３．盗聴

　籾山との出会い以来、武司の生活は華やいでいる。
　金も掛らず籾山の仲間でいるだけで女を抱くことができる、思いも寄らぬ境遇に小躍りするほどである。
　ＳＭ趣味なＳＥＸは実際のところ武司の趣味に合っていない、だからといって、籾山との関係を解消するには、あまりにもったいない。
　そんな思いが武司を、ズルズルとサディスティックな世界に引き込んでいる。

　籾山のサディスティックな性格は、里美のように馴れ合った関係になってしまった女には興味が薄れるのか、すでに次の獲物を物色している。
　武司はこの一週間、籾山の依頼で、仕事を終えると一人の女を付け回している。
　今日も籾山の勤める○○商事の正門前に、その女が現れるのを待って三本目のタバコに火を点けた。

　女の名前は、樋口麻美、籾山と同じフロァに務める経理課のＯＬ、２４歳。
　籾山によると、麻美は直属の上司である課長と不倫関係が続いている、情事の場所を突き止めてくれという。
　今日までところ麻美の行動に男と密会するような素振りは無い、退社は遅いし、社を出ればまっすぐ帰宅している。
　それでも籾山は、不倫の関係に土日の密会は在りえない、「土日の所在不明は妻子のある課長には危険すぎる」といって譲らない。
（不倫なんてただの噂だけじゃないのか）
　武司はそんな思いを胸に、今日も麻美を付け回すのには別の理由がある。
　武司が麻美の顔を見ることができるのは、玄関前を足早に通過するい一瞬だけであるが、その顔は非の打ち所のない完璧な美人、理想の女だった。
　卵型の顔に大きな目、二重のまぶた、小さな小鼻に通った鼻筋、厚い唇と頬の膨らみからは美人にありがちな冷たさはなく優しさが醸し出されている、立ち振る舞いからは、清楚、誠実、謙虚、背筋をピンと伸ばして歩く姿は凛とした佇まい、欠点の無い麻美の姿に武司は一目で惚れ込んだのである。

　短くなったタバコをポイッと投げ捨て爪先でギリギリと、にじり消すと今までになく華やいだ衣装で、めかし込んだ麻美が姿を表わした。
（これは？）
　武司は、なぜか嬉しくない気持ちと、妙な期待を胸に後を追う。
・
　麻美の人生は以外にも孤独なものだった、近寄りがたいほどに気高い女に声を掛ける男は少なく、かりに近づいてくる男がいても麻美の目にかなわない。
　美人であるが故の不幸である。
　そんな麻美にも心を寄せる男がいた、それは上司の渋谷であった、しかしその男の年齢は一回りも上、そのうえ妻子持ち、事を進めても不幸な結末だけが待っている。
　麻美が渋谷との関係を一歩進めたのは三ヶ月前、仕事は特命事項を担当している麻美は事実上の秘書である、出張に同行することもよくあったが、そのときは宿泊出張だった。
　思いを寄せ合った男と女が宿を共にすれば必然、成るように成る。
　麻美と渋谷が大人の関係を持つのに障害などなく、あっという間に深い関係に嵌まり込んでいた。
　そんな関係ができてしまえば女は弱いもの、麻美もズルズルと渋谷との不倫関係に引き込まれていったのである。
　今では、麻美の方から携帯メールを送るほどになっている。
−−今日の接待は中止になりました。麻美はいつもの所で待ってます−−
　など秘書役としての情報を有効に活かした、断りの入れようの無い内容である。
　その日、麻美は定時を過ぎると足早に社を後にした。
・
　密会場所に急ぐ麻美を、着かず離れず追う武司の思いは複雑だ、男が居ればそのうち籾山と共にものにできるのだろうが、純粋に思いをよせる武司には何かやりきれないものがある。
　武司は、まとまらない思いを胸に、どうしようもなく麻美を追う。
　駅前近くの雑踏に来ると見失わないように必死となり、妙な思いも忘れて追う。
