１０．媚薬

　壁と見分けのつかないように飾られた隠し扉を開くと、ひな壇のように一段高くなった床に大きなベットが据えられた寝室が表れる。
「まあ、扉があったの」
　一番になって寝室に飛び込む里見は、犬のようにあちこち走り回って部屋を視察する。
「まあ、素適このランプ色が変わるわよ」
　スイッチひとつで、３色のランプがいろいろな組み合わせで光ると、オレンジ色や草色など、さまざまな光が部屋を照らしだす。
「どおかしら、この色とっても幻想的だわ」
　里美は、気に入った紫色にスイッチをセットして誰にともなく問いかける。
「いいから、昼飯の用意でもしてくれ」
　はしゃぐ里美をたしなめて籾山が指示を出すと、呆れた表情ですねて見せ、
「そおするわ」
　と里美は紫の部屋を後にした。
　麻美は、あいかわらず椅子に拘束した幸一を相手に遊んでいる。
「麻美、運転手の相手は決めてあるんだ、本番するなよ」
　大きくうなづく麻美、籾山は何か思い出したように黒いバッグをあさりだす。
「運転手には、こいつを飲ましてやれ」
　小さな小瓶を麻美に投げ渡す。
「何なの」
　幸一の股間から、顔を離した麻美が問い返す。
「立ちっぱなしだ、その方が面白いだろ」
　籾山は自分たちのために、用心して用意していたものを使う事にしたらしい。
「武司、ビデオはもういいぞ、こっちも楽しもうじゃないか」
　ピンクの空間を漂いつづける夫人を二人してベットへ運ぶ。
「あぁっ」
「まずは俺からだ、一回イかせたら交代するってのはどうだ」
　身体を運ぶ男たちの手にも反応して身悶える恵子、意識もあって手足に力も入っているが立って歩く気はないようだ。
「それなら、カメラ回せますよ」
「いや、もう十分だ、薬が効いてるからな、二人で相手しても持たないぞ」
　籾山はおまえもぬげとばかりに顎で合図して、服を抜き捨てる。
「恵子、足開かないと、気持ちよくなれないぞ」
　白い太腿を籾山が撫ぜさする。
「あぁ〜」
　おしげもなく開かれると、あらわになった花園は腫れぼったく充血させ、欲情をむきだしに樹液を滴らせている。
「さっきより興奮しているな、指で開いてみろ」
　抗うようすもなく虚ろな瞳の恵子夫人の白く細い指が、赤く厚くなった花びら重なる。
「あっ」
　器用に動く指先が半ば口を開いた花弁を押し開く。
「こんなぁ…」
　顔をそむけた恵子は、指先が花芽を愛撫しようとする指を必死で留めているふうで落ち着かない。
（はやく、はやくしてぇ〜）
「だめだ、そんなんじゃ、両手でやれ…顔はこっちだ」
「こうかしら、あぁっ」
　潤んだ瞳を思わず閉じて身悶える。
「手を外から回せ……そお、足を抱え込んで…腰を浮かして突き出してろ」
　籾山は、半立ちのそれを肉の割れ目にあてがって擦りあげる。
「あっ、あっ」
　腰を震わせ指を外してしまう恵子。
「いいから、足を抱えて腰を浮かしてろ、どうだ、…どうして欲しい」
　大きく怒りきった肉棒を、濡れ光る割れ目にひとしきり絡めていう。
「このままでいいのか」
「あぁっ…」
「言わないと、いつまでもこのままだ」
「いやぁ、……、あっ、はやくぅ〜」
「ほらっ、これで十分よがってるじゃないか」
「あっ、もうだめ……い・れてぇ」
　腰をくねらせ、片手を足から外すと、素早く籾山の肉棒を絡め採りズボッと埋め込んでしまう。
「あ、あぁ〜〜」
　籾山は、やられたとばかりに苦笑して武司に目を合わせる。
　すかさず腰を振付けてくる恵子。
「どうだ、本物は…」
「あっ、いい、あっ、お願い動かしてぇ〜、あぁ〜」
「よく腰振れてるじゃないか、それでいいだろ」
「あっ、あっ」
「いやぁ〜、突いてぇ〜、あっ、いっぱい突いてぇ〜」
　籾山は容赦なく、これでもかと激しく突きあげる。
「あぁ〜ん、そう…、突いて、あっ、突いて、突いてぇ〜」
「あぁ〜〜、いい、イくイく、イくぅ〜〜〜」
　籾山の抽送に激しく応えて全身を昂ぶらせ、張り裂けるような大声で絶頂を迎える恵子。
　籾山は、しかたがないというそぶりでベットを降りると武司に代わる。
「半分、寝てるんでしょ」
　これじゃ面白くないといった思いをあらわにしていう武司。
「そうじゃない、抑制が外れてるだけだ、やってみりゃ解かる」
　疑念半分で武司はベットに上がると、夫人の顔先に気のない一物を投げだすと、パクッと咥えてくる。
　武司の鎌首が持ち上がると、大きく首を振り始める恵子。
「どうだ、寝てるなんてことはないだろ」
「ん、まぁね」
　籾山の問いにあいまいに答えて、夫人の舌の蠢きを感じとる武司。
「はぁ、もう入れてぇ」
　手のひらでしごきながら、早く交合をと切望する恵子。
「じゃぁ、うつ伏せだ、尻かかげて待ってろ」
　武司の声に素直に従い、ひざを大きく開いて背中を反らせ秘部をさらした夫人の後ろに立つと籾山に目配せして浅い抽送を開始する。
「あっ、あっ、あっ」
　武司がグッと腰をいれ深く押し込むと、クナクナ腰が蠢きだす。
「うぐっ」
　表情を変える武司。
　夫人の腰振りは、子宮のしこりを武司の筒先に器用に丸くなぞると、結び目を往復する。
「これはすごい、おぉっ、こんなことできるんですね」
「何のことだ」
　籾山は、武司の意味不明の言葉に問い返す。
「子宮を逆に擦りつけてますよ」
「あっ、あっ、またっ、あっ、イっていい？」
「あっ、イくぅぅぅ〜」
　返事も聞かずにヒクヒクと痙攣させて、武司をきつく締め上げてイき果てる。
　恵子夫人がイくたびに交代し何度も交合を繰返す。
「時間制にしよう、これじゃやってられない」
　あまりの頻度にルールを変える籾山。
「１５分交代にしよう」
　と新たなルールで応戦する。
　恵子は薬の効果で、あからさまに反応をつづけている。

