめくと言うより淫声と言った方が良いでしょう。 「声、我慢できないんだ」 「あぁ、我慢、しようとしてるんだけど、あぅ、出ちゃって、ああ！」 ふと思いついてしまったのです。 「このままじゃ、翔太が起きちゃうからね」 じゅぶっと、湿った音をさせながら引き抜きました。 「あぅ、く、あぁ、だってぇ、あん！だめぇ、抜いちゃ、いや！」 「そのままだよ。すぐ入れてあげるからね」 そう言いながら、ベッドサイドにある、タオルを手に取ります。 「今これで、口をふさぐからね。声、出ないようにしようよ」 そう言うと、そんな、と小さな声で、抗議しつつも、逆らうわけには生きません。 「さ、いま、ふさいで上げるからね」 そう言いながら、ふと、懸命に尻を掲げたままのポーズで我慢している姿を見て、イタズラ心が沸いたのです。 もちろん、昼間の光景が頭にあったからというのもあります。 「さ、そのままだよ、逃げたら、入れてあげないよ」 そう言い聞かせながら、尻をもじもじさせる妻を横目で見て、ベッドの脇にある非常灯を外しました。 心配性の私が、取り付けた、停電したり、コンセントから外すだけで、自動的に点灯するタイプなので、ついつい、使い勝手の良い懐中電灯代わりに使ってしまうヤツです。 「え？あなた、何？」 一瞬、呆然とした妻も、瞬時に私が何をしているのか悟ったようです。 「明るい！だめ！消して、お願い！」 「ほら、だめだよ、そのまま」 「あなた、いやあ、恥ずかしい。消して。消して、お願い」 暗いベッドランプの灯りに慣れた目には、まぶしいほどの明るさでした。妻の抗議に耳を貸さず、そのまま後ろから妻の秘所を照らします。 「うわ、すっごいね。ドロドロじゃないか。ぱっくり口を開けて、欲しそうにしてる。いやらしいね」 処理された妻の陰毛は、恥丘の前側にだけ、申し訳程度に残されています。 分泌した秘液で、びしょびしょと言うより、ドロドロになった秘所は、先ほどまで私が入っていた場所が、ぱっくりと口を開け、うねるように蠢いていました。 「あぁ、ダメなの、ダメだったら、お願い、消して、あなた、消してください。恥ずかしくて…」 妻は、抗議こそしても、なぜだか、ポーズを崩そうとしません。いや、むしろ、言葉とは裏腹に、無毛の秘唇がぼってりと充血し、トクンとすぼまった後で、とろりと蜜を溢してしまいます。 「あぁ、あなた、そんなとこ、見ないで、お願い、恥ずかしいから、あう、ああ！あなたぁ、何で見てるの、あう、見てるぅ。あうぅ、いやあぁ」 妻の悩乱は、驚くほどでした。 「見てるよ。敦子。いやらしいところ」 「ああ、だめぇ、お願い、許して」 そう願いながら、まるでイヤイヤをするかのように、尻がわずかに左右に揺れます。 光の輪の中で、赤く濡れている妻の秘所が、その度にわずかに形を変え、まるで、男のモノを呼び込もうとしているように見えました。 「もう、やめて、あぁ」 妻の湿った拒絶の声が聞こえます。しかし、しっとりとしたその言葉は、私には「もっと」と言っているように思えたのです。 それに、と考えます。 もし嫌なら、姿勢を崩せば良いだけなのです。 イヤと言いながらも、高く掲げた尻をそのままです。 それどころか、妻の秘所は、先ほどよりも、さらに濡れそぼち、こぼれ出た秘蜜が、尻を高く掲げた姿勢ゆえに、クリトリスの方まで垂れてきています。 小さめだったはずの妻のクリトリスは、濡れそぼったまま、その存在を誇るかのごとく、プックリと膨らんでいます。おそらく、広がりきった秘唇に連れられて、クリトリスの包皮が、後退してしまっているせいでしょう。 「クリトリス、こんなに大きくなってる」 「そんな、言わないで。お願い、もう見ないで、あうぅ」 声をはばかりながらも、妻のせっぱ詰まったような声には、わずかに媚態が込められています。 「ほら、こんなに」 「あう、あああ！」 ほんの指先だけです。そっと、そう、そっと触れるか触れないかのように、微妙な強さでクリトリスを一度だけタッチすると、それだけで妻は、軽く達してしまったようなのです。 ガクッと両腕が折れ、妻の顔が枕に沈みます。そのくせ、妻の尻は、ウネウネと動きながら、高く掲げられたままでした。 「すごい。いやらしいオ○ン○だよ」 聞こえているのでしょう。十分ほっそりしていても、出産経験のある人妻ゆえの、脂ののった尻が、ウネウネと動きます。 