３　月曜日の朝

　妄想の夜が明けた。
　女性問題の論客で知られる４０代の大学教授・・・その写真を見ながら、何度も何度も放出して果てた昨夜・・・その疲れから、僕はだらしない格好のまま、ぐったりと眠ってしまっていた。
　気がついたときには、時計の針は８時を回ろうとしていた。
　僕は飛び起き、慌てて身支度を始めた。
　最近は忘れないようにしていた朝食も、とても取っている時間はなさそうであった。
　僕は冷蔵庫からパックのコーヒー牛乳を取り出し、急ぎがぶ飲みしておざなりに腹を満たした。
　服装に気を使わずにすむ会社であることが、このときは有難かった。
　我ながら感心する早業で支度を終え、家を出て駅に向かった。

　休み明けの朝の通勤は、やはり憂鬱であった。
　席を確保できなかった僕は、仕方なくドアの近くの手すりに捕まりながら、ぼんやりと外の景色を眺めていた。
　快速の乗り換え駅に着くまでの３駅が、僕にはとても長く感じられた。
　やがて僕を乗せた各駅停車が、乗り換え駅のホームに入線した。
　朝の各駅停車は、ここで多くの乗り換え客を吐き出すため、うまくいけばここから席を確保することができた。
　現に時間のあるときは、乗り換えずに各駅停車で社まで通うことも多かった。
　しかし、今日はとても選択の余地のある時間ではなかった。
　快速電車は、降りたホームすぐ向かい側に来るため、階段の上り下りの心配はなかった。
　僕は開いた扉とは反対側のところに位置していたため、やや出遅れて、快速待ちの列に並ぶことになった。
　やがて、快速電車が入線してきた。
　電車は、休み明けの特徴として、想像以上の混雑を見せていた。
　扉が開くと、各駅停車に乗り換えると思われる数人の客が降りただけで、乗り込む客で、混雑はさらに増していった。
　会社の最寄駅は反対側のドアが開くのだが、列の最後尾に並んでいた僕は、とてもそちらへたどりつけそうになかった。
　乗るだけで必死だった僕は、乗り込んだ客達を背中で押し、ホームの方を向いて、懸命に居場所を確保しようとした。
　発車間際であった。階段の方から、声が聞こえた。
「・・・す・・・すいません！・・・」
　急いで１人の熟年女性が駆け込んできた。
　よほど慌てていたのか、駆け込みざまに、僕の足は、彼女にしたたかに踏みつけられた。
　彼女は、
「あ・・・ご、ごめんなさいね」
　と、僕にあわただしく謝罪の言葉を放った。僕はその言い方に、普段から接客に慣れているような、一種の礼儀正しさを感じた。
　容貌もそういえば、保険の外交員か何か・・・そんな雰囲気を持っていた。
　年齢は、４０代半ばか、後半ぐらいに見えた。
　僕が謝罪に答える間もなく、扉が閉まった。扉に押し込まれた彼女は、そのままドアに向かって、僕の前に背を向けて立つことになった。

　電車が揺れるたび、僕は背中の乗客たちに一斉に押される形になった。
　そのたびに僕は、前に立つベテラン外交員風の女性を、ドアに押し付けてしまっていた。
　彼女は、後ろの乗客たちすべての重みを、僕の体を通して背中に受ける形になった。
　そのたびに、彼女は苦しそうな吐息を漏らした。
　彼女は息苦しさを逃れようとしてか、微かな空間を探すように少し首を上げ、息を吸った。
　彼女が首を上げたとき、柔らかな髪の毛が僕の鼻と口元をくすぐった。
　髪の刺激と、彼女が息を吸ったその声に、僕はたまらない色香を感じてしまった。
　彼女が時々放つ苦しそうな吐息も、だんだん、隠微な響きに聞こえてしまってきた。
　意識の変化は、そのまま、体の反応となって現れ始めた。
　ベテラン外交員風の彼女の尻に、濃紺のタイトスカート越しに密着していた僕の下半身が、徐々に、膨らみを増してきたのだ。
　彼女は、僕の下半身の変化に気づいたのか、やや、身をこわばらせたように見えた。
　僕の下半身は、駅を発車したときから彼女の下半身に密着しており、当初はもちろん平静であった。それが、今は徐々に硬直してきている。
　ということは、彼女も気づいているはずだ。
　後ろの男が、明らかに、自分への密着が原因で、下半身を膨らませてしまっていることを。
　しかも、その相手が、自分と親子ほども年が離れていようという、僕であることも。
　僕は恥ずかしくなり、何とか彼女から体を離そうと試みた。
　しかし、これだけの混雑では、思うように身動きがなどとれなかった。
