| １５． エレベーターから降りた私たち3人は、高級なフランス料理レストランへ向かった。レストランの入り口では、ウェイターが「T様。お待ちしておりました。」と私たちを出迎えてくれた。 私たちは、暗くなり始めた街を一望できる席に案内された。母は、美しい景色を無邪気に喜んでいたが、私は、普段の生活では全く縁のない高級レストランで、居心地の悪さを感じずにはいられなかった。 しかし、食事が始まると、出されてくる料理の全てが、私が普段食べているものとは比べ物にならないくらい美味しかった。最初のうちは、楽しむことができずにいた私も、食事が進むにつれて、料理だけでなく、夜景やレストランの雰囲気が楽しく感じられてきた。 目の前の母も、本当に楽しそうに食事をしていた。母からすれば、これまで相手にしてきた男たちが自分の射精欲を満たすためだけにやって来ていたのとは違って、Tは、高価な衣服を買い与えてくれ、このようなレストランで食事もさせてくれる存在だった。母が、Tとの逢瀬を重ねるうちに、自らの子宮まで許したのも、分かるような気がした。 食事の間、会話の主導権はTが基本的に握っていたが、Tの言葉が途切れたときに、母は「う〜ん、本当に美味しい。こんなに贅沢していいのかしら。ね？」と言って、私のほうへ無邪気な笑顔を見せた。 Tは、優しい表情のまま、「もちろんだよ。心ゆくまで楽しんだらいいんだよ」と応じた。そして、しばらく間をおいて、母の方へ力強い視線を向けて「今夜は、私と百合子にとって、特別な夜になるんだから」と続けた。 Tの視線を感じた母は、Tを見つめ返して「ええ」とだけ応じた。母は、綺麗な笑顔を浮かべていたが、その笑顔はどこか堅く見えた。 それは、母が、Tのいう「特別な夜」の意味を考えたからだろう。普通の家族であれば、「特別な夜」というのは、結婚記念日などのお祝いのことを指すのだろう。しかし、Tが言っているのは、そのような意味ではない。Tは、今夜、母のことを妊娠させると言っているのであった。 母の表情は、いま目の前にいる男の子供を孕むのだという覚悟、それも、実の息子の前で孕むのだという事実を受け止め、自分の中の覚悟を改めて確認しているかのように見えた。 豪勢な食事が終わり、しばらくすると、Tは「じゃあ、そろそろ部屋に行こうか」と言った。Tの言葉に促されて、私たち3人は、再びエレベーターに乗って、最上階の1つ下にある部屋へと向かった。 Tが母を孕ませるために用意した部屋は、私たち親子には縁のない豪勢なものであった。実家の居間よりもはるかに広い部屋には、立派なソファが2つ備え付けられていた。その他にも、ダブルベッドが2つあるベッドルームがあり、ジャグジーの着いた豪華なバスルームがついていた。母の「すご〜い、お部屋ねぇ・・」という言葉に、思わず私もうなずいた。 私たち3人は、ルームサービスで頼んだ飲み物を飲みながら、リビングのソファに座り、テレビで放送していた野球中継を見た。母は、野球にはほとんど興味がない様子で、Tと会話をしていた。私は、テレビの画面を見ていたが、内心では2人のセックスがいつ始まるのかと気が気でなかった。 母とTの会話が途切れ、3人の間を沈黙がしばらく支配したとき、Tが、切り出した。「じゃあ、百合子・・シャワーを浴びてくるかい？」母は、落ち着いた様子で「はい」とうなずくと、小さなバッグを持って、ベッドルームの奥にある、バスルームに入っていった。 私は、Tとリビングルームに残された。私が、何を話せばいいのか分からず、テレビを見ていると、都合良くTの携帯電話が鳴った。Tは「失礼」とだけ言うと、ベランダへ出て、会話を始めた。部屋に1人になった私は、2人のセックスがいよいよ近づいてきたことで異様に緊張してきた。心臓の大きなことが聞こえるようになり、テレビの画面を見つめても、その内容は全く頭に入ってこなかった。 時間の間隔が麻痺していたため、そのくらいの時間が経ったのか分からなかったが、気がつくと、白いバスローブを着た母がバスルームから出てきた。私が1人でいるのを見ると、母は「あら？Tさんは？」と尋ねてきた。私が「電話みたいだよ」とベランダを指さすと、母は「そう」とだけ答えて、ソファに腰かけた。 母が座るのとほぼ同時に、Tがベランダから部屋に戻ってきた。「失礼・・・百合子は出てきたね。じゃあ、私もシャワーを浴びてこよう」と言って、携帯を机の上に置き、上着を脱ぐと、何も持たずにバスルームに入っていった。 母は、手鏡を覗きこみながら、何種類ものクリームを、顔から首筋にかけて塗ったり、食事のときよりも薄くしたメイクを直したりしていた。今から男に抱かれるための準備をしているのかと思うと、私は、少し居た堪れないような気もした。 