『小便は…みんな…出たようじゃな……』 池本の言葉は、秋子へ向けたものか、独り言を呟いただけなのか、どうにも判然としなかった。ただ、彼の呼吸の明らかな乱れは、俺の耳にも伝わってきた。 しかも腰で刻む三浅一深のリズムというか、杭打ちのリズムは速まる一方。５発目の発射が近づいていることは、誰の目にも明らかだった。 対する秋子のほうも、潮をすべて吹き終えた頃から、池本と似たような変化を見せ始めていた。 それまで表情に浮かんでいた苦悶と悲嘆が、明らかに苦悩や“歓嘆”へと変貌を遂げ‥‥というか‥‥つまり、池本の杭打ちによってもたらされる快感を、熱く煮えたぎる肉壷の底から大歓迎している反面、そんな我が身を深く嘆き苦しみ、よがりながら悩みまくるといった、非常に複雑な葛藤の表情に変わっていたのだ‥‥などという文章がどこかに掲載されていれば、それは多分‥‥いや、絶対に“独りよがり”の悪文の見本として扱われたものに違いない。 盥さんもかなり長い文章を書くときがあるようだが、そんな訳のわからない文章は書いていなかったように思う。 要するに、池本の大砲が撃ち出した３発目の液状弾を浴びた後、官能という名の「内なる敵」が目覚め、秋子を肉欲の虜に変えつつあったとき以上に、艶めかしくて悩ましい限りの表情を、彼女は再び浮かべていたのである。 もっとも彼女の場合も、変化が見られたのは表情だけではない。 『ああ……いや……んん……だめ……ああ…ああ……』 口から出る「いや」や「だめ」とは裏腹に、肉体が快感を貪ろうとしていることは、その喘ぎ声の熱さや大きさ、さらには下腹の波打ち方の激しさからも、あからさまに感じ取れた。 そうなると当然、悪役の池本が本領を発揮しないことには、どんな濡れ場も盛り上がりに欠けるというもの‥‥でもないと俺は思うのだが。 池本は何とも非情なことに、快感に身をまかせる秋子に対して、強烈な不意打ちを喰わせたというか、不意に杭打ちを中断したのだから堪らない‥‥のは俺ではなく、もちろん秋子。 『あっ…いや、いやいや、いや……』 彼女は言葉と首だけでなく、肩や尻でもイヤイヤをした。おかげで宙ぶらりん状態の鉄砲乳まで、否応なくイヤイヤ‥‥いや、ぶらりぶらりと大きく揺することになった。 『そうか、続けてほしかったのじゃな？ それなら慈悲深いわしとしては、こうして休んでおるわけにもいかん……と言いたいところじゃが、お前はなにか忘れてはおらぬか？』 いったい秋子がなにを忘れているというのか。 なかなか揺れの止まらないる乳房に目を奪われたせいで、またしても脳味噌を激しく揺さぶられているような感覚に襲われた俺には、ただただ首をひねるしかなかった。 『親しき仲にも礼儀あり。お前にはわしに言うべきことがあるじゃろう』 『………………』 『わからぬようなら、わかるまでこのまま待ち続けても構わぬぞ？ 諺でも、短気は短命というておるし、夜はまだまだ長いからのう』 そこまで言われても、俺にはさっぱりわからなかったのだから、何とも情けない限り。秋子の明晰さに期待して待つしかなかったのだが、待つほどもなく彼女は口を開いた。 『いかせて…ください……』 『小便なら、今度もここでやるが良い』 『………………』 『屁がこきたいのなら、「屁をこきますので、臭いましたらお許しください」くらいのことを言えば、それで充分じゃ。何発でもこくが良い』 『………………』 『どれほどお前の屁がくさかろうと、田んぼと畑に囲まれた土地に生まれ、田舎の香水を嗅いで育ったわしにとっては、屁の河童に過ぎんからのう』 『…………わたくしを…どうか、絶頂まで…うっ…お導きください……。うっ…教祖様の、お力で……うっ、わたくしに…女の…本当の悦びを、お与えください……うう…ううう……』 紛れもない本音とはいえ、屈辱的な頼み事を口にさせられ、嗚咽を漏らし始めた秋子の表情は、小便を洩らしていたとき以上の魅力に溢れていた。 それにもかかわらず、俺まで毎回のように“もらい泣き”しそうになったのは、たぶん俺が未熟で愚かだった以上に、あまりにも純情すぎたせい‥‥なのかどうか、今も自分ではわからない。 ただ、脚本を書いた迫道俊という人物が、濡れ場を盛り上げるためなら、矢でも鉄砲でも持って来いと考えて‥‥いや、鉄砲乳や大砲は言うに及ばず、仏壇だろうと潮吹きだろうと「何でも有り」だと考えていることだけは、最初に１回観たとき、それも途中の段階で理解できた‥‥のではないかと思われる。 