第10章 明暗

「だいぶ覚えてきたじゃねぇか。だが今日は、建太に褒美をやんねぇとな」
「あぁ、お願い、それは」
「へ、ぐしょ濡れオ○○コをおっぴろげて、気取ってんじゃねぇよ」
「あぁ、許して」
　クナクナと頭を振っていますが、Ｍの字の形のまま、秘唇を広げるのはやめません。
　自分の秘液で指先が滑るのか、絶えず、指を奥へ奥へと小刻みに動かしています。
「ほれ、建太、早く来い。おら、おめぇも、やりたくて、おっ立てるクセに、グズグズしてんじゃねぇよ」
　ぎこちない動きで、身体を起こした建太のペニスは、いきり立ったままでした。
　うながされるままに、妻のＭ字に身を寄せたのです。
「いいのよ、建ちゃん」
　妻がそう言ったのは、さっきから、オアズケを食ったままの建太が可哀想に思えたのかもしれません。
　しかし、船岡はそれを許しません。
「いいのよ、じゃねえだろ。メス奴隷は。分かってんのかよ」

　決して大きな声ではありませんが、頭ごなしに怒鳴られて、妻の躯がビクッとなったのが分かります。
「あぁ、メス奴隷の、奴隷のいやらしいオ○○コに、いっぱい入れてください。もう、、あぁ、もう、欲しくて、ぐしょぐしょなの。あぁ、いやあ！あう！」
　Ｍの字に開脚して、自らの秘唇を指で広げたまま、自らの言葉だけで逝ってしまったようでした。
　建太のペニスがすぐそばに来ています。
　その気配に、妻の両脚はいっそう広がった気がしました。
　なぜか、いくぶんふてくされたような顔をして、そのくせ、目一杯、怒張を大きくさせて、建太が妻にのしかかっていきます。
　結ばれた一瞬、建太の口が妻に何か言ったように見えました。
『ごめんなさい？確かに、そう動いたよ、な』
　ばからしい話ですが、その時になって、いったい、妻と船岡と建太の関係は何なのかということに、思いが至ったのです。
「あ、あ、あ、うぅう」
　建太の怒張を受け入れた瞬間、早くも、妻の両脚がヒクヒクと宙で動きます。
　そのまま、その長い足が絡みつくように建太の腰に回されたのです。
　妻自身が挿入を待ち望んでいたように思えるほど、迎え入れる仕草が積極的でした。
　しかし、建太の腰が妻の上で激しく動かされている姿を見ながら、大きな疑問符が浮かんできました。
　はたして、これは、妻の浮気なのでしょうか。
　妻の趣味にしては、あまりに、スゴすぎる気がします。
　かといって、二人に犯されているという様子でもありません。なんというか、あまりにも、肉の関係が慣れすぎているという感じなのです。
　いえ、ムリヤリ犯されているのに、こんなにも感じてしまうほど、妻が淫らな女だと思いたくなかったのかもしれません。
「あ、あう、けんちゃん、あん、あう、そんな、ダメ、はうぅ」
　さっき、さんざんに、恥ずかしい頂点を極めたばかりの躰です。
　すぐに入ってきた二本目の男性は、刺激が強すぎるのか、早くも妻は達しようとしていました。
「あ、あ、あ、ダメ、一緒に、あうぅ、建太、お願い、出して、あう、い、いくぅ」
　建太の尻に回された妻の長い脚が、ぎゅっと、締め付ける動きをします。
　そのまま、背中でブリッジを作りながら、全てを吸い尽くすような格好でオーガズムに達してしまいました
　その激しい反応にこらえられなくなったのでしょう。
　建太が、打ちつけるような激しい動きの後で、妻より一呼吸後れて、放出します。
「あ、あ、出てる、あう、あ、なんで、あう、また、い、どう、し、て、あうう！」
　躰の奥に浴びた建太の精液の刺激のせいでしょう。ビンカンになりすぎた妻が、またオーガズムに到達したようです。
