２

　７月のある朝、美夏はいつものように夫俊哉を送り出す。
「俊哉、襟、襟。曲がってる。」
「ん？おお。サンキュ・・・・じゃあ、行ってくるよ。帰りはいつもくらい。なるべく早くするけど、遅くなるならメールするから。」
「はーい。いってらっしゃい。しっかり働いてこい！」
　大手損保会社に勤める俊哉はいつも９時か１０時くらいに帰ってくる。夕食はなるべく二人でとるようにしているが時間を合わせることが難しい。
　平屋の家は社宅だ。とはいえ狭いながらも庭付きだ。洗濯物を干すだけで精一杯だが。
「美夏、なんかポスト入ってるぞ。」
「え？あー、私が取るから。遅刻しちゃうよ・・・」
「おお？あっ、やばい。」
　俊哉は駅へと急ぐ。
「全く。」
　フフ、と笑いながら見送る美夏。

（ん・・・・、７月の初めだっていうのに今日も暑くなりそうね・・・・）
　先週本州は梅雨明けしたという。昨日は３０度を超えた。それでもまだ湿気がないのが救いだ。
（・・・・おし、洗濯と掃除を済ませて寿子とお茶しに行こう。）
　寿子と久しぶりに休日を合わせることができたのだ。今日は午後から二人でブラブラする約束をしている。

（・・・それにしても・・・）
　寿子と会うのはあの夜以来だった。一晩で二人の男に抱かれた夜。その日初めて会った年下の男にいいように翻弄された夜。
　あれから男からは連絡がない。
　それも寿子のおかげなのだが。
　最初こそ俊哉に申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、今では割り切っていられる。
（ま、後腐れもないわけだし・・・・）
　もちろん俊哉とのSEXは今でもある。相性もいいと思っている。
　それでも気持ちよかった。掛け値なしに気持ちよかった。SEXの最中あんなに大きな声を出したことはここ数年なかった気がする。
「・・・よし、洗濯、洗濯。」
　もう過去のことだ。笑って振り返れる思い出になるだろう。
「あっ・・・・」
　ポスト。郵便物が届いているというのだ。しかし１時間ほど前に美夏が新聞を取りにいったときは何もなかったのだが？
（速達かしら？　郵便局って９時前でもやってたっけ？）
　A4サイズの封筒だった。「奥谷美夏様　親展」とある。送り主は書いてない。
（私宛だわ・・・）
　家の中に入り鋏の片刃だけを使い封を開ける。
　封筒と同じA4サイズの紙が２枚出てくる。
「？・・・・っ！！」
　紙を見た途端美夏の全身の毛穴がカッと開いた。
　そこにはあろうことか美夏が男の背中に爪を立てアクメを感じている顔が写っている。
　豆電球の薄明かりであるが、確実に自分であるとわかる。
　もう一枚はその美夏の顔のアップだ。おそらくデジカメで撮り印刷したものであろう。
「くっ・・・・・・・・」
　美夏の後頭部の毛が逆立つ。
（許せない・・・・・）
　美夏と写っている男は大介だ。とすればこの写真は琢磨が撮ったに違いない。
（絶対許せない・・・・・）
　二枚目の裏にはメモがあった。
「寿子の写真もある。　　今日２時にホテル・パレスチナに来い。クラブ・ゲットーの裏にある。３０４号室。」
　呼び出されて何をするというのか。そんなことは明々白々である。
　しかし美夏はみすみす琢磨に身体を与えてやる気は全くなかった。
（見くびらないでよ・・・・みてなさい・・・・）
　もともと美夏は気の弱い性質ではない。むしろ男勝りな部分もある。
　この前こそ始めての体験の連続で戸惑ってばかりいたが、いざ腹をくくれば男に気後れしない自信はあった。
（向こうの素性はばれているんだし、これは立派な恐喝よね・・・・この前もニュースで大学生の集団レイプ事件があったって言ってたし・・・一生を棒に振るのはあんたよって逆に脅かしてやろう。いざとなれば興信所もあるし・・・・）

（そうと決まれば寿子に連絡しないと・・・・）
　寿子にもこの封筒が届いているに決まっている。
「・・・・ん？」
（あれ・・・・？そういえば何で私の家を・・・・・）
　封筒には切手もなければ住所もない。そもそも琢磨達に住所どころか勤め先も電話番号も教えていない。
（後をつけられた・・・？・・・それしかないわよね・・・ますます許せない。完全にストーカーじゃない・・・）
　美夏の形のよい耳が怒りで桜色になる。

