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銀座でのデートのあと、性的刺激を楽しもうと雪子からのメールを待っていたのは事実だ。けれど、先日のやり取り以降連絡は途絶えている。
Ａ先生とうまくいっているというのだからそうなのだろうが、なんとなくはぐらかされた気分の僕は、不本意にもこちらからメールをお送ってしまった。
何気ない挨拶だけのメールだが、返信は来ない。おかしなものだ、僕が雪子からの返信を心待ちにしている。
夜、こんなメールが来た。
「今日はＡ先生とデートでした。返信できなくてごめんなさい」
「楽しくお付き合いしているみたいですね、よかった」
「はい、最高に幸せです。こうなると、あの方に申し訳なくて」
「このままというわけにはね？」
「明日会うので、切り出してみます」
毎週火曜日はデートの日だという。僕と別れたころから数年続いた習慣だ。しかしＡ先生との関係ができてからは隔週、あるいは月一回に減らしているらしい。
興味本位に、昼ごろメールしてみる。
「どう？」
少したって返信が来る。
「わたしに急用ができて、デートは午前中だけに。切り出すタイミングがありませんでした。でも早く終わりにしたい気持ちでいっぱいです」
「時間をおくとますます言いにくくなる、次にデートの約束するのも気が進まないでしょ？」
この際メールで伝えたらと助言する。雪子にぞっこんの男性だ。会っている時に逆上されても困ると思ったからだ。
「今送りました。彼は多分本屋さんで立ち読みでもしているはずです」
しかし、夜になっても返信は来ないのだという。
「きっと、頭真っ白で何もできないのかもね？」
「一人で閉じこもっていると思います。周囲に当たり散らすか。そういうタイプですから」
「午前中セックスしたのに、いきなり三行半だから驚くのは当然でしょ」
「もう気持ちが離れているから抱かれるの無理なんです。今朝は先にシャンパンで酔ってからしました。ひどい女ですね」
数日後、あなたを苦しませていたのですねごめんなさい、という詫びのメールが届いたという。雪子がどんな言葉で別れを告げたのかは分からない。
あっさり別れられてよかったねと書く。雪子は、せいせいしたというよりも、むしろ不愉快な思いが募っていると書いてきた。
「こんな時はＡ先生に会いたいでしょ？ たっぷり抱かれて全部忘れたら？」
「はい、そうします。明日デートなんです！ 考えただけで気分が変わります」
数日の間に二人の男性に抱かれ、一人に別れを告げ、本命の男性に抱かれることを想像しながらうきうきする人妻。その一部始終を過去の男である僕に報告している雪子という女性を恐ろしい女と思うのが普通かもしれない。
「すごく幸せ、ラブラブです！」
絵文字満載のメールが届く。
「それはうらやましい、Ａ先生に怒られないように僕はメール遠慮しましょう」
「いいえ、メールは今まで通りお願いします。Ｈ中に返信したりはしませんけど」
雪子はかつて、
「今騎乗位でつながっているところ、母からの急な連絡と偽って先生に報告」
と送ってきたことがある。この頃はまだ別れた彼といい関係だったと思う。それでも本気の相手ならそんなことはできないだろう。
「なんだ、Ａ先生とのセックス実況中継、期待してたのにな」
「まさか、ダメですよ、事後報告は詳しくしますから許してね」
Ａ先生は５８才だが外見も若々しく魅力的だという。指だけで、今まで味わったことのない絶頂に連れて行かれたと喜んでいる。
「負けたな、僕も弟子入りして指テク習うかな？」
「Ａ先生、デートのたびにわたしを宇宙人と言うんです、どういう意味？」
「それほどセックスがいいっていうことでしょ？ たしかに雪子さんは最高の身体を持ってるし感度も抜群、フェラも宇宙一だよ！」
「そういうことにしておきます」
「心身ともに満たされてるな〜、僕の時よりたくさんイクの？」
「先生は別世界、だから誰とも比較はしません」
これが雪子の答えだ。
「先生みたいに、騎乗位で何度も逝かせてくれる人はいませんから。たいていの人は先に終わるか、力尽きてしまうみたい」
「雪子が激しく腰を振るからだよ」
「Ａ先生、騎乗位じゃ興奮しないって、してくれないの」
「なんだ、今度お目にかかったら教えてあげるのに、乱れまくる雪子を下から眺めるのが最高ですよって」