おまけに迫道俊の場合、女を玩弄するための常套手段というか、盥さんも『ケツをまくった変態は大変』の中で明智大五郎に使わせた「伝統的な奥の手」まで、ここぞとばかりに池本に繰り出させ、秋子のビビビ‥‥違う、涙を徹底的に絞ったのだから、彼の脚本家としての能力の上等さには、疑いの余地がないと俺は思う‥‥などということはともかく。 池本は秋子の頼みを聞き入れ‥‥というよりも、己の情欲のすべてを満たしたいというその一心から、彼女を絶頂へ押し上げるべく、直ちに杭打ちを再開したまでは良かったのだが。 長時間にわたって潮吹きを堪能しすぎた影響か、あるいは杭の打ち方を、玄人が得意とするらしい三浅一深から、ただただ突きまくるだけの素人流に戻したことも災いしたのか。秋子が「あっあっあっあっ」と２拍子で喘ぎ始めた時点で、池本はあえなく５発目を発射してしまったのである。 『済まぬ』 極楽から戻った池本は、素直に失態を認めて謝罪した。 だが物事には、謝って済む問題と、済まない問題がある。大方のピンク映画において、２拍子のよがり声というのは、女が絶頂に足を掛けたときの明確なサインなのだ。 １０代の童貞というならともかく、過去に何人もの女性に暴行まで働いてきたうえに、重大な過失によって大砲を暴発させた池本の罪が、ただ「済まぬ」のひと言で許されるようなら、「申し訳なくソーロー」とか「♪ごめんね、チロー」といった駄洒落は、誰も思いつかなかったはずである。 『うう…ううう……えーん、えんえんえーん……』 子供のように泣きじゃくり始めた秋子を、池本は仏壇返しから解放してやった。当人は罪滅ぼしのつもりだったかも知れないが、強姦の上にさらに罪を重ねたという事実は変わらない‥‥というか、不意打ちでお預けを喰わされて泣かされた後に、絶頂へ登りつめる寸前で、置いてけぼりまで喰わされた秋子の無念が晴れるわけもない。 『どうやらわしにも、唐変木の血が流れておったようじゃ』 当人は反省の弁を述べたのだとしても、一太郎を引き合いに出したような言い方では、あまりにも無神経というもの。秋子の神経を逆撫でするどころか、彼女の傷ついた心に「清めの酒」と称して小便を浴びせかけ、その上さらに『清め塩』をすり込むことにも等しい。 盛り塩に使われるような、しっとりした塩と違い、お清めに使う塩というのは、粒の大きな粗塩をしっかり乾燥させてあるから、たとえ自分の手でこすりつけるような場合でも、皮膚の弱い人なら、目の粗い紙やすりで肌をこするような痛みに襲われるだ。 実際、池本の無神経な発言は、水溜りの上‥‥いや、“潮溜り”の脇にくずおれていた秋子の泣き声を、さらに大きくする効果しか生まなかった。 『ただ、わしが先にいくことになったのも、元をただせばお前の責任。お前の観音様の具合が、これまでのどの女よりも良かったせいじゃ。そのことを忘れてはならん』 開き直った池本は、暴発の責任を秋子になすりつけた。しかも今度は、小便を浴びせて塩をすり込むどころか、ミルクキャラメルを舐めさせながら、全身に蜂蜜マッサージでも施すような台詞を用いた。 早漏に悩む男にとっては、老獪な池本の台詞が「今日から使える言い訳」として重宝するかも知れない。たとえ相手の女性が、所詮お世辞に過ぎないことを自覚しているとしても、「申し訳なくソーロー」などと言われるより、よほど気分がいいと思われるからだ。 しかし秋子の場合は、何とも複雑な気分にさせられた筈。普段はひとり２回までと決めている池本から、すでに５発も撃ち込まれたとあっては、彼の言葉を単なるお世辞と受け取るわけにもいかず、そうかといって、次回に期待することにも抵抗を感じて当然だからである。 『それにお前は、わしが都合６回は必ず出してやると言ったことも、まだ忘れてはおらん筈じゃ。違うか』 池本の問いかけに、秋子は泣きながらも首を縦に振って返した。質問の仕方が仕方だっただけに、首を振った方向は微妙だが、彼女の返答は「違わない」に違いなかった。 『それならなにを泣く必要がある。わしはまだ５回しか出しておらんし、お前のような女のための“取って置き”の技法にしても、まだ１回も使うてはおらんのじゃからな』 池本の言った「お前のような女」とは、すなわち観音様の具合がいいだけでなく、容姿も抜きん出た女という意味。おそらく秋子も俺と同じように、そう受け取ったはずである。 そうした女心をくすぐる言葉に加え、「取って置きの技法」まで持ち出されれば、秋子もどうにか泣きやめるというか、泣きやむように努めるのは当然だろう。 『どれ、その前に、お前をもっと身軽にしてやろう。