「触っただけで、逝っちゃったんだ？」 妻は顔を伏せたまま、わずかに頷いたような気がしました。 「もっと、エッチなところを見せて」 ピクッと尻が反応し、秘唇が、微速撮影された開花を逆回しで見るように、ヒクリとすぼまる動作を見せます。 「ほら」 注意深く、そっと、ヌラヌラと濡れそぼつ妻の秘唇にそって、秘蜜のぬるぬるをかき回すように、なぞります。それだけで、妻は、枕に顔を埋めたまま、啼くような声を上げるのです。 「あ、あ、もう、ください、あなた。お願い。ね。もう、欲しくて」 顔をわずかに右に向け、妻が息も絶え絶えにねだるのです。そこだけ明るく照らされた妻の秘所は、満たしてくれる「オトコ」を求めて、軟体動物のように動きます。 私自身も、妻の思わぬ反応にはち切れんばかりに硬くなっていました。 『これは、まさか、マゾっ気？いやらしい姿を見られて欲情してる？』 結婚して、ずいぶん経ちましたが、私の知らない妻の「オンナ」がありました。 まさか、真面目で、どちらかと言えばセックスに淡泊だと思っていた妻は、いやらしい姿を見られて、興奮する性癖を持っていたなんて。 思ってもいなかったことでした。 それならば、昼間の、あの光景がいくらか分かる気がします。もちろん、何であそこまで、男に媚びるように、したい放題にさせていたのか、ということは、依然として謎ですが。 私は、初めて見つけた、妻の「淫猥な部分」がどれほどのものか、確かめてみたいと思いました。 今や妻は、オトコのモノが欲しくて、欲しくて仕方のない状態のはずです。 「欲しいかい、敦子」 「あぁ、早く、お願い」 「どこに欲しいの」 「あん、もうイジワル、知ってるくせに」 「欲しい場所を両手で広げて」 尻がヒクリと動いた後、ウネウネと左右に動きます。背中がグッと反り返るように動いたので尻だけが突き出されたように見えます。 「できない。そんな、お願い、いじめないで、お願いぃ」 悲しげに言いながら、光の輪の中で、妻の秘所がヒクヒクと蠢くのが見えます。しかし、その声は、オンナとしての媚態が、たっぷりと込められていたのを見逃しはしません。 「ほら、早く広げて。僕も早く入りたいんだから。さ、奥さん、早く見せて」 わざと「奥さん」と呼びかけると、案の定、意外に細く見える妻の白い肩がヒクヒクと震えます。 「奥さん、広げて」 「ああん、もう、知らないから、あうぅ、こ、これで」 啼くような、それでいて、男への媚態がたっぷりと含まれた甘い声を出しながら、思った以上の素直さで、右手を足の間に伸ばしてきます。 その思わぬほどの乱れぶりに、私の方が驚いていましたが、そうと走らぬ妻の細い指先が、目の前で秘唇に、恐る恐る触れてきました。 「あぅ、ああ、もう、ちゃんとしたから、お願い」 指先は、何かを恐れるかのように、本の表面をわずかに接触させているだけでした。 「ダメだよ。両手だよ、それにちゃんと広げなきゃ。奥まで見えないよ」 「そんな恥ずかしいこと、できない、許して。あなた、もう、お願いよ」 そう言いながらも、妻の左手も、あっさりと伸びてくるのです。 「奥さん、見てもらうんだよ。恥ずかしいことするところ。ほら、両手で、そう、ちゃんと広げて。そう。そのまま、入り口も」 「あう！」 おずおずと伸ばされた両手で、左右の秘唇をしっかりと広げたまま、妻は私の命令で、美肉の中に、わずかに指を入れたのです。 それだけで、妻は、背中をふるわせ、また、軽く達してしまったようです。 「奥さん、ほら、見てくださいって言ってごらん。恥ずかしいところを見てって」 同時に、私は、美肉を自分の指でかき回し続けることを命じました。 妻の指は私の命令に素直に従ったばかりか、クリトリスまで、さわり始めたのです。 「あれ、オナニーしてるんだ。奥さん。人に見られているのに。すっごくいやらしいんだね」 「言わないで、だって、苦しくて。あぁ、もう、あなた、お願い入ってきて。苦しいの」 「奥さんが、こんなにいやらしいなんて。ライトに照らされて、オナニーを見られてるんだよ」 わざと、敦子と呼ばず、奥さんと呼びかけていました。 奥さんが、と言う言葉は、何かを連想させるのでしょうか、そう呼ぶ度に秘唇がヒクつき、指の動きが速くなります。 今や、妻はライトに照らされたまま、本気でオナニーをしていました。