　私はこらえきれず、布地越しに、激しく巨大化した分身を握りしめていました。
　その時、確かに、視線をどこかで感じたのです。慌てて周りを見回した私は、危うくハシゴを落ちかけて、ガタンという物音を立ててしまいました。
　その瞬間、仰向けになっていた妻と、視線がピタリと合ってしまったのです。
　妻の叫び、慌てて見上げる船岡と建太。
　私は、ゆっくりとハシゴを下りるしかありませんでした。
　
　暗い倉庫の中で、服を着ているのは私だけです。
　こういうときに真っ先に気遣ってもらえるはずの妻は、躰を縮めるだけ縮めたまま、泣いていました。
「先輩、あの、これ、いや事情がありまして、そう、あの、ほんの出来心というか」
　なんと答えて良いのか、事情も分からない以上、怒るわけにも、誰に何を言うべきなのかも分かりません。
「たまたま、今日、建太としてるところに、え、えぇ、そうです、たまたまなんですよ」
「たまたま？」
「そうなんですよ。このごろ、奥さんの元気がないから、どうしたのかと」　　
　妻が、キッとなって、顔を上げた瞬間でした。
「ウソです！」
　不意に、戸口に現れたのは、篤美でした。
「ゆ、湯川か」
「この人の言ってることは、ウソです」
「うん？湯川、あっちに行ってなさい。先輩、こいつ、建太と付き合っていて、ヤキモチ焼いてるんですよ。ほら、話は後だ、あっちへ」
「奈緒コーチは、このオトコに脅されて」
「おい、いくらなんでも、でまかせを言うと、わかってるのか」
「こいつは、悪魔なの」
　指さす篤美と、つかみかかろうとする船岡との間に、躰を割り込ませます。
「どういうことだ。篤美」
「こいつ、サイテーなんです。人の弱みを握って、ひどいことを…、わ、私だって、私だって…　同じことをやらされて、写真をみんなに見せるって、だから、建太も」
「おい、湯川、後で分かってるんだろうな」
「好きにすればいいじゃないの！もう、こんなの！いや！」
　カチャカチャという、その場にそぐわない、気の抜けた音がしたかと思うと、次の瞬間、篤美の左手首から血が噴き出したのです。
「篤美！」
「こないで！」
　かまわず、篤美に飛びつくと、右手に握りしめた銀色にニブく光る物を取り上げます。
　工作用のカッターでした。
　背中に隠したまま、刃を出したのでしょう。
　鮮血がしたたり落ちますが、幸い、浅い。これなら、動脈は切っていないはずです。
　したたり落ちる血の上から、ハンカチをぐるぐると巻き付け終わった時には、篤美はぺたんと座り込んでしまったのです。
「馬鹿なことをするな」
「だって、だって、このままじゃ、あいつに、だって、メチャメチャに、うぇ、うっく、ひっく、だって、ひっく」
　涙で話すこともできませんが、私にはすべてが分かりました。
　妻が、こいつに…
　足先を懸命に舐めていた妻の顔が浮かびます。
　船岡に目を向けると、困ったような表情のまま、愛想笑いを浮かべていました。
「先輩、まあまあ、ほら、取り乱した女の子の言うことなんて、ね、あてには、ほら。だいたい、先輩が悪いんですよ。ちゃんと奥さんをしとかないから」
　私が一歩前に出ると、すでに、船岡の腰は逃げています。
　さっきまで、妻を蹂躙していた怒張は、その茂みに姿を隠すように縮こまっていました。
「そ、そうだ…　校長が、そろそろ先輩の店との契約を切れって、でも、ほら、そうすると、先輩のとこ、正直言って、ね、大変でしょ、僕がうまく言って…」
　わずかに後ずさりしながら、ずるがしこい目をきょろきょろとさせています。
「それだけか？」
　私が静かな声で尋ねたのを、船岡は、何か誤解したのでしょう。