汗みずくの着物を着て、窮屈に帯まで締めておったのでは、いけるものもいけんじゃろうし、濡れた足袋というのも、生きて極楽へ向かう旅には、足手まといでしかないからな』 巧みな言い訳を並べながらというか、帯や足袋にまで責任を転嫁しながら、池本は秋子を白い腰巻１枚の姿に変えた。 その時点での俺の意見は、「どうせなら素っ裸にしてやれよ」だったのだが、それもまた未熟さと愚かさがもたらした浅はかな願望。スクリーンに映せない場所というか、俗に秘所とか秘部とも呼ばれる一帯を隠し通すためだけでなく、監督が映し出したい映像を撮るためにも、腰巻を取らせるわけにはいかなかったのだ。 『さあ、立つが良い』 池本に両手を取られた秋子は一瞬、恨めしそうな表情を浮かべた。彼女が仏壇返しを思い浮かべたのは明らかである。 『取って置きの技法を用いるためには、女が立って、男に尻を向けねばならんのじゃ』 それこそ取って置きの札というか、いわゆる切り札を切られた秋子としては、渋々でも立ち上がるしかない。 そして池本に尻を向けようとしたそのとき、彼はさらに注文を加えた。 『あの柱の前まで行くが良い。所詮は飾り物に過ぎんから、わしや大黒柱ほど頼りにはならんし、相撲取りが腕力を鍛える鉄砲柱ほどの太さもないが、床柱につかまっておれば寝床も同然、お前も楽にいきやすかろう』 愚にもつかないことを恩着せがましく言われ、秋子が導いていかれた先は仏壇の脇というか、床の間を飾る黒檀の丸柱なのだが、そこへ向かう彼女の後ろ姿には、ひと目でわかるほどの異変が見られた。 異変というのは他でもない。秋子の両脚がひどいガニ股状態を呈していたことである。それも膝と爪先が外側を向いていただけでなく、歩幅ならぬ足幅というか、歩みを進める両足のかかとの間隔が、肩幅ほどにも広がっていたのだから、あれはどう見ても、桁外れの巨根で杭打ちされた後遺症‥‥というよりも。 あの極端なガニ股歩行は、池本の巨根を強調するための演出であり、同時にまた本山監督の旺盛なサービス精神の表れだった筈。 男性週刊誌ではネタに困ると、処女喪失直後の女性はガニ股で歩くという説の真偽を、『本誌が徹底検証！』だの『処女を卒業した現役女子大生に直撃アンケート』だのと大袈裟に謳って記事にすることも多い。それは何故か。 読者の多くが、若くて美しい女性がガニ股で歩く姿を「どこかで見かけたら変な気分になるだろうな……」とか、「１度くらいは見てみたいものだ」と考えていることを、週刊誌の編集者たちも同類だからよく知っているためだ。そしてまた編集長も、カビが生えたような古いネタだから食あたり‥‥いや、大当たりは期待できない反面、大ハズレも有り得ないことを確信しているからだ。 俺には他の理由が思い当たらない。 おそらく本山監督も、そういった一般的な男の普遍的かつ潜在的な心理を踏まえ、敢えて露骨な演出を施したものと思われるのだが、床柱へ向かうふたりの後ろ姿を、画面いっぱいに撮った映像には、もっと大きな規模というか、壮大な演出が巧みに施されていた。 池本が尻の側に垂らした赤い褌に、秋子の白い腰巻がぴたりと寄り添えば、それはもう紅白の幔幕のイメージ、すなわち吉事や慶事の象徴。無理を承知で例えてみるなら、明日にでも初潮を迎えそうな娘のために、母親が炊いた赤飯のようなもの。 つまり本山監督は、画面の大半を赤と白で構成することによって、いよいよ秋子が“めでたく”本当の女になることを予告し、さらには物語の結末まで暗示していたのだから、あの場面こそ、彼のセンスとアイデアが凝縮された「出色の映像」と称えるべきなのだろう。 もっとも、そうした褌と腰巻に隠された秘部‥‥ではなく、監督が褌と腰巻に秘めた意図に、当時の俺がそう簡単に気づくわけもない。ようやく俺が気づいたのは、１０回以上も観た後のことだ。 それを考えれば、たぶん盥さんの小説にしても、１度や２度くらい読んだだけでは、充分に味わいつくせないのだろう‥‥などということは当然として。 仏壇の横までたどり着いた秋子は、池本になにを言われる前から床柱に取り付き、両足も大きく広げた‥‥というより、目一杯に広げた。 『そこまで広げんでも良い。相撲取りのように高々と四股を踏んで、一太郎が仏になる前に、今一度観音様を拝ませてやりたいのなら、また話しは別じゃがな』 池本が喋り終える前に、秋子は慌てて足を閉じた。恥ずかしさで赤く染まった瞼もきつく閉じ、黒っぽい床柱に頬を寄せた。 対する池本は慌てず騒がず、秋子をじらすこともなく。