ずっと愛してます２　羅衣 作
【次】
第1話　運命の再会


　健二が亜紀と出会ってから１年ほどの年月が経っていた。
　岩永健二の「会」関西支部立ち上げの準備は大詰めの段階に入っていた。
　組織構成、規模、会員と資金関係など決定したが、１番肝心な関西支部の基盤となるホスト会員の人選が難航していた。

　活動基盤としては、「会」の定例会を開く場として周囲から隔離された保養地やゴルフ場が望ましい。
　そして九州、四国地区の会員も参加しやすく交通の利便性を考えると兵庫県神戸が理想的であった。
　ホスト会員には、会場の設定や運営、裏社会との調整など「会」としての重要な役割を支えて貰う必要があった。
　活動としては、スワッピング、ＳＭ会、獣姦会など多岐にわたり、秘匿性は最重要であった。
　この手の「会」は裏社会との関係を良好に保たないと、成り立たない。
　また秘密漏洩を防止する上でも、裏社会の協力は欠かせない。
　何せ会員は、有名企業の重役、議員、医師、各種業界団体の幹部が占めているので、秘密漏洩は即社会を転覆しかねないスキャンダルに繋がるのだ。

　関西地区には、そのようなことを担える人物は数名しかおらず、兵庫県神戸にはただ１人であった。
　健二としても、九州、四国地区の会員の要望に応える意味でも、「兵庫県神戸」しか選択肢が無かった。
　ただ兵庫県神戸のホスト候補には、重大な問題があった。
　妻を亡くして独身だったのだ。
　ホスト会員は役割が重要なだけに、代表的な「会」の会員になって貰わなければならない。
　そうでないと、一般会員からの支持は得られないし信頼されない。
　ホストの妻には、会員達への率先しての肉体接待やショーの生け贄役をして頂くのが一般的であった。
　まして、そのサポート役の自分自身も独身のため、それを代行してくれる自分の妻がいないという最悪の状況であった。

　このため、「会」関西支部立ち上げは予定より大幅に遅れていた。
　健二の立場は日に日に悪くなり、健二は「峰　郁美」を探し続けていた。
　もう郁美を見つけ出し、自分の妻にするしか思いつかなかったのだ。
　調査の結果、郁美が結婚したという情報は幸い無かったが所在が掴めなかった。
　どうもなにか事情があって郁美の兄が隠蔽しているようで、調査は難航していた。
「郁美　頼む　誠心誠意　謝るから　俺と結婚して、助けてくれ」
「会の仕事で苦労かけるが、一生かけても　郁美を幸せにする　頼む」
　もはや自分が結婚し自分の妻に代行させて、「会」関西支部を立ち上げる他なかった。

　そんなギリギリの時であった。
　兵庫県神戸のホスト候補が、２６歳の若く美しい女性と再婚したという情報が飛び込んできたのだ。
　健二は、驚喜した。
　早速、兵庫県神戸のホスト候補への接触、交渉を開始した。
　その人物の名前は、田原 凌であった。

　企業経営者には、「会」のホスト会員つまり幹部となることは、絶大な経済効果をもたらす。
　当たり前であるが、有名企業の重役、国会議員、各種業界団体の幹部との太いパイプが出来る。
　東京では、その役を担っているビル所有不動産グループは、それを活用して、今では世界の名だたる不動産を次々と手中に収め、政府ですら動かす権力を手にしていた。
　今回、そのビル所有不動産グループとの対等な資本提携関係を結んで良いとのオプションも付くというものであった。
　実現すれば、関西だけでなく西日本を牛耳る企業グループ成れるはずであった。
　企業家としては絶対断れないオファーだ。
　だがそれには、妻の同意・協力は欠かせない。
　ある意味、それが１番重要だった。
　企業家の妻であれば得られるメリットが明確であり、多くの妻が承諾することが多かった。

　とはいえ、ひとまわり以上年下の若妻との再婚なので、今回は困難が予想された。
　何より田原本人が巨大な経済的魅力より若妻を大切にする可能性が高いし、田原が同意しても２６歳の若妻が同意する可能性は極めて低い。
　６０歳を超える男達に、一晩で何人にも抱かれたり、多くの人に見られた場で性交することもあるのだ。
　でも健二には押し切るほか選択肢が無かった。

