| ２６ 土曜の夕方、大川湖湖畔に立地する少年自然の家に男女六名が集った。施設長と呼ばれる男性が、緑ら三人の女性教諭を案内している。 「先生方は、何度か利用されてますよねぇ。」 「えぇ、私は、部活動の合宿でお世話に。」 緑は、そう伝えると、他の二人は、 「そうなんですか？私は、初めてで、っていっても、臨時採用なんで。」 「そうなんだ、吉川先生だけですよ本採用組は。」 「え、あなたも。」 「私も、臨時なんです。」 施設長はその言葉を遮るように、施設の案内を終え、研修ルームに三人を通した。 「ようこそ、教頭会主導の若手教員再教育プログラムへ。」 研修ルームの壇上には、鎌田の顔がある。緑は、その研修がいかなる物なのか容易に想像がついた。資料を配布し始めている男は、市ノ瀬で、何かしらの合図を視線で送られてくる。 「男性方三人は、もう準備できてますよ。さぁ、お名前のところにお座りなさい。」 鎌田は席を指差し、ネームプレートの場所を三人は探した。男女ペアになるような感じで座らされ、緑の横の席は、大川東中横川と記載されていた。 「こんばんは、大川東の横川です。よろしくお願いします。」 「は、はじめまして、大川１中の吉川緑です。よろしくお願いします。」 軽く会釈をした緑は、横山と視線をすぐに逸らすと、市ノ瀬の配る資料に目を通す。カリキュラムは、一般的な名目で、学習指導要領などのお決まりのものの反復が記載され、その理解度を試す考査などの時間表が書かれている。 土曜のカリキュラムは、現段階の教育理解度の個人面談とかかれており、面談の担当の割り振りが書かれていた。横川と緑は、鎌田が、その他の二人は市ノ瀬が、残りは別の教頭の名が記載されている。 「では、自己紹介からはじめましょう。」 鎌田の声を皮切りに、男性教諭らが、他愛もない学生時の経験や現在の学校での活動などを紹介している。興味のなさと、鎌田と市ノ瀬の視線を気にする緑は、今夜行われるであろう自分への仕打ちを想像して絶句する。 自らの自己紹介を簡潔に終えると、鎌田が緑に質問を投げかける。 「吉川先生、一つ質問があります。」 「は、はい。」 「昨今、教師による様々な事件など問題が多発しておるのですが、教師によるわいせつ事件これについてどう思われますか？女性的な意見をお伺いいたしたく質問をするのですが。」 「え、はい。わいせつな事件などは、個々の性質の問題で、教育、指導を行うことによって変わるものとは、思えません。」 「そうですねぇ、個人の良識であるとか、理性の問題であるとおっしゃられるわけですか。」 「は、はい。そう思います。」 「では、事件を起こしたものは、理性を失っているとおっしゃるか。」 「い、いえ、そ、そうじゃなくって、性的な衝動をどう押さえ込むか、が。」 「そうですね、衝動は必ず皆にあるもの、それを抑えるべき抑制を学ぶこれは、指導で可能ということですね。」 「は、はい。」 鎌田と市ノ瀬は、緑のあわてぶりにほくそえみ、どの口がそれを言っているのかと糾弾しそうであった。 過去の教育者の事件や、その懲戒ぶりを資料にて説明していく。わいせつ事件に絡む、女性教諭の逮捕や、その後の懲戒処分などを閲覧させていく。 緑は自分に当てはまる事案を注視していた。市ノ瀬は、緑の興味深げな資料を説明し始めた。 「えぇ、６年ほど前になりますが、県内西部にあります市立中学の女性教諭が、担任を受け持つ生徒とわいせつな関係を持ちました。」 「あぁ、あれね、あの時の女性教諭はたしか、吉川先生と同じ位の年齢でしたか。」 「はい、２３歳の新卒で、生徒による暴行と最初は疑われたのですが、教諭による強姦罪が適用されましてね。」 「その女性教諭は実刑判決でしたかね？」 「えぇ、虚偽の供述があだとなり、執行猶予はつきませんでした。まだ、服役しているのではないでしょうか。」 「３０過ぎて出所しても、嫁ぎ先も、就職先もないですね。」 「えぇ。好奇な目で見られますからね性犯罪者は。」 二人の説明を他の５人は、メモを取りながら聞いている。緑は、自分への脅迫のように思えて手が動かない。実際、証拠の動画を見られれば、守に扮した攻児への強姦罪が適用されてもおかしくないと感じていた。 