「先輩さえ、大人の対応をしてくれれば、何なら、他の中学へも契約を…、ね、たかだか、中学生の言うことを信じるなんて、大人げないですよ」
「自分のしたことは、どうなの？」
「いやあ、ほら、これ、あの、そう、誤解、いやあ、奥さんがどうしてもって、ね…」
　終いには、ヘラヘラと笑いさえしたのです。その言葉一つ一つに、私の怒りが燃え上がるように大きくなったのは言うまでもありません。
　気がついたときには、腕をほんの少し伸ばせば届く距離に近寄っていました。
　きょろきょろした船岡が、両腕で躰を隠す妻をチラリと見た瞬間、ひどく冷酷な薄笑いが浮かんだ気がしました。
　その時、私は、あらゆる計算を忘れる、一個の凶暴な個人になっていたのです。
「貴様ぁ」
　なれない握り拳を大きく振りかぶって、船岡に殴りかかっていました。
　拳が船岡の顔を変形させるはずの一瞬、目の前が真っ暗になります。
　気がついたら冷たい土の上にのびて、なにやら鼻の後ろが焦げ臭くなっていました。
「へへへ、みっともねぇなぁ。女房を寝取られて、その相手に指一本触れられないなんてなあ」
　にやついた顔がのぞき込んでいます。どうやら、私の渾身の怒りの一撃は外され、逆に、顔面に一撃を受けたようです。
　鼻の下にぬるっとする感触は鼻血でした。
　ふらつく身体をようやく起こした瞬間、船岡の膝が腹にめり込みます。
「ぐっ！」
　脚に力が入りません。懸命に力を入れようとしますが、膝が、片方ずつ落ちて跪く格好になってしまいます。
「まだまだだよ。もうちょっと頑張ったら、ご褒美に、女房の白黒ショーでも見せてやっから。おい、湯川、おめぇもくだらないことをやってくれた罰をしてやんねぇとな」
　余裕を取り戻した船岡に、私は懸命に手を伸ばそうとしました。
　しかし、その、かがみ込んだ上半身に、船岡の踵が上からたたき込まれ、もんどり打って、床にはいつくばってしまいます。
「ぐほっ」
　はいつくばった私の横腹に、サッカーボールを蹴るような蹴りを、一発、二発、三発と、ゆっくりと、しかし確実に入れてきます。
　息ができません。　
　さっきの、背中への踵落としで、肋骨でも折ったのでしょう。息をする度に、肺に激痛が走ります。
「言っておくが、先に殴りかかってきたのは、お前だからな。警察に行ってもいいが、正当防衛ってやつだ」
　さっきまでの、先輩後輩の偽善の顔は投げ捨てていました。
　鈍い音を立てて、さらに、腹に蹴りが入ります。
「け、調子に乗りやがってよぉ。大学の時だって、俺の方が、お前なんかより、数倍すげぇのに、誰も俺に相談に来ねぇ、いいヒトぶりやがってよぉ」
　立て続けに腹を狙ってきます。懸命に腹筋でカバーしようとしますが、私の弱った腹筋では、一蹴りごとに、腑がねじ切れそうな痛みが襲ってきます。
「まあ、倒産覚悟で、逆らったんだから、お望み通り、してやるよ、お前の店…ぐぁ！」
　健太が、後ろから飛びついてきたのです。
「けっ、こりねぇガキだ」
　片手で、顔面を軽くこづいたのかと思う動作で、建太は顔面を押さえてうずくまります。
　裏拳というやつでしょうか。
　そして、蹴り上げる音とともに、健太が吹っ飛んでいきました。
「健太！」
　篤美の声でしょう。
「手加減してやってるからって、いい気になんじゃねぇぞ」
　船岡は、吹っ飛んだ建太の方に半歩、踏み出します。
　その瞬間しかありませんでした。
　心の中でスターターピストルが鳴った気がします。
　全ての気力と筋肉を振り絞って、わずかに斜め後ろを向いた船岡に肩から体当たりしたのです。