　だが交渉を開始してすぐに健二をまたもや驚喜させる情報が入った。
　なんと田原の若妻は、健二も惚れ認めた森川亜紀だったからだ。
　彼女なら、理解して同意・協力してくれるだろう。
　抜群の容姿と若さ、そして確立された知性が会員達を絶対魅了するはずだ。
　彼女には、セックスのプロという確立されたものがある。
　あとは田原をいかに口説き落とすか、に掛かっていた。
　ただ亜紀を溺愛している可能性は極めて高く、すでに亜紀と不自由なく贅沢して暮らす富は既に持っているので、難航するのは必至だった。

　予想通り交渉は難航した。
　活動の協力は惜しまないが、若妻の参加は断固拒否だった。
　若妻の参加を求めるなら、話の破談すら辞さないという強硬なものであった。
　経済的プレッシャーも考えたが、事業縮小も構わないという田原にお手上げの状況であった。
　挙げ句の果てには、「若妻にちょっかい出したら関係者は全員殺す」とまで警告を受けた。
　田原は地元の裏社会にも太いパイプを持つので、その実現が容易なのは明らかだった。

　追い詰められた健二は、田原に殺されるかもしれないというリスクを承知で、あの時交換したメールアドレスで亜紀に直接連絡を取った。
　もう健二には後がなかった。
　このプロジェクトを失敗したら、破門が待っていた。
　それは健二の人生の否定、終焉を意味し、駄目なら殺されても良いと覚悟しての行動だった。

　亜紀は、そのようなオファーがあったことを田原から聞かされていた。
　田原は、亜紀には隠し事はせず日々の出来事をベットで話し、亜紀の意見を聞くのを楽しみにしていた。
　田原にとって、亜紀が人生の全てになり、彼女の存在が生き甲斐になっていたのだ。
　いくらなんでも亜紀も望んでそのような立場になりたいなどと思うはずもなく、田原の判断に従うというものだった。
　田原が必要と望むなら亜紀は応えるというスタンスで、妻として夫を支えるという明確な考えが確立していた。
　亜紀の価値観では、貞操観念も夫が認めなければ断固駄目、認めれば問題無しであった。
　だからこそ、女子会、徹との関係が継続できたのだ。

　田原は、亜紀の要望、やんちゃに関しては寛容で、亜紀を大きな愛で包んでいた。
　亜紀自身は、夫が公認すれば他の男達に一晩で何人にも抱かれたり、多くの人に見られた場で性交するなど気にもならないことであった。
　ソープ嬢現役時代には、もっととんでも無い輩を見てきたのだ。

　亜紀は、１年も経って突然届いた健二からのメールに驚いた。
　その内容にも驚いた。
　あの自信たっぷりの健二から協力を求めるものだったからだ。
　内容の詳細は不明だが、先日田原から聞いた件に関連するものだとは理解した。
　ただ健二と再び肉体関係となれば、健二のいいなりにされる危険を予測して、こちらからは信頼できる同席者を伴うという条件で某ホテルの一室で面談する約束となった。

　亜紀は、郁美、敬子、可能であれば悠希を伴うつもりであった。
　こういう時は里奈に頼りたいが、さすがに出産直後であるので遠慮した。
　女子会の結束力は強固な絆で、秘密厳守で信頼できて意見も聞ける存在であった。
　当然面談の件は、田原と徹には、とりあえず秘密とした。

　ホテルの一室で、亜紀は悠希と一緒に郁美と敬子の到着を待っていた。
　２人は用事で少し遅れると連絡が入り、健二より後に到着するだろう。
　亜紀の様子を察した悠希が仕事を休んでまで同席してくれたので、亜紀はホッとしていた。
「悠希　ありがとうね　わたし　１人で会ったら　自信ないの」
　５分ほどすると、ドアがノックされて遂に健二が来たようであった。
　悠希が出迎えると正装した健二が挨拶しながら入室してきた。

　亜紀は改めて正装した健二を見て、トキメキを覚えていた。
「あぅう　前より更に素敵になってる」
　出迎えた、初対面の悠希ですらトキメキを覚えていた。
「この人が会を取り仕切るエロい人なの　素敵な紳士にしか思えない」
　健二は、「会」での公認名刺を亜紀達に差し出した。
「おいおい　亜紀に寄り添う女　これまた　凄い美人だ」
「誰だ　この物腰は素人じゃない」

