姉ちゃんは優等生


姉ちゃんは優等生　保留守人作
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７．　ソファのひじ掛けを枕代わりにして、寝転んだ姿勢でテレビの大型画面を見つめている俊介。　大勢の芸人が出演してるバラエティ番組では、10秒に１回くらいの割合で笑い声が沸き起こっていた。　だが俊介の頭の中には番組の内容は全く入っていない。　その代わり、あまりにも強烈だった昼間の神崎の言葉が断片的に脳内でこだましていた。　　　　マ○毛…… 　　マ○汁…… 　　生臭い…… 　　マ○グリ返し…… 　　いいケツ…… 　　肛門グリグリ…… 　　全部丸見え…… 　もし奈津子が聞いたら卒倒するに違いない。　“マ○グリ返し”の意味など到底知らないだろうが、多くの男子が異性のアヌスにまで興味をもっていることを姉は理解できるのだろうか。　高校１年生にして、女子を性奴のように扱う卑劣な神崎と、片時も一緒にいて欲しくないという感情が必然と俊介の心の中に生まれる。（……あっ！）　脳内の“海馬”が働いたのか、再び奈津子の受信メールの記憶が呼び起こされた。　ソファから体を起こし、年季の入ったサイドボード上の置時計を見やる。　奈津子が浴室に入ってからまだ10分ほどしか経過していない。　急いで立ち上がって走り出す俊介。　階段を忍者のように駆け上がって自分の部屋を通り過ぎ、その奥にある奈津子の部屋の扉を慎重に押し開けた。（あった！）　目的の物品はすぐに発見できた。　薄いピンク色のケータイが、整頓された勉強机の上に置いてある。　すでに俊介の息は上がっており、緊張のあまり口の中はカラカラだ。　置いてあった位置をしっかり頭に叩き込んで、急いで自室へ持ち帰る。　奈津子の携帯電話のデータを見るのにパスワードは必要としなかった。　やましい隠し事をしない姉の性分がよくわかる。　しかし、誰でも閲覧できるデータは後回しでいい。　机上のノートパソコンの電源を入れ、立ち上がるまでの間に姉のケータイからメモリカードを抜き取る。　ようやく、ウィンドウズのロゴマークが液晶画面に浮かび上がる。（遅い！　早く立ち上がれ！）　俊介にとってはパソコンこそがこの百年間での最大の文明の利器である、と思うのだが、その起動の遅さには閉口するばかりだ。　やっとパスワード入力画面になり、ブラインドタッチでキーボードを叩く。　次に奈津子のメモリカードをスロットに挿入し、その名も『ああ、しまったよ～ん！』という、“削除ファイル復活ソフト”を起動させた。　誤って削除してしまったファイルや画像などを復元できる（かもしれない）ソフトだ。　検索場所をメモリカードに、保存場所をパソコンのＤドライブに指定する。　さらにカメラ画像である削除済みＪＰＥＧファイルに限定して、“削除データ検索ボタン”をクリックした。 “１、２、３、４…”と復元させようとする画像数が画面に表示されていく。 “検索”が済んだ上で“復活ボタン”をクリックすれば操作が完了する手はずだ。「俊介っ……お風呂、空いたわよ」　１階から聞こえる奈津子の声に半ばパニックになり、慌ててメモリカードをスロットから引き抜き、ノートＰＣの画面を閉じる。（……何でそんなに早いんだよ！）《ピィーッ》というＰＣ強制終了の警告音を聞きながら、姉のケータイにメモリカードを差し戻し、自室を飛び出る。　ケータイを元あった場所に戻してから急いで階段へ向かった。　走り降りる途中、階段が直角にカーブする踊り場で、赤白チェック柄のパジャマを着た奈津子とすれ違う。　頭にはタオルを巻き、丁寧に畳んだ制服を手にしていた。「お先でした」「あれ、随分早いんだね、姉ちゃん」「でしょ？　やっぱり楽だわ、この髪型」　微笑む頬がピンク色に上気している。　