　陸上競技をやっていた人間のスタートダッシュで、至近距離から体当たりをされれば、まともに立っていられる人間など存在しません。
　もちろん、こちらも、無事では済みません。すでに、さんざんに打ち据えられた私の肋骨は、さらに何本か折れた気がします。
　しかし、もつれるようにして倒れ込みながら、馬乗りになっていたのは私でした。
「や、やめろ、やめてくれ、今、肋骨が折れたみたいなんだ」
　ひどくおびえた顔でした。
　肋骨なら私だって折れているはずです。たぶん、船岡以上にひどい状態で。
　その上、どこからなのか、ポタポタと滴る血が、船岡の顔に垂れます。
「頼む、肋骨が完全に折れたら、大変なことに…　頼む、降りてくれ」
　これなのです。
　船岡は、一度自分が不利な立場になると、とたんに弱虫になってしまうのです。
　選手時代、素質に優れた船岡は、ライバルのいない予選では、最高のタイムを出しながら、強敵のいるトラックで実力を出せたことなどありませんでした。
　コーチになってからも、自分より才能のない選手に威張り散らし、逆にレギュラークラスにはとことん、腫れ物を扱うように腰が引けていたのが船岡の限界でした。
「船岡、お前は弱い」
「何だと」
　一瞬、反抗的な気持ちを取り戻したようです。
「勝てないのは俺のせいだと思ってる。弱点を人のせいにしている間は俺には勝てない」
「てめえの女房も、ヒイヒィ言わせたんだぜ」
　精一杯の強がりでしょう。いえ、嫌がらせに過ぎません。
　言葉とは裏腹に、目が泳いでいます。
「しかし、最後は、俺の元に戻ってくる」
　いつの間にか、目の端に、妻の素足が見えました。
　なぜか、妻が震えているのが割ります。
「いいか。力で人を支配することなんて、いつまでも続くわけはない」
「けっ、いい年してお説教かよ」
「お前のそばに、誰がいるんだ？相手を力でねじ伏せている間だけだろ？」
「へっ、奴隷には不自由しねーよ」
「そして、お前はいつも孤独だ」
　ぐっと船岡の襟首をつかみ、締め付けました。
「船岡、店のことは勝手にしろ。だがな、今度、菜緒と」
　気がつけば健太も、頭上に立っています。今にも噛みつかんばかりの顔です。
「この子たちに手を出したら」
　全ての怒りを目に宿して、おびえた船岡を無理矢理こちらに向けます。
「何があっても、お前を殺す。必ず」
「けっ、ケチがついちまったのに、手なんかださねーよ」
　口では強がっていても、目がすでに負け犬のそれでした。
　この手の男は、ちょっとでも負けると思う相手には手出しができなくなるものです。
　私が、ゆっくりと立ち上がると、不敵な笑いを浮かべてふらつきながら、船岡も立ち上がります。
「おい、必ず、てめぇの商売もできなくしてやるからな、覚えて…　ぐぇ！」
　船岡が股間を押さえて崩れ落ちます。
「篤美…」
　いつの間にか、後ろに近寄った篤美が、船岡の股間を蹴り上げたのでした。つま先が見事にめり込んだ、すごいキックです。
「ぐ、ぐぐ」
　前屈みになった船岡の尻の真ん中に、突き刺さるように健太がつま先でキックをします。
「ぐげぇ」
　カエルのような声を出して、そのまま、床に倒れ込みます。
「これ、健太の分の利息」
「ぐほっ！」
　篤美のキックが、さらに、倒れ込んだ船岡の股間にもろに命中した瞬間、船岡が両脚をビクンとケイレンさせて悶絶したのです。
「あなた…」
　船岡の向こう側で、たちすくんでいた妻が、我を取り戻して私の胸に飛び込んできます。
　飛び越える瞬間、妻は、ためらいもせず、悶絶したままの頭を踏みつけて駆け寄ります。
　呪縛が解けた瞬間でした。