　麻美は、相変わらず運転手の幸一をもてあそんでいる。
　本番は籾山に規制されているので、素股で極上のサービスを続けているがさすがに面白くないようだ。
「これって、ちょっとした拷問だわ、あぁ、じれったくて」
　おあずけされた犬のような気分で、納まりのつかない麻美。
「少し、替わってやるよ」
　籾山は麻美の相手をする。
　手足を拘束され転がされた幸一は、拘束意外に何の不満もない特異な環境に流されている。
「運転手さんよ、名前は何ていう」
「幸一、…佐藤幸一です」
「こういちさんよ、どうかな、…仲間になる気はないか？」
「…」
「あっちじゃ、守る物も何もないとこまで行ってる。…今さら正義感ふりまわすこともないだろう。…え」
　籾山は、麻美の充血しきった柔肉に軽く抽送しながらいう。
「どうしろと…」
　幸一は十分その気である。
「今までどおり、運転手をしてもらえればいいんだ。恵子夫人の相手もさせてやるが、どうだい…いい話だろ」
　籾山が、大きな餌をちらつかせると、幸一はコクリと頷き、打って変わって落ち着いた表情を取り戻している。
「話はついたな、…旦那と娘は何時に迎えに行くんだ」
　下調べで霧島家の動きは十分把握済みの籾山。
「直美さんは、電話で連絡があります、時間は…？、旦那さんは今日は１９時に…」
「そうか、それならまだ時間はあるようだが、まっ、この後はしっかり溜めといた方がいいぞ」
　忠告して麻美の唇を添えさせる。
「それより、縄を解いて…」
　恐る恐る要求する幸一は、しっかり仲間気分でいる。
「そうだな」

　時間制の交代で恵子夫人に繋がる武司。
「あっ、あっ」
　薬の効果であられもない恵子夫人の狂態に、唖然とする武司は半ば興ざめしてまう。
「あっ、すごい」
（従順過ぎて、これじゃ面白みにかけるなぁ）
　武司は戦意喪失ぎみである。
「もっと、あっ、もっとぉ〜〜」
（こんなんじゃ、見てる方がいい）
　恵子夫人の極端な反応は、武司の一突き一突きに応えて喘いでいる。
「あっ、あっ、だめ、抜いちゃだめぇ〜〜」
　武司は、麻美と繋がる籾山に手招きして交代を促す。
　籾山は壁に掛けられた時計をチラッと見ると、指をさす。
（まだ、時間がきてないぞ）
「どうだ、言ったとおりだろ、一人じゃ到底太刀打ちできないって」
　武司は大きく頷き返す。
「交代して下さいよ」
「時間がまただろ」
「じゃ、張形でも使いましょう」
「だめだ、高貴な夫人相手に失礼だろ」
　武司は以前と変わって、超贅沢な会話をしている。
　交代制で恵子夫人の相手は、夫人がイき疲れるまでつづいた。
（やっと薬の効果が薄れてきたか）
　力なく汗にまみれ髪を振り乱し、ボロ布のよう横たわって夫人がやっとおとなしくなると、ほっとした気分の武司は、感情の伴わない性交にこりごりしていた。
　薬のおかげで征服感を、逆にそがれて引いてしまった武司だった。

　籾山が、麻美との繋がりを解き放ち幸一を自由にしたころ、淫に穢れた霧島家にかろやかな電話の音が鳴り響く。

つづく