　逆に、動いてみようとすればするほど、ますます密着してしまう形となった。
　彼女は戸惑いながらも、僕がわざとでないことに薄々気づいているのか、黙ってじっとしていてくれた。
　黙っているのは、親子ほども年が離れている僕に対して、恥をかかせてはかわいそう・・・そんな配慮が働いているからのように思えた。
　また、じっとしているのも、僕に対して、よけいな刺激を与えないように、彼女なりに気を使っているように思えた。
　そんな母性的な優しさを思うと、申し訳ない気さえしたが、僕の下半身は、密着のためますます膨らんでしまっていた。
　少しの間、彼女の尻に僕の下半身が密着したまま、緊張が続いた。
　電車が揺れ、僕の下半身が、さらに深く彼女の尻に押し付けられた。
　彼女は、小さく息を吐いた。
　その仕草が、かけていた僕の理性のボタンを、１つ外してしまった。
　僕は初めて、自ら望んで、彼女の尻に僕自身を押し付けていった。
　彼女は思わず息を飲んだ。
　だが、どうにもできない様子で、そのままじっと、僕の密着を甘んじて受け入れていた。
　僕は改めて、彼女の尻の感触を、濃紺のタイトスカート越しに、じっくりと下半身で味わっていた。
　僕の下半身は、さらに膨らみを増していった。
　彼女もそれに気がついたのか、困ったように、やや、下を向き始めた。
　それを見て、僕の理性のボタンが、さらに１つ外された。
　僕の左手が伸び、タイトスカートの上から彼女の腰にあてがわれた。
　彼女は、やや身を固くしたようであった。
　僕はそのまま、腰から太腿の外側にかけて、手のひらで撫でさすった。
　彼女は、いやいやをするように、腰をもぞもぞと動かした。
　その腰の動きに、僕は、たまらない興奮を覚えた。
　しかも、彼女が腰を動かしたことで、下半身の密着が、さらに深まったように思われた。
　彼女は、抵抗がかえって密着を深めてしまうことに、困惑した様子だった。
　僕は周囲に気を使いながら、腰から太腿の外側を、スカートの感触を楽しみながら撫で回し続けた。
　彼女は密着が深みにはまるのを恐れてか、動くのをやめ、ひたすら体を硬くすることで抵抗の気配を見せた。
　僕はスカートの裾を探ったが、指を届かせるには、やや不自然に腰を屈めなければならないようだった。
　混雑で屈むのを諦めた僕は、太腿を撫でながら、何とか生地をたくし上げようとした。だが、ぴったりとした濃紺のタイトスカートは、容易にはたくし上げられそうになかった。
　僕は中へ侵入するのをやめ、ひたすら、濃紺のタイトスカート越しに、ベテラン外交員風の彼女の下半身を攻めることにした。
　僕は、尻の谷間に下半身を押し付けながら、左手を、そのままスカートに這わせ、後ろへ移動させた。
　僕の左手が、彼女の左の太腿の裏側をとらえた。
　僕はそのまま手を動かし、太腿の裏側を撫で回していった。
　はちきれそうな濃紺のタイトスカートは、その生地越しにも、ベテラン外交員風の彼女の熟れた肌の感触を、十二分に生々しく僕の手に伝えてきた。
　太腿の裏側を攻められている間、彼女は、懸命に身を固くし、僕の手に耐えているようだった。
　じっとしているのは、変に動いて密着が深まってしまうのを恐れてのことに違いなかった。
　僕は太腿を撫で回している左手を、今度は指先を立てて、やや丸めた形にした。
　そして、さらにソフトに、円をかくように再び太腿の裏側を優しく攻めていった。
　彼女はたまらず息を飲んだが、何とか、脚を踏ん張って僕の指に耐えようとしていた。　僕は必死に、太腿の裏側をらせん状に攻め続けた。
　彼女の息が、徐々に荒くなっていった。
　一方で、荒くなる息を懸命に整え、気をしっかり持とうとしている様子も見受けられた。
　僕は、このベテラン外交員風の彼女を、公衆の面前であるこの満員電車で、たまらなく感じさせたくなっていた。
　しかも、親子ほども年が離れているであろうという、僕の指で・・・
　僕が太腿の裏側を撫で回すたび、彼女の息が、ますます荒くなっていった。
　それは、彼女の中で、嫌が応にも反応が高まっている証拠にも見て取れた。
　しかし体だけは、いかにも反応を拒んでいるかのように、じっと動かなかった。
　そのとき、電車の揺れで、僕と彼女との間に一瞬の隙間ができた。
　僕は意を決して、下半身の密着をとき、体をやや横へとずらした。
　彼女の背中側の右半身と、僕の前側の左半身が、ぴったりと重なる形になった。