「ごめんなさい、私」
「何も言わなくていい」
　ぐっと妻を抱き寄せた瞬間、私の肋骨も、どうにかなっていたことを、痛みが思い出させてくれました。
「いたた…」
「あ、ごめんなさい、大丈夫？」
「たいしたこと…　う〜ん、でも、ちょっと、病院、行った方がいいかなぁ…　さえないなあ、あ、おい！健太、もうやめとけ」
　健太が、泣きながら、船岡をめちゃめちゃに蹴っていたのです。
　後ろから篤美がそっと抱きついて止めます。
「健太、帰るぞ」
　左から妻に支えられながら、右手で健太の頭をガシガシっと手荒く撫でた瞬間でした。
　最後に覚えているのは、そびえ立つ校舎と壁の間に見上げた、わずかばかりの、窓からのぞく青い空でした。
『梅雨晴れか…』
　気持ちがゆるんだ私の意識は、そのまま急速に遠のいて行きました。

　盆休みの最中の首都高は、普段では考えられないほど空いていた。
　赤いワゴンが、軽やかなフットワークで、軽自動車を追い越しながら、さらに加速していく。外からは、運転手一人だけが乗っているように見えただろう。
「ぐふふ、おい、由佳。今度は、おまえの母ちゃんも呼ぶぞ」
　オトコのモノをくわえたまま、激しく首を振る。とっさに、歯を当てぬように気をつけてしまうのが、少女の「慣れ」具合を物語っていた。
　覚悟はしていたことだが、夏休み前から、呼び出される回数が急に多くなった。
　おかげで、もはや、少女らしからぬほど、性の技巧が上達していた。
　今日も、夏合宿から帰った翌日、呼び出され、恥ずかしい数時間を過ごしたばかりだ。
　嫌なはずなのに、馴染んだ躰が、快楽にまみれてしまうのが、少女にはつらかった。　
『ダメ、お母さんだけは』
　髪をかき上げるまでもなく、ショートの髪は、怒張をほおばる表情を隠すことはない。
　口をめいっぱい広げて、怒張をくわえたままの少女が見上げる瞳はおびえの色が濃い。
「なんだ、遠慮してるのか？安心しろ、母ちゃんは、おまえが合宿に行っている間にヒイヒィ言って喜んでたからな、さすが、元人妻だ」
　少女は、とっさに何のことか理解できない。
「おまえもあのくらい激しくならねーとな。ま、これから、胸も、ちっとは大きくなるだろうが」
　男の股間から、とっさに顔を上げる。
「まさか!?」
「ぐふふ、まさかも何も、おまえのことで相談があるといったら、ほいほいついてきたぞ。おまえの母ちゃん、着やせするんだなぁ」
　少女の目がこれ以上ないほど見開いた。
「意外にオッパイはでかかったし、しまりはいい」
　ニヤニヤしながら、携帯を片手でパチリと広げ、無骨な指が意外な器用さで操作する。
「ほれ、おまえが出てきた所と感動のご対面だ」
「いや」
　とっさに、顔を背けたが、赤いロープで縛られ、足を広げた裸がちらりと目に映った。
　それが母の姿なのかまではわからない。
　目を閉じて頭を振る少女に、声が降ってくる。楽しんでいる声だ。
「母ちゃんとおそろいの格好だ、今日は、このままで、家まで送ってやろうか」
　下卑た笑いを浮かべながら、由佳と呼ばれた少女の胸を左手で揉みしだく。
「小さいが、さすがに、張りは、おまえの方が勝ってるぞ」
　すでに尖りきっている乳首をコリコリと転がす。
　躰が勝手に、電流のような快感を感じてしまうのが恨めしい。
　何度もオーガズムを味わった躰は、たやすく、新たな快楽を汲みだしてしまう。
「まあ、オ○ンコは、おまえの方がきついが、きつけりゃ良いってモンじゃない。それなりに練れてくると、また味が良くなってな」
　すでに、オトコの下卑た笑いを含んだ卑猥な言葉は、少女の耳に届いていなかった。
