姉ちゃんは優等生
保留守人 作
１５．


　全ての照明を落として真っ暗になった部屋……

　……『早く…来て……』

　言葉の文字を羅列しただけならば、幾度これと同じセリフを姉から言われてきたことだろう。

　――姉に手を引かれ、ふたりで買い物に出かけた幼少時。
　――夕飯の支度が整ったのに、いつまでもテレビゲームに夢中になっていた小学生時代
　――高台にある自宅から、姉の自転車で麓まで二人乗りした中学時代。

　状況は様々だが、絶対服従を強いる彼女の“上から目線”で発せられた言葉であったことは間違いない。
　それが今、同じ言葉なのに、高校３年生の姉、奈津子の言ったセリフには弟が身震いするほどの妖艶さを漂わせていた。

　ふたつ年下の弟、俊介の脳裏にはそんな姉の声が何度もこだましている。
　そして、ほぼ硬直状態で、右手にコンドームを握りしめ、ひとり取り残されたように突っ立っているのだ。

　暗闇に目が順応してくると、眼下に薄っすらと、奈津子が布団を被ってベッドに横たわっている情景が徐々に浮かび上がって来た。
　俊介のゆっくりと吐き出した息が震えている。

　＜姉の言っている意味を履き違えてはいないか？＞
　この状況を未だ信じられずにいる俊介は、何度も自問していた。
　姉弟の関係ではなく、一組の男と女としてベッドを共にする……と、捉えていいものかと。

　意を決し、俊介が上布団を勢いよく剥ぎ取って床に落とした。
　それでも奈津子は微動だにせず、背をむけて横たわっている。
　それを見て、自分と姉の考えにはほぼ、ズレがないと確信した。
　俊介はベッドに上がり、姉の体をまたぐように四つん這いになった。
　コンドームはひとまず枕元に置いて……。

　奈津子の肩に触れ、ゆっくりとその体を仰向けにさせる。
　それも注意深く姉の様子を窺いながらだ。
　
　完全に仰向けになっても、目を閉じ両手を組んで胸に当てている奈津子。
　もはや、まな板の上の鯉？
　いやいや、態度に示すことは無くとも心底敬愛している姉に対し、そんな比喩を当てはめるのは畏れ多いこと。

　俊介は恐る恐るその手を左右に振りわけてから、自分は膝立ちになって着替えたばかりのＴシャツを脱ぎ捨てた。

「ホントに、オッパイ…見るぞ」
　どうしても姉の意思を確認せずにはいられない。

　奈津子の両脇腹あたり、パジャマの裾に手を掛け、じわじわと捲り上げてみる。
　息を飲みながら、最終的には脇いっぱいにまでたくし上げるのだ。

《ゴクリ……》
　みたび、俊介は喉を鳴らした。
　パジャマの下に、ブラジャーはしていなかった。
　奈津子の白い腹部から豊かな胸の膨らみ全てが露わになっている。
　ブラインドの隙間から漏れるわずかな月明りが、奈津子の裸体を妖しくも青白く浮かび上がらせていた。
　それはまるで奈津子の肉体そのものが発光体であるかのように、幻想的に見えているのだ。
　
　ふたつの隆起した山の頂点にあるそれぞれの乳輪が、まるで影のようになって、白い肌とのコントラストを際立てていた。
　もちろん幼少時以降、衣服で覆われていない姉の乳房を見るのは初めてだ。
（こんな風になってたんだ、姉ちゃんのオッパイ……）

　姉が大人の女であることを改めて強く感じる。
　男としての本能が、怖気づいていた俊介を突き動かした。
　四つん這いで手を突きながら頭だけを沈めていき、奈津子の片方の乳首をそっと口に含んだ。
　奈津子がピクリと微動する。

