「それじゃ、取りあえず今日はこの辺で歓談しましょう。」
　今しがた佳織から声を掛けられた青年達のリーダーが立ち上がって言う。
「皆さん楽しくお話ししましょう。」
　その言葉を待っていたように、青年達は立っていって、それぞれ自分が目当てとしていた少女のもとへ向かう。
「どう、今夜俺たちんとこ遊びに来ない？」
　このキャンプの広告塔である優美、彼女の背後から二人組が声を掛けてきた。
「え？」
「今夜俺たちんとこ遊びに来ない？」
　もう一度同じ誘いを繰り返され、慌てて左右を見ると、いつの間にか隣にいたはずの佳織も千宏もいなくなっている。
「あ・・・」
　一気に頭の中が真っ白になった。
「どう？」
「い、いえ、あたしはその・・・」
　それでも何とか手を振って拒む姿勢だけ見せることができた。
「・・・」
　改めて眺めると、キャンプファイヤーの明かりに浮かび上がった他の者達は、ごく自然に男女何人かが一群となって何やら話している。
　突然の何ら予期していなかった事態に優美はかなり混乱しているのだが、それに気付かない二人組はさらに誘いを続ける。
「そっか。じゃ、明日だったらどう？」
「明日？」
　追い打ちをかけられたので、
「え・・・っと・・・」
　チラチラ見回すが近くには誰もいないし、皆自分の話に夢中なようだった。
「・・・ゴメンなさい、明日のことは他の人とも相談してお返事します。」
　優美にとってはこれで精一杯の受け答えだった。
「そう。」
「じゃあ、相談してみてね。」
　二人組は思った以上に淡泊に去っていった。
　しかしやっと初めの誘いを断ったというのに、また別な青年が隣にやってきて優美に話し掛ける。
「今日ログハウス来ない？」
「は？」
「これからログハウスで、どう？」
「・・・」
　青年達自身はログハウスに泊まることになっていて、１１人では充分過ぎるほどのテントは全て優美達一行の寝場所なのだった。
「あの・・・」
　状況がまだ全く理解できていないので、とにかく断ろうと口を開いた。
「これの後もちょっと何かいろいろやろうかなって思ってさ。」
「はぁ・・・」
　本当に困ってしまう。『御歓談』というのはこうして誘いを掛けることを意味しているのだろうか。
「いえ、私一人で決める訳にいかないので・・・」
「武居さんに訊かないとダメ？」
「ええ・・・」
「そう。」
　またあっさりとこの青年も引き上げていった。
　ホッと一息ついて目の前のジュースを一口。
　それにしても・・・・・キャンプファイヤーの明かりくらいでは、その人影が誰であるのかの判別まではできなくていたが、一つ確かなのは優美を除けば皆何らかの一群に加わって『御歓談』に臨んでいることだった。
「どんなお話ししてるのかな？」
　自分に近づく者がいなくなったのを知って、ようやく落ち着くことができた。青年達の巧妙な誘い方は、彼等の期待していることを優美に気付かせなかったし、キャンプの目的を知る者でなければ「今晩遊びに来ない？」とか「明日遊ぼうよ」という言外に含まれた淫性を見抜けなかったかもしれない。
　勿論、優美はこの段階に至ってもまだ何も知らないでいた。

「皆さん、充分御歓談しましたか。今日はこの辺で終わりにしま〜す。」
　御歓談開始から１時間も経ってはいまい。再び青年達のリーダーが宣言する。
「皆さん、お休みなさ〜い。」
　それが合図なのだろうか、キャンプファイヤーを囲んでの催しが終わると、一行は申し合わせたようにそれぞれのテントへログハウスへ、夜の闇へと２人３人で連れ立って消えてゆく。
　優美は目を見張ってそれを見ているうちに、独り取り残されてしまった。
「・・・・・」
　こうなっては仕方がない。まさか青年達の寝場所であるログハウスの中へ入ったり、闇へ消えていった者達のあとを追う訳にもいかない。
　自分に割り当てられたテントに潜り込んだ。
　そのうちすぐに、話が終わって武居先輩も清美も帰ってくるよ。
　優美はそう自分を納得させ佳織や清美を待ったが、一向に戻ってはこない。
「どこ・・・行っちゃったの・・・」
　膝を抱えて溜息をつく。
「ログハウスとかかな・・」
　結局佳織や清美と全く相談できなかったので、どうしていいものやら判らないのだった。

　遠い所で川の水音が続いているが、両隣のテントからはボソボソと時々声が聞こえる。ただ、何を話しているのかは判らない。
「みんな一応はいるみたいだし・・・」
　優美はテントの中で待つことにした。本当であれば本でも読んでいれば随分気も楽だし時間潰しになるのだろうが、
「え〜っ、優美本なんかマジで持っていく気ぃしてるの？」
「どうして？」
「だって、キャンプに行ってまで本読むなんて・・・」
　出発の前日だっただろうか、部活の後一緒に夏生と帰宅途中にキャンプの話をしている時におかしな顔をされたのだ。
「そう？」
　夏生は大して深い考えなどなく言った言葉だったのだろうが、素直で思慮深い優美はしばらく考えて、
「・・・やっぱりやめておくよ。」
　本を持参するのは断念していた。

