第２章

「秋の七草って知っている？」
　老師の家を出てから、車中で長い沈黙を破った京子の言葉だった。
　カーブが連続する山道から目を逸らすことなく首を振った。
「春と違って、秋の七草は食べるものでは無いだろう。」
「私、秋の七草って解らないの・・・」
「帰って植物図鑑でも見たら解ることだ。」
「女らしいことを言ったので、驚いた？・・・」
　俺は、答えることなく夜道でステアリングの操作に集中している振りをした。
「教えて、あれは催眠術なの？」
　問いに答えずに、煙草を取り出して咥えると京子がライターで火をつけてくれる。
　日も暮れて暗くなった車内に一瞬、灯が点り
「結局、私は爺の玩具になっただけ、薬なの？」
　窓を少し開けて、煙を流しながら視線を変えずに
「家で何も飲んでいないだろう。それと老師が女と交わる事はない、せいぜい指を使うぐらいだ。」
「本当？・・・見てたの？」
　横目で京子を見ると羞恥の色が瞳に見えたような気がした。
　老師の家で化粧を直した京子の顔は、さらに色気を発散するかの如く美しい。
「見てないが、老師は体を大切にする方だ。
　誰とでも交わるようなことはしない。特に初対面の相手ならなおさらだ。」
　京子は俺の口から煙草を取ると、深く煙を吸い込んだ。
「これが終わったら・・・・・」
　ギヤを細かく変える俺の右手に軽く手を載せて京子が言葉を続ける。
　返事の代わりに載せられた手を軽く彼女の膝元に戻す。
「終わらないだろう。終わったとしても・・・老師の言葉が解らないのか？」
　京子は、煙草の灰を灰皿で軽く落とすと、フィルターについた口紅を軽く拭ってから俺の口に煙草を戻した。
「畜生以下にはしたくないってこと？それだけでは解らないわ・・・」
　これからの報酬に影響するかもしれないが、答える義務は存在した。
「夫人を淫らな女にするなってことだ。それ以外の方法を使えって指示だ。」
「でも、私がされたのは薬か催眠術でしょ？本当に教えて・・・」
　京子の手は、シフトレバーを通り越して俺の股間を摩り始める。
　拒否することなくシフトチェンジを止めると、太いトルクで横着に車を走らせながら京子の指使いを楽しむことにした。
「教えないと・・・」京子は細い指先を巧みに纏わり付かせる。
「教えて解るものではない。結果を信じる事で満足できないのか？」
「今は、ただ知りたいだけ・・・」ついに京子の指がファスナーを摘むとゆっくりと引き下げて、俺の固くなった凶器をトランクスから引っ張り出した。
　堪えきれなくなった俺は、少し幅員が広くなった部分を見つけると車を横に寄せて止めてライトを消した。
　京子はセンターコンソールを乗り越えて、俺の凶器に口を寄せる。
「淫乱な女って思わないで・・・」
　固くなった肉棒を口に含むと濁音が狭い車の中に響き渡る。
　暖かい京子の感触を味わいながら、サンルーフから見える星空を眺めた。
「淫乱って言葉は女しか似合わないものだな・・・」
　美しい京子に奉仕されても俺の心は、あの時の社長夫人の媚態を心に描いていた。

　ベッドで犬のように四つん這いになって尻を高くしていた夫人は京子の侵入に気が付いたらしく、尻を落として座り込もうとした。
　俺は間髪入れずに夫人の小さく引き締まった尻に鞭を入れる。
　夫人は言葉にならない呻き声を上げると尻を高くして元の姿勢を保った。
「綺麗な体ね。鞭よりももっと良い事してあげるわ」
　京子の声に我に返った夫人は大きな声で叫んだ。
「助けてください。お願いします。」
　夫人の願いを聞き入れる代わりに京子は平手で緩く尻を打つ
「貴女に話す権利は無いの。変態の夫が殺されて、娘が犯されてもいいの？」
　京子は言葉でも夫人を追い詰めていく。
「主人は高潔な人です。」
　夫人は目隠しされたまま顔を上げて反論した。
　京子は尻を打つのを止めると静かに夫人の前に廻り
「何も知らないお馬鹿さん・・名前は？」
　尻を打たれてないこともあって夫人は四つん這いのまま、毅然とした口調を取り戻した。
「奈緒美です。貴女は誰？」
　京子は夫人の問いに微笑みを浮かべながら答える
「私は京子よ。貴女の主人に人生を奪われた女」
　京子は夫人の裸体を舐めるように見つめる
　長い髪に隠れた若さが滲み出る豊かな張りのある乳房と引き締まった腰
　細い腰から小さな尻へ向かうラインは細身ながら溜息が出るほど美しい曲線美を描いている。
　横のベッドで深い眠りにつく年老いた社長を眺めて
「この身体なら、社長が狂うのも解る気がするわ
　女の私でも、おかしくなりそうだもの」

「夫は私の身体を見たことがありません。」
　夫人は大きな声で京子に訴える。
「そう、それなら隣の部屋も知らないの？」
　京子の質問の意味が解らず、夫人は首を横に振った。
　京子は無言で夫人の手をとり、静かに誘導しながら立ち上がらせると
「隣の部屋を教えてあげる、その代わり一つ約束しなさい。」
　片手で胸を隠すように立つ夫人は、首を縦に振った。
「私のことを京子様と呼ぶのよ、この男は御主人様と呼びなさい
　横で寝ている夫の命が惜しければ、約束を守るのよ
　私達の命令に一度でも服従できない時は・・・・
　覚悟できる？・・夫と娘は、全て貴女次第
　解ったら返事をしなさい　奈緒美」
　裸身に見とれていた私は、息を呑んで夫人の返答を待った。
　夫人は、観念したように顔を下げて小さな声で答えた。
「はい、従います。」
　京子は両手で夫人の小さな顔を抱き寄せるとアイマスクを外した。
「それなら、隣の部屋に行きましょう。奈緒美」
　夫人の手を取るとサイドボードの小さなスイッチを押した。
　音もなく壁際の本棚が動き、隣の部屋への入り口が開く。
　夫人は驚き、眠ったままの社長を見つめる。
「奈緒美、貴女の知らない事をもう一つ教えてあげる。」
　京子は俺の近くに来ると、断りも無く夫人の涙で湿った俺のブリーフを引き下げた。

「奈緒美、よく見なさい　これが健康な普通の男」
　夫人は、伏目ながら指示のとおり怒張した俺の肉棒を盗み見る。
　京子は、夫人の様子を気にかけることも無く　社長の寝巻きを下着ごとずらした。
「奈緒美、これが貴女を抱けない夫の理由よ。」
　年老いた社長の下腹から生えているのは、白い真珠が数箇所に施された大きな男根だった。
　夫人は目にしているものを理解できないらしく
「主人は病気なのですか？」
　京子は夫人の答えに答えず、社長の下着を直すと、夫人の手を取り隣の部屋に導きながら
「今見たものを覚えておけばいいのよ、後で解るから」
　俺は、予定外の進行に驚いたが、隣の部屋の興味から京子と夫人の後を追った。