Tのシャワーの音が聞こえるようになってしばらくすると、私は、思い切って「ねぇ・・母さん・・緊張してるの？」と母に尋ねた。母は、一瞬、狼狽したように見えたが、落ち着いた口調で、鏡から視線をあげることなく、「大丈夫よ・・」とだけ答えた。 私は、言葉を続けようとした。「でも、母さん・・今日は・・・そのぉ・・」とまで口にしたものの、妊娠という直接的な表現にためらっていると、母は顔をあげて、私を諭すような口調で、再び「ゆう君。大丈夫よ」と言った。 さらに、母は、私の顔を見つめながら続けた。「いつもとは少し違うけどね・・でも、ほんとに大丈夫よ。Tさんは優しくして下さると思うから、安心して。」 母の顔には、私に対する母としての愛情と、これから男の子種を受け止めようとする女としての覚悟が浮かんでいた。私は、母の顔を美しいと感じながら、その言葉にただうなずいた。 母は、再び手鏡を覗きこみ、マスカラなどを直した。化粧直しが終わると、母は、シャワーを浴びる際に、濡れないように束ねていた髪をほどいた。白いバスローブだけを身につけた母が、首を傾けて髪をほどく仕草は、非常に色っぽいものだった。 母の仕草を見つめながら、私は、いま目の前に座っている母が、もう間もなく、隣のベッドルームでTに抱かれるのだという事実を改めて思った。しかも、その交わりは、Tが自らの性器に避妊具を被せることも、母が排卵を抑えるホルモン剤を服用することもなく行なわれる。 私としては、大切な母を、妊娠させないで欲しいと思う気持ちがないわけではなかった。しかし、そうした気持ちよりも強く、私の中に、母が孕まされてしまうところをこの目で見てみたいという気持ちが存在することを否定できなかった。 私がどれほど母を大切に思っていたとしても、母に、自らの子供を孕ませることは決して許されない。その母の中に、Tが、最高の快楽を感じながら子種を注ぎ込み、妊娠させる様子を私は想像した。さらに、私が物欲しそうに見つめる中で母を妊娠させる際にTが感じるであろう征服感、優越感にも想いをめぐらした。 こうしたことを想像すればするほど、私の興奮は高まり、頭の血管が切れてしまうのではないかと思うほど強く、心臓が鼓動した。 私が、屈折した興奮で悶々としているうちに、シャワーの音が止まった。母も、そのことに気がつき、クリームなどを片づけ始めた。しばらくすると、Tが扉を開けて、バスルームから出てくる音が聞こえた。 母は、ソファから立ち上がり、髪を手で整えると、ベッドルームのほうへ向かって、ゆっくりと歩き始めた。いよいよ2人のセックスが始まるのかと思うと、私の興奮と緊張はさらに高まった。私が、自分の顔が熱くなっていくのを感じていると、母は、私のほうを振り返ることなく「ゆう君も、来るんでしょ」と声をかけてきた。私は、フラフラと立ち上がり、母の後をついていった。 今から男に抱かれ、その精を受け止め、孕まされるためにベッドルームへと踏み入れようとする母の後ろ姿は、自分の中に潜む緊張や不安を、覚悟で抑え込もうとしているかのようにも見えた。母は、ベッドルームの入口で、扉を開けて私が来るのを待っていた。母と私が、ベッドルームに入ると、同じくバスローブを身につけたTがベッドの傍で待っていた。 Tは、自らの子種を受け止めようとする女性を、「百合子、今日はすごく嬉しいよ」と言って、迎えた。 母は、笑顔でTに答えると、そのままゆっくりとTへと近づいていった。バスローブを着たTと母は、2つあるベッドのうち、バスルームに近いほうのベッドの脇に立ち、向かいあった。 2人は、それ以上の言葉を交わすことはなく、しばらくの間、愛し合う夫婦であるかのように互いを見つめあっていた。私は、2人に近づくことができず、窓側のほうのベッドの横に立ちつくしていた。 Tは、母の肩を優しく持つと、自らの顔を母の顔に近づけていった。母も、少し首を傾けてTの唇を迎えた。2人のキスは長く、甘美なものだった。Tが欲望のままに母の体を貪る様子を予想していた私は、愛情にあふれた恋人同士のような2人のキスは予想外で、美しくさえ見えた。2人は、互いの唇、舌、そして唾液を、時間をかけて、ねっとりと絡ませていた。母とKとのセックスでは、こうしたキスは見たことがなかった。 3分間ほどの濃厚なキスを終えても、母とTは、互いの額をくっつけたまま、見つめ合っていた。母がTを見つめたままゆっくりと頷くと、Tは、目配せで母に応えた後、母にベッドに座るように促した。 母は、自分から、抱いて欲しいと頼んでいるかのように見えた。その様子に驚き、興奮している私の目の前で、ベッドの上の2人は、何ら避妊をしないセックスを始めようとしていた。 |
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| 2011.1.8掲載 |