| １１ 肌寒さを感じ始めた夕暮れ時。土曜日の渋滞は、仕事帰りの者には眼前に走るファミリーカーに苛立ちを覚えさせる。 緑の運転するコンパクトカーは、その苛立ちを感じさせず、車間の狭い運転は平常心でないことの現われだった。 「キィィッ」 「あっ・・・危ない。」 前面に停車している車のバンパーに当たる寸前で止まった瞬間、我に返った緑の心境は誰にもはかれないだろう。いまだ自問自答し続ける緑の内面は、答えの出ないまま、問題を作り続けていた。 「ピロロロロ・・・は、はい・・・吉川です。・・・えぇ、あと、三分で・・・はい、失礼します。」 県庁裏の路地を前にウィンカーを出すと、渋滞の隙間をぬい、細い路地へと滑り込む。クランクを抜けると、手招きをする女が一人いた。 「緑さん、ごめんなさい・・・本当は、私が送る予定だったのに、車が故障しちゃって・・・乗っていい？」 「えぇ・・・狭いですけど、どうぞ麗子さん。」 下着屋の女主人は、年齢には似つかわしくないミニのデニムスカートを穿き、その隙間を押さえながら車内に乗り込んだ。 「今日のイベントって、お店じゃないんですか？」 「ここじゃ狭いわ。・・・カーナビに設定するから・・・そこまで行って頂戴。」 「は、はい。」 設定された場所を再度確認する緑は、人の集まりそうでない場所に不安を覚えた。それを口に出さず進行方向をナビに委ねると、麗子自らがその不安に切り込んだ。 「緑さん、今日のイベント・・・杏子さんから聞いた？」 「い、いいえ。杏子は来ないんですか？」 「えぇ、連絡がないの。・・・体でも壊したのかしら？」 「どんなイベントなんですか？」 「そうね・・・展示会ってとこかしら。」 「下着のですか？」 「そうね・・・。」 大体の想像をつかせた緑は、ナビの誘導に従い港湾基地に続く直線の道路を進む。およそ、２０分で到着するであろうその道中の間、会話の先手は麗子が握り、緑への他愛無い質問が続く。 プライベートに関することは特に聞かれる事ないまま、数多くの信号を通り抜け、ナビの誘導は目的地付近を告げて終了した。 「そこの３番の倉庫・・・その裏に止めて。」 「は、はい・・・ここで。」 「ありがとう・・・さ、緑さん・・・行きましょ。」 車を止め、麗子の後をついていく緑。薄暗い倉庫の事務所にたどり着くと、３人先客がいた。その３人は麗子を見つけると、異様にビクつき部屋の隅に固まった。 「ご苦労さん・・・今日は、お客様を連れて来たわ・・・挨拶なさい。」 「さ、さゆりです。」 「さちえ・・・です。」 「ゆか・・・です。」 従業員であると感じた緑は、実名で挨拶した。 「は、はじめまして・・・吉川緑といいます。」 「じゃぁ・・・３人はスタンバイして・・・ほらっ・・・早くしなっ。」 麗子のきりっとした声が響き、荷物すら持たぬ３人の若い女達は、事務所の奥へ消え、扉の奥に響く階段を駆け下りる音だけが緑の耳に届いた。 「３人は、お店の？」 「えぇ・・・仮契約の社員、そんなとこよ。」 「このイベントに、杏子も参加を？」 「えぇ、もちろん・・・人気があるのよ、杏子は。」 杏子の名を呼び捨てにした麗子の顔は、先程の３人の女達に向けられたものと同じだったが、後ろ姿しか見えぬ緑には判らなかった。 「さ、始まるわ・・・行きましょ。」 緑の手首を強く掴んだ麗子は、緑を引きずるように地下へ繋がる階段へいざなった。その先には数人の話し声が聞こえる。男の声や女の声、様々な年齢の声色が聞こえる。 暗闇の中を進み、非常口の明かりだけが頼りの入り口には、ガタイのいい黒人が歩哨のごとく立っていた。 「ボビー・・・みなさんお揃い？」 「マダム・・・みんな、ショータイムを早く・・・と、うるさいねぇ。」 「じゃぁ・・・始めなさい。」 「ＯＫ・・・。」 ボビーと呼ばれた黒人は、麗子の後ろの緑に目をやり、舌なめずりを見せ付けると、裏方に消えた。ボビーが掛けた扉の鍵は両方がシリンダーで、その鍵を持つものでなければ、裏も表も閉ざされたままだ。 １０程のテーブルに２人づつ、総勢で２０人余のお客は、成りの良い老紳士やその連れ合いと感じさせる。麗子と一緒に席に着いた緑は、一番後ろの席でその客層をリサーチしていた。 「杏子も、ここに・・・どういった感じで参加を？」 「そうねぇ・・・始まるわ・・・あれよ。」 幕が開いた前面のステージには、鉄格子が組み込まれ、薄暗い光だけがその中を照らす。