「九州男児だし、女性上位はいやみたいです、でもわたしが上で腰振りたいのは知ってるの」
「バックはしてくれるの？ お尻も叩かれたいんでしょ？」
「はい、でも先生にだけ」
「他の人とはしないの？」
「バックはいいけど、ぶたれるのは嫌です。でも先生に後ろから突かれて、達してる時にぶたれると意識が飛びそうなほど感じます。今度は遠慮しないで強くぶってほしいな、もし次があればですけど」
「次は思い切り叩くよ」
「うれしい、この一言で感じてしまいます」
僕はＳではないし、雪子以外の女性を叩いたことはない。雪子も僕にしかＭ的欲求は湧かないという。こんなメールをしていると感情がエスカレートする。
「もし、次の機会があってお会いできればですけど、やっぱりお口に出してほしい、先生の飲みたい」
「いいよ、この前は中に出しちゃったからね、全部」
「うれしい、一回目の濃いのはお口に出して。フェラで先生を逝かせるのが好き。Ａ先生は途中で萎えてしまうの、わたしのせいかな」
それはあなたのせいではない、とセックス相談が続く。勃起を促す薬を飲んでほしいと言えば、今のセックスに不満があるように聞こえてしまうし言いだせない、という雪子の言葉はよくわかる。
時間をかけて激しく突かれまくるセックスに慣れてしまった雪子は、堅くいきり立ったものが欲しくてたまらないのだ。
「ああ、思い出します、すごいセックス。またあんなふうにされたい」
「僕も雪子を思い出してオナニーするよ」
「うれしい、でもそれじゃもったいないな。これから運転しますので、また」
雪子のメールが途絶える。こんな時、その日のうちに詫びのメールがあったものだが、今は無い。
「こちらはだいぶ涼しくなりました、東京はまだ残暑が厳しいようですね」
季節の挨拶からメールは始まる。しばらく何気ない会話が続くが性的興奮は抑えられない。
「手錠で拘束、またお願いします」
「お口に出したら、次は中にもね」
「たくさん欲しい、お願いします」
「もうゴムはしない、これから雪子には全部中出し」
「ダメです、それだけは」
「手錠で拘束して、無理やり犯す、抵抗しても無駄だよ」
「でも、ほんとにそれはダメよ、本気で抵抗するから」
「やってごらん、無理やり犯されて泣きながら抵抗する雪子を見てみたい」
「本気で？それともレイプごっこ？ どんなことされても先生だったら感じてしまうから怖い」
「僕もだ、雪子を犯したい、乱暴にめちゃくちゃにしたい」
「彼女さんにもそんなことするの？他の人にも手錠とかバイブとかで虐めながらセックスした？」
「雪子だけ、雪子にはそんなことしたくなる」
「わたしも先生には、ひどいことされたいです。もっと言葉責めして、淫乱って叱りつけて。露出でもなんでも命じて。奴隷みたいに扱ってほしい」
こんなやり取りをしながら、僕は電話でオナニーを手伝わせたかったが、今は外出中だからできないという。
「これ、お役にたちますか？」
陰部の画像を送ってくる。もちろん今撮ったものではない。
いったいどんな場所で、誰の視線を浴びながらこんなメールのやり取りをしているのだろう。
雪子とのメールはいつでもテレフォンセックスの前戯のつもりだ。雪子もそれは知っている。
「Ａ先生、挿入の前に指でじっくりしてくれるんです。今までにない感覚、長い時間逝きっぱなしになるんです」
それはうらやましい、と軽いメールを返す。
「でも、それが続いているせいか、オナニーで逝けなくなったかも」
「しょっちゅう会ってセックスできるんだから一人でしなくてもいいのでは？」
「それはそうですが、一人で逝けないっておかしな気分です」
「そうだね、オナニー好きの雪子が自分で自分を満足させられないなんてね」
「違います、前も先生の画像や声で達してたんですから。先生に言葉責めされながらだったら前みたいに逝けるかも」
「試してみる？ 今から試す？」
「ごめんなさい、今はダメな日なの。今度時間作ってください、雪子のリハビリのために」
こんなやり取りから一週間、そろそろ雪子からテレフォンセックスの誘いがあるかと楽しみに待っている自分がいる。どうやら雪子のセックスライフは満たされているらしい。向こうから連絡はない。
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