後ろの正面　だれ？


後ろの正面　だれ？風天（かぜ　あまみ）作
「はじめに」　この小説は、フィクションであり、　全ては空想の創作物で、登場する人物名や、　他の名称等は現実のものとは、一切関係がありません。墓参り　季節は４月を過ぎ、心地よい小春日和。　一人息子の慶介が大学を卒業し、無事に就職、子育ても一段落したが、勤務先が地方になって、我が家を離れていった。　主人が亡くなって５年、親一人子一人での生活だったので、一緒に引っ越しも考えたが、主人が残してくれた家もあり、息子も一人暮らしがしてみたいという要望もあったので、とりあえずは別居という選択をしたのだった。　主人が残してくれた財産も有り、優雅というまではいかないものの、多少のゆとりもあり、週４日程度のパートタイマーで、生活のほうは充分事足りた。　今日は主人の月命日。　息子が巣立った報告を兼ての墓参りだった。　主人の墓は、すでに廃村した村の小高い丘の上にあり、市町村が運営する共同墓地の一角にあるのだが、人々の暮らしから離れたその墓地、平日の昼間ともなると、さすがに自分のほかに人の気配はなかった。　普段の墓参りなら、ラフな私服で訪れるのだが、今回は息子の自立の報告と言うことで、黒のワンピースに真珠のネックレスを身に着けて、墓地への道のりを歩んでいた。　主人の墓は、丘の上に作られた休憩所の程近くにあった。　休憩所と言っても、トイレを兼ねた建物でベンチと自動販売機が置いてあるのだが、彼岸になると多くの人が集まるため、かなりの大きなスペースとなっていた。　駐車場からの道のりで、視界に休憩所が入ったころ、後方から足音が耳に入った。　人気のない墓地、緊迫感は無いものの女としての恐怖感は感じずにはいられなかった。　だんだんと足早に追いついてくる足音。　振り返る勇気もなく、真後ろまで近付いてくる足音。　ただ、その足音の主は女性かもしれない、そんなことを自分に言い聞かせ、恐怖感をぬぐうのに必死だった。　その足音は足早のペースで、無造作に自分を置き去りにし、前方へ抜けていった。　同い年ぐらいだろうか、身綺麗な私服を着た男性だった。　ただ、手には何故かしらマネキンの手首を持っており、おのずと視線を奪われた。　男性は時より立ち止まり、あたりを見回し、また歩き出す。　そんな行為を繰り返しているので、私との距離は近付いていった。　マネキンの手首は、どこにでもあるような女性の物だったが、軽く握られた小指と薬指、緩やかに伸びた中指と人差し指、特に中指と人差し指がこちらを向いており、直前まであった　女としての恐怖感からか、意識の中に淫らな妄想が巡っていたのか、その指先がやけに気にかかる。　その指は、まるで自分の股間に伸びているようで、男性の歩行で上下に揺れる指先に愛撫されている錯覚にとらわれる。　思えば一回り年の離れていた主人とのそれが終わってから、１０数年たっているだろうか。　今までそんな淫らな感覚にとらわれたことは一度も無かった。　今日の自分は、どうかしている。　淫らな妄想に対する罪の意識、それゆえ更に高ぶる女としての自分の体、忘れていた女の喜びが、股間からこみ上げてくる。　その潤いは歩行をも困難にさせ、心地よい気候のはずなのに額には汗が流れ出る。　もうすぐ主人の墓。　掻き消そうとする心と、その甘美に身を委ねたい心の葛藤で更に気持ちは高ぶり、股間の潤いは下着にしたたり落ち、その湿った潤滑油は下着の形状をも変えてしまったのか、自分の女性自身はスカートの中であらわになっているのだろう、潤いは内股を流れ落ち、膝の横まで達してきた。　そんな時、忘れ去られた絶頂への意識が蘇り、掻き消そうとする心は、むなしくも敗北してしまった。　股間から頭の天辺を突き抜けるような快感。　膝がガクガクと崩れ落ち、思わずその場へしゃがみこんでしまった。　駆け寄ってくる男性。「大丈夫ですか?」　その掛け声を聞いて我に返る。「あ、大丈夫です」　毅然と立ち上がろうとするも１０数年ぶりに感じた絶頂感は、自分の体をも自由にさせてくれなかった。　肩を貸してくれた男性に寄りかかり、立ち上がろうとしたときに男性の手が内側の膝に触れてしまった。　体内から流れ出た水分に、不可解な表情を浮かべた男性だったが、その水分がいかなるものかを悟らせるかのようにねっとりと糸を引いた。　恥ずかしさから男性の顔を見ることはできず、ただただ引かれた糸を眺めながら立ち上がった。「少し休まれたほうがいいです」　休憩所まで肩を借り、真っ先にトイレへと向かった。　想像通り、片側に捻り寄ったパンティから、女性自身があらわになっており、とりあえず内股の湿りをティッシュで拭きとってパンティを下した。　まるで小水を漏らしたような股間に、少し奥までティッシュをくぐらせ、パンティの股の部分の湿りも、しっかりと拭き取った。　トイレを出ると、男性がペットボトルのお茶を差し出してくれた。　