| ２７ 薄暗い照明の下、階段を上り冷たげな廊下を進む。一番奥にある横川の部屋へ向かう緑は、その道中にある女性臨時教諭の部屋の前で立ち止まる。 「本当にいいんですか？」 「・・・。」 承諾を確認する男性の声は聞こえるが、それを否定する女性の声はない。その後の、会話は聞こえなくなると、扉の奥の二人の行為は、始まってしまっているだろうと考えた。 もう一人の女性教諭の声は聞こえないし、姿も見えない。それは、この部屋と同じく、本採用への入り口をくぐるために決心をしたのだと感じていた。 「私は？」そう自問する緑。自分は本採用され教諭として、三か月の試用期間を終えている。ここにいなくてもいい人間、他の二人との差をはっきりとさせたかった。 その差は、大きいのだと言いたかった。自分は、落とし入れられ、鎌田らからひどい仕打ちを受けている、あの二人とは違うと、目的が違うのだと。 実際は、同じ、いやそれより以上に背徳感は感じている。中学男子に視姦される喜びを芽生えさせられ、麗子や教頭会に開花させられていった。これから向かう先は、自らその視姦願望をドライフラワーのように維持していくのだろう。 杏子の自殺の調べ、最初はそれだけだった。自殺の真相も、突き止めた。でも、動けない。そこから先を踏み出せない緑は、横川の待つ最奥の部屋へ足を踏み入れた。 「コンコンッ・・・き、吉川です。」 「ど、どうぞ。」 「こ、こんばんは。失礼します。」 「あぁ、こんばんは。」 「よ、横川先生？鎌田教頭は、面談でなんて言われてました？」 「あ、あぁ、吉川先生が、ぼ、ぼくに興味があるって・・・うそでしょって言ったんだけど。」 「そ、そんなことを。」 「え、やっぱり、からかいですよね。僕みたいな男に、吉川先生みたいなかわいい方が。ですよねぇ。」 「・・・。」 「あは、あは、バカみたいだ。あは、あはは。鎌田教頭も人が悪い。」 「そ、そんなこと・・・。ありません。」 緑の目線をそらすように横川は、カーテンのしまった窓を向いている。華奢な肩幅の横川の背に緑は、抱きついた。 「えっ？」 抱きつかれた横川は、抱きついている緑の顔を首を回し覗き込む。 「恥ずかしいけど、教頭のおっしゃる通りなんです。」 「・・・ど、どういうこと？」 「どういうお方なのか、知りたくて、それで。」 「そ、そうなんだ。」 千載一遇のチャンスが舞い降りたといわんばかりの胸の高鳴りを、背中に張り付いた緑の胸に伝達させる。思い切って、緑の肩を抱き、うつむき加減の緑の顔を覗き込む。恥ずかしそうにしている姿に違和感を感じず、首筋に吸い付いた。汗臭さのない女の匂いを鼻腔いっぱいにする横川は、次の一手に踏み入れた。 「チュッ・・・ほんとにいいの？」 「き、聞かないでください。」 緑の舌先は、先に離れた横川のヤニくさい舌先に触れる。横川の先制攻撃は、唇だけだったが、経験の違いは緑の舌の動きに現れる。 野暮な言葉を吐きがちな童貞男の口を封じ、舌先で手玉に取ると、下腹部の反応に血流をとられたか、無口になる。 身長差の大きくない二人は、全ての体の部位がどうレベルで触れられる。両手の手のひらを合わせ、指と指を絡めあわせる緑。力強く握り締めた横川は、握り返された緑の握力に照れ笑いする。 「はぁ・・・吉川先生の握力・・・相当ですね。」 「格闘技をする女って・・・だめですよね。」 「いえ、そんなことないです。ぼくは尊敬します。ぼくは、生徒に舐められがちで・・・。」 「教えましょうか？・・・。」 「えぇ、教えてください。・・・チュチュッ。」 会話が成立した喜びを、唇にのせ緑の甘い唾液をすすりだした。舌先をツンと飛び出させた緑は、それをついばむように舐めだした横川の指先を外し、Ｔシャツの隙間から脇腹などをさすり肌に触れる。 あばらが見えそうなほど華奢な横川の体を指先で感じる緑は、いつもの信二とは勝手が違うことを改めて感じた。横川に抱かれてる間も、信二の体を思い、紛らわすつもりでいたが、そのような感覚には到底たどり着けぬことを悟る。 が、一転して信二ら今まで経験してきた男達と決定的に違う物を感じた。体を擦り付けてくる横川の膨らんだ、若しくは膨らみかけの股間が、緑のスラックスに当たる。硬さよりも気になるのがボリュームだった。 恐る恐る腰をずらし、手のひらでなく腕でその容量を推し量ると、反応し始めた横川はそれを緑の腕にあてがった。 舌と舌との触れ合うタイミングが合わなくなり始め、血流を帯びた膨らみを押し付け始めると、堰を切ったように横川の動きが牡化し始めた。 「はぁ、はぁ、吉川先生。本当にいいんだよね。」 「は、はい。恥ずかしいから、明かりを。」 緑をキツク抱きしめながら、入り口のスイッチを消す。非常用の豆球が唯一の頼りで、ベッドの位置をチラ見した横川は、緑を柔らかく押し倒した。 獰猛な感じはなく、仰向けに寝転んだ緑の耳たぶや、頚動脈辺りを撫で、それを確かめるかのように舌先を這わせていく。 「あぁ、こそばいぃぃ。」 「ふぅぅぅ・・・ふぅぅぅ。」 鼻息の上がった横川は、手探りで緑の体の隆起を探る。その探索は、首筋から降下すると、胸の谷間を通過し、腹筋を弄る。腹筋の硬さを確認するように何度も手のひらを回転させる。それに飽きると、少し戸惑いながらだが、ワイシャツのボタンを下から外し滞ることなく胸元まで開ききった。 「見事な腹筋です。」 「女らしくないでしょ。」 「いえ、あこがれます。この腹筋・・・ベロベロォォ。」 臍の辺りに舌を這わせると、奥行きのない臍の穴も穿った。 「き、きたないですから・・・あぁぁん。」 「きれいです。吉川先生の体、ギリシャの彫刻のように。・・・ベロォォォ。」 「はんっ。」 上顎を仰け反らせる反応の緑を確認する横川は、胸元を覆うピンク色のブラに手をかける。ワイヤーの隙間から指先を差し込むと、尖った乳首に指が触れる。 「あんっ・・。」 人差し指と中指に乳首を挟み込むと、残りの指で乳房を力強く握りつける。摘まれたままの乳首はそのままで何度も何度も揉み込まれ、ホックを外すことなくブラはずり上がった。 暗闇ながら目の前にした成人女性の乳首をまじかに捉えるべく、横川の位置はずり上がり、舌先に緑の尖った乳首を含ませた。 「あぁぁ・・・はぁぁぁっ。」 悦に入りかけた自らの表情をを逸らすように緑の顔は、右へ左へと忙しく振られる。嫌々なのか、性感の昂ぶりなのか、この場に及んで嫌々ではないことを感じ取っていた横川は、人生一度きりの悔いは残すまいと緑の女体に挑みかかった。 |
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| 2012.9.19掲載 |
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