第７章 よみがえる悪夢

「ちゃんと、昨日、言うとおりにしたでしょ」
「ああ、大学時代のことを清田に言わないってやつだな」
「だから、我慢したのに」
「久しぶりに飲ませてやっただけだろ。どうだ、久しぶりの愛人のザーメンは、うまかったか」
「気持ち悪かっただけよ。誰が愛人だなんて。ともかく、ちゃんと約束を守って」
　会議室だ。ドア一つ隔てて、他の教師達が働いている。大声を出せる話ではなかった。
「あぁ、約束通り、昔のことは言わない。けどな」
「けど、って…」
「先輩に、カワイイ奥さんを借りた礼を言わなきゃな。すばらしい舌遣いを久しぶりに堪能させていただきましたって」
「！」
　十分に菜緒の衝撃を楽しむようにニヤニヤする船岡。
「あぁ、たっぷりと濡らした、ぐしょぐしょのマ○コの味も良かったですってのもな」
　ガハハ、と笑う船岡の、卑怯な企みが分かって、奈緒は蒼白になった。
「もちろん、約束通り、昔のことは絶対に喋らんよ、俺は約束を守る男だからな」
「何が約束よ。大学の時だって」
「うん？ちゃんと写真は返してやっただろ」
「さんざん、ひどいことをして」
「だが、写真は返した。そうだな？」
「確かに写真は返してくれたけど…」
　大学時代。故障を治すには、と半ば脅されるようにして飲まされた薬。気がついたら、身動きできないように裸で縛られ、船岡に組み敷かれていた。
　男と付き合ったことのない奈緒が、考えたこともないような破廉恥な行為から逃れるべくもなかった。
　躰を見られるだけでも、想像もできないほど恥ずかしかった。
　それなのに、船岡の、いやらしくも巧みなテクニックで、処女の身のまま幾度もオーガズムを感じさせられたのだ。
　さんざんに感じさせられたあげく犯された瞬間、破瓜の痛みがさほどでもないのは皮肉だった。
　しかも、ムリヤリ犯されているはずの躰が、快感すら感じてしまったっていた。自分の肉体の裏切りが、奈緒の心を引き裂くように痛めつけた。
　それでなくとも、信頼していたコーチ、いや、ほのかな恋心すら抱いていた、清田コーチが、石もて逐われるように大学を去ったことが奈緒の心を乱していたのだ。
　心を壊された奈緒は、人形のように船岡の言うことを聞いてしまった。
　それを、使い捨てカメラで撮影されていた。
　気がつけば、写真で脅されて従うしかなかったのだ。
　セックスする度に一枚ずつ返すと。
　呼び出される度に、新たな快感を教え込まれ、新たな快感を知る度に、船岡のやり方に躰がなじんでいく。
　望まぬオトコを受け入れながら、いくら我慢しようとしてもオーガズムに達するようになってしまった菜緒。
　肉体を犯されるのはあきらめもつく。しかし、そこから、感じてはいけない快感をむさぼっている自分が恨めしかった。
　刻み込まれた、疎ましくも激しい快感に動けない菜緒。
　その白い尻に、馬鹿にするように、写真をピタリと貼り付けられたこともある。
　そう、確かに写真は返された。
　しかし、最後の一枚を返した時、船岡が言ったのだ。「おまえが終われば次は」と。
　船岡は、正確に奈緒の弱点を突いのだ。友達のためなら我が身を犠牲にすることを選ぶという、その性格を。
　それは、新たに脅しのネタの写真を撮るより効果的だった。
　自分が逃れれば、同じ陸上部で一緒の女子が狙われる。もちろん、必死でやめるように懇願した。
「ま、おまえはこれで逃げられるんだ。おまえには関係ねーだろ。それとも、おまえが代わりに俺の精力をどうにかするのか。できねーだろ、自分のことが可愛いもんなあ」
　そう、せせら笑われれば、奈緒が選ぶことができるのは、一つだけだった。
　奈緒と同じように陸上一筋で、デートすらしたことのない仲間。恋人がやっとできたばかりで幸せいっぱいの仲間。陸上の仲間達の顔が次々と浮かぶ。　