　俊介は唇に姉の体温を感じた。
　コリコリとした乳頭に暖かい乳輪の皮膚……。
　ストローで何かを飲む要領で、チューチューと唇を尖らせ、姉の乳首を優しく吸い上げた。

「あっ…ハァ〜……」
　奈津子が何かに堪えているような、控えめな吐息をもらしていることを感知する。
（姉ちゃん……）

　息が続かなくなって唇を離すも、ハァハァと荒い呼吸をしながら、
「…信じられない……」と、沸き起こった感情を俊介は口に出していた。
　
　感極まって抱き付くと、素肌同士のお腹がピッタリと密着して、相手の温もりを感じる。
　くすぐったいようで気持ち良いのは、性感を刺激されていることに他ならない。
　姉も今、自分と同じような感覚を感じているのかと思うとなんだか少し照れくさい。

　そんな風に思ってしまうのも、やはりふたりが実の姉弟だからなのだろう。
　仮に相手が、例えば付き合っている彼女、つまり血縁関係のない赤の他人だとしたら、“エロモード”だけでいられたのかもしれない。
　
　俊介はおもむろに自分の体を奈津子の左側に逃げさせ、添い寝の形をとった。
　さらに姉の頭の下に自分の右腕を通して腕枕をしてやる。
　そして目を閉じている姉を抱き寄せ、その額にキスをした。

　しずかに目を閉じたままの奈津子。
　だが、今から進行していくであろう事態を考えると、どうしても緊張と興奮で呼吸が荒くなってしまう。
　自分の息が姉にかかってしまわないようにと気遣った。

　ひとまず左手を奈津子の背中に当て、優しく撫でるように滑らせてみる。
　スベスベの肌を掌に感じながら、姉の頭髪から漂う甘いシャンプーの香りをしばし楽しんだ。
　そして腕枕をしながらも、再び奈津子の体を慎重に仰向けに転がし、左手をそっと、ふくよかなお腹の上に置く。
　そうしてみると、ますます緊張が高まるのを覚えた。

　掌に全神経を集中させ奈津子の腹部全体をさするように撫で始める。
　キュッと引き締まったウエスト部でありながら、柔らかな感触が伝わってくるのは女性特有の皮下脂肪のせいであろう。
　一体どれほどの時間、姉の腹部で左手を“徘徊”させていただろうか。
　掌がわずかに汗ばんできたのを感じた。

　いよいよ潮時だと俊介は思う。
　姉の“本気度”を確かめるときがきた。
　そのまま左手を奈津子の下腹部へと進める。

　人差し指の先がショーツのゴムに触れただけで俊介のほうがドキリとする。
　だが、思い切って指先だけをゴムに潜らせてみた。
　腕枕で俊介の首辺りに顔を埋めている奈津子の表情を察することはできないが、まだ拒否反応は示していないようだ。
　
　それならばと、さらに左手を下向させ下着の中へ侵入させる。
　するとすぐに、モジャモジャとした感触を指先に感じ、思わずハッとした。
（あっ、姉ちゃんの“毛”に俺、触ってる……）

　妙齢の姉の陰毛に触ったことがある弟なんて、この世にどれくらいいるのだろうと、考えてしまう。　
　これは夢じゃないのかと……。

　緊迫した興奮を覚えながら俊介は指先をグルグルと回し、奈津子の恥毛に絡ませたり、つまんだりしてその触感を存分に味わった。
　それは赤ちゃんの髪の毛のように柔らかくて何とも愛おしいのだ。

「ホントに触るぞ……」
　やはり俊介はそう口に出してから、指先を“核心部分”へと進めることにする。

　その時は、さすがに奈津子の体がピクっと震えた。
　俊介の左手中指が、奈津子の潤んだクレバスへ到達した瞬間だった。

　研ぎ澄まされたような指先の神経。
　熱い滑りを感じている。
　初めて触れる女の秘所であったが、これが濡れている状態なのだと推測できた。

　さあ、このあとどうする？……
　男としては、指をヴァギナの奥深くへと差し込みたいところだ。
　しかしこの期に及んでも、姉はまだ処女かもしれないなどと考えてしまう、ある意味では純朴な弟。
　もしそうだとしたら、やはり指を入れるのはマズいんじゃないかと……。