誰もいないそのステージの袖から現れたのは、先程挨拶した、さゆりと呼ばれる若い女だった。 ムーディーな音楽が流れ始めると、私服姿であろうさゆりは、虚ろな目をし、緩やかに腰を振り出した。 柔らかな動きで腰を動かしながら、体のラインをしきりに手でさすり、スレンダーなラインを強調している。 時折、デニムのショートパンツの股間に指先を添わせる姿を始めると、緑は行ったことのないストリップ小屋を思い浮かばせた。 「れ、麗子さん。・・・これって・・・ストリップ。」 「まぁ、失礼ね・・・彼女達は、素人よ・・・それに、賃金も発生しない・・・趣味でやってるの。それに、これは、ランジェリーのファッションショーよ。」 「えっ・・・じゃぁ趣味で・・・杏子も。」 「そうよ・・・あのこったら・・・露出の癖があってね・・・外でやると捕まるし、仕事にも影響があるからって・・・ここで、発散してたの。」 「そ、そうなんですか。」 杏子の内面を知らされた緑は、どこまでが真実かを疑ったまま、さゆりの動きに注視した。腰を動かし始めて２，３分が経つと、上半身を覆っていた服を脱ぎ去り、色白な肌つやを見せる。麗子から貰った下着よりも面積の少ない布地は、さゆりの乳首を隠せぬまま、乳輪を露出させていた。 「小百合嬢・・・乳首を勃起させないと・・・乳輪が見えちまうぞ。」 品のない野次が飛ぶと、さゆりは目を瞑り指先をかろうじて覆われた乳首の先端を弄った。先端に凝縮されつつある乳首は、麓の乳輪を縮ませると、二プレスほどの布に隠された。 乳首の先端への刺激をやめると小百合の指は、ショートパンツにかかり、ステージの後ろを向くと、腰を曲げするりと脱ぎ去った。 「おぉ・・・小百合嬢の尻は、白桃のようですなぁ・・・あなた、この前・・・どうでした？」 「えぇ・・・あそこはもちろん、もう一つも絶品ですよ・・・正規採用にしてしまうのはもったいないくらいで。」 「ほぉぉ、じゃぁ今晩は、是が非でも・・・私が。」 緑の前に座った二人の６０代の老紳士の会話の中身は、品のなさは理解できたが、隠語的な物までは、判別できなかった。 杏子が、この小百合と同じショーをさせられ、いや、自ら率先していたとは想像も出来ず、再び麗子に問い掛けた。 「ほ、本当に、杏子は・・・このステージに自ら立ったのですか？」 「くどいわね、本当よ・・・ご本人に聞いてみればいいわ。」 「聞きようが・・・。」 「ん？どうしたの・・・みどりさん。」 「いえ、別に。」 再び小百合のステージに目をやると、後ろ向きに脱ぎ去った状態を変え、そのまま膝をつき四つん這いになっていた。尻の割れ目と陰部を覆う布は、想像していた物より多い。 その割れめに注視した緑を横目に、麗子はマイクを握りＭＣを始めた。 「現在、小百合嬢の身に着けております新素材のパンティーは、染みを作りません。よって、急な尿漏れなどを御気にされますご婦人方でも、ご安心かと。・・・では、小百合嬢・・・実演を。」 「は、はい・・・ボビー様・・・小百合のお友達を・・・。」 「サユリ・・・ツレテキタヨ。」 黒人の手の大きさに隠れそうな電気マッサージ器は、親指二本分くらいの大きさだった。渡された小百合は、たじろぐことなくスイッチを入れ、パンティーの上から陰唇周りを刺激した。 「あんっ・・・。」 あてがった瞬間に電気を感じたか、体は仰け反りパンティーの食込みはより深くなった。こけしの頭を隠されている陰核包皮にあてがうと、左右に尻を振り、何かを求めるような声をあげる。 「あぁぁ・・・ひぃぃ・・・あぁぁ・・・いぃぃ・・・あぅぅぅんっ。」 「どうです、みなさん・・・小百合嬢の・・・パンティーは。」 「おぉ・・・染みが付いてない・・・いやいや、まだ刺激がたりんのじゃないか？」 「ボビー・・・お手伝いを。」 「ＯＫネ・・・サユリ・・・フリーズ。」 パンティーの股布に刺激を与え続けた小百合の体は、いとも容易くボビーに抱えられ、テディーベアの縫いぐるみのように座らされた。背後に回された両の腕は、インシュロックで絡め取られ身動きを奪われた。 転がった電マを手にしたボビーは、幼児に小便をさせるようなポーズを取らせると、その間を覆うパンティーの中心に刺激を与えた。自らする刺激には抑制が働いていたが、女のツボ、小百合の体を知り尽くしたボビーの刺激は、絶え間なく続く波のようで、押しては引きを繰り返し続けていた。 