（とりあえず電話よ・・・）
　美夏は寿子の携帯にかける。遠くで自動洗濯機が脱水モードになる音が聞こえる。
　しかしでない。何度かけても留守電になってしまう。家の電話もだ。
「バカ・・寿子・・・」
　商社で働いてる寿子は休日ともなると昼近くまで寝ていることもある。今はまだ９時半。
（仕方ない・・かけなおすか・・・）
　美夏は家事をすることにした。そわそわしてしかたないが、あんな脅しで私の日常生活が崩されてなるものかという思いが強い。

　洗濯物を干し、掃除を終えると１１時になっていた。暑い。今日も３０度を越えそうだ。
　美夏は再び電話をかける。
　でない。さすがに寿子も起きているだろう。まさか美夏よりも先に呼び出されたのか？
　しかしあの写真を見せられれば寿子も美夏に連絡をするだろう。
（直接寿子の家に行ってみよう・・・・）

　手早く朝の残り物を無理やり口に押し込み、身支度をする。１２時過ぎに家を出た。

　結局寿子はいなかった。何度チャイムを押しても反応がない。
（おかしい・・・・新聞受けに新聞がないということは、起きてもう家を出たということよね・・・）
　既に１時だ。迷っている暇はない。
（いいわ・・・一人ででも・・・）
　美夏は決断した。あれ以来一度も行っていないクラブ・ゲットーへ向かう。

　平日お昼過ぎの街は、それでも賑やかだった。美夏はベージュのニットに細身のジーンズを穿いている。
　大学生らしいカップルがパレスチナ・ホテルに入っていく。ラブホテルの前で躊躇することもできず、美夏は意を決して入る。
　顔の見えないフロントで３０４号室を予約している、と告げると
「どうぞ・・・鍵を・・・・」
　と言われる。
（まだ来ていないんだ・・・・）
　少しだけ気分が楽になる。
　エレベーターに乗り３階の３０４号室に着く。
　ガチャリ。予想以上に鍵の音が大きい。
　部屋の中は薄暗い。クーラーの音だけがする。
　美夏が入り口を閉め、部屋の照明スイッチをまさぐろうと踏み込んだ瞬間、
「ひっ？ぐっ・・・・」
　美夏の全身をエクスタシーとは全く異なる不愉快極まりない衝撃が襲う。膝が崩れ落ちる。
　身動きの取れない美夏は意識が遠くなる。
　荒々しくつかまれ両腕両足を縛り上げられる。作業をしているのは覆面の男だ。うつ伏せに寝かされる。
（・・・琢磨じゃない・・・・大介でもない・・・・・）
　スタンガンによって朦朧となった意識で美夏は確認する。そのとき
「っつ・・？」
　腰のあたりに鋭い痛みが走る。
　振り返ると男が注射器を持っていた。
「安心しろ。少し寝てもらうだけだ。」
「・・・・誰？あなた・・・・・」
　美夏は形のよい眉を顰めキッと睨む。自らの体重によってつぶれた乳肉がわきの下から覗いている。
　男は何も答えない。黒いパンツに青いTシャツを着ている。アディダスのスニーカーを履いている。身長は１８０くらいか。
　しばらくして美夏は底なし沼に落ち込むような感覚とともに気を失った。

「・・・・・・・・・・・ん・・・・んん・・・ん？？」
　美夏は薄っすらと目をあけた。頭が少し重い。軽い二日酔いのような感じだ。
（・・私？・・・・・・っあ・・！）
　美夏は事態を察した。
（・・・縛られてる・・・・）
　美夏は薄いピンクのブラジャーとパンティーだけにされ、両腕を後頭部の辺りで皮製の手錠のようなもので嵌められていた。取れない。両足も足首で縛られてる。
　そして背もたれ肘掛つきの椅子に拘束されている。腰骨の辺りにロープが弛みをもって巻かれている。
（お尻を動かすくらいはできるけど・・・・駄目・・・結び目は固いわ・・・）
　そのとき美夏の座ってる真正面の大型テレビがいきなりついた。