　決心がつかず、俊介は左手をショーツの中から引き抜いてしまった。
（……どうしよう）
　そう思いながらも奈津子に気づかれないように注意しながら、左手の指先のニオイをそっと嗅いでいた。

　指先は濡れてはいなかったが、僅かに感じたツーンとしたアンモニア臭は予想外だった。
　だが、かえってその事が、女が恥じらう“肉体の臭門”に自分が近づきつつあるのだと実感させてくれた。
　首を振り、顔を埋めたままの姉が、ますます愛おしくなる。

　俊介は右腕で奈津子の体をキュッと抱き寄せ、横抱きにする。
　左手の掌で、さきほどと同じようにしばらく背中を撫でたあと、肩から背中、そして腰にかけてのなだらかなＳ字カーブをなぞるようにすべらせ、その勢いのまま、ボンと張り出した奈津子の尻肉までを撫で下ろした。
　スベスベのお尻の肌を掌に感ずる。
　つまりこの時、お尻に張り付いていた小さな下着は、自ずとペロンと剥がれているわけだ。

　真っ暗な空間ではあったが、肩越しに奈津子の臀部――白く浮かび上がるふたつの山とその割れ目の影――をはっきりと確認した。
（俺は今…姉ちゃんのお尻を見てる？……）
　現実と妄想の境が判らなくなってきた。

　この体勢からショーツを完全に脱がすのは難しかった。
　体を起こそうかと考えたとき、奈津子が横寝している自身の腰を浮かせた。
　清純な少女が見せる、なんとも妖艶な腰つき……
　しかしそれは俊介が奈津子の下着を脱がせるのをサポートする為の動きであることは明白だった。
（姉ちゃん……神崎ともベッドで、こんな風に？……）
　外道な元同級生、神崎のことがいちいち頭に浮かんでしまい、性的興奮に水を差す。
　そんな複雑な弟の心境は、今の奈津子が知る由もない。

　何とか気を取り戻した俊介が、今の体勢から手の届く最大限の位置、すなわち太腿の中ほどまでショーツを下げたところで、奈津子が自ら脚を交互に持ち上げ、さらに腰にひねりを加え、俊介の行為を助けた。
（ね…姉ちゃん……なんか…慣れてる？）

　完全に脚から抜き去り、左手に握りしめた布切れはナマ暖かい。
　自分が姉のパンツを脱がせてしまった事実にただ呆然として、自分の顔の前でそれを眺めていると、奈津子の手がそれを優しく奪い取った。
　そして、
「もう……」と、
　その声には恥じらいを含んでいるのが俊介にも判った。

　ついに、美少女として誰からも羨望されている姉、奈津子が、普通なら人前に晒すことのない“２つの臭穴”を布で覆い隠すことなく、無防備な姿で弟と一緒にベッドに横たわっていることになる。
　
　俊介の手から取り戻したショーツを横に置き、仰向けになった奈津子は両手で恥毛を隠すように股間を押さえていた。

　興奮のあまり、１００ｍを全速疾走した直後のような荒い息をしている俊介が言う。
「姉ちゃん……俺、…ハァ…指とか、入れて…ハァ…いいの？」
　
　暗闇の中、奈津子がパッと目を開き、白く光った目で、無言のまま俊介を見つめる。
　肩で息をしている俊介も一瞬凍り付く。
　そして顔を向こう側へ背けたと思ったら、まるで観念したかのように股間を隠していた両手をゆっくりと体の両サイドに置いた。
　伸ばした腕の先の手は、拳を握っている。
　当然、俊介の視線はふっくらとした白い下腹部に生い茂る奈津子の陰毛へ注がれた。
　１８歳の少女の股間に恥毛が生えていることは至極当でありながら、弟としては感慨深いものがある。