生地の薄い腰巻をていねいにめくり返し、大砲と観音様との距離を測るように足を広げてから、おもむろに砲身を押し込んだ。 『ああ……』 『どうじゃ、わしの倅の味わいは』 秋子は「最高です」と答えるかわりに、黙って頷いて返した。その様子は、磨きぬかれた黒檀の床柱に頬ずりしたようにも見えた。 今にして思えば、木質が堅いことで有名らしい黒檀の丸柱は、池本の太くて硬い“肉柱”をイメージさせるための小道具でもあったのだろう。 『そうか。それならお前は、好きなときに好きなだけいくが良い。わしのほうは、好きなときにというわけにもいかんがな』 池本は真顔で言ってから、６度目の杭打ちを始めた。 少なからず自覚というものが芽生えたことは、尊大で傲慢な池本にとって一大変化。だがそんなものは、杭の打ち込み方の変わりように比べれば月とスッポン‥‥いや、棍棒と縫い針でしかなかった。 三浅一深のリズムで杭を打っていたときの池本の腰は、ほどんど前後に動いていただけというか、ほぼ水平とも言えそうな軌道の上を往復していた。もちろん身長も腰の位置も、秋子より遥かに高い池本である。足を広げ、膝を曲げていたのは言うまでもない。 ところが６度目に入ると、池本は腰の描く軌道に修正を加えた‥‥というより、根本から軌道を変えたのだ。カメラが真横から撮れるわけもないが、彼の腰の描く軌道が「▽」に近かったことは、背後からの撮影でも充分に見て取れた。 つまり彼の言った「取って置きの技法」とは、まず杭を後退させるときに膝と腰を深く折り曲げ、次に杭の先端だけが浅く埋まった状態で腰を上げ、それから杭を前進させるというものだったのである。 ただしそれも、一定の速度でおこなわれたわけではない。池本のそうした一連の動作には、そろそろクイクイッ‥‥ではなく、スロースロークイックのリズム‥‥というよりも、「そろ〜り・のんびり・グイッ」とでも表現すべき緩急と強弱がつけられており、結果的に三浅一深や九浅一深とは一味も二味も違う「これこそ性技の奥義」といった雰囲気を醸し出していた。 『どうじゃ。取って置きの技は気に入ったか』 『あい……ああ……いい……』 秋子の「はい」は「あい」にしか聞こえなかった。呼吸が荒くなると、子音をうまく発音することが難しくなるらしい。 『んん……ああ…ああ……ああ…いい……んん……だめ…もう……ああ…いい…んん……いい……』 快感に酔い始めた秋子が、あられもない声でよがり始めたとき、突如としてアラレの音‥‥違う、今度は妙に湿った鈍い破裂音が聞こえ、彼女の全身を一瞬で固まらせた。 『どうした。屁をこいたくらいのことで、それほど驚かんでも良かろう』 俺も池本と同じ意見だった。彼のそれまでの傍若無人ぶりや、無神経な言動の数々を考えれば、性交の真っ最中に屁を放ったからといって、驚くことでも何でもない。 ではなぜ秋子は一瞬で固まったのか。池本の次の台詞を聞いた俺の驚きは、屁に火が着くことを初めて知ったときの驚きなど、比較の対象にすること自体、馬鹿らしく思えるほど大きかった。 『親しき仲にも礼儀ありとはいえ、観音様には大小４枚の唇があるだけで、１枚として舌らしきものがあるわけでなし、子袋の口にしても、数え年で１歳の赤子を産み出せる代わり、声を出して喋ることなど、いっさい出来んのじゃからな。お前もわしのように心を広く持って、観音様の粗相を許してやるが良い』 池本は平然として言い聞かせ、泰然たるというか自若たるというか、まるでなにごともなかったかのような態度で、そろ〜りのんびりグイッと腰を動かし続けたのだが、俺のほうは呆然として自失寸前。例えてみれば、公共施設の喫煙所で、他に誰もいないことを確かめ、タバコに火を着ける前に放屁した男が、放火未遂の容疑で現行犯逮捕されたときのような心境。 当時すでに、観音様の別称のひとつが粗相‥‥いや、「ソソ」であることを知っており、マンペというものも話しには聞いていたのだが、まさかピンク映画の中で、いかにも“屁然”としたその音色を聴くなんてことは、思ってもみなかったからである。 他の観客にしても、初めて観た人のほとんどは、おそらく俺と似たり寄ったりというか、呆然とはならなかったまでも、１発目の正体が判明した時点で唖然としたのは確実。 その証拠に‥‥なるかどうかは微妙なところだが、俺は泣きボクロを都合３０回以上も観たのに、あの場面で声を発した男は誰もいなかった。 『あっ…また……』 秋子の場合は、マンペというもの自体を知らなかったらしい。２発目を自覚した時点で硬直が解け、全身を悶えさせた。 １発目と比べて音は小さかったものの、２発目の衝撃はそれほどまでに大きく、呆然としていた俺も我に返った。と同時に、２度あることは３度あるという諺に期待して、３発目が聞こえてくるのを待った。 そうした期待感は、他の多くの観客も一様に抱いていたものと考えられる。期待に大小の差はあっても、ほぼ全員が俺と同じ思いだったと判断してまちがいない。 初めて観たときの俺に、周囲の反応を探る余裕などあった筈もないが、何回も見続けているうちに少しは余裕も出てきたから、そう断言できるだけの材料を得られた。 確かに観客の中には、秋子の観音様が２発目を放った時点で、馬鹿笑いとしか呼べないほどの笑い声を発した男も、居たことは居た。しかし彼は、笑ったのが自分ひとりだと気づいた途端、わざとらしい咳払いでその場を取り繕った。 姿を見たわけではないが、気まずい雰囲気を払拭するために、咳払いという古めかしい手を使った点から考えて、彼の年齢は４０代後半か５０代といったところだろう。 また別の若い男というか、ある日、俺の斜め前に座った学生風の男の場合は、まるで２発目が聞こえるのを待っていたかのように、「ははははは…」と甲高い声で笑いかけたのだが、「は」をふたつ発した直後に固まってしまった。彼の前の席の男たちが、いっせいに振り返って睨んだせいである。 盥さんなら、あのときの状況を『暗がりの中、睨んだ男たちの眼には、固まった男の白い「は」というか前歯が、少なくてもふたつは映っていたことだろう』といった具合に描写するだろうという点に関しては、たぶん疑いの余地がないと思う。 ただ、そういった状況に２度も遭遇した俺には、強い疑いを抱く懸案というか、案件みたいなやつがある。 週刊誌のシモネタ記事を読む限り、とかくマンペというのは嘲笑の対象にされがちだったり、敬遠する男も多かったりするらしい。 しかし果たしてそれは事実なのかどうか、言い換えれば、ほとんどの男たちは本音を明かしていないのではないかと、その点を俺は強く疑っているのだ。 例えば秋子の２発目で笑い声を発した後、咳払いをして取り繕った男の場合。喜劇でもないのに、彼が馬鹿笑いまでしたことを考えたら、その動機は「ここで笑わなければ、変態のように思われて馬鹿にされたり、笑い者にされたりするかも知れない」という一種の脅迫観念だった可能性を否定できない。 笑いかけて固まった若い男にしてもそうだ。１発目の犯人というか正体が判明した時点で、馬鹿笑いした男と同様の“思い込み”に駆られ、「次にまた秋子のマンペが聴こえたときは、真っ先に声に出して笑おう」と、あらかじめ心に固く決めていたとしか、俺には思えないのである。 正直なところ俺自身、泣きボクロを観るまでは、マンペを何となく敬遠していた。話しにしか聞いていなかったにもかかわらず、マンペに対して偏見めいた気持ちを抱いていた。 ところが聴かされてみれば、まさに眼からウロコ‥‥というより、耳からウンコ‥‥違う、耳クソまみれの耳栓が抜けたような思いだったのだから、それもまた俺が“間抜け”だったというか、未熟だったことの証明としか言えないのだが。 泣きボクロを３０回以上も観た俺は、秋子のマンペを総計５００発近く聴いて、ひとつ大きな事柄を学び知ることができた。それはピンク映画におけるマンペの有用性の高さというか‥‥つまり、性交場面に臨場感をもたらし、猥褻感を高めるための効果音として、いかにマンペが有用であるかということだ。 無論、今なお未熟な俺とはいえ、泣きボクロで聴いたマンペが、すべて“本物”だったなどとは思わない。というより、もしかしたら秋子を演じた秋乃みのりは、ただの１発としてマンペを発しなかったのかも知れないとさえ思うほどだ。 しかしそれでも、マンペの音の有用性は充分に理解できたというか、有用性がスクリーンとスピーカーからビビビと‥‥いや、ビンビンと息子にまで伝わってきたのは事実。 泣きボクロでは「最大の見せ場を盛り上げるための効果音」として、「樹武樹武…樹武樹武…」という生々しい擬音、すわわち観音様の嬉し涙と亀の髄液との混合液が、杭の打ち込みによって肉壷から押し出される音も使われていた。 だが、マンペの音と比べてどちらが卑猥な印象を受けたかと問われれば、俺を含めた観客の大多数が迷うことなく‥‥というか、正直に回答するかどうか迷うことはあるにしても、匿名が条件なら最後は結局、とうに決まっていた答えを選び、相手の耳元へ「マンペのほうです」と囁くだろう。 