４．麻紀

　狭いラブホテルの一室。
　ゆっくりと服を脱ぐ女の姿が、淡い間接照明に映し出されている。
　少し遅れて、待ち合わせ場所にやって来た麻紀は、なぜかいつもより積極的で、興奮しているように見えた。
（「うわぁ・・なんて色っぽいんだ。見てるだけで逝っちゃいそうだ・・」）
　麻紀の妖艶な下着姿に見蕩れながら、慎二はそう思った。
　ピュアホワイトの上品なショーツとブラを身に付けた、真っ白で肉づきのいい彼女の身体が、薄暗い室内にボーッと浮かび上がっている。
　そのまま、四つん這いの姿勢でベッドに上がった麻紀は、証明の明るさを調節しながら、斜め後ろを振り返り、慎二のことを誘う。
（「勿体ない・・こんな姿、きっと、誰にも見せたことがないんだろうな。」）
　慎二は心の中でそう呟きながら、ズボンを脱いだ。
　もう既に、熱り勃った彼のペニスの先端は、パンツの上から顔を出している。
　それを見た麻紀の目つきが変わり、口元にうっすらと微笑みが浮かぶ。
（「・・あぁ、勃ってる・・もう、勃ててる・・」）
　麻紀はもう、嬉しさのあまり、叫び出しそうになっていた。
　彼女の身体に見蕩れていて、そんな表情の変化には気がつかない慎二は、そのままベッドに歩み寄る。
　我慢しきれない麻紀は、身体を起こし、ベッド脇に立つ慎二の胸に抱きついた。
「麻紀さん・・」
　慎二はこの時初めて、激しい興奮で顔を真っ赤に上気させている、麻紀の表情の変化に気がついた。
「恥ずかしい・・お願い、そんな眼で見ないで。」
　驚いたような慎二の表情に気がついた麻紀は、恥ずかしそうに目を伏せる。
「今日はどうしたんですか？、いつもより激しいみたいだけど・・」
「えっ！？、そうかしら・・きっと慎二君が素敵すぎるからよ。」
　麻紀は慎二に口づけをせがむように、ゆっくりと顎を上に向けた。
　慎二が、吸い寄せられるように、艶やかな光沢を放つ麻紀の唇に自分の唇を重ねると、すぐに別の生き物のような彼女の舌が、彼の舌に絡み付いてくる。
　同時に、彼のパンツが麻紀の手で足首まで引き下げられて、勢いよく飛び出したペニスが、彼女の胸に灼熱の力強さを伝え始めた。
（「あぁ、嬉しい。こんなに興奮してくれて。」）
　瞳を閉じた麻紀は、天を向いて反り返っている慎二のペニスを、うっとりとその胸に抱き締めた。
　そのまま、柔らかい唇と頬を慎二の先端に擦りつけながら、静かにブラを外した麻紀は、彼の尻に両手を回して、逞しい下半身に抱きつく。
　そして、豊かな胸で長いペニスを挟み込みながら、ゆっくりと上半身を波打たせ始めた。
　それは、慎二が初めて経験する、優しく慈しむ様な愛撫だった。
「あ・・麻紀さん、それ・・気持ちいい・・」
　柔らかい両乳房の感触に悶える慎二の様子を、上目づかいに眺め見た麻紀は、
「爆発しそうね、カチカチになってる。痛いでしょう？・・今、抜いてあげる。」
　と、上下する彼の先端にそっと舌を伸ばす。
「はっうぅ・・あっ・・あぁ・・」
　黒光りするほどに興奮した彼の先端に、麻紀の濡れた舌先が触れると、慎二は思わず腰を前に突き出していた。
　血管の筋が浮き出た剥き出しの性感帯に、男の弱点を知り尽くした長い舌が絡み付く。
「あうぅ・・ハァ、ハッ、ハッ・・」
　顔を傾け、下から慎二の股間を見上げる様な姿勢をとった麻紀は、脹れ上がった彼の睾丸を細い首の上にのせながら、張り出したエラの裏側を、細い舌先で丁寧に拭った。
　それから、亀頭全体を磨きたてるように大きく舌を回し始めた麻紀は、時々、慎二の反応を確認するかのように、彼の顔に視線を向ける。
　天使と悪魔が同居しているような、麻紀の清楚な顔と、卑猥な舌と唇。
　その姿はまるで、彼専用の女神のようだった。

