眠い目を擦り、朝食の準備が終わった静香、パタパタとスリッパの音を響かせ、隆志を起こしに寝室へ行く。
「あなた、時間よ、起きて」
　目覚ましのベルの音を無視して、眠り続ける隆志の肩を揺する。
「うぅん」
　気だるい声で返事する夫、隆志。
　旅行の後も、静香と隆志の生活は変わらない。
　しかし、静香の会社生活は一変した。
　表向きには、何の変化も見られないが、裏ができていた。
　和子とは以前と変わらない同僚の関係。
　しかし、男性社員とは茂蔵と鏡子の関係よりも乱れている。
　何といっても１対Ｎ（多数）の関係。
「静香さん、ちょっと」
　向かいの机に座った男が声を掛けると、スタスタと事務室から出て行く。
「あ、はいっ」
　事務的な返事を返し、静香は跡を追う。
　行く先は、相手によって違う、会議室だったりトイレだったり時には、外に。
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　丸一不動産には、２年と勤めた女性社員がいない事にもうなずける。
　静香自身も胸に辞表を用意した日々が続いている。
　そんな境遇でも静香を思い留まらせているのは何なのか。
　翌月以来、静香の給金には本給を越える手当てが付いている。
　考え方、気持ちの持ち方しだいで・・・・
　人生にとってＳＥＸは大変重要、しかしそれが全てではない。
　ＳＥＸ以外の人生も大切にしたい、それさえ壊れなければ・・・・
　静香の悩みは今日も続いている。

−完−