　名刺には「会」専属弁護士、セックスコーディネーター、性調教師、イベントプロデューサーなどと肩書きが並び、「会」関西支部設立責任者　岩永健二　と書かれていた。
　亜紀は、その名前で衝撃を受けた。
「岩永健二　健二って　まさか　あの郁美の　そっそんな・・・」
　その瞬間、亜紀の興味は健二からの話ではなくなった。
　健二の話を遮って、まず確認したいことがあると切り出した。
　郁美の苦しみは亜紀にとって共用する苦しみでもあり、最優先で最大の関心事だった。

亜紀　「先に質問を　いくつか　させて頂いてよろしいかしら」
健二　「はい　なんでも」

　悠希は亜紀の表情から、なにかあったと察していた。
　悠希は手がかりは名刺と感じ見つめていた。
　そして彼女も驚愕した。
「岩永健二って　まさか　郁美の　運命の人　そんな　こんな時に」
　普段は何事にも動じない悠希も、あまりの衝撃に唖然としてしまった。

亜紀　「健二　いや　岩永健二さんって、６年ほど前に、長崎におられたことはありませんか」
健二　「えっ　　居ましたよ　司法試験受験修行時代に」
亜紀　「やはり　そしたら　峰 郁美という女性は　ご存じかしら」
健二　「なんで　郁美の名前を　郁美をご存じなんですか？」
亜紀　「あなたこそ　よく名前　覚えていましたね」
悠希　「郁美の　あのカレなんだ　嘘みたい」
亜紀　「その女性をどう思っているのか　先に教えて下さりませんか」
健二　「ずっと探し続けている　私の大切な女性です」
　　　　「行方が分からないのです」
　　　　「彼女が許してくれたら　結婚したいと考えています」
亜紀　「えっ　　　　行方不明？」
健二　「はい　私と離ればなれになった後　何かあったらしく」
　　　　「お兄さんの達也さんが　なにか知っているようですが　隠蔽されて行方が掴めないです」
悠希　「ずっと探していたって　どういうこと」
健二　「正直に話します　ここ３年ほど　ずっと探しています」
　　　　「情報では　まだ郁美は独身の筈です」
亜紀　「ここ３年って、何年も捨てておいて　今更だと思いませんか」
健二　「それは　言い訳しません」
　　　　「私自身が彼女を愛しているの気がついたのは　別れて数年後でした」
　　　　「でも修行中で　多忙でしたし　自ら別れておいて　何年も経って戻るのは」
　　　　「でも　ここ数年で状況が変わりました」
　　　　「仕事　立場上　妻が必要になったのです」
亜紀　「それって　私に依頼しようとしているような役割を　郁美にも背負わせる為だけでは」
健二　「それは認めます」
亜紀　「ひどいわ　女の切ない想い　つけ込んで利用するつもりなのね」
悠希　「そんなことって・・・・・」
健二　「それだけではないです」
　　　　「その役割を果たせる女性の器量が大事で　それは亜紀さんにもあります」
　　　　「何年も逢っていませんが　郁美にもあると確信しています」
　　　　「郁美は私がオンナにした女性で　ピカイチの存在です」
　　　　「そして私は　郁美を愛しています　一生かけて　彼女を幸せにする覚悟あります」
悠希　「どうかな　わたしには都合の良い　言い訳にしか聞こえないわ」
健二　「そう言われることは覚悟しています」
　　　　「あの時　愛していると気がついた時　すぐに戻るべきだった」
　　　　「そう　後悔しています」
　　　　「どうであれ　私の妻に相応しいのは　今　郁美しかいないんです」
亜紀　「うぅぅぅん　まあ　最後は郁美と話すしかないわね」
　　　　「でも郁美には　今　郁美自身が育てた　素敵な年下の婚約者がいるわよ」
　　　　「その子　天性のスケコマシ　よ」
　　　　「わたしが言うから　その実力は本物よ」
　　　　「わたしも　夢中にさせられてしまったの」
　　　　「わかるかな」
悠希　「わたしも素敵だなって思うわ」
健二　「天才　　年下　　天性のスケコマシ」
　　　　「郁美が育てた　　まさか」
亜紀　「うふふ　まずは取り返せるかが　問題ね」
悠希　「そうねぇ　うふふ」
健二　「郁美はどこに」
亜紀　「もうすぐ　ここに来るわ」
健二　「逢えるんですね」
悠希　「あらら　急に素敵な笑顔ね」
　　　　「郁美への気持ちは　本物なのかな」
健二　「ほぼ６年ぶりですから」

