姉ちゃんは優等生　保留守人 作
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12.


「うん…いいよ。全然……」
「じゃ、わたし、自分の枕取ってくる」
「うん」

　俊介は平静を装って応えていが、本当は腰が抜けそうなほど動揺している。
　それを隠そうとするかのように、小走りで自分の部屋から枕を抱きかかえて戻ってきた奈津子に、わかりきっていることをわざわざ聞いた。

「ハハハ、姉ちゃんホントに地震が怖いんだ」
　すると奈津子が少し恨めしそうに俊介を見つめ、口先を尖らせた。

　ふたりが俊介の部屋に戻るや否や、
「ねぇ、今日はもう寝ることにするわ。アンタも本当は眠たいんでしょ？」と、奈津子は枕をベッドに置いてから、手際よく勉強机の上を整理した。
　そして「おじゃましま〜す」と言って、ベッドの奥、壁側の方に潜り込んだ。

　俊介は夏でも厚めの上布団を好んで使っている。
　重みのある上布団でないと、どうも落ち着かないのだ。
　だからその分、冷房はガンガンに利かせている。

　自分の居場所に困った俊介が、まだ突っ立っていることに気づいた奈津子が言う。
「何してるの？　早く電気消してアンタも寝なさいよ」

　こんな時でも姉の口調がいつものように“上から目線”であることに安堵しつつ、
「え、あ…俺、床で…寝るから……」と、
　俊介の方はどうも歯切れが悪い。

「どうして？　なに遠慮してるのよ。俊介もここで寝なさいって。
　そんな所じゃ風邪ひいちゃうし、熟睡できないでしょ？」
「でも……」
「早くしなさいってば」

　奈津子が本気で言っているのだと俊介にもわかった。
　それでも高校１年生の男子として、姉と同じベッドで寝るのは照れくさい。
　姉におぞましい姿を見せつけてしまった直後だけに、ことさら抵抗感も強かった。

　だが奈津子は上布団を持ち上げ、『ここよ』とばかりに、横に俊介が体を横たえるに十分なスペースがあることをアピールした。
　そこでようやく俊介も決心する。

　灯りを間接照明に切り替え、さらにダイヤルで照度を落とした。
　そしてベッドに上がり、Ｔシャツとトランクスのまま奈津子の隣に背中を向けて横たわった。
　決して体が密着しているわけではないけれど、背中には熱く感じる程の奈津子の体温が伝わってきていた。

　……それは全く想定外の状況展開だった。
　ほんの数十分前までは、明日からどのツラさげて姉と顔を合わせばいいのかと、思案六法していたというのに、気が付けばこうして姉弟はシングルベッドで添い寝している。

　異様な緊張感が俊介の体を強張らせた。
　こんな状況で眠れるわけがない。
　無心になろうとして硬く目を閉じるが、逆に、脳裏に焼き付けられた残像が鮮やかに蘇えってしまう有様だ。
　“作品１”や“作品２”、あるいは復元したファイル画像が奈津子の笑顔に重なる。
　そこへ神崎の不気味なニヤケ顔が現れ、例の中指を突きたてたイヤラしい指使いを思い出させた。
　俊介が強い嫌悪を覚える神崎のその指に、既に奈津子は自分のヴァギナを犯されることを許しているというのか？　
　神崎の指に膣内をかき回され、姉は歓喜の声を上げていたのか！？……。

（……あっ！）

　俊介はパンツの中で冷たいものを感じた。
　尿道球腺液だ。
　平たく言うと“ガマン汁”。
　いつの間にかペニスを完全に勃起させている自分に気づく。
（……何で？！）

　そんな時、
《ギシギシギシギシ…》

　低い、不気味な音とともに小刻みな振動が始まったが、それはすぐに止まった。
　俊介はなぜか二の腕に痛みを感じる。
　奈津子が無言のまま俊介の腕を力いっぱい掴んでいたのだ。
　
　俊介は寝返りで振り返って、
「大丈夫だよ、姉ちゃん……」
　だが、そう言った直後、再び揺れが始まった。

「キャっ！……」
　今度は奈津子も小さく声を発し、俊介の胸に抱き付いた。
　揺れは先ほどと同じくらいで小さかったが、長く続いている。その間、奈津子はなりふり構わず満身の力をこめて俊介に抱きついていた。

　地震に対しては冷静な俊介。
　可愛いチョンマゲのオデコが目の前にあり、奈津子の心臓の鼓動が伝わってくるほど体は密着している。
　鳥肌が立ったのも不快感からではない。
　奈津子のパジャマを穿いた脚が俊介のナマの太股に強く絡みつき、パンツの中で勃起した俊介の肉棒が奈津子の柔らかな下腹に押し当たっているのを感じる。
　それでも奈津子は力を緩めなかった。

　揺れが治まっても奈津子は固まっている。
「ね…姉ちゃん、治まったみたいだよ」
　ようやく奈津子は顔を上げ俊介を見つめる。
　そして慌てて体を離した。
「ご…ごめんなさい……」

「あ、俺は全然大丈夫だから」
「わたし、ホントに怖いの、地震……」
「……うん、わかってるから」

　体を離しても、布団の中で奈津子はまだ俊介の手首を握っていた。
　俊介は、いつもは“上から目線”の強い姉がとても弱々しく感じ、布団の中で手をつなぐようにしてやった。