「あぁぁぁ・・・・いぃぃぃ・・・は、はなしてぇぇ・・・で、でるぅぅぅ。」 「サユリ・・・スプラァァシュッ。」 ボビーは、放たれた小百合の声と共にあてがっていたマッサージ器を離し、噴水の蓋を開いた。解放されたノズルからは、無色透明な液体が放射状にパンティーの隙間から迸ると、前面にいた男達のテーブルにまで届いていた。 「ほぉ、染み一つない。周りは洪水だが、汁気を感じさせないとは、恐れ入った。」 体を小刻みに震えさせたままの小百合は、ボビーに持たれかかったまま薄暗い照明に目を持っていく。恥ずかしさと興奮具合が高みに昇り、視線はおぼつか無いでいた。 飛沫の全てを数えんばかりに注視する緑の表情を横から覗き、その興味ありげな表情を見逃さなかった麗子。少し開き気味にした股間の隙間に手を差し入れると、周りの空気の温度差を感じ取っていた。 「ひっ、や、やめてください麗子さん。」 「あらぁ、緑さんって、やっぱり。」 「え？やっぱりってなんですか。」 「隠さなくても・・・ほぉら。」 股間に差し入れた麗子の手を叩くことなく、太股できつく挟み込んだ緑の動き。その仕草で全てを感じ取った麗子には、小細工は必要なかった。 挟み込まれた指先を上下に擦り、数度繰り返すうちにショートパンツの隙間から指を這わせ、レギンスの上から湿原を探索する。 「いいの、周りは気がついてない。皆、小百合のショーに夢中よ。」 「あっ・・・。」 「緑、かわいいわ。そぉ・・・脚をゆっくり開いて、熱いわぁ、湿ってる。」 麗子の指先を動かぬように挟み込んだ太股は、徐々に開き始め、麗子の指先は容易に湿原の入り口を出入りするようになっていく。 潜り込んだ指先は、湿原の入り口に爪を立て、最初の扉をこじ開ける。 「ビリィィィ。」 大量生産のレギンスは、麗子の爪に負け、いとも容易く関門を探索者は突破した。周りの視線を気にする緑は、１メートルほどしか離れていない男達へ視線をぶつけるが、小百合のスプラッシュショーに釘付けで振り返る者はない。 「緑、今日の下着、いけてないわね。この前のプレゼントどうしたの？」 「あぁぁっ・・・き、きのう穿いたので。」 「まぁいいわ。・・・ジィィィ。」 隙間からの動きに焦れた麗子は、ボビーのマイクパフォーマンスに合わせ、緑のファスナーを押し下げ、飾りだけのベルトのバックルをも緩めた。抵抗のない緑は、視線を右へ左へと落ち着かず、麗子の手首を軽く抑える程度でその行為を流している。 量販店で売られている緑の穿いている下着は、麗子の気分を害し、耳元でそれを罵倒した。 「安物の下着を選ぶ女は、自分の価値を知らない安物の女。見えないものにお洒落をしてこそ、魅力的な女になれる。そんなショーツを選ぶのはどこぞの公務員だけね。」 その罵倒に反応したか、緑の掴んだ麗子の手首に力が加わった。空手家の女と対峙して勝てるはずはない。その事をわきまえた麗子は、女を封じる手立てを開始した。 「あんっ・・・だ、だめっ。」 「あら、匂ってきそぉ・・・これだけ湿らせて、やっぱりそうだったのね。」 「な、なにが・・・で、ですかぁぁぁっ。」 「緑は、見られたい女。・・・見られることで昂ぶりを感じる女。小百合も、幸恵も・・・由香も・・・杏子も、みんな同じ。」 滑る陰唇を掻き分け指先の先端は、膣道へと侵入する。麗子に見透かされた性癖の恥ずかしさと女の全てを知るその指先で反論はおろか、無言の肯定をしてしまう。 「うぅぅ・・・あぁぁ・・・み、見られてる？」 「いいえ、まだ見られてない。・・・一声だせば、気付いてくれるわ。」 「あぁぁん・・・こ、怖い・・・あぁぁん・・・だ、出せない。」 「そうだ、・・・ステージに立ってみる？」 「あぁぁ、そ、それは。」 「気にすることないわ、誰も知らないあなたの事なんか、マスクをすれば、どこの誰だか。」 「・・・。」 「決まりね、否定の顔じゃない・・・。」 指先を鍵状にし、緑のＧスポットを捉えた麗子は、マイクを握るボビーに目配せし、次のステージの準備を急がせた。 |
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| 2012.3.10掲載 |
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