　やがて限界に達した慎二は、
「麻紀さん・・出していいですか？、俺、もう・・」と、赤紫に変色した先端をプルプルと震わせながら、麻紀に許しを求めた。
「いいわよ。好きなだけ出して・・沢山かけて頂戴。」
　若い男の子の生命の息吹を、また味わうことができると知った麻紀は、嬉しそうに射精の許可を彼に与える。
　そのまま、慎二のペニスを両手で掴んで、ヌルヌルになった亀頭部を包み込むようにして、その手を素早く上下させ始めた。
「あぁっ・・はうっ！、アッ・・」
　麻紀は、慎二に止どめを刺すかのように、力強く両手を動かす。
　忽ち慎二はつま先立ちの体勢になり、その膝がガクッと折れ曲がった。
　ピュッ、ビューーッ、ビュ、ビュ〜〜ッ・・・
　物凄い量の精液が、彼の先端から噴出す。
　それは、慎二自身もかつて経験したことの無い、激しい射精だった。
　迸り出た夥しい量の精液は、恍惚としてそれを受け止める麻紀の首に凄い勢いで叩きつけられ、そのまま白いせせらぎとなって、彼女の胸元に流れ落ちてゆく。
　すぐにそのせせらぎは、麻紀の胸の谷間や、腋の下に流れ込み、やがて白い滴になってボタボタと床に滴り落ちた。
「あうっ！・・あぅ・・はうっ・・あっうぅ〜ッ」「は・・凄い量・・あ、素敵・・」
　久しぶりに、たっぷりと熱い精液をその素肌にかけられた麻紀は、うっとりと慎二の下腹部に額を預けた。
　一方、出し尽くすような射精をした慎二の方は、腰の奥を搾り立てられたような感覚に襲われ、思わず麻紀の肩に手を突いて、彼女の身体の上に屈み込んでしまっていた。
「ハァ、ハァ・・」 目をつむったまま、大きく肩で息をする慎二。
　遠くを見るような目つきになった麻紀が、ヌルヌルになった彼のペニスの先端に、ゆっくりと自分の顎や頬を擦りつけている。
「あ・・はぁ・・」
　柔らかい女の顔の感触に悶絶する慎二の表情を、上目づかいに覗き見た麻紀は、嬉しそうに、自分の唇に付いた彼の精液を舌で舐め取りながら、
「ねえ・・続けて出来るでしょう？、若いんだから。」
　と、妖艶な表情で彼の瞳を覗き込む。
　そして、まだ硬いままのペニスに舌を伸ばし、裏側を下から上に向かって大きく舐め上げた。
「あっ、だめ・・無理です。麻紀さん。」
　麻紀はそんな慎二の声を無視して、下を向いたペニスの先端を強引に咥えてしまう。
　それから、顔を傾けて、柔らかい唇とよく動く舌で、突くように彼の急所を刺激し始める・・

「あっうぅ〜・・ハッ、ハッ、あぁ・・」
　鮮やかなピンク色をした麻紀の舌が、慎二の陰嚢と尻の穴の間を這い回り始めると、思わず彼は自分の股間を見下ろした。
　麻紀は慎二の嚢を口一杯に咥え込みながら、一心不乱にその裏側に舌を這わせている。
（「麻紀さん、まるで獣みたいだ。そう・・美しい淫獣。」）
　慎二は、セックスをしている時の麻紀しか知らない。
　だが、それで充分だった。それ以外の麻紀など想像もつかない。
　男のからだを愛撫している時の麻紀は、例えようもないくらいに美しく、そして卑猥だった。