　僕は左手を動かし、下半身を今まで嫌というほど密着させていた彼女の尻に、濃紺のタイトスカートの上から、ぴったりと手のひらを張り付かせた。
　たまらず、彼女は身をよじり、官能の息をもらしてしまった。
「はあっ！・・・」
　僕はその反応に、たまらない満足を覚えた。
　僕は、体をずらしたおかげで、少し横を見れば、彼女の表情を観察できるようになった。
　僕は、さっそく彼女の顔を覗いてみた。
　下を向いた彼女の表情には、猛烈な羞恥の色が浮かんでいるように見えた。
　公衆の面前である満員電車で、尻を触られ反応してしまった・・・しかも相手は痴漢で、自分の息子ぐらいといってよい年頃の男・・・その羞恥は彼女にとって、とてつもないものに違いない。
　僕は、再び手を動かし、彼女の尻を、確かめるように丁寧に触っていった。
　そもとき、彼女の尻のあたりは、僕の左手が自由に動かせるだけの空間が保たれていた。
　しかも、周囲は混雑したままであり、その空間は、周りからは見えない死角となっていた。
　僕は、彼女の濃紺のタイトスカートの感触を楽しみながら、尻の盛り上がり、くぼみなど、くまなく手のひらで確かめていった。
　そのたびに、彼女は耐え切れないように、腰をもじつかせた。
　僕は、自分の行為そのものを、この目で確かめたくなり、やや窮屈に首を曲げ下を向いた。
　彼女の濃紺のタイトスカートは、触られるたび、僕の手によって淫らな皺を作っていた。
　僕に尻を触られるたび、もじもじする彼女の脚の動き、腰の動きも見て取れた。
　それは、僕の目にたまらなく卑猥に写り、ますます僕を興奮させていった。
　僕は再び顔を上げ、再び彼女の顔を観察しながら、尻を愛撫していった。
　やがて彼女も、僕が自分の顔を観察していることに、気づいたようであった。
　彼女も、僕の方に顔を向け、２人はそのまま、見つめあう形になった。
　僕は、なるべく無表情を装うと、ぼんやりした感じで彼女を見つめ返していた。
　僕は、尻に触れた手の動きを、いったん止めていた。
　やがて、彼女が口を開き始めた。周囲にわからないように、僕に囁きはじめた。
「お願い・・・・やめなさい・・・・ね・・・・やめて・・・」
　彼女の口調には、母親が子供に諭すような、そんな雰囲気があった。
「こんなこと・・・だめよ・・・ね・・・・やめて・・・ちょうだい・・・」
　彼女は、再び同じ口調で続けた。
　ひょっとしたら、彼女はあえてそうした口調をとり、母親のように僕に接することで、自分の女の部分を消し去ろうとしている・・・そんな風にも思えた。
　そのとき、次の駅・・・僕の降りる駅が近づくアナウンスが聞こえた。
　僕に残された時間は、わずかとなった。
　僕は、名残を惜しむかのように、再び尻に手を這わせ始めた。
　彼女は、僕の顔を見つめながら、必死に訴えるように弱々しくかぶりを振った。
　しかし、僕は構わず尻を攻め続けた。
　少しでも長く、この尻を味わっていたい・・・僕は必死に、指先を、手を動かしていた。
　やがて、僕の指に耐え切れないように、彼女は腰をよじり、もぞもぞと動かした。
　彼女は、再び女として反応してしまった羞恥のためか、唇を噛み、うつむいてしまった。
　僕は、さらに尻を撫で回し続けた。
　僕はスカートの生地を少しつかむようにして、ベテラン外交風の彼女の尻を、円をかくように、ねちっこく撫で回していった。
　彼女は、ドアに額を押し付け、息を荒げながら、腰をもじつかせた。
　もはや彼女は、襲い来る快感から逃げられないようであった。
　僕は駅につくまでの残り少ない時間を、すべてかけて、彼女の尻を撫で回し、快感と恥辱を彼女に加えていった。
　彼女はその間、僕に恨めしそうな視線を送り続けながら、僕の手の動きに合わせ、尻を反応させていった。
　尻が動いてしまうたび、彼女の唇は、ますます羞恥のために噛み締められていった。
　やがて、快速電車が駅のホームに入線していった。
　開く扉は、反対側である。
　扉が開くと僕は、少し肩で息をしている彼女を残し、強引に客をかきわけてホームに降りていった。
　電車は、彼女を乗せたまま、駅を離れていった。
　僕は我にかえり、改めて、さっきの電車での出来事を思い返していた。
　初めて手を染めてしまった、たまらなく甘美で、危険な遊戯・・・
　そして、それが図らずも成功という形を納めたことに、軽い興奮を覚えながら、僕は改札に向かっていった。