間近で見る奈津子のツヤツヤした肌を、きれいだと意識したのは初めてだ。「おお、なるほど。一理はありそうだね、短い髪も……」　適当な言葉を返し、俊介は荒くなっている息に気づかれないよう装い、浴室へ向かった。（あーあ、復元は失敗に終わったな……）　メールの受信者や、その後のやり取りも確かめたかったが、後の祭りだ。　思惑が外れ、肩を落としつつ入った脱衣場は、まるでサウナ風呂のように蒸していた。　ドアを閉め、素早くシャツとトランクスを脱ぎ、洗濯機へ放り込む。　ドラム式ではない旧タイプの縦型全自動洗濯機だ。　新堂家では家電製品など他の消耗品も含め、寿命を全うするまで使う傾向にある。　姉弟そろって、いまだに“ガラパゴス携帯”を使っているのもその例外ではないからだ。　洗濯機の蓋を閉めた瞬間、俊介の動きがピタリと止まった。（あれ？　いつもと違う……）　いつもなら必ず洗濯槽には水が張られているはずなのに、今日は水が入っていない。　奈津子が洗濯機に水を張っている理由を深く考えたことはなかったが、洗濯物の汚れが落ちやすくなるのだろうくらいに思っていた俊介。　　数秒後、再びその蓋を開け、中をのぞく。　そこにある物は無造作に詰め込まれた自分たち姉弟の、洗濯前の衣類。　自分のシャツやパンツの隙間からブラジャーの紐や白いソックスが見える。　だが、俊介の心拍数を高めたのはそれとは別の、僅かに見えていた白い小さな布切れだ。　俊介はその布切れに手を伸ばし、ゴムの部分をつまんでみる。　そして恐々としながらも、衣類のかたまりからそれだけを引き上げるのだ。　心臓が激しく鼓動を始め、頭にまでその振動が伝わってきた。　摘み上げた純白のショーツは、ほんの数十分前に奈津子が脚から抜き去った下着に他ならない。　まさかパンツにまで学校指定があるのかと思わせるほど一切飾り気のないもので、奈津子の生真面目さを物語っているようだ。（まるでグンゼの子供用パンツだな）　手に取り、まずは掌でその感触を確かめる。　伸縮性があり、吸水性にも優れていそうな柔らかな生地のそのパンティは、奈津子の尻全体の皮膚から汗を吸収しているのか、かなり湿気を帯びているようだ。　さて、姉が丸一日着用していたパンツを手にした弟。　さあ、このあとどうする？…… 　このような局面に接した思春期の男子がすることは推して知るべし。　俊介はウエストゴムの両端を持ち、頭上にかざしてみた。　逆三角形に見えているパンツの正面、その真ん中の、尖った部分に鼻先を近づけてクンクンと鼻を鳴らした。（うっ？……）　ほのかにではあるが、スルメのような匂いがした。　絶対に他人には知られてはいけない、なんとなく恥ずかしくなるようなニオイである。　電車内で見た、清楚で美しいと感じたセーラー服のうしろ姿の少女が――実際には自分の姉であったが――スカートの中ではこんなニオイをプンプン漂わせていたのかと思うと、そのギャップに一層興奮度が増幅された。　山田の言葉を借りて言うならば、なるほど女は罪深いと思う俊介だった。　タガが外れてしまった理性は、すでに愚行に対する抑制力を持っていない。　興奮と罪悪感のあまり、震える手でショーツを裏返しにする。　左手をショーツの左右の“足ぐり”に通し、掌上にクロッチ部を広げるように持つ。　奈津子の性器が密着していたと思われるその部分には官能小説の筋書き通り、薄っすらとまだらな黄色い汚れが付着していた。（姉ちゃんが……パンツ、汚してる……）　右手の人差し指で触れてみると滑りがあり、奈津子の膣口から分泌された粘液が、乾いた汚れのシミに上塗りされているようだった。　女性は性的興奮を覚えたとき以外にもオリモノと呼ばれる分泌液を排出させることがある……とは、俊介の少ない性知識のひとつだが、これがそうなのだろうと考える。　