　武司の予想どおり麻美は駅には入らず、向かいのホテルに入った。
　麻美がチェックインする間の手持ちぶさたに、うろうろしてしまう武司だったが、なんとか同じエレベーターに乗り込んだ。
　麻美の後に続いて降りると、偶然のようにして後に着き、７１６号室の鍵に手を掛ける麻美を横目に通り過ぎていく。
（７１６と心の中で呟く）
　麻美の背中と扉に貼り付けられた金のプレート番号に目をやり、何食わぬそぶりで追い越した武司。
　偶然居合わせたホテルの客としか思っていない麻美は、武司のことなど気にも掛けていない、頭の中は渋谷のことばかり。
　１０分も過ぎただろうか永い時間を待つと、部屋を探すふりをして歩いている武司と擦れ違う男が７１６号室へ消えていった。
（間違いない）
　武司は籾山に連絡する。
「…密会場所が解った…」
「とりあえず、そこで待っていてくれ、…そこなら、すぐ行く」

　籾山が姿を現すと、どうやって手に入れたのか７１７号室の扉にカードキーを差し込んだ。
　武司も後で知った事だが、籾山には武司と同じような契りを結んだ仲間が数々いたのだ。
　興信所・探偵の深川、ラブホテル経営の佐久間、写真ラボ店主の磯村、モデル養成プロダクション社長の佐山、その他に風俗関係から警察官、はては政治家までも居るようだ。
　そんな仲間が、このホテルのフロントにもいた。
　そんな内情を知った武司が「尾行なら何も俺じゃなくても」と訝しがると籾山は「信頼度が違う」と返してきた。
　確かに係わり方が違う、現にこのころ里美を自由に共有している武司が知らなかった程の仲間たちなのだから、籾山にとっても武司は特別な存在で付合い方が違っているのである。

　部屋に入ると籾山は７１６号室の壁側に張り付き、吸盤をあちこち移動させ始めた。
「ここでいいだろう」
　腰を落とした籾山は壁側に据付られたテーブルの足元にしゃがみこんでボールペンを少し太くした程度の装置の録音ボタンを押してモニター音を大きくした。
　隣ではすでに艶事が進行している。
「もお、まだ、だめっ…」
　シャーシャーと風音のような雑音と、バシャバシャという水音にまざってソプラノの声。
「そ……もう……ぬれ……、えっ」
　男の低音の声は雑音にまぎれて聞こえにくいが、メールで強引に誘われたといっても艶事は男主導のようだ。
　数分して水音が止むと男の声も聞き取れるようになるが、二人の会話は少なくなっている。
　ガサゴソと布ズレの音に時たま聞こえる女の声。
「いやっ」
「あぁ〜」
「だめぇ〜」
　麻美の身悶えの声しか聞こえてこない時間が続く。
（これじゃ失敗だな）
　武司があきらめ気分になったころ。
「あっ、だめっ…、課長、あぁっ、いっ…、いきそぉ〜〜」
　麻美の喘ぎが激しくなる。
「あぁ、いいっ…、そこ、あっ…、そこ、もっとぉ〜」
　激しい注送をも要求すると男の声がでた。
「うぐっ…、麻美、ここか、これがいいのか」
　ギシギシとベットのキシミ音が大きく細かい周期になる。
「イくぞぉ」
「あぁ〜、いいっ、あたしもイくぅぅ〜〜」
　急に静かになりシャーシャーという雑音だけが聞こえている。

　籾山は武司にＯＫサインをだすと、にやついた顔で録音ボタンを押した。
「完璧だよ、まずは場所だけでもと思っていたんだが、ホテルの名前を聞いて即実行に変更したんだ、ここには知り合いがいるんでね」
「それで、この部屋とれたんですね、やけに都合よく話が進むと思ってましたよ……それで、この後どうするんです」
　一仕事仕上げた二人の会話は弾んでいる。
「そう慌てる事もない、今日のところは引き上げだ、後は任せてくれ」
　武司には明かされず、話を振る。
「やけに、もやもやするなぁ、帰ってやるか？」
「いいですねぇ〜」