顔から火が出る気分だったが、ある意味開き直りもあった。「お恥ずかしいことで、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」「いえいえ、いろいろとあるでしょうから、あまり気になさらずに」「何か、一息ついて気が緩んでいたのかもしれません」「そうなんですか、またどうして?」　その問いかけに主人と死別したあと、なんとか息子を社会人まで育て上げたこと、その息子が我が家を巣立ったこと等を話した。「大変でしたね、女一人でさぞかし心細かったでしょう」「いいえ、ある意味、女を捨ててましたから」「気が緩んで女が出てきたのかな」　男性のその問いかけに苦笑した。「わからないけど、そのマネキンの手の指が…」「これですか?」　顔を隠してコクッとうなずいた。「なるほど、そう言うことですか。これが女を目覚めさせたのですね」　そう言うと、おもむろに私の顔の前にマネキンの手を差し出した。「あっ！」　声を上げたとともに股間を手で押さえてしまった。「そうですか、今日は恥ずかしがらずに、もっと自由に女を出しましょう。　私といやらしい行為をするのじゃない、マネキンの手があなたに悪戯するのです。　場所柄で、亡くなった御主人の悪戯だと思えばいい」　そういうとマネキンの指先で私の胸の先端を転がした。「はぁっ」　ゾクゾクっとした快感が背中を駆け上がり、思わずエビぞりになりながら、スカートの上からさらにきつく股間の手を抑えた。「ほらほら、もっと素直になって」　男性は私の手を持ち上げ、固く閉じられた太腿とスカートの間にマネキンの手を差し入れた。　男性の手は膝にかかり、少し外側に開かれていく。　それと同時に、緩やかに伸びたマネキンの指先が、パンティ越しに秘部をまさぐる。　先ほどまでの妄想が現実のものとなり、拭き取ったはずの股間が、また潤ってくる。　恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆ったが、パンティ越しに動くマネキンの指先に、漏れ出す甘美な吐息を我慢しつつ、口を押えながら上を向いて左手は無意識に胸を揉んでいた。　マネキンの指先は巧みに脚の付け根からパンティの中に侵入してくる。　私はその侵入を拒むどころか、自らマネキンの指先に秘部をあてがい、次なる動きに期待している。　反転したマネキンの手の指先は、パンティをこじ開け、割れ目の中へと入ってくる。「はぁあんっ」　思わず腰を浮かしてエビぞりになった私の醜態を男性は見逃さなかった。　浮かんだ腰に腕を差し入れ、マネキンの手がするりと椅子に落ちるのと同時にゴツゴツとした男性の手が・・・パンティの中に手が入る。　クリトリスを刺激され、更にエビぞりになった私を自分の足の上に座らせ、指先を充分すぎるほど潤った割れ目へと侵入させる。「はぁあ、ああ～ん」　のどに唇を這わせ、時よりナメクジのような舌を這わせながら、男の手のひらで頬を引き寄せられ自由を奪われる。　ナメクジを忍ばせた男の唇は、顎の先を這いまわって、私の唇にたどり着いた。　吐息をも漏らせない、熱いディープなキスで、私の口の中は男性の舌が這い回わる。　同時に続いている割れ目の奥への強烈に甘美な刺激。　意識は淫らに向上して、私も舌を入れる。　強い力で男性の頭を抱きしめ、その唾液すら啜り取らんと吸い付いてしまう。　徐々に頭の先へと突きあがってくる下半身への刺激。　忘れていた快感なのか、未体験な快感なのかの判断もつかないまま、その時は近付いてくる。「うううううん」　ふさがれた唇から吐息とは似つかないうめき声が漏れる。　割れ目の奥から、新たな潤いの波が押し寄せたとき、全身に電流が走ったのと同時にその潤いがまるで解放されるように、股間から体外に放出された。　私は、快感の中で意識を失い、目が覚めた時にはベンチに横たわっていた。　遠く離れたところに男性の姿があった。　視線が合うと、軽く会釈をして去っていった。　夢を見ていたのか? 　それを否定するように、立ち込めた淫らな匂いとスカート越しにベンチまで濡らしてしまってる、潤いの滝。　何処の誰とも知らない男性、顔すらもハッキリ覚えていない。　覚えていることは一つだけ。　彼の指先から得た甘美な快感。　結局墓参りも出来ず、気味悪く濡れたスカートとパンティに不快感を感じながら　これは主人への裏切りになるのか? 　でも、ＳＥＸまでしてしまった訳じゃない。　でも、そこまで求められていたら拒否できただろうか。　そんなことの自問自答を繰り返し、駐車場までの道のりを歩いた。　今までと違う景色を感じながら・・・墓参り　終…。
【次】
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2015年10月24日掲載
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