夏休みがはじまると悠希は足繁く修一の家を訪ねて行った。画像だけでは満足できない。どうしても彩乃の顔が見たかったのだ。 目的は彩乃の姿を見ることだが、カメラの操作法や構図の作り方などを叔父に聞くのが名目だった。彩乃の声を聞くだけでも胸が締めつけられた。 淫らで美しい彩乃の肢体と、目の前にいる清楚な姿とのギャップがたまらなかった。 「どうぞ」と微笑みながら冷たい麦茶を持ってくる彩乃がどんな声で悶えるのか想像してしまう。 そして画像だけでなく、実際に彩乃の裸体を見たい、肌の感触を確かめたい、自分のものを彩乃の中へ挿入したいという欲望を抑えることができなかった。 修一の家から急いで帰り、さっき見た彩乃の記憶とパソコンの画像を重ねながらオナニーをすると、いつもより興奮した。快感も格別だった。 そして、ある日の夜、悠希は家を抜け出した。 たどり着いたのは叔父の家だ。 午後十時。街はもう眠っている。 地方都市独特のゆったりした造りの家。店の間口こそ狭いが、奥は広く、一階には修一の作業部屋とリビング、キッチン、そしてバスルームがあり、リビングの奥には小さな庭もある。その庭の塀にある裏木戸の鍵を、昼間、悠希は開けておいたのだ。 彩乃の全てが見たかった。写真でなく実物を直接だ。修一と二人だけのときどんな会話を交わすのだろう。私生活も知りたかった。そんな欲望をかなえるには覗き見るしかないと考えたのだ。 自転車を裏に停め、悠希は裏木戸を音がしないようにゆっくり開けた。 隙間から身を滑り込ませるように忍び込む。 緊張で鼓動が激しくなりヒューヒューと喉が鳴るほど息が荒くなった。 リビングのサッシは閉じられカーテンも閉められているが灯りがこぼれていて人がいる気配がする。 悠希は足音を立てないようにバルコニーの脇まで歩いてサッシのガラスに耳をあてて中の様子を盗み聞きした。 「梱包もこれで終わりよ」 彩乃の声がかすかに聞こえる。 「おっ、ごくろうさん。しかし驚いたな。作った30個がいきなり全部売れるなんて」 「この前買ってくれたお客さんがブログに書いてくれたからみたいよ」 「ありがたい話だが疲れただろう。先に風呂に入ってきたらどうだ？ もう沸いてるんだろ」 「いいの？」 「うん。俺は片付けものがあるから先に入ってきてくれ。後から行くから」 そんな会話を聞いて一緒に風呂に入るつもりなんだと悠希はツバを飲んだ。 風呂場の窓は塀に面していて狭いが空間はあったはずだと思い出す。 壁と塀の30センチくらいの隙間をそろそろと進むと風呂場に灯りが点いた。 サッシの脇には換気のためのガラス製の鎧戸があり、そこが開いていて隙間から網戸越しに中が少しだけ覗けた。 磨りガラスの向こうにある脱衣場で彩乃が服を脱いでいるのがわかる。 ぼやけて見える彩乃の姿が肌色になっていく。 心臓が飛び出すのではないかと思えるほど鼓動が早まる。 折りたたみ式のガラス戸が開いて彩乃が風呂場へ入ってきた。 写真で見たとおりの美しい裸体が目の前にあらわれて興奮がピークに達した。 しかし隙間からでは彩乃の姿は一瞬しか見えなかった。シャワーを浴びるために座ったらしい。下の方は視界が遮られているのでほんの少ししか見えないのだ。位置を変えたり角度を変えたりしながら中を覗こうとしてもかなわなかった。 それに、荒い息が止まらない。シャワーを使いはじめたので息の音は聞こえないだろうと思った。が、もし見つかったらという恐怖と、エッチな好奇心がない交ぜになって静めることができない。 やがて身体を洗い終わったらしく、チャプンと浴槽に浸かったらしい水音が聞こえる。浴槽は完全に見えない。 「ああ・・・いい気持ち・・・」 彩乃の独り言がエコーになって聞こえる。 