　どうせ、一度は汚されてしまった身。それなら…
　悩みに悩みながら、結局は、自らの肉体を犠牲にする道を選ぶしかなかった。その後の学生生活は、船岡のありあまる精力のはけ口となることしかなかった。
　悩んだ奈緒は大学を休みがちになった。
　もう大学を辞めようと思い詰め、最後に一言だけ声を聞きたいと電話したのが「清田コーチ」だった。
　もちろん本当のことなど言えるはずもない。でも、心配した「清田コーチ」が奈緒を懸命に支えてくれた。
　うれしかった。
　しかし、大学に送り迎えまでしてくれた「清田コーチ」の行為が、皮肉なことに、奈緒が屈辱を受ける回数を増やしたのだ。
「確かに写真は返してくれたけど」
「まあ、約束だったからな」
「でも、もっとひどいことを」
「ひどいって？おまえがやるって自分で言ったんだろ。それに、平気で大学に来てたじゃねぇか」
「平気だなんて。必死だったのよ。あの人が支えてくれたし」
「へへへ、清田先輩も、わざわざ、大学まで迎えに来たオンナが、ついさっきまで、後輩のチ○ポをしゃぶってたなんて知らなかったろうな」
　船岡が、ことあるごとに勝手なライバル心を燃やし、どうしても勝てない相手が「清田コーチ」つまりは、奈緒の夫だ。
　ライバルと「付き合っている」と思いこんだ奈緒を汚すのは、船岡の無上の喜びとなるのは当然と言ってもいい。
　校舎裏の駐車場に待つ車を見下ろす、二階のせまいコーチ室でフェラをさせられた。
　生臭いものを飲み込ませて「恋人」の元へと送り出すのは、なによりの、鬱憤晴らしになったのだろう。
　奈緒には、それをどうすることもできない。口をすすぐことすら許されず、車に乗るまで監視されていた。
　だから、卒業まで、夫と一緒にいても、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。ろくに目を見ることもできなかった。
　こんなにまで優しい人を裏切っている。
　でも、精一杯の優しさに触れて、一生この人について行きたいと思った奈緒は、汚れてしまった自分のことを、身勝手だが隠すしかなかった。
　苦しい胸の傷よりも、一緒にいる幸せに微笑むことができたのは、ずいぶん時間が掛かった。
「まあ、知ってたら、あいつも、中古品と結婚したりしねーよな。がはは、感謝しろよ。俺の口の硬さによぉ」
　奈緒の気持ちを見抜いて、あざ笑うかのような船岡の言葉が突き刺さる。
　それだけは、知られてはならない。
　いつか、屈辱の場面を警備員に見られた。
　船岡が硬く口止めしていたが、いつ、噂になるともしれなかった。
　だから、大学の友人達とも一切の関係を断ち切ってきたのだ。
　ようやく軌道に乗ってきた生活なのに、まさか、今、この男が現れるなんて。
「悪魔」
　思わずこぼれ出た奈緒の言葉は、小さすぎて相手の耳には届かない。
「まあ、俺も、鬼というわけではない。ちゃんと期限をつけてやるよ」
「期限？」
「そうだ」
　傲慢な態度で、イスにそっくりかえりながら、クルリと、窓の方に身体を向ける。
「そうだなあ。まあ、期限がくれば、全部チャラだ。昔の女郎でさえ、年期ってものがあったんだからな。期限があるとなれば、おまえだって、ちったあ、やる気になるだろ」
　あざ笑うような色が見え隠れしたまま、窓に向かって言い放つ。
「期限って…」
　呆然とつぶやくなお。
『かかった』
　後ろの奈緒からは見えないはずの船岡の顔は、下卑た薄笑いを浮かべてから、ゆっくりとイスを回転させる向き直る。
　ドンと、机の上に足を放り出す。
「そうだ。期限まで、おまえが頑張れば、許してやろう」
「そんな…」
「大学を卒業してから、俺から連絡したことはなかったよな。約束は守る男だぜ、俺は」
