| 第８話 ３人のハイエナ あの忌まわしい事件から３年近い年月が流れ、 達也の保護も緩んだところで、郁美は谷村貴史に見つかってしまった。 事態は、突然動き出した。 谷村が郁美を発見してから２ヶ月ほど経った頃、福岡のとある居酒屋に、谷村貴史と岩田 裕、浜崎安人の３人が、２年ぶりに集まっていた。 岩田と浜崎は、突如谷村に呼び出されたのだ。 谷村 「いやぁ久しぶり 無理言って申し訳ない」 浜崎 「何かあったのか？」 谷村 「郁美を見つけたんだ」 浜崎 「えっ？ あっあの女をか？」 岩田 「おいおい もう３年以上前の女だろう」 谷村 「頼む 一生掛けて借り返すから、手伝ってくれ」 「俺 どうしても郁美と結婚したいんだ」 浜崎 「木村や石田みたいにか？」 岩田 「それは無理だろう 嫌がられて逃げた女だぞ」 「どうせレイプまがいのこと考えているんだろうけど」 「俺たちは、もう学生じゃないんだぞ バレたら、一生パアだぞ」 谷村 「頼む 完璧な策がある」 「それに凄い情報も掴んだ 郁美は逆らえない」 浜崎 「お前、そこまで惚れたのか？」 谷村 「ああマジだ 俺は郁美が忘れられない」 「実は、あれ以来 他の女とは まともにセックスが出来ないんだ」 「中折れしちまう どうしても郁美を思い出してしまうんだ」 岩田 「えっえぇぇぇぇぇお前もか！！」 浜崎 「実は俺も・・・・・」 谷村 「どうしても入れると興奮が冷めちゃうんだ」 ３人は頷き合い、無言で見つめ合った。 彼らは郁美を忘れられず、病んでしまったのだ。 自業自得ではあったが、鬼畜な彼らにとって、郁美はそれほど素晴らしいご馳走だった。 人間は強欲な生き物だ。 ご馳走を覚えると、普通のものが美味しくなくなる。 セックスも、煩悩の一つであるが故、同様の落とし穴が存在したのだ。 谷村 「俺は ずっと木村と石田が羨ましかった」 「あいつらは、このこと予感していたのかもしれない」 「郁美は、俺たちレベルでは凄すぎる女だったんだ」 「俺たちは、取り憑かれちまったんだな」 岩田 「そうかもしれないな インポと同じだもんな」 浜崎 「辛いよ」 岩田 「でもお前の嫁になってしまったら、浜崎と俺は一生独身か？」 谷村 「だから一生掛けて借り返すって言ってるだろ」 「２人が他の女が抱けるようになるまで、郁美貸し出すぜ」 浜崎 「おぉぉぉぉぉぉそういうことか さすがリーダー」 岩田 「なるほど納得 そういえば、お前って女を廻すの好きだもんな」 「分かった 協力しよう まずは作戦を聞かせてくれ」 浜崎 「俺も参加するよ」 谷村 「恩に着る」 「実は２ヶ月ほど前に郁美を神戸で見つけたんだ」 岩田 「神戸だと・・・」 谷村 「そうだ まあ聞いてくれ 探偵を雇って詳しく調べたんだ」 「それで、いろいろ使える情報が入った」 「これが報告資料だ ２人で読んでくれ」 谷村は、２人に茶色封筒に入った資料を手渡した。 資料は１００ページ近くあり、写真も多数添えてあった。 資料を読んだ岩田と浜崎の目が、まもなくケモノの目に変わっていった。 岩田 「留学嘘だったんだ」 「しかし なんでソープ嬢になんか・・・あの女 お金に困るような家じゃないぞ」 浜崎 「本当に淫乱な女だな ハプニングバー、ソープ嬢・・・・・」 「そんなに男が好きなんだ」 岩田 「しかし この山田 徹ってガキが気に入らないな」 谷村 「ああ もう彼氏面してやがる」 浜崎 「そいつ この女の正体知っているのかな」 谷村 「それはよく分からないみたいだ 最近のことらしいし」 「ただ これらの情報をネタに脅せば、落ちるぞ」 岩田 「そうかもしれないが、決定打が欲しいな」 谷村 「これが使えないかな」 岩田 「うわぁぁぁ お前 これ処分していなかったのか？ 約束違反だぞ」 谷村は、３年前のあの日撮った写真を持ち出した。 彼らは、問題発覚後のリスク回避のために、用済みとなった写真は処分するように取り決めていたのだ。 