だから俺としては、マンペの威力というか、卑猥な魅力と表現すべきか、とにかくマンペが生み出す絶大な効果の程を、まさに知り尽くしているとしか思えない脚本家と監督に対して、最大限の敬意を払いたいとは思うのだけれども。 今こうして久々に、秋子がマンペを放つ場面を思い返してみて、つくづく思い知らされるのが、我が身の進歩の遅さ。 泣きボクロのすべてが気に入り、数万円にも及ぶ入場料を払ったばかりか、脚本家や監督に敬意まで払いたいと思うほどなのに、盥さんから「美女とビビビの関係」をタダで、しかも噛んで含めるように教えてもらうまでの間、マンペとビビビをまったく別物として捉え、美女のビビビは幻滅を招くだけだなどと、頭から思い込んでいたのだから、これはもう呆れるしかない‥‥こともなかった。 俺の場合、いわゆる「喰わず嫌い」にも似た「聴かず嫌い」の音が多く、それを反復学習で克服しようと常に心がける性格なのだと認めれば、進歩の遅さを気にしたり、自分に呆れたりする必要など、いったいどこにあるのかといった心境に、いずれは達する筈。 要するに自覚の問題なのだ‥‥とも言い切れないが、諺でも「馬鹿と鋏は使いよう」とか「丸い玉子も切りようで四角」というのだから、俺の考え方に誤りがあったり、見通しが甘かったりするとは思えない。 ほんの一瞬の間に、そこまで的確な判断を下せた俺の進歩の速さは、高層ビルのエレベーターが１階から３０階へ到達する速度に匹敵するかも‥‥などと言えば、比較する対象に難がありすぎて、自分でも「何となく嘘くさい気がしないでもない」としか言えないが、泣きボクロを観た回数には嘘も偽りもない。 本当に３０回以上も観たからこそ、そしてまた迫道俊が脚本に盛り込んだ台詞は、どれもすべて「必然の積み重ね」だったからこそ俺は、２発目のマンペを自覚した時点で硬直が解けた秋子に対し、池本がこんな言葉をかけたことまで、何となく‥‥ではなく、難なく思い出せるのだ。 『わしのことなら気にせんで良い。田舎育ちのわしも、さすがに河童の屁だけは聞けなんだが、観音様の屁なら、これまで幾度となく聞いてもきたし、だからといって、ただの１度たりとも観音様の屁で、倅が気を失うた憶えもないからのう。くれぐれも心配せんことじゃ』 『でも……ああ……でも……ああ、あ、いやっ……。どうして？ ねえ、どうして？』 ３発目を響かせて慌てふためいた秋子が、腰を振りまくってしまえば、池本も杭打ちの一時休止と、お得意の説教を余儀なくされるというもの。 『良いか。観音菩薩の像が屁をこくはずもないが、徳のある職人が生涯をかけ、精も魂も尽き果てるほどに、心血のすべてをそそいで作った菩薩像の中には、目から涙を流す像もあると言われておってな。 それは観音菩薩がこの世に蘇られていて、人々の苦しみや悲しみを取り除き、楽にしてくださっている証しだと、そんなふうにも伝えられておるんじゃ』 『………………』 『そうした言い伝えを信じるかどうかは別として、女が生まれながらにして持つ観音様の場合は、成長するにつれてまず血を流し始め、次に嬉し涙も流すようになるわけじゃが、観音様が充分に練れて、屁をこけるようになるまでは、まだまだ１人前の成長を遂げたとは言えんのじゃ』 『………………』 『人柄を言い表すときに、可もなく不可もなく、面白味に欠ける者のことを、沈香も焚かず屁もひらずと言い慣わすが、それを観音様に当てはめて言えば、チンコを咥えておるときに涙は流せても、肝心の屁がひられんうちは所詮、具合の良さも高が知れておるということじゃな』 俺が「ジンコウも焚かず屁もひらず」を聞いたのも、あのときが初めて。ジンコウが人口でも人工でもなく、正しく沈香だと知ると同時に、沈香の意味まで知ったのは後日のことだが、それもまたピンク映画で有意義な知識を得た初の経験だった。 『つまりお前の観音様が屁をこいたのは、ようやく観音様が軟らかく練れてきた兆し。お前にとっても喜ぶべき兆候なのじゃ。黄門様も若い頃は諸国を漫遊できんかったように、観音様が硬いうちは、女も容易なことでは極楽へ行かれんからのう』 『………………』 『その証拠に、お前のほうも、ますます具合が良くなってきたじゃろう。違うか』 返答を見透かしたような池本の声に、秋子は首を横に振って応じた。誰がどう考えるまでもなく「違わない」という答えである。 『それはなによりじゃ』 池本はそう言って杭打ちを再開し、秋子もまた何事もなかったかのように喘ぎ始めたのだから、てっきり説教は終わったものと思った“当時の俺”は、まったく未熟で愚かで浅はか。 