　事実は、十分「破る気」はあったのだが、奈緒の後釜を狙って手を出したオンナが、船岡の見込み違いなほどモロかったのだ。
　女の自殺騒動で大学を追い出された。親のコネで、中学の体育教師になるしかなかった。
　そのどたばたの中では、すべて引き払った奈緒の連絡先を探す余裕がなかっただけだ。
　しかし、奈緒はそれを知らない。
「一年間。たった一年間だ。それで全てチャラ。それなら、納得のいく取引だろ」
　そんなインチキな取引なんてない、そう叫びたい奈緒だった。
　しかし、昨日、脅しに負け、一回だけの約束で、昔通りにフェラをしてしまったのは、奈緒の大いなる失敗だったのだ。
　昔の過ちなら、きっと夫は許してくれただろう。でも、今の自分があんなことをしたのを知られたら。
　怖かった。
「どうかね、なんなら、これも、直接、先輩に返しておこうか」
「ヒッ！」
　無造作に、ジャージのポケットから取りだして見せたのは、昨日の下着だった。
　帰り際、奈緒の脱いだ下着をいち早くポケットに入れ、とうとう返してくれなかった。
　帰りに、下着なしでこぐ自転車が、たまらなく惨めだった。
「お願い、返して、それ」
「おっと、あんまり暴れると、校長が来るよ。これ、見せてやるか？喜ぶぞ、へへへ」
　哀願する顔で手を伸ばした奈緒を片手で制してから、ゆっくりとブラをしまい込む。
「で、どうする？」
「一年…」
　ほんのわずかの沈黙の後、低い声で返すのがやっとだ。わなわなと手が震える。
「たった一年だ。あっという間だよ」
　もちろん、期限が来れば、また、うやむやのうちに関係を続ければいい。
　はなから、オンナとの約束など守るつもりもない船岡だった。それに、と考える。　
　今、ドレイにしている教え子。
　といっても、今度高校に入るが、その母親を、次に、落とすつもりだった。
　そっちは、未亡人とは言っても、一から仕込まなければならない。もっと、精力を使うことになるだろう。船岡にしても、母子のドレイを作るのは初めてだ。
　結婚間もない、二〇代の体も良いが、高校生と母親の親子丼も楽しみだ。
　蒼い躰と熟れた躰を並べて犯すなんて、たまらないだろう。
　しかし、奈緒を犯すのは、あの真面目男の大切な宝を汚せるというおまけ付きだ。
『どっちを優先しようかな。くくく、なかなか贅沢な悩みだ。こうでなくっちゃな、人生は』
　考えるだけで、船岡のジャージは、股間が盛り上がり始めた。
　思い詰めた顔の奈緒の真剣な眼差しを、手玉にとっている実感が男にとっては楽しい。
　怒りと悲しみの色に染まった瞳を伏せたまま揺らす肩は、紛れもなく、夫を裏切る人妻の無念を物語っていた。
　リップに輝く唇に、悔しげに当てられた白く細い指先が、船岡の欲情を誘う。
　ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、ジャージ越しに勃起した己のモノを見せつけるように船岡は立ち上がった。
「まあ、とりあえず、お近づきの印といこうじゃないの」

　春休みの間は、船岡は、まだ正式にＨ中学校の教師ではない。しかし、前任者と引き継ぎさえしてしまえば、たった一人の正規教員として、教官室は独占できた。
　数人いる非常勤の講師も、授業がないこの期間に学校に来ることはない。
　教官室には、狭いが、数畳の畳の場所まで、奥にはあった。　
「うん？おい、そんなにうれしいのか」
「そんなわけないでしょ」
「びしょびしょじぇねぇか」
「知らない！」
　実際、船岡に触られる瞬間まで、自分が濡らしているだなんて、思っても見なかった。
　しかし、無遠慮な指先が、ぐにゅりとカラダをかき回してきたときには、あまりにも、しどどに濡らしている自分に、唖然とするしかなかった。
　もちろん、望んで抱かれるわけではない。