　俊介は今がチャンスだと、とっさに思った。
　今を逃すと、一生うやむやにしたまま過ごさなければならないと思った。

「あの……さっきはごめん。ちゃんと、姉ちゃんのパンツ、水で洗ってから洗濯機に戻しといたから……」
　すると奈津子は困ったような表情を浮かべたものだから、慌てて補足する。
「あ…気持ち悪かったら捨ててよ。俺、新しいの……弁償するから」

「……もしかして、私のパンツの中で……出しちゃったの？」
「え？　そ、……出ちゃったんだ。いきなり」

　奈津子は俊介が“暴発”させていたことには気づいてなかったようだ。
　言わなければよかった……。

　しばらくの沈黙のあと、
「わたしのパンツで、興奮してたの？」と、奈津子がいきなり核心をついてくる。

「え…うん、でも今日が初めてだよ、あんな事したの。本当だよ」
「……びっくりしちゃった」
「……うん、ごめん」
「でもね、聞いたことがあるの、わたしも友達から」
「え？」
「その子にもね、弟がいるんだけど……やっぱりそんなことがあったんだって」
「え…あ…そうなんだ」
「わたしもその時は、信じられないって思ったんだけど……」
「だ…誰にも言うなよな……姉ちゃん」
「わたしは言わないわよ。心配しなくても」
「その、何て言うかな……姉ちゃんと、したいとかじゃないんだよ……」
「……？」
　表現が露骨過ぎたか、奈津子が戸惑いを見せる。

「だ…だからさ、ほら…あの……」
　俊介は焦りながら言葉を探す。
「……世間一般に、女の子のパンツってどうなってるのかなって……ニオイとか…ただそれだけで……」

　すると奈津子は「もう、やだ……」と、泣きそうな顔をして、空いている右手で俊介の肩を叩いた。

　手を繋いだまま、姉弟ですごい話をしていると思った。

「……ねえ、覚えてる？」
唐突に問いかけたのは奈津子だ。
そして唇からベロを尖らせて突き出す。

「あっ！」
　奈津子のその仕草が、十数年ぶりに俊介の記憶を蘇えらせた。

　それはまだ幼かった姉弟の密かな遊びだった。
　お互いに舌を細く突き出しながら顔を向け合う。
　緊張しながらその舌先をどんどん近づけていくと、やがてはピッタリとくっ付き合う。
　その感触がくすぐったくて、何となく気持ちが悪い。
『キャー』と叫んですぐ離すわけだが、その感触をふざけて面白がる遊びだった。
　“いけない遊び”と認識していたのか、決して親の前ではやらなかった。

「覚えてるよ、姉ちゃん。よくやったね」
　俊介は照れるように言った。
「久しぶりにやってみない？　ほら……」
　奈津子がそう言ってまた舌を突き出す。

　ドキドキしていた俊介の心拍数はさらに上昇する。
　奈津子の真意を知る由もなかったが、俊介だって嫌なわけじゃない。
「いいよ、じゃ……やってみようか？」

　思い切って舌を突き出し、奈津子の顔に近づける。
　奈津子が目を閉じたので、まるでキスでも始めるかのような雰囲気になった。
　きれいなピンク色をした奈津子の舌先に俊介の舌先がピッタリと合わさる。

（あうっ！…）
　くすぐったいような、何とも言えない感触を舌先に受ける。
　そのあとジーンと痺れるような快感が体を突き抜けた。

　幼い頃は互いに、すぐに接触を離していたが、なぜか二人とも今回はそうしなかった。
　俊介がちょっとふざけるつもりで舌先をチョロチョロと動かすと、くすぐったい感触が増幅され、慣れぬ感覚に脳ミソがどうにかなりそうなくらいの痺れを感じた。
　鼻で呼吸しながらも興奮度がマックスに達する。
　とにかく我慢ができなくなり、俊介が咄嗟にとった行動は自分でも理解しがたいものだった。

　俊介は突き出ている奈津子の舌を全部口に含んだのである。
　自ずと唇が重なり接吻のようになる。
「……ンンッ」

　一瞬声を出した奈津子だったが舌を引っ込めようとはせず、なぜか弟の行為に身を任せた。

　俊介はそのまま上体をよじり、上半身を奈津子の体に覆いかぶせる。
　唇の密着は維持したままだ。
　脚で奈津子の股を開き、自分の下半身を割り入れる。
　俊介が奈津子を押さえつけるような形になり、枕元で互いの掌は合わさり、指を絡めてしっかりと握り合っている。

　男の本能が次のアクションを起こさせた。
　俊介が思い切って自分の舌を姉の唇に割り入れる。
　するとツルツルとした歯にぶち当たったが、そのあとすぐ、奈津子は弟の舌を受け入れることを許したのだ。

　奈津子の口内奥深くまで俊介の舌が挿し込まれる。
　俊介は飢えた獣のように姉の口腔内をかき回した。
　姉弟の舌が絡み合い、静かな室内に《ネチネチ》という粘り気のある音が漏れ出す。
「ン…ン…ハァ……」
　時折奈津子が吐き出す熱い息も、俊介はためらわず自分の肺に吸い込んだ。

　姉との思わぬ展開に頭の中が真っ白になる弟……。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……つづく
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2015年4月11日掲載
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