結婚以来、そんなことをさせられると、思ったこともないいやらしい姿を目の前で見せているのです。 私のものを乞いながらも、満たされぬ身体を、己の指がかき回します。 ほんの数分、いや、一分もたたぬうちでしょう。妻の声がせっぱ詰まったものに変わったのです。 「ほら、オトコに目の前で見られながらオナニーして。このまま、逝くところまで見られちゃうんだよ。よく見えてるからね、こんな近くでなんだから。よく見えてるよ」 その瞬間、妻の身体が、ヒクヒクヒクと、ケイレンしたように蠢いて、ドクリと愛液の滴りを溢してしまいます。 『見られる…』 私は、妻に決定的と言えるであろう言葉が何であるか、とうとう知ってしまったのです。そうです。おそらく… 「奥さん、ほら、みんなで、みんなで見てるよ。いやらしい奥さんのオナニーを」 「あ、言わないで、見ないで。だめぇ」 そうです。みんなで、と言ったとたん妻の指がズブリと入り口に埋め込まれ、全身が身もだえするように震えたのです。 「あ！、う、うそ、うそ！あ！だめぇ〜 い、逝っちゃう。お願い見ないで、見ないでください、こんな恥ずかしいとこ、見ないで、あ、あ、だめぇ、だ、あ、あ、あぁ！」 妻が両手で、秘所をかきむしるようにしたまま、急にピタリと動きを止めました。息すらもしていないように見えます。 そして、つかの間の静寂の後、ガクッと妻の足が弛緩し、崩れ落ちるようにベッドに伸びたのです。 私は、妻の下に手をさしのべ、クルリと仰向けにします。 意識があるのか、ないのか。妻は無反応です。その無反応の両足をグッと抱え、もはや限界に達しつつある私自身を一気に埋め込みました。 妻の美肉は、私が知っているいかなる時よりも奥までひどく濡れ、そのくせ、しっかりと私のモノをくわえ込みます。 軟らかい肉ヒダにしっかりと締め付けられます。 「あぁ！」 意識がないはずの妻のあえぎ声がわずかに聞こえます。 目を閉じたままの妻の美肉は、そこだけが目覚めているかのように私に絡みつき、搾り取る動作でうごめくのです。 私が、ストロークする度に、妻のうめくような声が聞こえます。しかし、妻の目は閉じられたままです。おそらく、無意識のまま、男をくわえ込んでいるのでしょう。 しかし、意志がないままでも、妻の美肉の締め付けは最高で、長くは耐えられませんでした。 「敦子、出すよ、あつこ、あつこぉ」 高く、長い射精感が、私の脳髄まで届きながら、私は妻の奥に、ドクドクと注ぎ込んでいました。 私の、というより、男のエキスを飲み込んだオンナの満足感でしょうか。確かに無意識のはずの妻の身体が、ヒクンヒクンと私に反応するかのごとく動きます。 そして、妻の軟らかい肉の上に、私はゆっくりと倒れ込むように墜ちました。 その時です。 意識がないと思っていた妻が、いきなり私に抱きついて、確かに言ったのです。 「愛してる、あなた。絶対よ。何があっても」 「え？」 私が聞き返したとき、妻は、安らかな表情のまま、意識を失っていました。 気がついたら、既に明るくなっています。 起こすまでもなく、私の気配に妻も目ざめます。ひょっとすると、とっくに起きていたのかもしれません。 目ざめる一歩前の夢の中で、妻の視線を受けていた気がしました。 妻が耳元に口を寄せて囁きます。 「エッチなんだから」 「だって、君が感じるから」 抱き寄せた妻は、まだ、何も着けていませんでした。 丸っこいしりに、手を滑らせると、甘い声で、あんっと漏らしてしまう妻が、愛おしくなりました。 「い、や！ もう、あんなことさせないで」 妻は心底恥ずかしそうに、それでいて甘えた声で、私の背中を叩きます。 こう言うときは、ごまかすのが一番です。 「愛してるよ。また、昨日みたいに愛し合おうね」 「もう！反省しないんだから」 妻は、怒ったようにベッドから飛び出していきます。きっと、朝日の中で、昨夜の狂態を、これ以上思い出させられるのが恥ずかしかったのでしょう。 裸の尻を目で追うと、妻がクルリと振り返りざま言います。 「私もよ。あなた」 そう言いながら、足下にあった、昨日の名残のタオルを掴むと、私に投げつけます。 「とっても、エッチだけど、大好き」 正確に顔のあたりに飛んできたタオルを片手で受け止めたときには、寝室から出て行く後ろ姿だけが見えました。 翔太を起こさないと、と言いながら。 