　その量は決して少なくなかった。
　モジャモジャ感はあるが、チリチリと言うより、むしろ直毛に近いタイプの陰毛だろうか。
　なにしろ暗い部屋なので、はっきりとはわからない。
　部屋を明るくして姉の肉体の細部までを鑑賞したいと切に思う。

　俊介が上体だけ起こし、飛びつくようにオッパイにしゃぶりついた。
　興奮を制御できなくなったように、荒々しく姉の乳房を貪るように舐め、吸いたてる。
「アンっ！……」
　奈津子も驚き、背が浮くほど反らせてもがいた。

《ブルル…》
　豚のように鳴る俊介の鼻。

「しゅ…俊介、落ち着いて。ね？…焦らないで……」
　奈津子が俊介の肩に手を添え、優しく嗜めた。

　俊介は奈津子の乳首を口に含んだまま、ハァハァと呼吸を整える。
　そして興奮が絶頂に達した状態で、再び左手を茂みへと進ませた。
　熱く潤んだ姉の陰裂に沿って中指を這わせる。
　それから第一関節から順に折り込むようにして指をめり込ませていった。
　生まれて初めての体験……。
　指が奈津子の熱い肉壁に包み込まれていくのを感じる。
　やがて人差し指一本が姉の膣内に完全に埋没してしまったようだ。
（あっ、ホントに、姉ちゃんの中に入れちゃった……）　

「はぁぁぁ〜……」
　奈津子の口からも熱い吐息が漏れる。
　俊介は口に含んでいる乳頭を吸引しながら中指を動かしてみた。
　愛撫というには程遠い、指を前後に動かすだけの稚拙なものだが……。

「あ…あんっ……」
　それでも奈津子は快感の喘ぎであろう、切ない声を漏らした。
　それが証拠に、奈津子の股間からはグチュグチュと淫靡な響きが伝わってくるのだ。

（え？　女のアソコって、本当にこんな音がするんだ……）
　エロ漫画や官能小説、はたまたアダルトビデオで描写されているこの“音”を、リアルな世界で初めて耳にした童貞少年だった。
　しかもその“音源”は、幸か不幸か優等生の姉の性器から発しているモノ……。

　俊介の愛撫している中指に、いつしか薬指が加わり、二本の指で、溢れ出る愛液をさらにかき出すような動きに変化させていた。

「アン、ヤン、アッ、アッ、アッ……」

　経験者にしか判らないだろうが、肉親の性的あえぎ声には、死ぬほど激しく動揺してしまうものだ。
　進学校に通う高３の姉がＡＶ女優そっくりな声を上げていることも信じ難い。
　衝撃はそれだけではなかった。
　オッパイに吸い付きながら姉の股間に手を差し入れている俊介は、横たわっている姉の下半身をしっかりと見据えていたのだが……

　……切ないあえぎ声を漏らしながら、奈津子は両膝を立てる。
　俊介の視線からは、　　白く肉々しい太腿からフクラハギにかけての脚全体が立体的に直立したＭの字のように見えている。
　“Ｍ”の中心には愛撫する自分の左手が添えられ、大胆に開いてしまった奈津子の股からは　淫汁が泡立つような音を発し始めた。
　そして、声を押し殺そうとするも次第に大きくなってしまう姉の艶のあるあえぎ。　
　自身の両手で口を塞いだ奈津子はやがて、Ｍ字に開いた両脚で、何度も踏ん張るようにして腰を振り始めた。
　弟のベッドでバウンドを続ける姉・奈津子の尻タブ。　
「アンっ…いやん！…アン、アン…アンッ！……」……

　信じられない光景……だった。
　受験勉強と部活動に勤しみ、いつもは母親のようにグウタラな弟を叱咤しつつも、何不自由なく過ごせる快適な家庭を築いてくれている姉が、まるでＡＶ女優のようにエロい腰づかいで性的快感を享受しているのだ。
　たぶん奈津子自身は自分がグラインドさせている腰の淫猥さには気づいていない。