「・・どう？、やっぱり一恵さんの方が上手？」
　亀頭の周りで回していた舌を、今度はペニスの裏側に宛い、凄い速度で振動させながら、麻紀が彼に訊ねる。
「あっ、ハッ・・んッ！・・」
　慎二は、良過ぎて返事をすることもできない。
　麻紀は更に、窄めた唇で慎二の亀頭全体を強く扱きたてながら、口の中で激しく舌を波打たせた。
「うっ、ん・・ん゛っ〜〜〜」堪らず、悶絶する慎二。
　麻紀は、慎二が自分から舌にペニスを擦りつけ始めたのを見て、静かにベッドの上に横たわり、仰向けになった。
　それから、口を大きく開き、そこから長い舌を出しながら、
「もう味を忘れちゃったわ・・お願い、あなたのザーメンをたっぷり飲ませて。」と、彼の腰に手を伸ばす。
　慎二は、麻紀の豹変ぶりに驚きながらも、ハァ、ハァと息を荒げ、爆発寸前のペニスの先端を、急いで彼女の口の中に押し込んだ・・


「麻紀さん・・お願い、もう一度だけ入れさせて。」慎二の懇願するような声。
　一恵は、麻紀のバッグの中に忍ばせてあった、ボイスレコーダーの音を聞きながら、驚いたように目を剥いた。
「ダメ・・駄目よ。もう許して・・あっ・・はっんっ！・・んっ、ハッ・・んっ・・」
　続いて、嫌がるフリをしながらも、歓びに震える麻紀の声が、ボイスレコーダーから聞こえてくる。
「凄いわ・・あなた、まるでカンフル剤ね。」呆れたような口調で、一恵が麻紀にそう告げる。
　麻紀の方は恥ずかしそうに俯きながら、上目使いにチラチラと一恵の表情を窺っていた。
「ハッ、ハッ・・あぁ、麻紀さん・・」
「アッ、アッ・・あぁっ、くうぅ・・あ゛ぁ〜〜っ！」
　ボイスレコーダーから、一際高い麻紀の歓声が鳴り響く。
「まるで悲鳴みたいね・・それで、慎二は結局、何回逝ったの？」
　一恵は照れる麻紀の顔を覗き込みながら、楽しそうにそう訊ねた。
「５回・・」
「２時間で？」
「ええ・・」
　あの日、慎二は、麻紀の口に激しく２回射精した後、彼女の股間を口で愛撫している間に、３度目の勃起をした。
　そして・・汗だくになりながら彼女の腹に射精した後、シャワーを浴びて、彼女が下着をつける姿を見て、また興奮し、もう一度勃起。
　さらに・・服を着て抱き合いながら別れのキスをしている間に、もう一度したくなって、５度目の勃起。
　麻紀は、あの時の様子を思い出しながら、うっとりと目を閉じた。
「へぇ〜、信じられない。じゃあ・・ずっと勃ちっぱなしじゃないの。」
「ええ・・時間がきてホテルを出る時も、まだ上を向いてたから。」
「嘘！・・もう〜・・羨ましいわ。」
　一恵は憎らしそうに麻紀の二の腕を小突いた。それから、思いついたように、
「ねえ、この声、あの子たちにも聞かせましょうよ。」と、麻紀に新たな提案をもちかける。
「えっ！？、嫌よ、そんなの・・恥ずかしいわ。」
「いいじゃないの。ねっ？」
「だって・・」
「あなたの顔を直に見ながらこの声を聞いたら、あの子たちきっと、すごく興奮するわよ。」
「・・・」
「想像してみて・・カチカチのペニスが同時に何本もよ。」
　みるみるうちに麻紀の瞳が潤み、その頬が赤く上気してゆくのがわかる。
　その後、妖艶な表情を浮かべた麻紀が、ゆっくりと頷くのを見た一恵は、嬉しそうに、
「よかった・・とても、たのしみ。」と、呟いた。