良心の呵責にさいなまれつつも、クロッチ部に鼻先をすれすれまで近づける。　鼻腔を膨らませ鼻から息を吸い込んだ………。（うわっ！…クサっ！……）　頭がクラッとする。　下着の表側とは少し違ったニオイに感じる。　何かの薬品のようなツーンとした刺激臭と、何かが蒸れて腐ったようなニオイが入り混じっている。　初めて嗅ぐニオイであり、明らかにオシッコのそれとは違っていた。　　だが、万人が“クサい”としか形容しないようなそのニオイに、嫌悪や幻滅を感じないのはなぜだろうか。　清潔好きな奈津子からは想像もできないような動物的な匂いであり、男を惑わす淫靡な匂いと言っていい。　俊介はふと考えた。　もし姉が誰かとセックスをするということは、その誰かの手によって、こんなパンツを脱がされるということを意味するのだと思う。　体を許すということはいろんな意味を含め、相当な覚悟が必要であり、本当に信頼した相手でなければならないはずだ。　　　ともあれ、クサい分泌液は敬愛する姉の膣内から排出されたモノ。　俊介にはとても不潔なモノとは思えなかった。　そればかりか、女性を崇めるべく、神聖なものであるようにさえ感じられたのだ。　気が付いたときにはその汚れの部分に自分の唇を押し当てていた。　ヌルヌルとした粘り気を感じ、特にクロッチ部はかなりの水分を吸収しているとわかる。　俊介はベロを出し、その滑りを舐め上げることもいとわなかった。　　今、素っ裸になっている俊介の若いペニスは最大限に勃起して、下腹に張り付くようになって垂直に天井を向いている。　俊介は手にしている奈津子のパンティを今度は自分の陰茎に被せてみた。　敏感になっている“欲望の先端”にクロッチ部をあてがい、ペニス全体をパンティで包み込む。（うっ……）　冷たく柔らかい生地の感触が俊介の敏感な部分に異常なほどの快感をもたらした。　姉の性器が密着していた部分に自分の亀頭をあてがっていることの背徳感は言葉にできないほどの興奮を生んだ。　過去にも未来にも、決して姉のヴァギナに弟のペニスが挿入されることはない。（これって間接キスじゃなくて、間接セックスかな？……）　髪の毛を切ったばかりの奈津子の笑顔が頭に思い浮かんだ。　その瞬間……、《ジュルジュルッ、ジュルジュルジュルーッ》　本当に大きな音がした。（あちゃっ…しまった！）　心で叫ぶも俊介は奈津子のパンツの中で情念のほとばしりを爆発させていた。　決して、手にピストン運動を加えていたわけではない。　突然の“暴発”はとても制御できるものではなかった。　視界が一瞬白くなる。　今までに見たこともないほどの、大量の精液がドクドクと溢れ出ていた。　それらは興奮の度合いが尋常でなかったことの証だろう。　両手を使ってショーツでペニスを包み込み、固まっている俊介。　焦りながらも大きな快感の入り混じった複雑な感覚。　しかし余韻を味わっている時間は全くなかった。「俊介、開けるわよ。シャンプーがもうなくなってるみたいだか…ら……」　声を掛けながら扉を開けた奈津子も俊介の股間を凝視して固まった。　時が止まってしまったように感じる。　男も女も本当に驚いたとき、声は出ないものなのかもしれない。《ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ……》　奈津子が走って部屋へ逃げ帰る足音が聞こえる。　男性用の新しいシャンプーがゴロゴロと床に転がる音が重なっていた……。
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2014年11月15日掲載
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