淫乱とも言える昨夜の妻。 子どもを起こす貞淑な今朝の妻。 本当に、女とはスゴいものだと思いました。 迷いながらも、あの日以来、昼時に散歩する習慣をやめました。妻は、いつも通り、どうぞと言ってくれますが、とても、そんな気にはなれません。 もう一度、あの光景を見せられたら、自分がどうなってしまうのか自信がなかったのです。かといって、散歩に出かけてしまえば、その間に、妻がどうなってしまうのかと思うと、いてもたってもいられなくなります。 妻を残していくのは、どっちにしろできないことでした。 しかし、まさか、そんなことを妻に言うわけにもいきません。 ただ、その翌日もスカートになるのかと思いきや、二度とスカート姿になることはありませんでした。ひょっとすると、あの日の夫婦の交わりで、隠していた妻の欲望が溶けだしてきたせいなのかとも思いました。 それだけに、妻の口から、また手伝いに出かけて良いかという言葉が飛び出した時、くるべき時が来たと背中に戦慄が走ります。 とうとう、その日が来たのです。妻は再び、たっちゃんのところに出かける決心をしたのです。 いつ、言い出すのかと思っていたことが、こうやって現実に目の前になった時、私の気持ちは、平静ではいられないと言う言葉では表せないほど、千々に乱れます。 そんな、私の思いを知ってか知らずか、今日は、朝っぱらから都心のエステに行くそうです。 「女が目覚めてきたの」 というのが妻の言い分ですが、輝いている妻を見るのはよしとしても、その輝きが私のためだけのものなのかと思うと、複雑な思いがありました。 だから、幼稚園のお迎えのバスに乗る翔太を連れて、そのまま出かけていく妻の背中を見送る私は、どんよりとした靄に包まれていたのです。 かといって、やめろと今さら言うのもヘンです。何よりも、エステに行った妻が、「その日」に、どうなってしまうのか。 高原の霧のように、頭の中をふわふわと、それだけが包み込んだまま、晴れることはありません。霧を意識する度に、恥ずかしくも、怒張が大きくいきり立ち、腹の下の方がふわふわと落ち着かなくなるのです。 いきり立ってしまった怒張をもてあまし、昨夜も夫婦の交わりを求めてみましたが、毎日じゃ身が持たないの、明日は早いからカンベンしてと、オアズケを食らっています。 電気もつけていない開店前の店の中。 あの場所に立っています。 なんと言っても、私以外の手でいかされた妻の姿は、あまりにも衝撃的でした。店に立つ度、あの、妻が逝かされた書棚の前に立つ度に、ありありと淫猥な姿を思い出してしまうのです。それは、悪夢のようであっても、それでいて、なぜか怒りではなく、切ないような甘酸っぱい感触が湧き出す、奇妙な体験でした。 怒張がその度に、これ以上ないほど張りつめて、その場で扱いてしまいたくなる衝動が突き上げてきます。 エステに出かけた、妻。 エステで磨きを掛けた、愛しい妻が、スタジオで、どんな「お手伝い」をするのか。 想像と言うか、妄想というか。妻の淫乱な姿が次々と浮かんでしまいます。 私の想像が、当たっているなら、妻は「お手伝い」ではなく「主役」でした。 それも、着飾った支配人ではなく、全てを取り去った被写体として。 大勢のカメラマンに取り囲まれる妻の裸体が浮かんでしまいます。 それも、芸術のためなどと言うものではなく、妻を見つめる目は、男の欲望に目を血走らせているはずです。 カメラに身体の奥底まで写されながら、妻の顔は欲情しているはずでした。カメラのレンズが、男達の欲望に血走った眼に、妻の隠されていた欲望を掘り当てられたからです。 なぜだか、たっちゃんに、真実を尋ねようとは思いませんでした。 自分の中にあるのは、怒りでしょうか。あるいは恥ずかしさ？ 残された私は、暗い店の中に一人ポツンと立ちつくしていました。 妻の「お手伝い」は、次の定休日です。暗いままの店内にあるカレンダー。定休日に丸が付いています。 怖いものでも見るように、その記を真っ直ぐに見つめられない私が、確かにそこにいたのです。 |
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| 2008.2.16掲載 |
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