| ２１ 鏡に向かったままの緑の背後に劉の鼻息が掛かる。 リアルマネキンと呼ばれた緑は、ＦＲＰ製のマネキンと同じように動きを停止している。思考は、停止していないものの、意思とはかけ離れた女の部分は短時間で露呈する。 胸とはみでた陰毛を隠すため両脇を閉めた緑の背中に、自ら忍び寄り密着させる劉。身長差のあまりない二人は、互いの背と腹を重ねると鎌田の視界から緑の半裸が消える。 のぞき込むように二人を写す鏡に見入る鎌田。鎌田の視線を気にも留めない劉の右手は、緑のブラの下を持上げ、締まった乳房を解し始める。 左の手は閉まった脇をくぐり絡ませ、腹筋を撫でさすり、臍の辺りをつまみ筋肉の質感を吟味していた。 「・・・うぅ・・・。」 「硬い、女の体に思えないね。」 「おっぱいはどう？」 鎌田の問いに劉は、下乳を人差し指と親指に添わせユルユルと揉み上げる。 「ここは、鍛えようがない。女の柔らかさだね。」 「今日は彼氏に鍛えてもらう日だったようだけど、劉さんに鍛えなおしてもらえるな吉川先生。」 「も、もう、よして・・・。」 拒否反応は言葉尻だけで、揉み込まれている劉の手を振りほどこうとしない緑。その反応にそれ以上の行為への正当性を見出した劉は、左の指先を繁茂を覆う三角形に移動した。 「あっ。」 小声で反応する緑は、左手も拒否しない。劉の指先を振り払いもせず、薄いポリエステルの生地に覆われた恥丘を隠すことを諦め自分の左手はだらりと力を抜いた。 ビキニラインに沿ってはみ出した毛を撫でさする劉。鏡に写る緑は恥辱に震え、閉ざされた太股の内側はかすかに汗ばんでいた。 薄い生地を撫でさすることから、繁茂の部分を直接確かめるべく、劉の左手は三角形の底辺部分のゴムをくぐった。 ３０秒ほどかけながら、繁茂の部分を移動させる。両の乳頭付近を覆っていた右腕もだらりと垂れ下がると、両の肘から下の腕には鳥肌がたっていた。 「シャワーも浴びてないので、さ、触らないで、お、お願いします。」 首を９０度曲げ、劉に懇願するが、シャワーを浴びていない事実が気に入ったのか、指先を深く差し入れる。汚れの部分を捉えるべく、三角形の頂点を目指し、五本のうち長い三本の指を湿地に送り込む。 「あんっ、よ、汚れます。」 「伸縮性は申し分ないですよ、マダム。指を曲げても違和感がないし、柔軟に動かせる。」 「あぁぁっ・・・。」 「そうでしょぉ。緑先生ったら、どこまで触られてるか、よくわかるわよぉ。」 劉の手の甲は三角形に完全に覆われている。指先の動きは、傍から覗く鎌田にも良くわかっていた。どこをどう刺激しているのか、聞くに及ばず、緑の吐息と劉の指先の動きは完全に一致している。 「割れ目を越えて、その先の蟻の門渡りまでいけるね。その先は・・・。」 「その先は裏からでもいいんじゃないですか劉さん。」 「そうだねぇ、欲張ってゴムが伸びきってもねぇ。」 「ひぃぃ・・・あっ。」 劉が指を戻す瞬間、中指は意図的に緑の割れ目に潜り込み、襞をかき分け淫汁を拭い取る。そのヌルヌルとした感覚を指先に感じると、それ以上に分泌を促すために膣前庭を三本の指で解そうとする。 「三本の指でも、容易だね。もっと突っ張ると思ってた。」 「あぁぁぁっ・・・ちょ、ちょっと・・・あぁぁ・・・だめ、いれちゃっ。」 劉の中指と人差し指はほぐし汁を纏い、緑の膣肉にのめり込む。太目の指は節くれ立っていて、挿入感は細めの陰茎とさして替わりはなかった。 ぬめりを帯びた左指を抜き、そのヌメリ気を確かめると、利き手の右にスイッチした。若干緩みを生じたパンティーの紐は右手を拒むことなく潜らせると、再び淫汁の湧く膣肉に挿入させる。 左指のヌメリは緑の眼前に晒す。鎌田はこのとき、自分であればその指を緑の口腔内に押し込み、自らの淫汁の味を味あわせ、女としての敗北感を叩き込むのだがと思考していた。劉の動きは鎌田からすると落第点だったかもしれない。 「あぁぁぁ、と、とめて・・・ゆ、指をとめてぇぇ。」 劉への視線ではなく緑の眼光は、鏡越しの鎌田へのものだった。その時鎌田は、緑を命令権者からの視点ではなく所有者からの視点で物申す。 「マネキンはものを言わないぞ、願いを請うのに命令口調とは何事か緑。」 「お、お願いしますぅ。指を抜いてくださいぃぃぃっ。」 懇願の最後には二本の指を折り曲げ、女の最奥を目指すように手首を折り曲げる。劉の手の甲の関節の一つ一つが薄い三角形に浮かび上がっている。そこを支点に体が持上げられそうなくらいな感覚を覚えると、停止の懇願はどこかに消え、皆に見られながら昂ぶる牝の表情を浮かばせた。 「あぁぁ、いぃぃぃ・・・だ、だめぇぇぇ・・・。」 「グチョッ・・・クチョ・・クチョクチョ。」 緑の上顎が上がると劉の指先の駆動は、スローダウンする。劉が動きを静止すると鎌田は、フィッティングルームのカーペットを見る。ニードルパンチのカーペットは染みを造りにくいためか、淫らな滴は染み込むことなくカーペットに存在を示していた。 「マダム麗子、床のカーペット素材のパンティーを発注すべきかな。吉川先生の淫汁を弾いているよ。」 「まぁホントねぇ。どうかしら劉さま、伸縮性抜群でしょ。」 「そうですねぇ、パンティーを脱がさず指で往かせられるなんて、あぁ、ごめんなさいマネキンさんに確認もせず往かせたなんて、言っちゃって。」 「緑先生、どうなの？」 「・・・。」 「さっき、マネキンはものを言わないと言ったのが効いてるんだな。どうなんだ、返事だけでもしなさい。」 黙って下を向き、こくりと頷く緑。劉は右手の指先を薄い三角形から抜き去ると、麗子に手渡された白い布切れでその滴を拭う。 「これは？」 「そうです、このリアルマネキンの自前よ。劉さま、元の匂いと指先の匂い、同じかしら？」 「えっ・・・や、止めて下さい。」 布切れを拡げるとクロッチの部分を裏返し、少し黄ばみの残る湿り気を劉は鼻に近づける。深く息を吸うと、大部分のアンモニア臭を鼻腔に押し入れた。 「自前のパンティーは違いますね、おしっこの臭いが大半だ。指の臭いは、違うものだね。」 「あらぁ、そうなのね。じゃぁ、劉さまのテクニックがお上手だったてことねぇ。」 「お買い上げは？」 鎌田が店員のように劉に問いかける。 「勿論です。上下セットでね。」 「ありがとうございまぁぁす。」 劉は緑の半裸に体を密着させたまま上機嫌でクレジットカードを差し出した。 |
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| 2012.8.25掲載 |
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