龍 晃一 作
| 第４章 美希の臨月と許嫁の誕生 僕が４月に東京に戻り、５月の連休明けに美希の妊娠を聞いた。 小西大二郎が自宅に戻ってきたとき、美希は夫に妊娠の報告をした。 「あなた、女の子を妊娠しました。予定日は来年の１月です」 「女の子が---でかした。良太がＫ中に合格するし、女の子か---今年は良い年になる」 「もう一つ、良いことがあるかも―知れませんね----」 「今年で貨物船の所有が１０隻になる」 「あなた、おめでとうございます」 小西美希は、夫の大二郎が妊娠を認めてくれたことで安堵していた。「離婚する」と言われても仕方ないことであるが、夫はセックスできない身体になっていた。その為か敢えて、社長自らが貨物船に乗り込むことが多くなっていた。俗世間と離れることでセックスできなくなったことを忘れることができた。 会社の規模が大きくなるに従って、社長が船に乗り込むことが難しくなっていた。妻の美希の顔に身体を見ると元気な頃が嘘のように思える。途中の事故であり、整形手術をして貰ったが睾丸を再生することは出来なかった。おしっこをする排泄器官としての役割は果たしてくれるが雄として、男の価値を鼓舞する行為が出来なくなったことが辛かった。 美希が二人目の子供を妊娠したが、夫の事故で流産してしまった。妻として夫の看病に付き添ったことが胎児を流産させてしまった。美希にも責任は負わせられなかった。夫の股間にクレーンが当り、夫が卒倒してしまった。数度の手術を得てペニスは回復したが精液を吐き出す機能を無くしてしまった。 妻、美希は精神的な疲労と夫がセックスできなくなるという不安感が美希を疲弊させていた。その結果としての流産だった。その後は、夫も妻も明るく振る舞うことで、心配させないようにと労わり合っていた。 このとき、美希は誠心誠意を尽くして夫を看病した。この思いが美希の浮気を許せると思えたのだ。 子供が一人では寂しくて可愛そうだ。兄弟や姉妹がいる方が良いと考えていた。そんな時に僕が家庭教師になった。美希との出会いは、僕達がこんな関係になることを神が認めてくれていたのだと勝手に判断していた。僕にすれば最高の出会いになった。 美希とも、美里とも妊娠すると激しく求めてくることは無くなった。それでも二人だけになると「する」と笑顔で行ってくれる。美里は、「したい」であった。美希も美里も夫が喜んでくれていることが心の大きな支えになっていた。 美里とは、月に２回程度言われるままに泊まりに行った。泊りに行くと二人で食事をして、二人でお風呂に入った。目立たなかったお腹も月日の経過で目立つようになってきた。女にすれば仕方ないことであるが、僕から見れば私は妊娠しているということ誇示しているように観える。妻から母になれる過程かも知れない。美里は妊娠してから優しくなったと思っている。生まれてくる子は、女の子のように思えた。 美希にも言えた。美希はもともと優しさがあったが乳首は黒くなってきているが顔は美しくなっている。美希も期待の娘の様に思えた。妊娠６ケ月が経過すると性別が判明する。美希も美里も、女の子を宿していた。 美希は良太に妹ができることで大二郎も良太も喜んでくれた。 美希も夫と息子が出勤と学校に行くとタクシーで飛ばしてくることも無くなった。 「大学が休講になったときは、来てくださいね。お待ちしています」 とメールが届いた。 僕は１週間も排泄しないと股間が勃起してきて困っている。何かと理由を付けて毎週２回程度は美希と交わっている。美希の子宮に精液を吐き出して、美希と抱き合い口付けを交わす。お腹が大きくなってくるに従って、美希が逝くということはなくなった。それでも交わることで愛と恋心を満喫させていた。 この二年の時は、新聞局、文芸部、経済学研究会、歴史研究会とクラブ活動に専念していた。一年の秋に出会った天風会にも参加していた。一番充実していた時代であった。天風会で瞑想法や氣を学び、歴史研究会では、「卑弥呼」を探して宇佐神宮まで行った。卑弥呼には、邪馬台国が九州なのか、大和(奈良県)なのかという論争もあり、若き心が踊った。家庭教師をしていた時の貯蓄があったのでバイトしなくても大和や宇佐に行くことができた。 大学の１年と２年の基礎講義は面白くなかったが２年からスタートしたゼミは面白く、どんなことがあっても参加していた。こんなクラブ活動の谷間で、美希を抱き、美里抱いた。妊娠中ということもあり、控えめにしていたこともあるが、逝くことが無くなった。逝くと絶叫しながら肉体を痙攣させることに男の満足感があったように思え、ホップの抜けたビールのようなものであった。 させて貰えなくなるので文句は言わなかった。 「美希が失神するほどに逝かせたい」 「出産してからにしてくださいね-----」 と期待感を持たせてくれた。 ２年になって大学生になったという実感を抱いていた。中村天風先生と言う大学の教授よりも凄い先生の弟子になった。専攻は経済学であるが、高木先生の産業心理学をゼミに選んだ。