秋子の観音様の具合が「ますます良くなってきた」のなら、２度と暴発は許されないことを自覚している池本が、杭打ちに意識を集中するはずもなかった。 『良いか』 『いい……ああ…いい……』 『ついでに言うておけば、そもそも男女のまぐわいというもの自体、動物的欲求に突き動かされておこなうものであり』 『ああ…もっと突いて……もっと動かして……んん…奥まで、突いて……』 『人がその３大欲求、すなわち食欲、睡眠欲、性欲を満たさんとする行為の中では、最も恥ずかしい行為に他ならん』 『んん……あっ…んん…でも…この音、恥ずかしい……』 『だからこそ、恥を知る者は皆、人目を忍んで…まぐわいをおこなうんじゃが、それを逆に言えばじゃ………つまり人目さえ忍べば、あとは……どれだけ、恥ずかしいことをしようが……』 観音様が４発目を放ったあたりから、池本の呼吸は乱れ始め、ぶつ切り状態の説教などは、ただブツブツと呟いているようなものでしかなかった。 『あっ……いや、もう……だめ、やっぱりだめ……こんな音はだめ……』 『決して、だめということはなく……どこからどんな、恥ずかしい音を…立てようと、どれほど淫らな…声を、発しようと……いっこうに構わんのが……道理というもの』 『ああ…いい……んん…いい……だめ……ああ…ああ……だめ…だめ……』 ５発目が聞こえ、秋子が完全にダメになり始めたあたりで、池本は「そろ〜り・のんびり・グイッ」という杭打ち方法を忘れ、普通の腰使いに戻してしまったのだが、それでもなお説教だけは続けたのだから大したもの。 『そもそも、男女のまぐわいに…おいては……なによりも、恥ずかしい行為を……したり、させたり……することこそが……』 『ああ…いきそう……んん……いきそう……』 『互いに…迷わず…極楽へ、いくための……唯一の、近道…なんじゃからな……』 『あっあっ、あっあっ……もう、あっ…あっ、もう…もう……あっあっあっあっ……』 『お前も、しかと…憶えて…おくが良い……』 『ああ…いきます……もう、いきます……』 秋子は「いきます」を忘れていなかった。 『ん……んんっ！』 秋子が背中を反らし、低く呻いて絶頂に登りつめた後も、池本は休まず腰を動かし続けた。 カメラはそんな彼の奮闘ぶりを、ほぼ正面に近い角度から、それも畳に這うような位置から追い続けた。つまり本山監督は、秋子の広げた脚の奥というか向こう側で、赤い褌がひらひらと揺れ続ける映像によって、池本がまだ６発目を発射していないことを示したのである。 そして俺が例によって、「どうせならもっと上のほうを覗くというか、秋子の観音様を見上げればいいのに……」などと馬鹿なことを思っていたら、何とカメラが徐々に上に向けられ、画面に映し出されたのは観音様‥‥の足下とも呼べそうな場所。すなわち観音様が流す嬉し涙と、大砲が撃ち出してきた液状弾で汚れた内股。 あのときの光景を、直後の映像も含めて、テレビの秘境探索番組でよく耳にする大袈裟なナレーションふうに描写すれば、「そのときカメラは、観音様の体内から巨大なナメクジが這い降りた痕跡を捕らえた！ と誰もが思った瞬間、通算６発目の鈍くて湿った破裂音とともに、夥しい数のナメクジを溶かしたようにも見える多量の白濁液が、秋子の白い柔肌を一気に伝い流れたのである」といったところ。 もしそのときの液体が黄濁していたら、まさにその映像と音声は、浣腸された女がパンティーを穿いたまま洩らす姿そのもの‥‥と言えるような男は、女性に浣腸した経験を持っているだけでなく、女性が汚濁液を洩らす姿を常に眺めることで、迷わず極楽へ近道したいと心がけているのだろう。 そうした心がけを立派と言えるかどうかは別として、約束通り秋子を極楽へ送り届けた後、現地で１泊２日‥‥いや、１発２泊させた池本の根性は見上げたもの。その点だけは、立派としか言えなかった。 『ああ…また…また……いきそう……いきそうです……』 『今度は…わしも……』 『あい……いい…一緒に……いい……いいっ！』 最初に絶頂を迎えたときの秋子は、背中を反らしていた。だが２回目に登りつめたときには、６発目を放った池本が腰を反らしたのとは対照的に、呻きながら上体を丸めた。 彼女のそんな姿は、歓喜に打ち震える観音様を、しっかり抱き締めてやっているようにも見えた‥‥などと表現できるようになったのは、俺も少しは進歩した証拠ではないかと、ウンコをしながら密かに自負する俺は、まだまだ進歩の跡が「たどたどしい」といった気もしないではない。 