　コンコン！！

亜紀　「来たみたいね」

　悠希が入り口まで迎えに行った。
　健二は、心中穏やかでなかった。
　郁美を探していたが、今、今日逢えるとは夢にも思っていなかったからだ。
　健二は、思わず立ち上がって出迎えた。

悠希　「郁美　今日のお客さん　驚くわよ」
郁美　「えっ　わたしが知っている方なの」
健二　「郁美　お久しぶり　健二だよ」
郁美　「えっ　　　　うそぉ」
敬子　「お姉ちゃん？　どうしたの」
健二　「やっと逢えたね　約束通り綺麗になったね」

　健二は、現れた郁美をひと目見て、例えないような喜びに包まれていた。
「おっおぉぉぉ　こんなに美しかったけ　いや約束通り綺麗になった」
「やはり郁美しかいない　許してくれるか」
「なんだ一緒にいる子　お姉ちゃん？　郁美に　妹なんて　いなかった筈」
「これまた　すごい美人だ　まあいい　ふっ　後々楽しみだ」

　郁美は、驚きで一瞬息が出来なくなった。
「なっだれ　えっ健二さん　なんで　うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
　郁美は涙が溢れ出て、ポロポロ泣き出してしまった。
　よろよろ健二の方に近寄っていくと、健二の腕の中に飛び込んでいった。
　心の重石が無くなった瞬間だった。
　声をあげて、とにかく泣いた。
　健二は、黙って抱きしめるだけだった。

　腕の中で泣く郁美を優しく抱きしめながら、健二は自分自身の気持ちに気がついた時に引き返さなかったことを改めて後悔していた。
「間違いない　郁美はずっと待っていてくれたのだ」
「それを俺は」
「今はとにかく取り戻すしかない　失われた時は後で償う　それしか」

　敬子はなに事かと騒ぎ出したが、亜紀と悠希に事の次第を聞くと郁美と一緒に泣き出してしまった。
　大好きな郁美の気持ちが、自分の事のように理解できたのだ。
　もし自分が徹と離ればなれになって、何年も経って突然再会したらと考えただけで、涙が溢れてきて止まらなくなった。
　敬子は郁美から健二との経験、その思い出を聞いて共感していただけに、その感情の波は大きいものだった。

　亜紀と悠希は、やや困惑してしまった。
　郁美は分かるが、いくら仲がよいからといって敬子まで、泣きじゃくるとは思っていなかった。
　亜紀達は、初めての相手に、特に思い出や思い入れは無い。
　それだけに話は理解できても、共感までには至っていなかったのだ。

　郁美は、敬子の泣き声のお陰で冷静さを取り戻すことが出来た。
「あぁぁぁん　敬ちゃん　泣かないで　わたし　しっかりするから」
　郁美は、涙を堪えて、健二の元を離れると泣きじゃくる敬子を抱き寄せソファーに座った。
　敬子は郁美の存在に落ち着きを取り戻し、郁美に抱きついて顔を埋めていた。
「とにかく　話さなきゃ」

郁美　「ぐすぅん　　健二さん　突然でびっくりしたわ」
健二　「ああ　逢えて嬉しいよ」
　　　　「郁美　言い訳はしない　やり直そう　俺と結婚してくれないか」
悠希　「あなたね　いきなりすぎるわ」
　　　　「郁美が　あれから　どんなに苦しんだか」
郁美　「悠希待って　おねがい」
悠希　「郁美　あなた・・・」
郁美　「健二さん　わたしと」
亜紀　「ちょっと待って　郁美」
　　　　「健二さん　郁美の気持ちを考えて欲しいわ」
　　　　「まずは　みんなに　全て　ちゃんと話しましょう　よろしいかしら　健二さん」
健二　「はい」
郁美　「そうでした　ごめんなさい」

　亜紀と健二が今回の概略を、みんなに説明した。
　女性陣の視線は冷たく、健二は居心地は悪かった。
　郁美の視線が初めは不安げなものだったのが、優しいものに変わっていったのを感じたのが、せめてもの救いだった。