今立先生の歴史研究会で夢であった卑弥呼の探索ができた。 「瞑想力」夢の中で思いを実現させることかと思っていたが、会ったことのない人を瞑想で会話していき、僕の妻になって貰う理想の女を瞑想で会話していた。初めは馬鹿馬鹿しく思えるが波動は人に波及するということを意識してくる日もくる日も瞑想を続けた。 ２ケ月を経過したある日、瞑想をしているとこれまではぼんやりとしか見えなかった顔が鮮明になった。彼女が「三浦彩也香」であった。この人と結婚するのだと思えた。それから数日して大学の正門の前で見覚えのある顔と出会った。名前が思い出さなかったが、 「三浦彩也香さんですね」 「山崎武志さんですね」 初めて出会うのにお互いの名前を知っていた。 彼女は四国の同じ県出身で理学部の２年生であった。不思議な出会いであった。「山崎武志に会う」と夢の中で悟ったと聞かされた。彼女は高松松平藩で長年に渡り陽明学者として藩内の若者を指南してきた家系に育った。この陽明学の一部として人間の運命を支配する天命学があった。彩也香は幼き頃から祖母から天命学を学び、幼少の頃から氣を感じて「予告」をしていたと聞かされた。この氣が２人を結び付けていた。 「私達はお互いの将来を約束して結ばれるが、結婚する前にどちらかが亡くなる」定めですと予告された。 「僕は天命を尽くしてあとは、運命に託す」派なので、 「恋人になり、僕の妻になってください。お願いします」 「私こそよろしくお願いします。人生は、生きているとき、愛する人と人生を満喫すればよいのです誰でも一度は死ぬ定めにあるのです。それが早いか遅いかだけです」 お互いの手を握り合った。彩也香と僕が結ばれたのは、出会ってから１ケ月後であった。今立先生の歴史研究会に参加して鎌倉に行った。僕と彩也香は無意識のうちに手を繋いでいた。みんなの手前があり、キスは出来なかったが、「僕のマンションに来ない」というと頷いた。 彩也香とキスを繰り返し、彩也香を裸にしていた。乳首を舐め、クリストスを舐め、彩也香の膣に僕の肉棒を鎮めた。僕を強く抱きしめる彩也香がいた。ゆっくり、早くを繰り返して彩也香の膣の中に精液を吐き出してしまった。ベッドのシーツに赤い血が付いていた。 「嬉しかった。彩也香を愛してくれますか」 「彩也香を愛しています」 彩也香はトイレで汚れを流すと抱きついてきた。彩也香の血の付いたベッドでその後、２回も交わった。２回目と３回目は吐き出す直前に肉棒を抜いて、彩也香の口に持って行った。彩也香は嫌がる素振りもしないで精液を嚥下してくれた。 裸で抱き合って朝まで眠った。夜中と朝に１回づつ交わった。大学にいく前にシーツを洗濯してくれ、乾してくれた。そのまま手を繋いで学校に行った。学校で朝食を摂った。その夜は、彩也香のマンションに行った。私よりも少し狭いが整理整頓された室内は、女の薫りがしていた。 彩也香の部屋でも抱き合ってキスを交わして交わった。この日から彩也香は、 「彩也香は、僕のお嫁さんになる」 「武志さんは、私の将来の旦那さん」 と約束を交わした。指切りもした。太腿に約束のキスマークを付けた。彩也香も僕の胸にキスマークを付けた。 そんなままごとのようなカップルが誕生した。 翌日、高島屋で二人のエンゲージリングを注文した。良太が合格した謝礼金を使用した。銀座の喫茶店で彩也香の左手の薬指にリングをいれた。僕の左手の薬指にも彩也香がリングをいれた。彩也香とならば長い人生を協力し合って頑張れると確信できた。彩也香はも歴史研究会には僕と一緒に行った。宇佐神宮も、箸墓古墳も一緒に行った。 先生にも許嫁と紹介した。 新聞局では、４年生の近藤先輩より、２年の僕が次期編集長と指名された。彩也香は数学の統計学を専攻していた。 心理学でも統計学が必要であるが、彩也香は確率論を得意とした。好きな学問なので何も言えないが難しい数式を解き安堵した時の彩也香が可愛いと思えた。確率論を懸命に計算している彩也香、ベッドに潜り込んでくるときの彩也香は、普通の女の子になっていた。 夏休みは彩也香と一緒に郷里に戻ることにしている。 美希のお腹も大きく目立つようになってきた。セックスができなくなっていたので僕も都合が良かった。美里は子育に追われていた。美希にも、美里にも許嫁ができたことを報告した。 「これで終わりにしたいの」 「約束は、大学卒業までになっています」 「約束どおりなのね」 田舎に帰り、僕の両親に彩也香を紹介した。彩也香の両親にもお会いした。二人の交際を認めて貰い、結婚の約束をしたことも話した。結婚は卒業してからにすることを約束し、それまでは妊娠させないようにすることも母から諭された。僕の母と僕と彩也香との約束であった。 |
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| 2014.8.30掲載 |
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