落ち込み始めた緑を見つめる鎌田らは、別の事件などを交え、教育者が刑事事件を起こしたり巻き込まれたりすることを説明している。 ３時間あまりの講義は、緑に対する仕打ちのように思えた。懲戒処分の多さは体育教師が一番であるとか、苦節を知らぬ一発合格者が、指導不適格になることが多いとか言われ続けた。 「では、本日のカリキュラムはここまでで、個人面談を短時間で行います。今現在、不安に思っていることなどありましたら面談の担当者にお願いします。」 個々の面談場は、４畳半の和室に座布団と丸テーブルだけが置かれている。先に、横川が面談場にはいる。１５分ほどで終わると、個室にいる緑を呼びに来た。 「き、吉川先生・・・わたし終わりました。鎌田教頭がお呼びです。」 「あ、ありがとうございます。どんな、感じでした。」 「え、ええ、ざっくばらんでした。」 「じゃぁ、行ってきます。」 横川の目つきは先程までとは程遠く、どこか緊張をし、どこか本能を開花させそうな目をしていた。 ドアを閉めると、階段を下り教官室と掛けられた和室に赴いた緑。鎌田の面談である以上、教育的でないことは覚悟していた。 「コンコン。」 「どうぞ。」 「し、しつれい・・・します。」 折りたたみ式の携帯をテーブルの上に無造作に放り投げる。画像が緑の目に入るように、顎を差し出し見るように促す。 「け、消してください。」 「君が送ってきたんだよ。見てくれといわんばかりに三枚も。」 鎌田は、画像プレビューをスクロールし、三枚の画像を見せ付けた。 「こ、この研修って・・・。」 「あぁ、吉川先生の望みどおりの研修だよ。」 「な、なにをさせる気なんですか。」 「最初に説明したようにね、昨今教諭のわいせつ事件が多いんだ。それで、統計をまとめると、男性教諭の犯罪は、性体験の未熟、若しくは未経験者がほとんどなんだ。」 「も、もしかして。」 「そう、飲み込みが早いね。彼ら三人は、恐らく未経験のチェリーボーイ。生徒ですら初体験を済ませている者さえいるご時世に、指導者が未体験ではお粗末な話だ。」 「そんな、あとの二人は、あの臨時教員の、二人は。」 「あの二人か、一ノ瀬くんが得心させていると思うよ。本採用を条件にね。」 「ひ、ひどい。」 「ひどかないよ。彼女らは杏子くんらと同様なんだ。彼女もそれを受け入れ、臨時ながらも採用された。縁故のない教員志願者の最後の頼みなのだよ。」 「そんなことって、杏子はそれで、自殺を・・・。」 「彼女の死因は、心臓疾患。市民病院の死亡診断書もそうなっている。それを覆すものは、なにもない。」 「私達を、女性教諭を食い物に・・・。」 「なんとでも言いなさい。我々は、こういうことが起きてはからでは困るんだよ。」 携帯の動画を再生させる鎌田。その動画には、女子生徒らしき女の子が自慰行為をし、教員らしき男の後姿が撮影されている。男の顔は暗く確認できないが、アダルトビデオなどの作り物ではないことは想像できた。 「で、なにを・・・させられるんですか。」 「横川先生の、筆おろしに協力するだけだ。」 「・・・。」 「あとの二人もお相手してくださるなら、あの臨時のお二人の操は、保証しましょ。」 「で、できません・・・お一人なら。」 「そうですよね、今晩、横川教諭だけでも、何発発射するかわからないのに、他の相手が出来るはずないね。」 「あの、へやで・・・ですか？。」 「あぁ、場所はお任せしますよ。ムードのある場所ならどこでも、なんなら６人でされても、ヒヒヒッ。」 「もう、いいですか。」 「あぁ、早く済ませたい？それとも、生えかけのおま○こが疼きますか？」 「・・・。」 和室の畳から立ち上がると、唇を噛み締め、屈辱に震えている。横川という男に、協力を依頼し性行為を回避するかを考えていると、鎌田から悪い知らせを告げられる。 「横川先生は、巨チンですよ、ここを出るときには、もう勃起していた。それと、大きな声を上げても構いませんよ、ここの施設長は教頭会のＯＢですから。」 |
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| 2012.9.17掲載 |
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