『・・・・・んんん・・・あっ・・・あぁん・・・・ん・・・冷たぁい・・・』
（・・・・なに？・・・これ・・・・）
　女性のものと思われる悩ましげな声とは裏腹に、画面には意味の良くわからない泡が映っている。
　しばらくしてＴ字かみそりを持った男のものらしき手も映る。画面が揺れるのはもう片方の手でカメラを操っているせいだろう。
（シェービングクリーム？・・・・でも・・・・っあ！！・・これって女の人の・・・・）
　かみそりにより泡が落とされ現れたのは女性器だった。
（これ・・・・女の人のアソコの毛を剃っているんだわ・・・・・・）
　と思っている間に画面の中では剃毛を完了していた。もともと毛は薄かったらしい。
　かみそりを置いた男の手がそのまま秘肉を愛撫する。ヌチッ、ヌチュッという音が聞こえてくる。
『気持ちいいか？・・・こんな濡らしてんだもんな・・・・ほら・・どうだ？』
　男が尋ねる。さっきの男の声だ。
（あっ・・・・そういえば・・・）
　男。覆面の男。美夏はそこだけは自由に動く首をきょろきょろと見回す。
　いない。壁が透けているトイレやバスルームにも見当たらない。
　画面の中では男の指が肉芽を抓み、転がしている。
『あっ、あっ、あっ、あっ、やん、んんん・・・、スースーするの・・・それが気持ちいい・・・・』
「えっ？」
　美夏は思わず声をだしてしまった。
（まさか・・・この声・・・・）
『どこが？・・・・どこが気持ちいいんだ？』
　男は指を二本にして膣穴にピストンする。
（まさか・・・・・・）
『あああんっ・・・ひっ、ひっ、ぅひっ、あん、あ・・・オマンコッ・・・寿子のオマンコッ！！・・・・ああんっ！』
　画面が引き女の顔が映る。パッチリとした大きな瞳、通った鼻筋、間違いなく寿子だ。
　寿子は快楽に顔を歪めている。両手は今の美夏と同じように頭の後ろで組まされ縛られている。形のよい腋を惜しげもなく曝け出している。全裸だ。ネックレスと大きなピアスが寿子の動きにあわせて光を反射する。

（・・・ああ・・・寿子！！？・・・何てことを・・・何で？・・・どういうことなの・・・）
　美夏は全く事態を把握できなかった。何故自分を気絶させ、縛り上げた男に寿子が奴隷のように扱われているのか。そして何故その映像を自分に見せるのか。全く判らない。
　ただ。ただ全身が先ほどから熱い。目の前の親友の痴態から目を離せない。ブラジャーの下で乳首が勃起していることを自覚する。
　しかし美夏は自分が感じていることを認めたくなかった。そもそもこの場所には写真を送りつけた男を逆に脅してやるつもりで乗り込んできたのだ。

『あんっ・・・も・・もう・・もう・・だ・・我慢できない・・入れて・・入れてください・・・』
　そんな美夏の葛藤とは関係なく画面の中の狂態は進行する。
『ふふん・・もうか？・・じゃあ・・ほら・・・わかってんだろ・・・ちゃんと躾けてやったよな？これが欲しいなら・・・・』
　カメラを持った男は片手で仰向けに寝ていた寿子を起こしてやる。
　程よく日に焼けた寿子の薄茶色の肌が艶かしく動く。
　男は立ったまま寿子にフェラチオをさせるようだ。
『・・あん・・んむっ・・ぐっ・・・んん・・・んん・・・』
　カメラは寿子の顔の動きを真上から撮る。
（・・ああ・・寿子・・・あんなに奥まで咥えこんで・・入るものなの？・・あんな奥まで・・・）
　男のペニスのサイズは平均以上はあるように思える。寿子はそれを喉の奥まで入れている。
『・・んんん・・・そうだ・・寿子、こっちだ。目線をカメラに。』
　寿子は男の言いなりに、咥えたままカメラを見る。寿子の瞳は欲情に潤み、壮絶な色気を醸し出している。
『ぅぐ・・うん・・ぐ・・あむ・・ッパッ』
　寿子はペニスを口から離すと舌先で亀頭の周りをチロチロと舐めはじめた。まだ目線を逸らさない。さらに棒を舐め下げ、睾丸も舐め、しゃぶり、吸う。
『ほーらっ、誰が玉もやれって言った？』
　途端に男がペニスを寿子から引き離す。
『・・あん・・ごめんなさい・・・・・・・・・・・・玉も・・金玉にもご奉仕させてください・・・か・・片玉ずつ・・ご奉仕させてください・・・』
　寿子は芝居がかったように言う。
（寿子・・・・そんなことまで言うなんて・・・・）
　美夏は耳と目を疑った。会社内でも寿子の気の強さは有名だった。そしてその気の強さが寿子の美貌には似つかわしかった。
　しかし、画面の中の寿子は既に一匹の牝奴隷となっていた。自ら男の前にひれ伏し、睾丸を片方ずつ口に含み、鼻を鳴らして男に媚びている。
　睾丸を舐めさせていた男はしばらくして無言で寿子に背を向ける。素早く男の意図を察知し尻の割れ目に顔を埋める寿子。
『うむ・・む・・む・・んん・・・・・・・・アナル・・・ケ・・ケツの穴にもご奉仕させていただきます・・・・うむっ・・』
『・・・ほら・・・もっと舌を尖らせないと、くすぐったいだけだぞ・・ん・・そうだ・・』
　カメラは壁の鏡に映った肛門を貪る寿子を写す。