写真は、決定的物的証拠になる。 谷村 「すまん 郁美の分だけは処分できなかったんだ。 もう二度としないから許してくれ」 岩田 「まあ こんな話になったから、わかったよ」 「確かに 決定打になるな この写真見せたら、郁美は動けなくなるだろう」 浜崎 「忘れたい記憶が、目の前にってヤツか」 ３人は、ぞっとするようなケモノのような目をして、作戦の詳細を打ち合わせた。 そして計画は、３人が揃って休暇が取れる1ヶ月後の平日決行と決まった。 岩田 「やはりそれなりの車が必要だな 行き帰りは車じゃないとやばいぞ」 谷村 「それは俺の黒のアルフォード、窓にはフィルムを貼ってある」 浜崎 「貴史 今回お金いくら使ったんだ」 谷村 「200万円近く・・・車改装、探偵代」 岩田 「お前・・・・・探偵代って幾らかかったんだ」 谷村 「100万近く取られたよ まあ今でも郁美の日常の動きをメールで報告して貰ってるから」 浜崎 「便利な時代だ」 岩田 「でも その探偵屋で足つくじゃないか？ やばくないか」 谷村 「大丈夫だ 俺の叔父さんが経営するところだ 秘密厳守さ」 岩田 「親族か まあそれなら庇ってくれるだろう」 「甥っ子をレイプ犯に仕立てる叔父さんなんていない」 ３人は、更に数時間話し込んだ後、また日常の生活に溶け込んでいった。 そして１ヶ月が経った。 谷村達３人は、神戸に向けて黒い車アルフォードに同乗し山陽道を走っていた。 ３人はまさにケモノだった。 日中見ると、窓にフィルムを施した黒い車アルフォードは異様であった。 近くに止まられたら、普通の女性なら身の危険を感じるだろう。 ましては乗っているのはケモノ３人である。 谷村の立てた計画は、以下の通り。 まず郁美を夜の仕事が休みの水曜日、帰宅のため会社から出てきて駅に近づいたところで掴まえ車に乗せてしまう。 会社の前、自宅付近では顔見知りに見られるリスクが高いし、自宅はオートロック、監視カメラに映像が残るのでヤバイと判断。 駅前なら、ナンパにも見えるし、本人に自分の意志で車に来させるので拉致には見えないはず。 水曜日は、帰宅か、徹と待ち合わせの百貨店そごう方面に向かうパターンなので、確実に通るポイントが駅付近、つまり行き違いのリスクが少ない。 郁美を言うこと聞かす手段は、昔の写真、足りなければ調査結果を用いて脅す。 まあ我々と出会って、動揺するだろうから昔の写真で十分だろう。 そのまま福岡県に戻るのも良いが、我々が我慢できないし、日中の移動は避けたい。 よって夜まで、予約確保済み防音設備の整った特殊ラブホテルに連れ込む。 そこで徹底的に脅し、谷村との婚姻届にサインさせる。 そして用意した淫具で責め立て、輪姦し肉奴隷であることを叩き込む。 あとは適当な時間に出発し、そのまま福岡の谷村の家に連れて行く。 朝一番で、婚姻届を提出し、もう後戻り出来ないようにする。 というものだった。 ただ注意点として、森川亜紀と田原 凌には察知されないように遂行する必要がある。 亜紀は郁美と親友と思われ、その婚約者田原が怖い。 情報によると、田原はかなりの実力者だ。 うっかりすると追跡受けたり、手ひどい報復を受ける可能性がある。 間もなく午後５時、終業時間だ。 郁美は、その日 徹といつもの場所そごう前で待ち合わせをしていた。 徹が父親に呼ばれ今度出席する業界パーティに着ていく正装を一緒に買いに行く予定なのだ。 もちろん郁美プロデュースで、服を選ぼうということになっていた。 女性にとって、一緒にショッピングを楽しむという行為は、ある意味大切な行事なのだ。 郁美は、早く徹に会いたくて、小走りに待ち合わせ場所に向かった。 西川（旧姓:川村）里奈（25歳）は、その日はたまたま東急ハンズに買い物に来ていての帰りだった。 里奈は、亜紀の親友であり、「カノジョ」でもあり、元ソープ嬢で亜紀の同僚だった女性だ。 ２年ほど前に、ソープ嬢は引退して、高校時代の同級生でもある西川義則と結婚して人妻となっていた。 