亜紀　「ここからは　まずは健二さんへの　わたしの結論をお話しするわ」
　　　　「恐らく　わたしの結論が　郁美への今後に影響を与えると思うから」
　　　　「わたしは　そうでないことを望むけど」
　　　　「郁美　健二さん　いいかしら」
健二　「結論　お聞かせ下さい」
郁美　「はい」
亜紀　「わたしは、もう田原の妻です　　でも　健二さんのことも無視できません」
　　　　「健二さんとは　結婚前ですが　関係を１夜とはいえ持った仲ですから」
郁美　「えっ？　いつ」
亜紀　「あの日」
郁美　「亜紀　　あの日　あの時の！！」
悠希　「うそぉぉぉ」
敬子　「えっえぇぇぇぇぇぇぇぇ！！」
亜紀　「その時　わたし　既に凌と出会ってなければ　健二さんの妻になったかも知れません」
悠希　「そうなんだ」
健二　「おぉぉぉ　それは光栄な話です　おっと失礼」
亜紀　「なので女のわたしとしては　　基本　今回の健二さんのお話　受け入れます」
　　　　「ただし数年　わたしの参加は　待って下さい」
　　　　「わたしは　今　凌の子供　妊娠してます」
郁美　「えっそうなの　素敵　おめでとう」
悠希　「まあ　おめでとうございます」
敬子　「うわぁぁぁ素敵　おめでとうございます」
健二　「そっそうなんですか　　あっ　おめでとうございます」
亜紀　「皆さん　ありがとうございます」
　　　　「そして更に　もう１人は産むたいと考えています」
　　　　「なので　これは後回しにするつもりありませんし　出来ません」
　　　　「凌の年齢のこと考えると　子供は１日でも早く欲しいので」
　　　　「健二さん　これが　わたしの結論です」
健二　「分かりました　　もっともな理由です」
　　　　「ただ関西支部の立ち上げは　近日中です」
　　　　「そうなると数年間　亜紀さんの代理人　代役が必要になります」
悠希　「そもそも亜紀　それで良いの？」
　　　　「亜紀の役割って　いろいろと」
亜紀　「わたしは　凌　健二さんの役に立てるのであれば　大丈夫です」
悠希　「わかったわ　亜紀がそこまで女のスジを通すなら　その時はわたしも　とことん付き合うわ」
健二　「郁美　改めて　お願いだ」
　　　　「そうなると　郁美が俺の妻になってくれれば」
敬子　「ひどい　お姉ちゃんをそんな理由で　奥さんにしたいだなんて」
郁美　「敬子　いいの」
　　　　「健二さんは　わたしが必要なのね」
　　　　「健二さん　ちゃんと本心聞かせて　わたしのこと　昔と変わらず　愛していますか」
健二　「正直に応えるよ」
　　　　「あの頃は　郁美のこと　　他の女性と変わらないと思っていた」
悠希　「そんな　ひどいこと」
健二　「でも別れてから　気がついたんだ　郁美のこと　誰よりも愛しているって」
　　　　「なのに、戻らなかったことについては　言い訳しない」
　　　　「そして今でも　愛しているのは　郁美だけだ」
　　　　「それだけは信じて欲しい」
郁美　「分かりました」
　　　　「素直に言います　そう言ってくれて嬉しいわ」
　　　　「わたし　ずっと待っていたの　こんな日が来るのを」
　　　　「それに亜紀の背負う負担を　わたしは無視できないの」
　　　　「でも　少しだけ時間くれませんか」
　　　　「わたしには　今　もう大切な人いるの」
　　　　「その人と話さないと　結論出せないの」
敬子　「お姉ちゃん　それって　変だよ」
亜紀　「郁美　あなた」
悠希　「うぅぅぅぅぅん　まあ郁美の決断　どういう形であれ　わたしは支持するよ」
　　　　「その時は、どこまででも　付き合うわ」
亜紀　「郁美ったら　そこまで　もう」
　　　　「分かったわ　二度と郁美を　ひとりぼっちにしない」
郁美　「あはぁ　ありがとう　亜紀、悠希」
　　　　「でも徹とのこと　自信ないわ　どうしたら　わたし」
敬子　「ごめんなさい　敬子はお姉ちゃんについて行く」
　　　　「ねぇいいでしょ」
郁美　「はいはい」
健二　「あのう　その郁美の大切な人　徹さんだっけ　会わして頂けませんか」
郁美　「えっ」
亜紀　「そうね　それがいいかもね」
敬子　「うんうん」
悠希　「うふふ　それはそれは　男の勝負！！ってやつ」

　郁美は、徹と健二、まだ２人の間で揺れ動いていた。
　健二は既に郁美の奪還を確信していて、その場の悠希と敬子、二人の美女の素性を探ろうと躍起になっていた。
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2013年1月5日掲載
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