　ひとしきりアナルを舐めさせると男は寿子と向かい合う。正座の姿勢でカメラを見上げる寿子の前に仁王立ちになる。
　男は寿子の滑らかな頬に自分の逸物をペタペタとたたきつける。
『ほら、そんなに欲しい？』
　男の物言いは柔らかだったが、確実に主従関係は成立していた。
『あん・・お願い・・どうか・・』
　寿子は涙目で懇願する。完全に隷属者の表情になっている。
『じゃあ・・・ほら・・自分で入れろ。』
　男は仰向けに寝転がる。
　寿子は後頭部の後ろで両手を縛られたまま、バランスをとりながら男のペニスの真上に立つ。男の目線で撮られる画面には寿子の秘部がアップで映っている。
　すらりと伸びた形のよい足が緊張をはらみつつ徐々に曲がり、男の腰の上に座り込む。
　子供の頃から器械体操をしていただけあって、自由の利かない身体でも巧みにバランスを取る。
『んんんんんんんっ・・・・・・はぁー・・・ああああ・・・』
　完全に咥え込んだ。自然と腰が動き始める。
『ぅあっ、あっ、んっ、んっ、あんっ、あっ、あっ・・・』
　腕が縛られているため上手く上半身でバランスが取れない。したがって重心が腰に集まり自然と深く結合する。
『ハハハ・・・マ○ンコに塗りこんだシェービングクリームのメンソールで確かにスースーするね・・・』
　男は下からのアングルから撮り続ける。寿子の引き締まった腹が妖しく波打っている。
　Ｃカップの美乳はあたかもそこだけ男に逆らうように乳首をツンと生意気に上に向けている。額や首筋にうっすらと汗が浮かび画面を通して女臭が伝わってきそうだ。
　寿子は両足を大きく開き恥骨をなすりつけるように腰を使う。剃毛したため結合部もはっきり見える。パンパンに膨らんだクリトリスは男の陰毛で擽られている。ムチムチの太ももには筋肉が浮かび上がっていた。

（・・・寿子ったら・・両手が使えないのにあんなに激しく腰を使って・・・・）
　すでに美夏の秘部もじっとりと濡れていた。もじもじと太ももを動かす。食い入るように親友の痴態を見入ってしまう。

　男が寿子の両腕を自由にしてやる。寿子は自分で自分の美乳を握りしめる。さらに激しく腰を使う。
『あうっ、うんっ、んっ、ぐっ、んっ、んっ、ひっ、いっ、あっ・・・』
　寿子は柔らかい身体を弓なりにし、ひくひくと痙攣をする。目を固く瞑りエクスタシーを貪欲に貪る。
『・・・寿子、後ろ向いて・・』
　男の口調は先ほどから優しいが有無を言わせないニュアンスをもっている。
『ひっ、ひっ・・・あっ・・ひゃ・・はい・・』
　寿子は男の肉棒を抜くことなくそれを中心に回転する。長い足を器用にあしらう。
『あっ、・・当たる場所が・・変わって・・・』
『ほら・・・寿子の好きなバックだ・・・ぃよっと・・』
　男が左手で寿子の腰を引き付ける。寿子は牝犬の姿勢をとる。画面いっぱいに丸い尻と色っぽい背中が映る。アナルの蕾も丸見えだ。
　男は一定のスピードで深く剛直を打ち込む。ジュツッ、ジュツッという音が聴こえる。寿子は尻を自らくねくねと動かす。
『あひぃ、ひぃ、いっ、い・・くっ・・・・』
　寿子は幾度となく大小の波にさらわれている。愛液は膝まで伝いシーツは様々な体液で大小の染みができている。

　男がカメラを寿子の顔の真横に置いた。両手を使いたいようだ。
　パン、パン、パンと太ももどうしがぶつかり合う音が聴こえる。
『ああああああああああっ、ふっ・・・深・・・あっ・・当たる・・・んんんんん・・・・』
　両手でシーツを握りしめた寿子は文字どおり牝犬の格好で半狂乱になる。唇は弛緩し涎が垂れて銀の糸を引いている。

『んんんんんんっ・・・イヤ・・・・・駄目・・・だ・・・ん・・いく・・い・・いっちゃう・・・』
『ん・・・出すぞっ・・・寿子・・』
『ひゃあああああああああああっあ・・・・・・んんんん』
　寿子は肉食獣のような咆哮をだし突っ伏す。四肢がビクンビクンと痙攣している。

　しばらくしてからカメラが持ち上げられた。それが合図であるかのように寿子も起き上がる。
『綺麗に舐め取らせていただきます・・・・』
　寿子は未だ硬度を失わない白濁液まみれの肉棒を愛しそうにそっと口に含んだ。