実は、里奈と西川は高校時代３年間彼氏彼女として過ごして、卒業後結婚する予定だった。 里奈は母一人の母子家庭であったが、母親が里奈の高校卒業間際に結婚詐欺にあい、経営していた旅行会社の方にまで多大な被害を出して、大きな借金を抱えてしまっていた。 母思いの里奈は、西川と別れ、一大決心のもとソープ嬢の道を歩んだのである。 亜紀とは、そこで出会った。 同じ時期の入店であったこと、同じ歳だったこと、似たような境遇だったことなどから二人はすぐに仲良くなった。 里奈は、事情を隠して、自ら無理に別れた西川への想いに苦しんでいた。 その心の隙間に亜紀は入り込み、すぐに二人は濃厚なレズ関係に発展していった。 そして５年ほど経った頃、仕事の接待でソープにやって来た西川と里奈は再会してしまう。 西川は、小さいながらも商社を経営する社長を父に持つ跡取り息子だった。 西川は５年経っても里奈への想いを捨てきれずにいたので、ソープのパネルに里奈に似た女性がいれば指名してしまうのは自然な流れだ。 西川は、愕然とする。 最愛の女性が、なんとソープ嬢になっていたのだから。 西川はショックを受けるが、今でも愛している女性なので軽蔑することはなく、なんでこうなったを問い詰めるのだった。 事情を知った西川は、大声で泣いた。 そして借金は自分が何とかするから、すぐ仕事を辞めて欲しい、そして自分とのこと考えてくれと懇願したのである。 里奈は応じなかった。 自分の身体は汚れ、西川にふさわしくない女になったと思っていたのだ。 西川は毎週のようにやって来たが、話は平行線だった。 それを見かね、亜紀が二人の間を取り持った。 結果、借金は西川が父からお金を借り肩代わりし、里奈はソープを止めて西川の妻となったのだ。 夫婦で西川の父にお金を返す必要はあったが、愛する夫と共に頑張るという環境が、里奈は幸せを感じていた。 里奈は、今では固く閉ざした自分の心を溶かしてくれた亜紀に感謝していた 現在でも、亜紀と里奈は交流が頻繁にあって身体の関係は継続しており、里奈は郁美とも２度ほど関係があったのだ。 郁美は、既に里奈にとっても可愛い存在となっていた。 里奈は、やや先の歩道を駅に向かって歩く郁美に気がつき、小走りになって後を追いかけつつあった。 その時だった、挙動の怪しい若い男３人が郁美の行く手を阻んだのだ。 郁美の驚きと明らかに怯えた身体の動きに、里奈は思わず何事かと足を止めた。 「郁美ちゃん どっどうしたの？ 何かされたの？」 男の１人が、何か言いながらデジタルカメラのようなものを郁美に見せていた。 郁美は激しく首を振り、後ずさる。 男の１人が郁美の背後に回り、もう１人が郁美の右腕を掴んだ。 「なっ何？ あの男達は何者？」 郁美の表情が見えないだけに、判断に迷う。 腕を掴まれ身体をよじった郁美の顔が見えた。 泣きそうな、そして明らかに怯えている表情だった。 「たっ助けなきゃ どうすれば？」 里奈は、女の感で郁美に危険が迫っていることを察したが、相手は男３人なので、どうすべきか一瞬迷ってしまった。 郁美は、うな垂れながら駅と違う方へ連れて行かれようとしていた。 迷う時間はなかった。 慌てて郁美のいる方へ走り出した。 「駄目！！ 郁美ちゃん ついて行っては駄目！！ 危険だわ」 さっきの一瞬の迷いがタイミングを悪くしてしまい、横断歩道の赤信号で先に進めない。 郁美達が側道に入り見えなくなりそうだった。 里奈は叫んだ。 里奈 「郁美 行っては駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ！！」 もう郁美達は、見えなくなっていた、やがて信号が青に変わり、里奈は全力で走った。 郁美達が入った側道にたどり着いた時、目に入ったのは、郁美がコインパーキングに止められた黒いミニバンの車に押し込まれるところだった。 