　だから、少しでも清美達の帰ってくる気配を逃すまいと優美の耳はそばだてられてしまっていた。
　そこに何の前触れもなく、
「んぁぁぁっっ！」
　甲高い呻きが優美の耳を刺す。
「!?」
「んは、んぁぁ・・・」
「何・・・」
　咄嗟には誰の声かも判らないし、呻きに加えて身体と身体がぶつかるようなパンパンパンという音が始まり、切なげな喘ぎが右隣のテントから響いてくる。
「え？」
　まさか・・・
　何か常軌を逸しているが、この声には聞き覚えがあった。
「あん、はっ・・」
　美絵ではないのか。
「あぁぁっ！」
　元々耳を敏感にしてしまっていたが、さらに注意して聞いてみるとやはり声の主は美絵のようだ。
「うっ、あぁ・・」
「美絵？」
「ふ・・・う・・・」
　段々と音高くなりながら肉体同士の激突音と美絵の呻きが聞こえてくる。
「あふっ、んむぅ・・・」
　やがて突然美絵の声が止んでしまったが、パンパンという音は以前続いている。
「んくぅっ！」
　今度は左隣のテントだ。こちらにも誰かいるのだろうか・・・

　右隣のテントでは優美が察したとおり、美絵がいた。
　しかも優美の同級生の美絵は今や四つん這いになって淫唇には肉棹を叩き込まれ、口唇では別な男を咥え込んでいた。
「ああ・・美絵ちゃんのスゴイよ・・」
　美絵のウエストを掴んで頻りに腰を振っている男がそう呟いたかと思うと、美絵の頭を軽く押さえながら口奉仕をさせている男も、
「そう、もっと舌を使ってみて・・」
　美絵の耳元で囁いている。
「美絵ちゃんがどんどん俺のを吸い込んでいくようだ・・」
「ん・・・むぅ・・・」
「うっ、美絵ちゃん、それいいよ・・」
　下半身をリズミカルに責められつつ、美絵は口唇での刺激にものめり込んでいく。
「あぅ・・・ギチギチだ・・」
　美絵と交わっている男はあまりにきつい膣咬みで情け無いほどの喘ぎを漏らした。
「美絵ちゃん、もう・・・」
　男の腰振りが停まった。
　美絵は素早く抜き去られた肉棹から射出される熱濁が背中に飛び散るのを感じながら口唇をモグモグとさせながら激しく舌波打たせ、右手で陰嚢を優しくこね回し、もう一方の男を責め立てていく。
「うぅ・・・美絵ちゃん・・・」
　もう一本の肉棹も美絵の口中で白液を噴いた。

　一方左隣のテントでは、優美の上級生平瀬静が。
　こちらの方は、静と相手の男の二人きりであったが、まだ性交までは至っていなかった。仰向けになった男の屹立した欲棒を舐めしゃぶりながら静は自らの秘口から蜜を吸い取らせていた。
「静ちゃんのもうグチョグチョだよ・・」
「んふ・・」
　ピチャピチャと舌を鳴らしながら亀頭の周りを舐め、今度は根元まで呑み込んで顔を上下させていく。
「うぁっ・・静ちゃんのジュース美味しいよ・・」
　ジュルジュルと啜った。
「きて・・・」
「うん・・・」
　しばらく、そのままお互いの性器を愛撫し合っていたが、男の肉砲が暴発しそうになる寸前口奉仕をやめた。
「最初は普通がいいな。」
「うん・・・」
　静は男の上から降り、仰向けに横たわって膝を立てた。
「じゃあ、入れるよ。」
「ん。」
　静は男に敷かれるような形で胎内に男を受けて入れていった。
「ううぁぁ・・・」
　吐息を漏らす。
「・・・静ちゃんの中スゴイよ・・・」
　ゆっくりと腰の抽送を開始する。
「あぅ・・・」
　こうなると、優美は左右からの痴態に悩まされることになる。
　折しも、ログハウスの方はかなりの人数が入っているらしく、遂には喘ぎなども優美のテントまで届くほどであった。

「・・・・・」
　さすがの優美も既に、このキャンプの趣旨や、自分以外の者が今このときあちこちでどんな行為に及んでいるのか、理解していた。
「・・・どうして・・・」
　優美としては信頼していた者に裏切られたような気持ちだった。両隣の美絵と静は確実に淫欲に溺れているようだし、この二人以外のことは直接知ることはできないものの、あれ程信奉していた佳織や千宏にしろ同様の行動を取っているだろう。
　そう考えると、優美としては混乱の極みに達していた。
「清美も・・・？」
　そういえば清美の姿は見えない。勿論佳織も帰ってこないが、清美も優美のテントに戻ってこないのだ。
「美絵だって、・・・だから・・・」
　いよいよ佳境に入ってきたらしく、美絵の喘ぎはさらに声高で優美の頭中を駆け抜けていった。
「清美だって・・・」
　経験のない優美は詳しいことは何も判らない。だが、今までその片鱗さえも感じさせたことはなかったが、あれ程の調子では美絵の性経験は今日から始まったものではなさそうだったし、第一美絵は自分とも清美とも同い年なのだ。
　とするならば一向に戻ってこない清美が、他のどこかで誰かと性戯に励んでいることは確実に想像できた。

「・・・・・ん・・・・・」
　美絵の二回戦が始まった頃、優美はショーツに手を入れ、そっと自分の秘部に指を這わせ始めた。そうして最近覚え立ての自慰へと没頭していく。
　周りの状況によって少しずつ、潔癖だった優美の理性が蝕まれ始めている証拠だったのかもしれない。
　
　その夜、結局佳織も清美もテントへ帰ってこなかった。