　けれども、処女から、さんざんに肉体をなじまされた相手とセックスすることになるなら、オンナのカラダは自然に準備を整えてしまうのかもしれない。
　おまけに、昨日、さんざんにカラダを奥底まで舐め尽くされ、逝く寸前まで追い込まれていたのだ。カラダに反応するなというのが無理かもしれなかった。
「うぐっ」
　クリトリスを押しつぶすような強い動きだった。
　濡れてしまったカラダは、菜緒の意志を裏切って強烈な快感を覚えてしまう。
「いやぁ」
　小さく、抗議する声が漏れたのは、その強烈な快感をどこかに逃がしたかったからだ。
「どうだ。だいぶ感じてんじゃねぇの？」
　あざ笑うように、菜緒を見下しながら、指先は、クリトリスを、時に素早く、時にじっくりと、絶妙な動きで攻め立ててくる。
『感じちゃダメ。感じてなんて、あぁ、だめ、でも、せめて、声だけは』
　卑劣なオトコに喜悦の声だけは聞かせまいと懸命にこらえようとするが、こらえようとすればするほど、甘やかな電流が強くなる気がする。
「いつまで我慢できるかな。さ、おまえの好きなパイオツも囓ってやるとしよう。もう逝きそうなんだろ」
　乳首に息をかかるだけで、菜緒の背中に戦慄が走る。
「やめてぇ」
　がまんしてるのに、そう思った瞬間だった。
「ああ！、あう！ああ！だめ！」
　絶妙な指先で、濡れそぼつ女芯を攻められながら、乳首を数度、やわやわと甘咬みされると、あっけなく、オーガズムに達してしまったのだ。
「相変わらず、スケベなカラダだ」
「あぁ、そんなぁ」
「旦那がいるのに、他のオトコの指で数分も持たずに昇天かよ。スケベでなかったら天性の淫乱ってやつだな」
「ひどい」
　しかし、言い返す言葉がなかった。

「め、メス奴隷の、…オ○ンコを好きにお使い下さい、あぁ、いやあ」
　いや、いやと子どものように、ぶるぶる顔を振る菜緒を見下ろしながら、余裕の笑みを浮かべて、濡れそぼつ美肉を一気に貫いた。
　数年ぶりの感触だった。好きでもない、いや、嫌い抜いているはずの相手から、脳が沸騰するような快感をむさぼってしまったのだ。
「ぐぅ」
　無念さから漏らした声だろうか。
『ほう、ずいぶんとうめぇ肉になりやがった』
　人妻として、たっぷりとオトコのエキスを注ぎ込まれただけのことはあった。

　 しまりは、大学時代よりもむしろいい。しかも、今は、単にぴっちりにと包み込んでくるのではなく、どこかしっとりとした感触なのに、窮屈に締め付けてくる。
　美肉の、しとやかなうごめきすらあった。
　若すぎる雌には、このしっとりとした感触はない。

　美肉の奥に進めると、肉ヒダ一つ一つが、からみつくようにうごめき、奥に行くにつれてすぼまる肉が、亀頭全体をすっぽり包み込む。
　おまけに、思いっきり広げられた、長く、しなやかな両脚に誘われるように、カラダを進めると、先端が、子宮のプニプニした感触に行き当たる。それが、また、怒張に違う快感をもたらしてくる。
　しなやかな腕が、船岡の首に回される。
『ようやく、その気になってきたじゃねぇか』
　どんなに嫌がってはいても、痛烈な快感にカラダをかき回されれば、オンナはオトコにすがりつくしかないのだ。

　ヒクンヒクンと、けいれんするような締め付けを見せるのは、オンナの肉体がオーガズムを味わっているに違いない。
『そろそろか』
　幾度目かの、ヒクついた動きの後、菜緒の腰が、自然にグラインドを始めていた。リップに輝く唇からは、絶えず、嗚咽のような声が漏れている。
　首に回された腕が、いつの間にか船岡の背中を、しがみつく場所を探しでもするように動き回っていた。
　目を閉じたまま横を向いた菜緒の細いあごが、つっと上がり、激しいオーガズムの前兆を物語っていた。
「あぁ、あっ、もう、もう、あぁ、だめぇ」
　後で後悔することがわかっていても、もはや、止めようがなかった。