里奈 「郁美 駄目よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ 郁美ぃぃぃぃぃぃぃ」 叫びながら駆け寄っていたが、間に合わず黒いミニバンは向こうに走りだした。 里奈は、機転を利かせ、とっさに携帯で車の写真を連写した。 「どっどうしょう 亜紀に連絡しなくちゃ」 里奈は、亜紀の携帯に掛けたが、なかなか出ず留守番サービスになった。 至急折り返して連絡してっとメーセージを入れ、ナンバープレートがはっきり分かる車の写真を添付して亜紀にメールした。 「どうしょう どうしょう あっ仲間にも連絡しておけば、見つかるかも」 里奈は機転を利かし、亜紀を慕う女達のネットワークに、状況説明と例の車の写真を添付してメール一斉送信で流したのだ。 里奈は再び走り出しタクシーに乗り、その場を去っていった。 郁美は、驚愕と絶望、諦めの底にいた。 ３年も経つというのに突然谷村達が目の前に現れ、あの忌まわしい写真を見せつけられ目の前が真っ暗になった。 そして今の生活が、実は偽りの生活だったのかもしれないと絶望していた。 「そうだ 自分はこの男達の汚れた肉奴隷だったのだ だからその居場所に帰るのだ」 もう郁美の耳には、男達のおぞましい言葉は入ってこなかった。 郁美の精神は、どす黒い闇に包まれ、諦めにも似た思考停止に陥っていた。 ふっと郁美の耳に、敬愛する女性の声が聞こえたような気がした。 周囲を見渡すが、２人の男のケモノの目に威圧され、再び目線を下げてしまった。 「里奈さん？ 気のせいかな 亜紀、徹、凌・・・・・達也兄さん ごめんなさい」 「郁美は汚れた女です もう・・・・・徹・・・・・愛してるわ」 「さようなら みんな・・・・・・・健二さん・・・私、もう駄目です」 亜紀は、田原との結婚式の準備に追われていた。 田原のすぐに結婚式を開きたいという強い希望により日程が余裕がないにもかかわらず、亜紀のドレス、衣装は、全て某有名デザイナーによるオーダーメイドにするという、これまた凌の強い希望で進めていて、亜紀はこの為にやってきたデザイナーが宿泊するホテルオークラ神戸に採寸と打ち合わせのために、何日も缶詰になっていたのだ。 亜紀は、そんなことで、かつての借金の数倍に達する出費に抵抗感を感じて普通で良いと主張したが、二人の結婚式は田原の仕事関係の繋がり上、県知事、市長まで出席する壮大な結婚式となり諦めざるを得なかった。 田原としては回り道をさせ亜紀に苦労を掛けたという思いがあり、またもっと亜紀を輝かせたいという気持ちに加えて、年齢も親子ほど離れており、そんな美しい若妻を迎えられる喜びでいっぱいだったのだ。 その日も、そんな中での急報であった。 亜紀は朝から夕刻までずっと行ってきた打ち合わせにゲンナリしてきた時に、なにげに携帯電話をチェックした時に気がついた。 里奈が連絡してから、30分以上経過していた。 「里奈なに？ この車なに？」 亜紀は里奈に電話して、事の次第をやっと知ったのだ。 ３人の若い男、そして福岡ナンバーという事実から、亜紀は３年前の男達だと確信した。 亜紀は、慌てて田原の携帯電話に連絡した。 田原は仕事の関係で京都におり、その日の打ち合わせを終えて帰ろうとした時だった。 亜紀 「凌 大変なの 郁美が誘拐されたの 覚えているかな」 田原 「なんだと」 「例の３年前の３人組らしい男達が現れて、郁美を連れて行ったらしいの」 「里奈が目撃して・・・ 凌 どうしょう 郁美が・・・」 亜紀は声を出して泣き始めた。 その泣き声を聞きながら田原は激昂した。 「亜紀を泣かせたな 俺の郁美に手を出すとは・・・・・ゆるさん ぶっ殺す」 田原は亜紀にちょっと待つように言い、一度電話を切ると、地方のグループ企業総帥ならではの対応策を次々と繰り出した。 まず、すぐに懇意にしているその筋の組織に応援要請をした。 そして日頃から付き合いのある県警幹部に、Ｎシステムによる情報提供を依頼したのだ。 