『かあさんが。私のせいで…』
　少女は絶望した。お母さんまで、このオトコのために。
　母は最近、やっと再婚の相手を見つけたのだ。
　ちょっと寂しいけれど、母が幸せになってくれるなら、我慢できる。
　それほどかっこも良くない人だけど、真面目そうな、優しそうな人だった。
　夏休みの初日。初めて母に紹介された時、その人は、にかんだような笑顔を見せて、それから、手をズボンでごしごしと拭いてから、不器用に差し出した。
　温かな手のひらだった。
　握手した由佳を見て、母がそっと涙ぐんだのに気がついた。それを、そっと横で支える、新しい「父」
『やっと母が幸せになれる』
　由佳を育てるために、一人で頑張ってくれた母が、大切な人を見つけた。
　夏が終われば、三人の家族で暮らす。
『今度会うときに、お父さんって呼んでみようか。ちょっと照れちゃうな』
　由佳なりに納得した、小さな幸せのはずだった。
　だから、由佳は、自分一人だったら、何でも耐えてみせると思っていた。
　まだ「父」と会う前、高校だって、学費のかからない所に推薦で入った。
　自分の躰と引き替えにして。
　母には見えない、汚辱にまみれた、ま新しい高校の制服。
　初めて着て見せた由佳に、母は「おめでとう」じゃなくて「ありがとう」といってくれた。
　たった一つの才能で、自ら進学先を見つけた娘に、何も知らない母が言ってくれた「ありがとう」は、由佳の心に響いた。
　何があっても耐えようと思った。自分だけだったら…
「今度は、おまえん家に行って、一晩中、交代でやってやる。親子丼ってヤツか。オッパイは母ちゃんの方がでかいが、しまりはおまえの方がいいからな。心配すんな」
　何を想像しているのか、ぐふぐふと鼻息荒く笑う。
　哀しみに沈みながらも、由佳の躰は、弄られた乳首が勝手に反応して快感を絞り出してしまう。
「あぁ」
　感じている声なのか、絶望の声なのか。
　由佳にフェラの続きを要求したのは、哀しみの顔のまま漏らした、淫靡な声がたまらなかったのだ。
「ほれ、地元に着くまでに出すんだぞ。それとも、ロープ姿を母ちゃんに自慢するか？」
　閉じた携帯を胸ポケットに放り込む。
　オトコの膝に顔を埋めた少女は、ロープに絞り出された発達途上の乳房が、いびつなカタチに絞り出されている。
「やめて…」
「さ、次のカーブを曲がったら、あと少しで、料金所だ。楽しみだろ、スケベな姿を見られるんだからな」
　きついカーブに備えて、由佳の胸から、船岡の手がハンドルに戻される。
『カーブ…』
　その時、由佳の胸には、母が「父」並んで立った、あの優しい笑顔だけが浮かんでいた。
　笑顔の光景が、一瞬、由佳の脳裏でゆがむ。
「これしかないの」
　口の中の肉塊を、その白い歯に思いっきり力を入れて囓りながら、オトコの足ごと、一気にアクセルを左手で押し込んだ。
「ぐぎゃっ！」
　激痛だ。
　船岡は、反射的に両手で股間を押さえ、ハンドルはそのコントロールを失った。　
　カーブの遠心力と、車の加速が、コンクリートのガードに向けてまっすぐ車体を送り出す。
「さよなら。…おかあさん…」
　轟音と共に、コンクリートのガードを突き破る激しい衝撃。
　つかの間の浮遊感。そして、二度目の衝撃。
　由佳の足が妙な角度で曲がっている。動けない。その時、頭の横に、船岡の携帯が落ちてきた。反射的に、車の外に上がった炎の中に投げ入れていた。　
　天も地もわからない。
　何かが上から崩れて、運転席だった場所には、コンクリートの塊が突き出ているだけだった。　
　スプリンクラーの散水を滝のように浴びながら、由佳は、闇に、融けた…