見えないとわかっていても悠希はその場を離れることができなかった。 「おーい、入るぞ」 しばらくすると修一の声が聞こえた。 「はい。背中を流す用意をするから待ってて」 彩乃が答える。 浴槽から立ち上がった彩乃の後ろ姿がちらっとだけ見えた。背中から上だけだったが至近距離だったので悠希は手を伸ばして触りたいと思った。 カチャリと音がして修一が風呂場へ入ってくる。 こちらはあまり見たくないのに茂みの中からぶら下がるものがよく見えた。 「ネットを利用しながらこんなことを言うのもヘンだけど売れるときの勢いはすごいな。いっぺんに30個も梱包して宛名書きしたから疲れただろう？」 「ええ。でも、これでしばらくは安心じゃない。ありがたいわ」 「そうだな。祝杯を挙げて、そのあとは・・・今日はどうだ？」 「そんな・・・恥ずかしい・・・」 「なにをいまさら・・・」 そう言って笑う修一の声を聞いて、今晩はセックスをするんだと悠希は興奮した。どうしたら見られるんだろう。いや、声が聞けるだけでもいいと思った。 もしかしたら・・・リビングのサッシにはまだ鍵がかかっていないかもしれない。そう考えた悠希は素早く隙間を移動してバルコニーへ戻った。ラッキーなことに鍵はかかっていなかった。 悠希はスニーカーを脱ぐとサッシを開けリビングへ忍び込む。まだ風呂場からは水音が聞こえている。そっと歩いてリビングを抜け電気が消えた店の中へ潜んだ。 見つかってしまったらと思うと怖かった。それでも欲望は抑えられない。暗がりの中は時間が進むのがひどく遅く感じられた。 永遠とも思える時間が過ぎた。風呂から出た二人はしばらくリビングで過ごした後、二階の寝室へ入ったようだ。 悠希はそっと店と居室を分けているドアを開ける。 もう一階は真っ暗だ。 間取りはわかっているし、暗闇にも目が慣れているので階段はすぐに見つかった。 息を殺して一段一段を登っていく。 寝室のドアに耳をあてると二人の声が聞こえた。 「ほら・・・見せて・・・」 「やっ・・・はずかしい・・・」 「言うことが聞けないのかい？」 「あ・・・」 「いいね」 「は・・・い・・・」 「脚をひろげて・・・そう・・・自分で・・・」 もうはじまっているようだ。部屋のドアだから声はよく聞こえる。 「そう・・・自分でしてごらん・・・」 会話の内容がいまいちつかめない。 「や・・・ああ・・・」 彩乃の声が鼻にかかる。 「そうだ・・・もっと激しく・・・」 「ああっ・・・は・・はずかしい・・・」 「そんなこと言って・・・感じてるんだろ・・・もっと大きく脚を開いてよく見せて・・・」 「あっ・・・こ、こう・・・？」 「そうだ・・・もうビショビショじゃないか。見られていると感じるんだな」 「は、はい・・・ああっ・・・」 「自分で慰めているところを見られて感じるなんて・・・彩乃は淫乱だな」 「言わないで・・・あうっ・・・」 ここまで聞いて部屋の中で何が起こっているのかを悠希はやっと理解した。彩乃はオナニーしているところを修一に見せているのだ。想像しただけでメチャクチャ興奮した。それに生の声が聞こえるのだ。いつもとは違う甘く鼻にかかったような声。もう悠希は暴発しそうだった。 「あっ・・・ああ・・・あんっ・・・」 彩乃の喘ぎが続く。 悠希は寝室のドアを開けてしまおうかとさえ思った。 それほど中の様子が見たかったのだ。 しかし、そんなことができるわけがない。 「もっと激しく・・・いくまでやるんだ・・・見せておくれ、彩乃がいくところを」 「あ・・・あなた・・・もう・・・ああっ！」 「いきそうか？」 「は・・・はい。見て・・・見て・・・ああっ・・・いくぅ・・・ああんっ！」 