　身体の中に差し込まれたオトコを中心に、嵐が吹き荒れ、白い津波が身体の中を貫こうとしているのがわかる。
『もうだめ、止められない。あぁ、あなたごめんなさい、奈緒、逝っちゃう』
　甘美な堕落に身をゆだねようとした瞬間だった。
「え？え？ああ！いやあ！」
　引き抜かれてしまったのだ。
　菜緒は、一瞬、腰を持ち上げ、抜かれてしまった怒張を追いかける動きをしてしまった。
「どうだ。最後までしてほしいか。ここでやめておくか」
　耳元であざけるような声がする。
　やめてほしい。本当はそう言わなければいけないはずだ。
　しかし、幾度もの軽いオーガズムから、カラダすべてを溶かしてしまうような白い津波のようなオーガズム寸前で放り出されたカラダは、菜緒に「やめて」と言わせない。
　それどころか、先端が、ちょんちょんと、入り口をつついただけで「続き」に期待して甘いため息を漏らしてしまうのだ。
「どうする」
　船岡のいやらしい声が、耳にささやかれるとカラダがわなないてしまう。唇をかみしめて「もっと」と哀願しようとする自分を押さえる。
「あう！」
　乳首を強くひねられた。痛みより、甘い衝撃が、オーガズムを迎えたがっている肉体を刺激する。
「感じるだろ」
　強烈な嫌悪感を感じながらも、菜緒は、コクリと頷いてしまう自分が不思議だ。強烈な快感に、すでにオトコへの媚びが生じていたのか。
「さて、おねだり、するか」
「す、好きにすれば」
　精一杯強がって見せたが、躰が「やめて」と言わせてくれない。絞り出せたのは、あなたがしたいなら続けてもいいという言葉だ。
　消極的ながら、それは断りの言葉ではない。　
「あう！」
　美肉に先端がわずかに入れられた。さらに、つき入れられる快感を期待する菜緒をあざ笑うように、そのままだ。
「あうぅぅ」
　悔しげな、菜緒の嗚咽が漏れる。悔しいけど、腰が迎え入れるように動くのが止められない。それなのに、船岡は器用に腰を合わせて、それ以上奥に入れようとしないのだ。
「だいぶ、欲しがってるな」
　余裕の笑みが、菜緒には悔しい。しかし、躰のうずきが止められない。
「あぁ、そんな、苦しい」
「欲しいんだろ」
「あぁ」
　あきらめたように目を閉じて横を向き、一瞬ためらってからコクリと白いあごを引いた。
「おら、なめてんじゃねぇよ。きっちり、おねだりしねぇとな」
「ひどい」
　わずかに入っていた先端が抜かれ、ピタピタと叩くように秘唇の入り口をさまよう。
「あぁ、もう、あうぅ」
　乳首をころころと転がされ、クリトリスを怒張が押しつぶすように動いている。そのくせ、頼りない、中途半端なオーガズムにさえ、届かせてくれない。
　かつて、さんざんに菜緒の躰を開発したオトコが、じっくりと構えれば、勝てるはずもなかった。
「あぁ！お願い、して、してください！」
「うん？してって何を」
「あぅぅぅ、意地悪。あう、ひどいわ。あう、でも、もう、我慢が」
　船岡の怒張を求めるように大きく空腰を使った。
「あぁ、して！最後まで、最後までセックスしてください」
　黒い欲望に負けて、噴き出すように陥落の言葉を口にすると、それだけで、菜緒は自分がふわりと持ち上げられるような快感を味わっているのに気づく。
『え？』
　しかし、考えるいとまもなく、ズブリと突き立てられた怒張から、嵐のような、快感の津波が、菜緒の中をかき回し、支配する。
「あぁ、あう！いい！」
「どうだ。いいだろう？ほれ、ちゃんと言わんと、また、ひっこ抜くぞ」
「ああ、お願い抜かないで、いいの、いいから」
「なんて言うのか、教えただろ、昔のようにちゃんと言え」
「あぁ、そんな、惨めで、ああ！嫌！抜かないで！」
　わずかに抜く気配を装ったのだ。
「あぁ、もうだめ、あうう、お願い、ご主人様のおチ○ボを、嫌らしい雌奴隷にくださいませ」