（は……っ！！！）
＜まさか、姉ちゃん。もう神崎にも見られてしまったの？姉ちゃんがベッドでこんな風に腰を振ってる姿を……＞

「俊介っ！」
　突然、奈津子が叫んで弟に抱き付く。

　その勢いがあまりに強く、ふたりの体はゴロリと半回転し、ベッド上、左右の位置が今までとは逆になって互いに抱き合っていた。
「ね…姉ちゃん……大丈夫？」

　今度は奈津子の方が息を弾ませていた。
　横抱きの体勢で左脚を持ち上げるようにして、健康的な太腿が弟の体を挟みこんでいる。
　奈津子の太腿は、決して太いというわけではない。
　だが俊介の体が華奢に見えてしまうほど、その肉付きに迫力を感じるのも事実だ。

　秘所を弄っていた俊介の左手は、体を半回転したことによって、今度はその腕が奈津子の頭の下敷きになり、ひじから手の先までが宙に浮いている状態だ。
　奈津子の淫汁を帯びた中指と薬指が、間接的な月明りによって光っていた。
　右手はというと、自然と姉の太腿を抱きかかえるようになっている。
　奈津子の太腿の内側に掌を添えている恰好だ。
　その右掌が、急に汗ばむのを感じる。
　それは奈津子の今とっている体勢のことを考察していたからだ。
　片脚を持ち上げ俊介の体に巻き付けるようにしている脚。
　つまり、奈津子の“もう一つの臭穴”が大胆にも完全無防備になっている……。

　もっとも、奈津子はシャワーを浴びたあとだ。
　自宅のウォシュレットが故障して使えない分、彼女の性格からして、入念にそこを洗い清めていたに違いないから、決して臭うはずはないだろう。
　
　俊介はその右手で姉の太腿をさすり上げる。
　太腿の内側から脚の付け根をすり抜け、その掌は奈津子の尻タブに到達した。
　引き締まった奈津子の尻肉。
　プリプリ感がハンパない。
ウエストが締まっているからその様に見えるのか、相対的に女子の方が男子に比べて臀部が大きいように思える。
　しかしそれは女子特有の特徴として、愛らしく思えるものだ。

　さて、男の本能として、その尻タブを撫で回してみたいと思うのだが、どうしても気が引けてしまう。
　お尻を撫でるという行為が、痴漢を連想させるからだろうか。
　或は、その行為が一歩間違えばセクハラになってしまうような、男性優位を象徴する行為と認識しているからかもしれない。
　何しろ俊介が今、“対峙”している相手は、決して“足を向けては寝られない”大切な姉なのである。

　それでも結局、欲望の方が勝る。
　できるだけイヤらしくならないように心がけながら、奈津子のお尻の皮膚を掌で舐めるように、精一杯味わうのである。
　性器に触れるのとは違った、何か別の興奮を感じる。

　顔を埋めた奈津子の呼吸も整ってきたようだ。
　スベスベした尻肉をしばらく撫で回したあと、さり気なく手の動きを止める。
　中指の先が“尻の割れ目の斜面”に差し掛かかる位置で止めたのだ。
　心臓がまた激しく鼓動し始めた。

　実は初めから俊介は意識していた。
　自分の指先が、さきほどから幾度となく、奈津子の肛門すれすれの所をかすめていたことを。

　――――お尻の穴は生殖器官とは違い、男の俊介にも備わっている消化管の最終出口だ。
　男子なら幼いころに、自分の肛門を鏡に映し出してみた経験は誰にでもあるのではないだろうか。
　そしてその形状は女である姉、奈津子と大差ないことは“まごうかた無き事実”である。
　それでいて、他人に見られたり触られたりすることは、想像もできないくらい恥ずかしく、
　ある種、忌まわしい部位だと常々感じている。
　だからこそ、弟から見ても女子力が高く、清潔好きな奈津子が自分自身の肛門をどんな風に意識しているのかを知ることは非常に興味深いところであった。
　もし奈津子が弟である自分に尻穴を弄られたら、一体どんな反応を示すのか――――