　疑問を持ちながらも武司は応じてしまうのである。
・
　すでに慣れた籾山のマンションの扉をくぐった武司は、ハッとして驚いた。
　いつもの白木の柱に、雪のように白い女の身体が吊り下げられ、異様にぐったりとしている。
　一瞬で里美だと判断した武司が驚いたのは、吊られている場所が首だったのである。
　首縄にはしっかり体重が掛けられてしまっているようだが、爪先にも少し力があるのを観て、やっと武司は高鳴る鼓動を治めた。
「くるしい」
　息も絶え絶えに訴える里美の声に、武司は籾山への確認もなく吊縄を緩めてていた。
「やさしいなぁ、武司は」
　怒る風でもなく、洋酒の入ったグラスを傾けタバコを手にした籾山がいう。
「これじゃ危険でしょう」
　注意を促す武司に籾山は余裕の風情で答える。
「首吊り自殺が何で死ねるか知ってるか…、あれは吊られた縄が首の輪を締め上げるから死ねるんだ。よく観ろ、その首縄は締まらないようしっかり止めてあるだろう」
　ばたばた慌てる武司に首縄へ注意を向けさせる。
　確かに首縄はしっかり固定され吊縄が張っても硬く固定されるよう結んであるようだ。
「・・・・・・」
　何のことばもない武司。
（そんな問題じゃないだろう）
　縄の扱いもこなれてきた武司が、後手に締め上げられた腕に吊縄を移動させ吊り直すと、麻美の盗聴で、もやもやした思いを再び甦らせてきた。
「前からやってやれ」
　里美に唇を重ねながら武司は服を脱ぎ捨てると、籾山の指示が飛ぶ。
　すでに股間をしっかり上を向かせてた武司は、里美の首筋からうなじを舐めあげ乳房をまさぐり、里美がその気になるのをせかしている。
　”前から”の指示に籾山が何か凌辱スタイルを考えているのだろうと受け取り、里美の草叢の奥に指を添えて濡れ具合を確めると、指示に従って前に向き合った。
　里美の柔らかい腿に手を絡めて片足を引き上げると、立ったまま嵌め合う。
　盗聴で疼いた肉棒の先がぬめった亀裂にこじるように潜り込むと、肉壷の熱く、軟らかい感触が武司の肉棒を包み込む。
「あはぁ〜」
　里美は甘い声をあげると不自由ながら腰をクネクネさせている。
　籾山が吊縄の中ほどに別の吊縄を掛けＹ字に引き上げ、武司の股間の高さに合わせて少し里美を吊り上げた、吊縄と武司の一物に支えられるようにして里美の身体が宙に浮く。
　フラつく里美を、武司が腰に手を沿えている。
（どうも、しっくりこないなぁ）
　籾山はさらに縄を取り出し里美の両足の膝上を縛ると高く吊り上げ開脚させ縄止めしてしまう。
「サービスだぞ」
　籾山がベットの下の引出しを開けると卓球のラケットを少し大きくしたようなパドルを取り出し、パシッと里美の桃尻に一発くらわした。
「うっ…、痛い」
　呻き声をあげる里美は、肉棒を咥えた蜜壷の肉の輪をヒクッと締め上げる。
「どうだ武司、いいだろ」
　スパンキングに反応する里美に繋がる武司に問い掛ける。
「いい感じです、クライマックスの食い締めですよ」
　初めての感触に歓喜する武司は腰がかってに動き出す。
「待てよ、サービスしてやってるんだ、動くな」
　里美の左右の尻をパシッ…パシッ…とスローなペースで交互に叩いている。
　肉の輪は、そのたびに収縮し蜜液を溢れさせている。
「あっ…いやっ…」
　抗う言葉も甘いあえぎが混ざって、クナクナと揺れる尻の動きもパドルを避けるほどでもない、里美は揺れを利用して武司の胸に胸の膨らみの頂を押し付けている。
（動くなと言われても？）
　武司は喰い締められる肉棒の心地よい感触と放出感に、かってに動きだそうとする腰を、きつく止めている。
　クローゼットの鏡にも尻の赤みが分かるほどスパンキングが続くと里美は秘園を熱くして、淫汁は武司の玉袋を超えて滴りだしている。
