不思議な先生 蔵人一文字 作
不思議な先生。 　　　　遭遇 　…おい、お前、ついに『あの子』と付き合い始めたって本当なのかよ？ 　なんだ、本当なのか。お前にしちゃ上手くやったもんだな。え？お前から告ったわけじゃないだって？ 　畜生、なんでお前だけいい思いをしやがるんだよ。 　で、もう『やった』のか？ 　…おいおい、『やった』の意味が分からないとかほざくんじゃねぇよ！こっちが馬鹿みたいじゃねーか。 　そんなの決まってるだろうが。 　…おいおい、まだなのかよ！ 　かーっ、これだから真面目なヤツは駄目なんだよ。いいか、高校生にもなりゃ『女』だって『付き合う』ってことが 『特別な意味』を持つってことは分かってるもんなんだよ。だから『付き合う』ってことはもうそっちに直結するもんだ。 　案外向こうもお前のことを待ってるんだよ、だからとっととヤッちまえよ！ 　…まだ付き合ったばかりだからって、お前そんなこと言ってたら他の男に取られて泣くだけだぞ。 　ただでさえ彼女、他の男にだって人気があるってのによ！ 　それはそうと、お前知ってるか？新任の教師が来るって話。なんでも結構な美人の女先生らしいぞ。 　いいよなー女教師って。なんかこうそそられるものがあるっていうか。 　…って、お前に言っても仕方がないか。 　…いったぁ…。君、大丈夫？痛いところない？ 　ごめんなさい、このわたしともあろうものが余所見していたわ。この学校の内部とかまだよく分かってなくて。 　大丈夫？一人で起きられる？そう、良かったわ。新任早々けが人を出したなんていきなり処罰されちゃうわ。 　え？わたし？わたしは来週からここに新任としてやってくる予定の保険医よ。 　ふふ、話どおりの美人だって？ありがと。でもそんなことを言われると本気にしちゃうわよ？ 　…ってちょっと君大丈夫？よろけてるわよ？さっきわたしとぶつかったときに跳ね飛ばされて壁か床に頭を打ったのかしら？ 　もう、廊下は走っちゃ駄目よ？わたしだっていきなり胸に飛び込んでこられるとは思っていなかったもの。ふふっ。 　それにしてもあんなに大げさに吹っ飛ぶなんて思わなかったわ。体重が軽すぎるんじゃない？ちゃんと食事摂ってる？ 　あら？ちょっと手を擦りむいたみたいね。血が出てるわ。 　とりあえず消毒でもして絆創膏でも貼っておきましょうか。わたしも一枚噛んでるし、それくらいはしてあげるわ。 　…ここが保健室ね。案内させちゃってごめんなさい。時間はまだ大丈夫？みんな昼休み？ 　とりあえず誰もいないみたいね。傷の処置だけは済ませちゃいましょうか。え？そこまでしなくてもって？ 　それは駄目よ。あとで熱でも出そうものならわたしのせいになるわ。ね？お願いだから先生の言うことを聞いて？まだ先生じゃないけどね。 　さぁ終わったわ。薬棚に鍵がかかってなくて助かったわね。なんだか怪我させた上に時間までとらせちゃって悪いことをしてしまったわ。 　お詫びに何か悩み事でもあれば相談に乗ってあげるわよ？男のコにありがちな恋愛の悩みとかあるんじゃない？ 　なんで？って？だって気分が高揚しているみたいなんだもの。上気してるっていうのかしら？ほら、『そこ』だって。 　ふふっ、今更手で隠しても遅いわよ。男のコが『そうなる』ことくらいわたしだって知ってるもの。 　ほら、正直に白状しなさい。…え？さっきわたしとぶつかったときにパンツが見えた？…こらっ。どこを見ていたのよまったく。 　今度から『ムッツリ君』って呼んじゃうわよ？え？誰でも男なら眼が行ってしまう？ま、年頃のコなら仕方ないか。 　ふふっ、その態度だと、あなたまだ『経験』したことはないのね？分かっちゃうんだから。 　見た目はなかなかいいけど奥手すぎて付き合ってる彼女にも手を出せずにいるタイプでしょ？ 　…図星ね。すぐ顔に出るタイプって可愛いわ、本当。 　え？先生が言うことじゃない？バレなきゃいいのよ。高校生にもなった男子が女のコの裸にも興味がない、 　自慰の一つもしたことがないなんてそれはそれで問題あると思うわよ、先生は。 　さて、と。そんなことよりパンツ見て大きくなっちゃったこれ、どうしちゃおっか？先生が責任を取って慰めてあげようかしら？ 　あら、いやらしい目をしてる。分かりやすいコねぇ。そんなことじゃ彼女にエッチな人だって思われちゃうぞ？ 　え？エッチな目をしてるのは先生のほうだって？そんなの仕方ないじゃない。生物の本能なんてみんなオスかメスだもの。 　元気な男のコを見ればうっとりするのはメスとして当然のことなのよ。 　さ、横になって。いいから寝なさい。先生の言うことなんだから聞きなさい。 　え？時間？昼休みが終わる？いいのいいの、そんなことは気にしなくて。ここには誰も来ないし、周りには音も聞こえないから、ね？
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2016年11月25日掲載
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