田原の依頼を断る者はいなかった。 田原は、すぐに亜紀の携帯電話に電話して、亜紀に自分がとった対応を伝え、その場の指揮はお前がするんだと指示したのだ。 田原は、イザとなったらピシッと役割を果たす女だと若い亜紀を誰よりも信頼していた。 実際、亜紀は田原からの連絡を受けると泣くのを止め、積極的に動き出した。 まず里奈との合流を目指した。 組織の応援部隊も、同じ場所に来て貰えるよう手配したのだ。 神戸大丸前の歩道で、亜紀と里奈は合流した。 その二人の元に、例の女性ネットワークからも情報が入り始める。 田原からは、例の車は新神戸方面から北野方向に走り、まだ市外には出ていないとの連絡が入る。 亜紀は、まだ市内にいるなら場所さえ分かれば、助けられると確信していた。 その時、二人そばに、窓に全面フィルムを貼った黒塗りのＢＭＷが２台が止まった。 その筋の組織から急行した一隊のリーダー三井 剛（36歳）は、田原からの緊急依頼と３年前より自分が担っている秘密任務が一致したことに困惑していた。 「なんてこった ３年も経ってそんなこと しかしこれは俺の失態だな」 「正直 油断していた ３年前の依頼主に 申し開きが必要か・・・」 「まあ とにかく郁美さんをまず奪還することが第一だな あとはその後考える」 「うぅぅぅぅぅん？ あれは亜紀さん？」 黒塗りのＢＭＷの先頭車両から、三井だけが降りて亜紀達のそばに歩いて行く。 付近の買い物客は、不安を感じ黒塗りのＢＭＷから離れるように流れていく。 皆、三井とは目を合わさないようにしていた。 亜紀 「あれって 剛さん？ そうなんだぁ 心強いわ よろしくね」 三井 「愛 いや亜紀さん ご無沙汰しております 再会が出来るなんて幸せです」 「全力で 郁美さん保護に力を注がさせて頂きます」 亜紀 「そういえば店外で会うの初めてだね お願いしますね」 三井 「はい そちらでは何か情報は入りましたか？」 亜紀 「警察ルートの情報では、例の車は新神戸方面から北野方向に走って、まだ市外に出ていないみたいです」 三井 「そうですか」 「可能性として、どこかのマンション、人気のない空き地や廃屋、ファッションホテル」 「奴らは遠隔地からだから、土地勘が無い つまりファッションホテルあたりが有力ですね」 亜紀 「そう思うわ 凌 いや田原さんには その辺当たって貰っているの」 三井 「うちからは別に車１０台ほど出して、市内を回っているところです」 亜紀 「心強いわ でも彼らの命は奪ったりしないでね」 三井 「はい 田原さんからも、そういう指示出ています」 里奈は、明らかにヤクザと思われる屈強な黒服の男と明るく会話する亜紀に驚いていた。 「亜紀に敬語を使うこの人は何者なの？」 里奈は、不安を感じ亜紀の左手を握りしめていた。 この周辺だけ、周囲と空気が違う。 三井 「あのう 亜紀さんのご友人の方 ですよね。 三井と申します」 「なんでも 申しつけて下さいね」 亜紀 「あっすいません 西川里奈さんです 私の大親友です よろしく」 「でも人妻だから 手を出したら怒るからね」 三井 「私は 今でも亜紀さん一筋です ご心配なく でも若い連中には注意しておきます」 「ところで この場は移動しましょう ここは場所が悪い」 「とにかく北野方面に行きましょう」 「私は、亜紀さんの車に乗せて頂いてよろしいですか」 「情報は、早く交換したいので こういった事案は時間が貴重です」 亜紀 「そうね あの方々？」 三井 「大丈夫です ついてきます」 亜紀の赤いベンツAクラスを先頭に、黒塗りのＢＭＷ ２台が北野方面に向かって走り出した。 つづく |
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| 2011.4.17掲載 |
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