ひときわ高い彩乃の声とギシギシとベッドがきしむ音が聞こえる。 ジーンズの上から屹立をこすっていた悠希はその声を聞いて放出してしまった。 しかし修一と彩乃の行為ははじまったばかりだった。 濡れて気持ちの悪い下半身を我慢しながら悠希は聞き耳を立てる。 もう修一の声は聞こえず彩乃の喘ぎだけが響いていた。 どうやら修一は舌を使って愛撫をしているようだ。 「あっ・・・やっ・・・そ、そんなにしたら・・・ああっ・・・また・・・いっちゃ・・・うぅぅっ！！」 最後の言葉が甘く伸びた。 それでも修一は愛撫をやめないようだ。 彩乃の喘ぎがすすり泣きに変わる。 「す・・・すげぇ・・・」 悠希は心の中でそう言っていた。また勃然となってくるのを感じる。 「あ・・・あなた・・・おね・・・がい・・・きて・・・」 「どうして欲しいんだ？」 修一の声は冷静だった。 「きて・・・きてほしいの・・・おねがい・・・」 「ちゃんと言わなきゃ駄目だ・・・」 「何が欲しいんだ？」 「あなたの・・・あなたが・・・」 「俺のなんだ？」 「ああっ・・・お・・・おちんちんが・・・おちんちんが欲しいの・・・ああっ」 「よし。よく言った。待ってろ。全部脱ぐから」 ちょっとだけ部屋が静かになる。 いつも清楚な彩乃の口から「おちんちん」という言葉が出たことに悠希はショックを受けていた。普段のイメージからは想像もつかない。 「はうぅぅぅっ！！！」 突然、叫びとも思える彩乃の喘ぎが響いた。 挿入されたことがはっきりとわかった。 「あっ！ あんっ！ ああんっ！」 リズミカルな喘ぎとともにベッドのきしむ音も聞こえる。 修一が激しく律動しているようだった。 その声に合わせて悠希もジーンズの上から屹立をしごく。 「ああっ！ ああんっ！」 彩乃の声がどんどん高くなっていく。 その声を聞きながら悠希は二度目の精を放った。 しかし二人の行為は終わっていない。 律動のリズムが早くなっていくのが喘ぎでわかる。 「ああっ！ あ・・・あなた・・・あああっ！」 「あ・・・彩乃・・・一緒に・・・」 「ああっ！ いいっ！ いいのっ！ きて！ きてっ！ おねがいっ！」 「うおおおおっ！」 修一が吠えた。 「いやぁ〜っ！！」 彩乃が叫んだ。 もう悠希は何も考えられなかった。 深いため息が出る。 もしかしたら終わったあとにトイレとかを使うかもしれない。ちょっとだけ冷静になった頭が危険信号を発していた。 悠希はあたりを見回す。 寝室の向かいには物置にしている部屋がある。そのドアを静かに開けて中へ入り、ちょっとだけドアを開けて様子をうかがうことにした。 パンツの中が冷えてきて気持ちが悪かった。 どれくらいそうしていただろう。10分？ それとも30分？ 何事も起こらないまま、感覚的にはずいぶん時間が経った。 そっとドアを開けてみる。 このまま、ここで朝を迎えるわけにはいかない。 ふたたび寝室のドアに聞き耳を立てると修一の軽いイビキが聞こえた。 どうやら、そのまま寝入ってしまったらしい。 ドアを開けて中の様子が見たいという衝動に一瞬だけ駆られたが、そこまでする勇気はなかった。と言うよりかは二回も出してしまった後なのでバレてしまう恐怖の方が強くなっていた。 慎重に階段を下り、来たときの逆ルートでリビングのサッシから外へ出る。 自転車に跨ったとき、なんともやるせない気分になった悠希だった。 |
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| 2011.9.17掲載 |
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