『あなた、ごめんなさい』
　心の中に浮かんだ夫の笑顔が、霞む。
「ああ！いい！」
　完全に船岡のペースだった。それは、昔通りだったが、菜緒は昔の菜緒ではない。
　人妻として、夫に慈しまれながら、性感が開発されてきたのだ。
　味わう快感は昔の比ではない。
　船岡の怒張が、怒濤のように出入りし、肉ヒダをかき分けるようにして、こすり立て、奥をえぐっては、角度を変えて、違う場所の快感を掘り出してくる。
　沸々と腰から湧き出してくる泡が、奈緒の脳を沸騰させていく。
『このまま、逝かせて』
いつの間にか、それしか考えられなくなっていた。
「出すぞ、俺のモノをおねだりしないと途中で引っこ抜くからな」
　何度も、頷いていた。抜かれることなんてとんでもない。
『このまま逝きたい』
　それしか考えられない。
「出してください、あぁ、逝きそうなの、ああ！」
　奥に当たるまで深く突かれ、先端が抜ける直前までの大きな動きで、菜緒の躰が腰から溶け出していく。
「あ！あ！だめ、あう！い、いく、いく、いくうぅ！あう、出して、あう、出してぇ！」
　夢中だった。
　本気で、オトコの飛沫を肉体の中で感じたいと思ってしまったのだ。
「ぐっ」
　怒張が菜緒の中で一瞬大きく膨らみ、子宮に熱いしわぶきを浴びた。その感触が、菜緒の躰の中で、白い津波を大きく砕けさせ、その波頭が奈緒の脳を吹き飛ばす。
　船岡の背中に、しがみつくように両手を回し、両脚をこれ以上ないほど広げたまま、菜緒の意識が　…跳んだ。

　気がついた時、船岡の上に座り込むように乗ったまま貫かれていた。
　たゆたうような動きで、じっくりと腰を掴まれ、動かされていた。
「起きたか」
　にわかに、尻たぼをすくうように躰を持ち上げては、落とす動きになる。
　強烈な摩擦感だった。
　その上、落ちる瞬間に、躰の奥がズンと突き上げられるのだ。
　子宮が突き上げられるのだ。
「あぁ」　
　くなくなと首を振った。打ち消せない快感が、黒い澱のように腹の下に溜まっていた。
「へへ、たまんねぇなあ。失神するとはな。ずいぶんスケベな躰になったもんだ」
「いやあ。そんなこと、ああ！」
　ない、と言おうとした瞬間、片手が菜緒の乳房をぎゅっと押しつぶすように握りしめてきたのだ。
　胸からも、強烈な快感が突き上げてくる。
　いつの間にか、両方の乳房を、まるで子どものおもちゃのように揉まれていた。
　両手は奈緒の胸、すくい上げてはいない。そのくせ、強烈な快感は、さっきよりも強い。
「そうだ。ちゃんと自分で動けるじゃねぇか、よしよし」　
　そう。命じられもしないまま、いつのまにか、自ら腰を動かしていたのだ。
　菜緒の引き締まった足が、尻を持ち上げては、落とし、ときにはむずかるように腰をこすりつけて、自らの肉体の奥を、肉棒でかき回していた。
「くくく、うめえ動きだ。クリトリスをちゃんと押しつけてきやがる。しかも、子宮に届くまで奥に入れちまってるしなあ」
「あ、あ、あ、うぅぅ」
　船岡の揶揄する言葉に逆らう気力もない。
　肉体を貫く怒張だけが菜緒を支配している。
「あ、あ、あ、あぁ！いい」
　腰の動きだけで、突き上げてきたのだ。奈緒の躰が揺れる。
　強烈な快感だ。
「おいおい、よがるのもいいが、あんまり声を出すと、生徒が見に来るぞ」
「あぁ、う、そんな、あう、だって、あぁ！」
　止まらないのだ。何かが自分の中で壊れた気がした。
　こすりたてられる度に、奥が、快感を求め、奥にまで飲み込んだ快感を味わった肉体は、新たな快感を要求する。
「口、ふさいだ方がいいんじゃねぇか」
　ぴちゃぴちゃと舌を、菜緒の口元に寄せてくる。
　キスだけはしない。少なくとも自分からはしない。そう決めていたはずだった。娼婦でさえ、情人にしか唇を許さないというではないか。
