| ２０ 「そんなことって、む、むぅぅりぃぃで、あうっ。」 麗子の指先が尻肉に喰いこむと否定の言葉は、全てを発する前に蒸発する。 「吉川先生、いいのですか？職務停止など、思いのままですよ。」 「マダム麗子。せ、先生って、この女性は？」 「いいえ、尊敬の念を込めた呼び方ですよ、この国の。」 「そうですよね、まさか、まさかねぇ。」 笑みを浮かべ、劉の視線は、麗子の指先が侵食するスウェットの割れ目にいっていた。指先の動きは、緩やかながら、緑の顎は上がり、下唇を噛み締める仕草に、劉と鎌田の目尻は下がり続ける。 「あなたのパートナーですかこの女性は。」 「いいえ、今のところそうではない。パートナーというよりも、私はこの者の命令権者。」 ある程度の事情を理解した劉は、麗子の動きが止むのを待ち、股間のポジションを整えた。 「鎌田先生、カーテンを閉めてくださらない？」 「あぁ、お易い・・・開けたままでも吉川先生は、そのほうが？」 「し、閉めてください。お、お願いします。」 「閉めろと、そして、リアルマネキンになることを同意すると。」 「・・・。」 麗子に刺激され上向いた顎を胸元に二度近づける緑。ショーウインドのカーテンと入り口のカーテンを閉めた鎌田は、麗子に合図する。 「さぁ、リアルマネキンさん、その色気のないスウェットをお脱ぎなさい。」 劉からの視線だけを避けるように、反転した緑。スポーツブランドのロゴの入ったＴシャツをたくし上げ、手を差し伸べた麗子に渡す。白に黒いレースがワンポイントのブラを隠すようにカップの部分に片手を当てると、残った側の指先は、スウェットのゴムに掛かる。 数秒のためらいの後、引き締まった格闘家の双尻が劉の目に飛び込んだ。戸惑いのない目の動きは、麗子と鎌田にも判り、緑の露出癖を煽るように囃し立てた。 「吉川先生、お客さまに尻を向けるとは礼儀知らずな。」 「ここでは、せ、先生って呼ばないでください。お、お願いします。」 教員であることを今この場だけは、その事実を葬りたいがゆえの言動だった。 床に落ちたスウェットを拾い上げる鎌田は、後ろ向きのままの緑の顔を下から覗き込んだ。 「この姿を晒しながら、先生と呼ばれるギャップ。本当はたまらなくここを熱くしてるんだろうに。」 スウェットの股間部分を鼻に当てがう鎌田。答えはその部分の湿り具合が指し示していた。 「そ、そんなとこを・・・や、やめてください。」 鎌田から奪い取ることはせず、内股に力を入れ、クネクネと身悶える緑。鼻先からスウェットを離した鎌田は、勝ち誇った顔で緑に視線を当てた。 「図星だねぇ。みどり先生。」 「マダム、この女性って、本当は教師なんじゃないですか？」 「どうかしら、体つきを見ていただければ、想像がつきますでしょぅ。」 首を斜めにかしげながら、緑の下着姿を舐めまわす。締まったウエストに、上腕に程よくついた筋肉、女性らしさの残る太股の付け根。その辺りを凝視し終えると、劉は自分なりの答えを見出す。 「拳法の師範？そんな感じ？」 「は、はい。」 緑はそういって頷くと、麗子と鎌田の表情を伺う。満足気に笑みを浮かべていた二人を見る緑は、自身の職を隠し通すことを許されたと感じ取った。教師という一枚の鎧を脱ぎ捨てた緑は、女の鎧に手をつける。 ブラのホックに指をかけた瞬間、麗子の手がそれを制す。 「ちょっと待って。ムードのかけらもないわ、このまま脱いだんじゃ。」 緑の手首を掴んだ麗子は、フィッティングルームへ誘う。カーテンを開けたままのフィッティングルームへ入れられた緑は、鏡に写る自分を見ることが出来ない。鏡越しに覗き込まれる劉と鎌田の視線は、夏の日差しの反射のように鋭く、白地に映える黒のレースを焦がさんばかりだった。 「これと、これ、それにこれ。劉さま、とりあえず、この三種類でどうかしら？」 「あぁ、いい感じです。それで、お願いを。」 「そ、そんなものじゃ、隠し切れ・・・。」 「何を隠すのかな？淫らに生えそろった陰毛か？それとも、男を咥え込むビラビラか？」 麗子の手の上で広げられた、ランジェリーを肩越しに目にする緑は、処理されていないはずの下腹部の繁茂を思い出す。 「しょ、処理をしてないので。」 「いいのいいの、気にしなくても。そういうのって男性喜ぶのよねぇ。」 「あぁ、堅い女が、手を抜いた感じがたまらないんだよ。」 「先生、大丈夫。わたしの妻、尻の周りもいっぱいね。だから気にならない。」 手渡されたランジェリーを手にすると、一番おとなしめの物を手に取った。フィッティングルームの鏡は、鎌田と劉を写し、麗子は自らを消すように幕の袖に消える。 