しかし一方、本当の女になった秋子の進歩には、著しいものというか、目を見張るものがあった。 彼女自身は、まだ極楽気分に浸っていた筈にもかかわらず、池本が「ふう」と息をついた一瞬のタイミングを逃すことなく、観音様が彼の杭をクイクイッと締めたのだ。 それはすなわち秋子が「ぬるま湯にどっぷり浸かって」いなかった証拠であり、同時にまた“ひと潮”吹いた後、やたらと話しが冗長で余計なお節介も過ぎて自分の身勝手さをまったく自覚しない巨体包茎巨根絶倫老人と化した池本から、長々と聞かされた説教の内容を思い出し、即座に実行へ移すだけの勇気を発揮した証明‥‥というよりも。 秋子と池本の関係や、両者がそこへ至るまでの経緯を考えれば、彼女のおこなった喰い締めというか“杭締め”は「狂気のなせる技」としか言えなかった。 『ん？ 今の観音様からの合図は、まだ満足しきれておらんということか』 極めて直截な問いかけに、秋子は何の言葉も返さなかった。頷く素振りさえ見せなかった。だが、観音様が再び「クイクイッ」とやって、「はい」とか「ええ」とか「もっとやって」と答えたのは明らか。池本が次に発した言葉こそ、そのなによりの証明だ。 『なるほど、なかなか上手に締めおるわい。どれ、そういうことなら、わしもふたつ返事で応じてやらねば、絶倫で鳴らす倅の沽券にかかわるというものじゃが、そうよのう……。どうじゃ、ここらで少し休憩を入れぬか』 さすがの池本も、休憩抜きの７連発には“及び腰”だった。とはいえ、勝手に杭を引き抜かなかった彼の進歩ぶりもまた長足と言えただろう。 『そろそろ観音様も喉が渇く頃じゃろうし、観音様が干からびかけたのでは、お前のほうの具合も悪かろう』 『………………』 『諺では、腹が減っては戦ができぬとしか言うておらんが、満腹状態のときもまた、戦へ向かう気力が起きにくいものなんじゃ。なにせ、たらふく飯を喰うてしまえば、起きていることさえ難儀に感じて、横になりたくなるほどじゃからのう』 『………………』 観音様はまだ腹を空かせていたからこそ、戦の継続を望んでいたのだ。言い換えれば、初めて味わった悦びに味をしめたからこそ、クイクイッと締めた秋子なのである。生半可なことでは説得を聞き入れるはずもない。 地方自治体の首長にしてもそうだ。権力の座に就く“旨味”を１度でも味わってしまえば、あとは政治的な主張もへったくれもなく、ただひたすら多選を目指すのみ。そろそろクイクイッ‥‥違う、「そそそろ引退を」などという周囲の説得になんか、遠くなった耳さえ貸す気も起きないだろう。 『その証拠に、国力が豊かで食料も豊富に行き渡っておる国では、内乱や民族紛争といったものが起きにくいのに対し、飢餓が蔓延しておる国では、己の血を売って喰いつなぐことさえ叶わず、血の繋がりを持つ者同士が、血で血を洗うような悲惨な戦いを、連日のごとく繰り広げておるではないか』 『………………』 『お前も新聞やテレビのニュースを見ておれば、そういう現実を知らぬわけではなかろう』 ピンク映画の中で、悪役に国際問題まで語らせた脚本家は、俺の知る限り迫道俊が初めて。 もっとも盥さんが『ケツをまくった変態は大変』の中に、“殺人”としか呼べない「業務上過失致死行為」を織り込み、法律の不備や欠陥を指摘していることを知った今は、それほど目新しいことのようにも感じられない。 『なに、わざわざお前の手を煩わせる必要はないし、お供え物なんぞに手を出すこともない。こういうこともあろうかと、わしが備えを整えてきたからな』 『………………』 『もちろんお前が飲み喰いする分もあるし、わしがお前の給仕もしてやるから、いい加減に観音様を黙らせぬか。さもないと、尻に張り手を喰らわせるぞ』 池本が喋り続け、秋子が黙りこくっている間も、観音様はひとりモグモグと巨根を貪って‥‥いや、黙々と「クイクイッ」を続けていたらしい。 尻を叩くという脅しが効き、ようやく観音様から解放された池本は、いったん褌を締め直してから、飲み喰いの支度に取りかかった‥‥といっても実際は、部屋の隅に置いてあった信玄袋を取りに行き、秋子の待つ床柱までそれを持ち戻っただけ。あとは床柱に背中を預けるような格好であぐらをかき、秋子を横抱きにしてやった時点で、すべての準備は完了した。 |
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| 2010.1.13掲載 |
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