| １９ 「カラン」 「マダム、お邪魔しますよ。」 「あら、鎌田先生ったら、新しい彼女？それとも、ペット？」 「・・・。」 下を向く緑を押し出すようにし、麗子の眼前に送り出す。鎌田から緑への命令はなく、あくまでも麗子から指示させている。自らの性癖を露にするのを避け、その性癖を悟る麗子から反射させているのだった。 「ちょうどよかったのよぉ、緑先生にお願いがあって、時間いいかしら？」 「は、はい。」 麗子への視線に続き鎌田への承諾を視線にて送る。 「あぁ、構わないさ。吉川先脆は、不思議に思う瞬間も時間の過ぎ去るのを待つだけの緑には聞き流すだけだった。 緑は本題を聞き入れることなく、新たな３０代後半の来訪者を迎える。 「ごめんください、あのぉ。」 「あら、劉さん、いらっしゃい。さぁ奥へ。」 「先客が居られるのであれば、わたしはまた、出直しますが。」 「いえ、いいのよ。先客ではないわ、ねぇ鎌田先生。」 「あぁ、僕らは空気だと思っていてください。良い、お買い物を。」 「空気でいられると困るわ先生。」 「どういうことかな？」 鎌田の疑問を覚える雰囲気を感じ取った緑は、麗子の言葉に耳を傾ける。 「劉さんはね、愛する奥さまのために、情熱的なランジェリーを探しに来られたのよ。」 「えぇ、恥ずかしながら。」 「今まで地味な下着しかもっていない奥さまを、助平な女にすべく、先日サンプルを持ち帰られたのよね。」 「えぇ、ＤＭのような感じで置いていたのですが、その夜、私の目を盗んで試着していたのですよ。」 「ほぉ、では、奥さまと来店されればよろしいのでは？」 「いやいや、こっそり隠れて、それを覗き見。これが、意外な興奮でね。」 「あなたも解るわよね。」 麗子は緑に向かい目配せをし同意を求めている。劉のいるこの場に自分のいる意味が、まだ釈然としない緑は、麗子と劉に愛想で薄い笑みを見せる。 「先生、そこのマネキンを見ていただけます。」 入り口のショーウィンドに飾られた顔のないマネキンを覗き込む鎌田。なんの興奮を覚えず再び麗子に聞き返す。 「マダム、これがどうか？」 「でしょ。血の通わないものが身に着けても興奮しないし、パッション溢れるショーツでも、セルロイドを覆うだけではここも反応しないわ。」 麗子は、鎌田の股間をポンとはたき、血の気を帯びていない一物を刺激する。 「そうか、なるほど。これは酔狂だ。」 麗子の考えを一瞬に感じ取った鎌田は、緑の肩をつかみ麗子に押し出した。鎌田のひらめきに体を強張らせたのが解った麗子は、緑の体を柔らかく抱きしめると、背後から耳たぶを舐め、理解できるよう囁いた。 「緑先生、あなたがマネキンになるの。いやらしいお汁や汗をかくリアルマネキンよ。」 |
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| 2012.8.20掲載 |
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