「あぁ…あっ…」
　里美の声は痛みへの訴えは消え甘い喘ぎと身悶えに変わっている。
　耐えかねた武司が籾山の指示など、どうでもいいとばかりにズコズコと激しい動きで肉棒を突き上げた。
「あっ…だめっ…あっ…イきそぅ〜」
　いきなり激しく身悶える里美の様子に籾山の手が止まる。
　武司も籾山の意図を感じて動きを止めた。
「いやっ…、まだ、……もっとぉ〜」
　腰を嫌らしくクナクナ舞わして亀頭の先に子宮のシコリをこね回す。
「あぁ〜〜、はやくぅ〜」
　悶え狂う里美を見て武司が腰をグイグイ突き上げる。
「あっ…あっ…あっ…」
　武司の突きに合わせて里美の腰が前後に動きだす。
「おらっ」
　と籾山がパドルを激しく振り回す。
「あっ…いいっ…それ…、あっ…やっ、やめないでぇ」
　ビクンビクンと蠢く里美の激しい動きは、白木柱のフックが壊れないかと武司を心配させるほどである。
「あっ…あっ…おねがい、あっ…イかせてぇ〜〜」
　ここぞとばかりに武司と籾山はいっそう激しく、突き上げ、叩く。
「あぁ〜〜……ウグゥッッ」
「ウオッ」
　股間をあらんかぎり突き出し、硬直した身体を痙攣させて悶絶する里美。
　武司は獣のような雄叫びできつく締まった蜜壷にグイッと強引に押し込みながら果てた。
「………」
　武司と里美は死んだように動かない。
「フゥ−」
　数分が過ぎ、武司が一息して里美の締まりきった蜜壷から疲れを知らぬ肉棒を抜き取りソファに身を崩すと大股開きのあられもない姿の里美が目を開ける。
「どうだ、俺のサービスは？、良かったか」
　籾山がタバコの煙を噴き上げながら武司に問う。
「里美、まだだぞ」
　放心状態の武司の返事も聞かず、虚ろな瞳でまどろむ里美にも声を掛けている。
・
　吊られたままの姿の里美をサディスティックな籾山はいたわりもなくユラユラともてあそんでいる。
「次は…」
　ビールをあおるように飲んで武司がいう。
「おぉっ、まだやるのか」
　籾山は驚いた表情を返してくる。
「いやいや、こんどはサービスにまわりますよ」
　武司はパドルを振る手つきをしてみせる。
「そうか…、それなら里美をベットに移してくれ」
　籾山はクローゼットの扉を開けて、大きく透明なビニールのロール巻きを取り出した。
　武司はうなだれた里美を下ろすと拘束を解いている。
　大きなベットのクッションをビニールシートで覆い尽くす籾山。
「武司、この上に大の字で寝かせてくれ」
　籾山の指示に、武司は囚人を運ぶ看守のような気分で里美の腕を後ろ手に取り連れまわす。
「ねえ、怖いことやめてぇ」
　ビニールシートに覆われたベットを見て恐怖を訴える里美。
「心配ない、パドルの叩きにも、けっこうよがってたじゃないか」
　籾山は応じる様子はない。
　武司と籾山は、里美の手足をベットの４本の足に縄で繋ぎ留めていく。
「まずは普通に気分ださせてやれ」
　里美を繋ぎ留めると籾山はなげやりにいう。
「次は籾山さんでしょう」
　武司がいうと、籾山はソファに座りダバコに火を付けた。
「サービスしてくれるんだろ、俺は良いとこ取りだ」
　まずはＳＭショーの見せろ、と言わんばかりに籾山は座りこむ。
　武司は缶ビールの手にベットに寄り、寝かせた里美に口移しで飲ませてはキスを繰返す。
　何をしようとしているのか先の理解できない武司、それでも言われるままに里美を愛撫する。
　里美の大の字に広げた右足の下に、武司は左足をもぐりこませて添い寝すると右手を自由に這わせている。
　唇を重ね、首筋をなめ上げ、胸の膨らみを押しつぶすと脇の下からスルスルと下がって腿からひざへ、ひざから内腿へと右手を這わせていく。
「あぁ〜ん」
　里美の身もだえを聞くと花園のたてすじを下からなぞる。