　狙いを定め、“２つ目の臭穴”を目指そうとした指先が震えた瞬間、慌てたような奈津子の手が俊介の手首を掴んだ。

＜そこはダメ……＞
　はっきりと、そんな無言のメッセージを受け取った。

　その指が、肛門に触れたがっていることを、最初から奈津子は知っていたかのようだった。
　過去の経験でそれを学んだということか？
　男がそういう生物であることを奈津子は知っている……。
　また神崎の顔が俊介の脳裏をかすめる。
　今日ファミレスで神崎が、突きたてた中指をクンクン嗅ぐ仕草を見せていたことを思い出した。
（あり得ない……）
　
　少しもくろみが外れた俊介だったが、欲望の深追いはしなかった。
　１５歳にして、異性のお尻の穴に固執しているように思われるのは正直恥ずかしい。
　毎日顔を合わさなければならない同居している姉に変態視されるようでは、この先の日常生活にも具合が悪い。

＜お尻なんて僕は興味ないよ＞とばかりに、ちょっと恥ずかしかった行為を誤魔化す為にも、間を置かず、俊介は奈津子を改めて仰向けにし、覆いかぶさった。

　今度は俊介が暖かい奈津子の腹部に顔を埋める。
　弾力性のある柔らかい肌は男のモノとは異質だ。
　そこに女らしさを感じ、異性として愛おしくもなる。

　俊介は唇でその肌を愛でる。
　プヨプヨ感がいじらしい。
　縦長の美しいヘソの周りを何度も“徘徊”する。
　夢中になっていると突然、アゴがくすぐったくなった。
　我に返ってハッとする。

　奈津子の陰毛に顎が触れたのだ。
　また俊介は肩で息を始める。
　
　しばらく考えたあと、思い切って、グィッと体を下に移動させた……
　勿論、奈津子の性器を直接、口で愛撫する為である！

≪ガバッ……≫と……
　
　しかし、先に動いたのは奈津子の両手だった。
　俊介の両脇をしっかりと支え、その動きを制していたのである。
　例えるなら、池で泳いでいた魚が針の先の餌に食らいつき、ウキが僅かに沈んだ瞬間を見計らって竿を引いたような、まさに絶妙のタイミングだった。

　ともあれ、＜お口ではダメよ……＞と言うことである。
　
　従順な弟は素直に諦める。
　這い上がって奈津子の唇にソフトなキスを施した。
　欲望が不完全燃焼に終わった形だが、その反面、内心ではホッとした気もする。
　舞い上がっている童貞少年の気持ちは複雑だ。

「ねぇ、俊介……」
　弟の肩を抱いた奈津子が俊介の耳元で囁いた。
　姉の息が耳にかかり、くすぐったい。

　身震いして顔を上げ、姉の表情を窺う。
　上目遣いで、悲しそうに眉をひそめている表情は、狂おしいほどにいじらしい。
　すると、
「もう…やだ。わたしだけ…恥ずかしい……」と、視線を伏せる。
　奈津子は自分だけ“感じて”しまい、尻を振っていたことを言っているのだろうか。

　どこかで聞いたことがあるようなセリフだと、何か引っかかるものも感じたが、それよりも姉の小悪魔的な言動に、大いに翻弄されている弟であった。

　奈津子が俊介の首に腕を巻き付け、抱き寄せた。
　弟の耳タブにキスをして……

　……それから声を殺し、吐く息の音だけで奈津子は言った。

「…い…れ…て…………」

　　　　　　　　　　　　　　　　　……つづく
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2016年7月16日掲載
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