煽りを入れる鎌田の口振りは、緑への圧力となり、それに流されるように間接照明の下でブラのホックに手をやった。ホックは音もなく外れたが、劉と鎌田には緑の乳が揺れ弾ける音が聞こえていた。 片手で乳頭の先を隠すようにしている緑は、器用に汗を吸っているブラをカゴに入れると、乳首の周囲のみを隠すだけのブラに手をやり肩を通す。 「ゴクリッ。」 劉の咽喉は渇きを潤すように鳴る。女格闘家の乳首の色は気になったが、巧みに隠された動きは、劉の満足度を上げるだけだった。 下乳を持上げるようにワイヤー部分を手繰り、露出の多いカップにフィットさせると、肩に掛かるストラップを指で摘み、鎖骨の端に沿わせ装着を完了させる。 鏡越しに二人の男の視線を受け、合いかけた視線を避けようとする緑。そのそらせた視線の先には、繁茂を隠す気のないパンティーがハンガーに掛かっている。 手に取り、見知らぬ男に見られてはならぬ所を隠す部位を確かめると、その生地の薄さと面積の少なさが良くわかる。 「・・・。」 数秒手に持ったまま緑は、微動だにしないでいる。自らが量販店で購入したパンティーの股布に汗ではない何かを感じ取っていた。 『う、うそ、なんで濡れてるの。』 ジクジクとした股布のぬかるみを気付かれぬまま、履き替えるのは至難である。間接照明は、緑だけをこうこうと照らし、劉と鎌田の視線はそこに注がれることは、緑もわかっていた。 クルクルと巻き取るようにパンティーを脱ぎ始める緑。尻の割れ目が目を出した頃には、劉は鎌田より二歩前に出ていた。太股に絡まり始めたパンティーは、団子虫のように纏まり始め、股布の汚れは劉の目には触れずにいた。 「ほぉぉぉ、引き締まった尻。わが妻と違い、尻の毛は見当たりませんねぇ。」 「ひっ、のぞき込まないでください。」 劉の鼻息を太股の裏に感じた緑は、劉の視線を遮るように手をあてがう。鏡越しに視線を浴びせる鎌田は、処理を怠ったままの繁茂を目にし、緑を侮辱する。 「その助平なパンティじゃ、吉川先生のま○げは隠せそうもないねぇ。あとで彼氏にでも剃毛してもらわんとなぁ。」 鎌田の言葉を聞き流すように、パンティーを脱ぎ去るスピードを加速させた緑は、汚れたクロッチの部分を覆い隠すと、洗濯後にタンスにしまうような形にしたパンティーをカゴに入れる。 尻の割れ目を覆うように手を当て、半身の形でしゃがみカゴの中のパンティーをブラの下に押し込むと、三角形の少ない面積を形成させる紐状のパンティー紐をあやとりのようにたくし、左足から足を通す。 無防備に陰唇が目に付く時間を最低限にするべく、右足も素早く通すと、隠し切れない繁茂を、精一杯目に触れぬよう押し込んでいる。 「スーパーの詰め放題ですか？吉川先生。そんなに押し込んでも、あふれ出しますよ。その仕草のほうが我々を虜にさせているというのに、ねぇ。」 「そうね、普段見られない仕草。そこが男のここを振るいたたせる。」 その言葉に面食らった緑は、繁茂を隠すことを止め、陰唇を隠すようにビキニラインをあげさげする。ポジションを整えると、居場所を失ったようにモジモジし、男達より麗子の視線を気にし始めた。 「マダム、リアルマネキンは着替え終えたよ。さぁ次はどうする？」 「あら緑、自身ありげな雰囲気ねぇ。こんな助平な格好でも、空手家の血は抜けないのね、背筋がピンとして、胸を張ってるわぁ。」 「は、はずかしいので、み、見つめないで。」 「劉さま、どうかしら？」 「とてもいいね、助平な感じも、フィット感はどう？肌触りとか？」 「そうね、前戯の時の肌触り、男性には大事な部分かも。パンティーに指を差し入れてクチュクチュされると私、・・・あぁぁん。」 麗子は、鎌田へ合図すると呼応するように口をついた。 「劉さん、お試しをしてはどうですか？ち○ぽを使うだけが男じゃぁない。これだけ助平なパンティーをすぐ脱がせてしまうのは、盛りのついた中学生だけだ。ねぇ吉川先生。」 「そ、そんな。」 「盛りのついた中学生相手であれば、パンティーはただじゃまっけな布切れ。しかし、我々のように経験を重ねると、女の盛りを焦らし逸らすのも昂ぶりに向けた一歩だ。それには、脱がさぬように前戯が進められるのもいいものだと思うがね。」 鎌田の言葉に反論を挟めない緑の脳裏には、守に化けた攻児との交わりの映像が繰り返されていた。 |
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| 2012.8.22掲載 |
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