「うっ」
　肉芽に触れるとビクッと身体を振るわせる。
　あきることなく、やわらかい胸の膨らみを楽しむと硬くとがらせた乳首をこねまわす。
「あぁ〜」
　じれったげな身もだえを魅せる里美。
　武司の手は股間の草叢を越えて秘園を覆うとモゾモゾと蠢かせ、唇を乳首へ移してクルクルとなめ回す。
「あっ」
　硬く尖らせた舌で乳首をはじく。
「もおぉ…、いやっ……いれてぇ〜」
　武司の秘園を覆う手に蜜壷に溜めた蜜をトロトロと滲ませてくる。

　服を脱ぎ捨てた籾山が半立ちのそれを里美の唇に含ませている。
「いい仲だな」
　籾山が武司にいう。
「気分ださせているんじゃないですか」
「おぉ、気に障ったんなら謝るよ、気にするな」
　しっかり上を向いた怒張を握りベットを降りる。
「次はこれでいこう」
　籾山は銀色のジッポを開けて赤い大きな蝋燭に火を付けると武司に手渡す。
　液だまりのない付けたばかりの蝋燭からポタポタと蝋が滴り里美の胸を襲う。
「いやぁ〜〜、熱い、やめてぇ〜」
　突然の熱さに絶叫する里美。
「少し、外しててくれ」
　籾山は蝋燭を外させ、怒張を蜜壷に嵌め込もうとする。
「里美、力を抜け、きつ過ぎて入らないぞ…入れて欲しかったんだろ」
　壷口をゴネゴネと探っている。
　籾山の怒張が弛緩した壷口にヌルッと潜り込む。
「あはぁ〜」
「よし、いいぞ…ゆっくりだ」
　武司にうなづきながら指示する。
「うっ…、あつ…、いやぁ〜」
　蝋の滴るたびに強く反応する里美、籾山はスローな注送を続けている。
　蝋燭に液だまりができ武司がタイミングを計って蝋を操れるようになったころ、蝋の熱さに慣れたのか、熱さも快感なのか滴りにも大きな反応を示さない時がある。
　不思議な状況に、いっそう熱を込めて蝋を滴らせる武司も、その雰囲気に呑まれている。
　籾山は、もう一本の蝋燭に火を付けると自分も蝋を滴らせ始める。
「あっ…あっ…あっ」
　里美の反応が変わってくる、籾山の注送だけでなく蝋の滴りにも甘いよがり鳴きを魅せている。
　首、胸、腹、手、足と真赤に染まり素肌の見える場所が無いほど里美の身体が蝋で覆われたころ。
「あっ、いい…、もっと…もっとしてぇ〜、イかせてぇ〜」
　インキュバスに取り付かれたように、あられもなく乱れる里美がいた。
　籾山は武司に目配せすると、液だまり溜めた蝋を二人して一気に放出した。
「ギャ〜〜、ウグッ、……………」
　声を失い突っ張るように腰を突き上げ硬直した。
　武司が戸惑うほど永い絶息のあと、呼吸を取り戻すと全身をヒクヒク痙攣させ始める。
「大丈夫な……？」
　問いかけようとする武司に、籾山は指を唇に当てて“静かにしてろ”と促して、消した蝋燭を手渡してくる。
　籾山が里美の肌に厚くこびりついた蝋を剥ぎ取ると、そんな刺激にも「あぅ〜」と身悶えている。
　時間をしっかり掛けて蝋をきれいに剥ぎ取ると、ググッと深く挿入し注送を開始する。
　里美は、人が変わったように悶え、喘ぎ、叫んでいる。
　武司は、俺ならとっくに縄は解いてるな、などと思いを巡らせ里美と籾山を観察している。
　激しい注送に何度もイき果てた里美。
「も、もう…だめ、お願い、いっしょに、あっ、いっしょにイってぇ〜」
　そう言ってからも何度かアクメを向かえ。
「イくぞ」
「きてきて、あぁ〜、も、もおだめぇ〜、……………」
　籾山の”イくぞ”声を聞くと、里美は激しく絶息し、ガクッ、ガクッと大きく痙攣し、失神してしまった。
　動きのない里美は、武司にも意識のある時には見せたことのない幸せに満ちたりたなごやかな表情でまどろんでいる。
（女に生まれた方がよかったのか？）
　この時、武司は生まれて始めて女をうらやんだ。