　しかし、このままでは声が止まりそうもない。
　なにより、人妻である菜緒にとって、セックスには、心の通う、激しいキスがつきものなのだ。
　心が拒否しても、躰が、そう、快感に乱れきった躰が、口の中もオトコの舌に支配されたいと願ってしまっていた。
　気がついたときには、自分から舌を絡めていた。
　絡めた舌の中に、淫らな声を溶かし込むようにしながら、快感を訴えていた。
「ぷはっ、ずいぶん感じてるな。おらぁ、返事しろや」
「あう、あぁ、あぅ、はい、感じてますっ。あぁ！」
　自らの快感を口にした瞬間、完全に夫のことが消え、今や、躰を貫いている怒張だけが菜緒の真実だった。
「うらっ、顔あげろ、ほら、飲め、昔のようにな」　
　顔を挟み込むように押さえられ、じゅるじゅると船岡に唾液を注ぎ込まれながら、舌をすわされる。
　コクリコクリと菜緒の喉が、屈辱と快感を飲み込んでいく。
「あぁ、おいしい…」
　それは、大学生の菜緒がさんざんに教え込まれたセリフだった。
　けれども、今、菜緒は、本当にそう感じてしまっていた。
　考えられないことだった。
「ぐへへ、さてと、そろそろ、逝きそうなんじゃねぇか」
　正確に菜緒の状態を知っていた。
　今しも、菜緒の身体の中を閃光が貫こうとしていたのだ。小さなオーガズムなら、すでに何度も躰を駆け抜けていった。
「○ンコも、練れてきたところだ。そろそろ出してやろう」　
　はっと気づいた。
『さっき、中に』
　狼狽した。
　もちろん、船岡は、今頃になって気づいた菜緒の慌てぶりを正確に知っている。
　快感の中で、自分の中に出されたことを悩乱する菜緒を、楽しげに見つめる船岡。
「そうだ。さっき、たっぷりと注ぎ込んだからな。一度、出したら、二度も三度も同じだ。それとも」
　ぐっと、突然からだが持ち上げられる。
　怒張が躰からこぼれでそうになり、思わず菜緒は、いや、とあらがってしまう。
　どさりと躰が降ろされる。
「あぁ！」
　強烈な一撃だ。子宮が、ぐっと突かれた。
「このまま出すか？抜くのか？」
　ぐっと、再び持ち上げられる。
「あぁ、そんなあ。お許しになって」
　媚びた声が出てしまった。
　自分からは言えない、しかし、このまま抜かれてしまうのを我慢することなど、できそうもなかった。
「おら、かまととぶってんんじゃねぇよ。ちゃんと、言ってみろ、それとも、ここで抜くか」
「あぁ、言えない」
「ふん、じゃあ、このまま、抜くしかねぇな」　
　ちゅるんと、先端が、秘唇からこぼれる。
「あぁ、いやあ、お願いよぉ」
「どうする？」
　もはや、菜緒の肉体は、どす黒い快感に支配されていた。怒張なしには、もう耐えられそうにない。
『そうよ、もう、一度出されちゃってるんだもの』
　自分に言い訳するしかなかった。
「あぁ、入れて、奥まで」
　強烈な一撃がくる。白い津波が、躰をかき回していた。オンナの本能が、このまま、奥に熱い精が放出されることを求めていた。
「あぁ、お願い！奥で、奥で、たくさん出してぇ」
「ほら、スケベなオンナにご褒美だ」
「あう、いい、あう、もっと、あう、もっとください。あぁ、かきまわしてぇ、あう、菜緒の躰をかき回してぇ、あう、逝っちゃう、あう、逝きそうなの」
「ほれほれ、出すぞ、おまえのオ○コに、たっぷりとな」
「あぁ、出して、出して、一杯、あぁ、お願いよ、あう！、イク！イク！いくぅ！」
　子宮に熱いモノが広がるのを感じていた。
　強烈に子宮が収縮し、躰ごと溶かされていく。
　ナカに出されたオトコの精が、菜緒の躰を快楽で溶かしていく。
　自ら、船岡の舌を求めながら、腰だけをいつまでもグラインドさせ、腰から溶け出していうような快感を味わい続けるのだった。
　廊下から、そっと中の様子をうかがっている、二人に気づかないまま…